ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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海だ!水着だ!バカンスだ!というわけで前回から引き続き水着回。
白浜の海が彼女らを待つ!


Ep.41:ドラゴン娘と海水浴

『私はここで荷物番してるね……』

「じゃあ氷と冷やした飲み物も置いておくから、帝王坂さんはこれで涼んでてくれ」

「他の皆も、交代で荷物番に付いておきましょう。人数も多いですから!」

 

パラソルとレジャーシートを設置し、荷物の置き場を確保した一行。軽く体操を終わらせ、海へ行こうとしたところで……テルタカが皆を呼び止めた。

 

「はい皆さん。磯遊びや浅い場所で泳ぐのはいいけれど、気を付けるべき事が多々あるので良く聞いてくださいね」

「引率の先生か?」

「はい、例えばこんな貝を波打ち際で見つけたり、磯で見かけたらどうしますか?」

「拾って皆に見せに行く!」

「はい真久間さんアウト!」

 

彼が持って来ていた防水式のタブレット端末に表示された、逆三角形の巻貝の画像。模様が美しいその貝は、確かに観賞用としては人気がある……が、注意すべき危険なものでもある。

 

「こいつはイモガイ、毒針で魚を刺して捕食する肉食の貝です。その神経毒は人間でも刺されれば命にかかわる場合もあるので、迂闊に触らないように注意を」

「そらアカンわ……メガ、ホンマに気い付けてな」

「波打ち際に落ちているものでも、中身が無いとは限らぬのだな……注意せねばなるまい」

「他にも毒で自身の身を守ったり、獲物を狩る生物は多くいます。なので、これから表示する生物を見かけたら迂闊に近付いたり触らないよう気を付けてください」

 

そうして、注意すべき生物の画像が表示されてゆく。ゴンズイ、アカエイ、カツオノエボシ、その他諸々……危険な生き物は数多い。

 

「このメンバーだと、サメとかの単純に襲ってくる捕食者系は逆に警戒度低めでも良いんですけどね……」

「ああ、撃退出来るから……」

「さ、流石に人の多いところでドラゴン娘になるのはちょっとまずいけど……身の危険を感じたら勝手になっちゃいそうだよぉ」

「なるべく注意しておくに越したことは無いっすからね。あと、ここは湾内で波が穏やかとはいえ、沖には出すぎないよう気を付けないと」

「それじゃあ一通り覚えたところで……改めて、海に行きましょう!」

 

 

* * *

 

 

そうして、彼女らは思い思いに海を楽しんでゆく。

 

「ここの固め方ははこんなもので良いかな?」

「良い感じでし!後は我が輩がゲージュツ的に仕上げてやるでし!」

「ここはこうやって、かわいい感じにしようぜ!」

「こらー!わらわの設計通りのバランスにせぬかー!」

「何をー!?」

「ふ、2人共落ち着きんしゃい!?」

 

浜辺の砂を盛り固めて、大きな砂の城を作ってみたり。

 

「いっくよー、そーれ!」

「なんの!頼んだぞジュラ子!」

「ジュラ子の必殺Spikeで、finishですわ!!」

「だーっ!ごめん、受け切れんかったわ!」

「朕達が仇を取りマース!」

「あら?ワタシ達にもう勝ったつもりかしら?」

「……ほどほどに頑張るね」

「自分達も油断せずに行きますよ、ゼオスさん」

 

4ペアに分かれて、ビーチバレーに興じてみたり。

 

「このぶよぶよしてそうなの、なんだったかしら」

「こりゃアメフラシですね。こうやって突いてみると……」

「うひゃぁ!?なんか紫色のが出て来てます!?」

「毒ではないんで一応素手で触っても大丈夫ですよ。ただ、食っている物次第では内臓に毒素が含まれるらしいですが……毒のある部分を食わなきゃ大丈夫なので」

「食べませんよ!?」

「いや、実は食う地域があるんですよ、島根とか鹿児島とか」

「そうなの!?」

 

磯や潮溜まりを見て、そこに住む生物を観察してみたり……海の楽しみ方は、本当に様々だ。

 

「はぁ~……皆さん楽しそうですね」

『会長は最初こっちで良かったの?』

「実は結構昨日の夜緊張してて……すこし海の雰囲気に慣れてからが良いかなって」

「お2人ともー、海の家でお昼買って来ました。いかがですか?」

「あ、いただきます!んー!おいしい!」

 

設置したパラソルの元には今、∞に加えアーシュとハヤトが待機していた。大人数ゆえに、置いてある手荷物だけでもそこそこの数がある。最低でも2~3人は常にここにいるのがベストであろう。

ついでに、幾つかの借りた浮き輪やフロートを膨らませる作業も行っていた。海に入るための事前準備も万全だ。

 

『やっぱり、具が少なめなのが定番なのかな』

「さあ?でもこういうのは場の雰囲気がよりおいしく感じさせてくれるんじゃないですかね」

「そうですね、いつもと違う場所で食べるっていうのが重要なんです!」

『なるほど……それにしても、そっちも最初の荷物番に付き合わせて悪かったかな』

「お気になさらず。女子だけよりはこの方がいいと思いますんで」

 

そう、いくつかのグループに分かれる際、DGA組はそれぞれのグループに最低一人は同行するようにしている。まあ、所謂ナンパ避けと言う奴である。

彼女らはみな容姿の良い少女であり、当然の如くこの場では周囲の目を引く。不埒な連中も当然寄ってきやすいだろう。そういった者達を牽制し追い払うのも、今日の彼らの役目と言えた。

 

「いやまあ、皆さん色々と強い方なので自力で撃退は出来るんだろうけど、下手に騒ぎになるのも厄介かなと」

『そうだね、ありがとう』

「あ、そろそろ……」

 

雑談をしていた所に、サキトとしのぶがやって来るのが見える。タイミングを見て交代しに来たようだ。

 

「∞ちゃーん!今度はうちが一緒に荷物番する番ばい!」

「つーわけで交代だな。赤坂、楽しんで来るといい」

「了解です。一緒に砂の城を作ってた皆さんは?」

「一通り完成させて、今度は海に入ろうとしてるよ。ほら」

「うわ……凄いのができてますね」

 

すず主導で作り上げ、サキトとしのぶが基礎を固めマロンと増樹が装飾した砂の城が砂浜に鎮座し、かなりの存在感を放っている。子供連れのレジャー客が見学に集まっており、彼女らも鼻が高そうだ。

 

『それじゃあいってらっしゃい』

「念のためスマホは持って行けよー」

「はい。それじゃあ会長、行きましょう!」

「はい!でもスマホは大丈夫ですか?」

「DGAの技術で防水、防塵も出来て錆びもしないそうなので、たぶん大丈夫です!」

 

早速浮き輪やシャチ型のフロートを担いで駆けてゆくアーシュとハヤト。その足取りは軽く、2人も浮かれているのが見て取れた。

 

「いや~、青春だなぁ」

「先輩、何だか親父臭かよ?」

「ちょ、それは勘弁してくれそんな歳でもねえのに」

『……なんだか溶けそう』

「わぁ!?∞ちゃん!?」

「とりあえず冷えた飲み物と保冷剤!あと端末に冷えピタ貼るぞ!」

 

 

* * *

 

 

「波に揺られるのもいい気分でしね……」

「だなー、このかわいいシャチのフロートも良い感じだぜー……」

「この海水浴場は入り江になっているからな、波も穏やかでこうして過ごしやすいのだ」

 

フロートと浮き輪に身体を預け、波に揺られながらくつろぐすず、マロン、増樹といった低身長組の3人。彼女達に付き添いながら、アーシュとハヤトは泳ぎを楽しんでいた。

 

「ぷはぁ!結構透き通っていて、良い海ですね!」

「ですね、それにここらへんまで来ると結構深くて生き物もチラホラ……ん、少し岸から離れすぎてますかね?」

「あ、本当です!いつのまに……」

 

この海水浴場は比較的遠浅で、穏やかな海ではあるが油断は禁物。岸から沖へ向かって流れる離岸流に流されると、いつの間にか安全な深度の領域を離れてしまう事もあり得る。

 

「まあ、こういう時は落ち着いて岸と平行に泳げばそのうち岸に近付く流れに──────」

 

『そちらの方ー!落ち着いて手足を動かさず浮いて!!』

 

岸の方から、メガホンで呼びかける声が聞こえる。辺りを見回すと、少し離れた所で女性が手足をバタつかせ藻掻いている!

 

「まずい!?熊田先輩浮き輪を!」

「ちょっと待て!今そちらのフロートに掴まるから……」

「ま、待ってください!なんだか、様子が変です!」

 

見ると、溺れている女性はまるで引き寄せられるように、沖側へと向けて動いていて…………。

直後──────海面が盛り上がり、水しぶきと共に何かが姿を現した。

 

『キシャァァァァァアア!』

「げひぃーっ!?」

「何なのだアレはー!?」

 

第一印象は、角の生えたサメだった。しかし、その身体は異様に長く、そして8本の長い触手が生えた不気味な姿!

 

「うぎゃーっ!?気持ち悪いっ!?」

「く、クリーチャーですかぁっ!?」

「ええいこんな時にっ!!」

 

腕に括りつけてあった端末に表示されたクリーチャーの名は、《アドラス》。「シー・ハッカー」という古参種族のクリーチャーだ。

 

「ま、まずいです!触手に海水浴客の人が捕まって!」

「助けないと食われるかもしれんぞ!幸い岸からは遠い、わらわ達の力で……わぶっ!?」

 

ドラゴン娘の力を解放しようとしたところで、アーシュ達が海中に引きずり込まれる。そして、両足を絡め取られたまま海中で振り回され、逆さに吊るされると5人はアドラスの元へ引き寄せられた。

 

「かふ、は、放すでし……っ」

「ごほ、っぅえ……っ、ちからが……」

 

無理矢理水中で振り回され、一時呼吸を制限されたせいで力が出ない。そんな彼女達の目の前で、アドラスの触手の先端が開き……鋭い牙を備えた、円形の口のような物が露わになる。その牙は真っ先に、最も無力な一般人へ向けられ…………。

 

「ひぃ──────」

「だ、ダメですっ!」

「こ、れ以上……させるかっ!」

 

その牙が届く前に、振り回されながらもハヤトの指が──────端末に、届いた。

 

『Duel field expansion. Contract armor awakening.』

 

瞬間。デュエルフィールドが展開されると共に、アドラスの触手が千切れ飛んだ。

 

「うわぁああぁ!?」

『シャギャァアア!?』

 

八本の触手が断たれ、水面に落下する彼女達。一瞬の事であったが、アーシュ達は……赤く燃える流星を見た。

 

「『轟く侵略!レッドゾォォォォォン!!』」

 

コントラクトアーマーを展開し、レッドゾーンと一体となったハヤト。彼は触手を振りほどくと──────()()()()()()()()()()()を足場とし、縦横無尽に跳ねる事で全ての触手を薙ぎ払ったのだ。

 

「『レッドゾーンッ!ダァァァッシュ!!』」

 

そのまま彼は、()()()()()()()、一直線にアドラスの胴体をブチ抜いた。

 

『ギュァ…………!?』

「『トップチェッカーは、オレの物だ!』」

 

一瞬の後にアドラスが消し飛び、デュエルフィールドも解除される。海中に放り出された彼女らを、ハヤトがすぐさまフロートと共に回収した。

 

「皆大丈夫ですか!岸まで行きますよ!」

「は、はい…………っ」

 

 

* * *

 

 

無事岸まで辿り着くと、心配した皆がアーシュ達の元に駆け寄って来た。

 

「かいちょー、すずぽよ、大丈夫!?」

「はい、赤坂君のお陰で……」

「うむぐぐぐ、まさかここでもクリーチャーに出くわすとはな……」

 

大した能力を持たないクリーチャーであったが、今回は完全に地の利が相手にあった。もう少しで惨事になっただろう。すずとマロンはそれぞれ、心配したゼオスとジュラ子に抱き潰……抱きしめられている。

 

「ほんとに端末だけでも持って行っておいて正解でした……」

「流石にカードの防水は難しいからな。赤坂がコントラクトアーマーを使えて何よりだ」

 

クリーチャーはあの一体のみ、ひとまず周囲は安全になったようだが……レジャー客たちの多くが、彼らに注目していた。

 

「もしかして、あれが?」

「ああ、噂のDGAとかいう……」

 

「あー……どうします?撤収しますか?」

「いや、気にするほどでもないだろう。さ、戻るとしよう」

「あ、待ってください!」

 

ハヤトの元へ1人の男性がやってくる。見れば、先程助けた海水浴客の連れのようだ。

 

「彼女を助けてくれて、ありがとうございました!」

「あー、オレ達はオフでたまたま居合わせただけなので、お気になさらず。クリーチャーはもういないようなので、楽しんでてください」

 

ひとまず、騒ぎは沈静化して行く。楽しい海水浴に多少の水は差されてしまったが、まだチェックインまで時間はある。

 

「さて、皆お昼を済ませてまた楽しみましょうか」

「はーい!」

「うーん……やっぱり人が多い所の方がクリーチャーも寄って来るのかしら……」

「そう言う傾向があるとは言われてますね。観光地でも油断は禁物ですが、俺達が大体はなんとかしますよ」

 

折角の旅行中もサキト達は気が抜けなさそうだが、これも彼女らや他の人々の平穏のため。楽しみながらも、常に戦いに備えんと彼らは気を引き締めるのだった。




そんなわけで一日目のレジャーは終わり、次回は二日目に。行き先は前回触れたように、鴨川シーワールド!
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