ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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襲い来る水神の眷属達を迎え撃つ決闘者達。
そして、水神と対峙する斬札ウィンは──────。


Ep.44:蒼き水神と決闘の裁き

彼らの目の前に現れた、水の龍。その出現と共に、海底から小島が姿を現す。そこには鳥居が建ち、何かを祀っているようだった。

 

『水位が下がった。ヤツめ、海水を吸収したか』

「お前か……今撃ったのはお前か!!よくも!」

「っ、危ない!」

 

怒るウィンの言葉に応じるかのように、龍の口から収束された水流が放たれる。それはウィンとニイカの間を裂くように地を割り、ウィンを小さな岩の足場に孤立させた。

 

「ウィン……!」

「来ちゃダメだ、ニイカ!」

「加勢しますか!?」

「その前に、こいつらを片付ける必要がありそうだ……!」

 

狛犬型のクリーチャーは、数を増して更に近付いて来る。そして、ウィンを見据える龍が口を開いた。

 

『口を慎め。そして、己の業を弁えよ。罪人斬札ウィン』

「な!?」

『我が名はミヅハノメノカミ。今ここで貴様を裁く!』

「……ミヅハノメノカミ?」

 

テルタカには、つい3ヶ月前にその名を目にした覚えがあった。水波能売神(ミヅハノメノカミ)、日本神話に登場する水の神。火の神である火之迦具土神(ホノカグツチノカミ)を産み落とした際、伊邪那美命(イザナミノミコト)はその身に火傷を負い苦しんだ。その際に流した尿から生まれたというのが、水波能売神という女神である。

 

「くっ!」

 

再びウィンを狙い水流を放つミヅハノメノカミ。身を庇おうとする彼の前に、5枚のシールドが現れ一撃を防いだ。

 

(シールドが……オレを守ってくれたのか!!これはデュエルなのか?なら、戦うまで)

 

ウィンがデッキを取り出し、目の前に浮かぶ光の盤面にシールドを展開する。

 

(デュエルなら、負けない!)

 

ウィンと水神のデュエルが始まる。互いに様子を伺いながら、ウィンはマナを溜めてゆく。それと同時に、近付いてきた狛犬たちがその双眸を赤く輝かせた。

 

「きゃっ!またクリーチャーが!」

「でも、様子が違う?」

「どうやら本気で来そうっすね……!」

『フン!』

 

ボルメテウスが砲撃によって敵を薙ぎ払う。その衝撃によって敵は全身が飛び散り水溜りのようになり……そこから再び、元の姿に戻ってゆく。

 

「コイツら、水で出来てる!?」

「こんなのキリがないわ!」

「ニイカ!」

「心配するな、こっちは任せろ!」

『斬札ウィン、親玉を倒せ!』

 

サキト達もシールドを展開し、更に数を増やす狛犬達を迎え撃たんとする。ボルメテウスとニイカ達を守るよう四方に分かれ、敵の群れを見据えた。

 

「「「「デュエル!」」」」

「王道の革命ドギラゴンをマナゾーンへ!さあ来い!」

「モモからうまれたモモキングをマナへ送りターンエンド!」

「ネオ・ボルシャック・ドラゴンをマナチャージしターン終了!」

「進化設計図をチャージ!来い、《冒険妖精ポレコ》!」

 

それぞれが2体の狛犬達を相手取る。敵は即座に襲い掛かり、彼らのシールドを割り砕いてゆく。

 

「っつう、この威力、ただの野良クリーチャーじゃないな……!」

「マナを供給している、デュエリストがいると?」

「ああ、間違いない。ウィンの対戦盤面を表示出来れば……出た!」

 

サキトがデュエマフォンを操作すると、ウィンと水神の対戦する盤面が画面に現れた。そこには、ミヅハノメノカミを含む3体のクリーチャー、そして、この場には見えないが……5枚のシールドとデッキ。そして、対戦相手の名は──────「Unknown」。

 

「やはり、何者かが遠隔からウィンと戦っている……!」

 

 

 

「おい!やめろ!アイツらは関係ないだろ!?」

『喚べ。ジャシンを喚べ!貴様と同じ罪を負いし者を!!』

 

ミヅハノメノカミは、ウィンを挑発するように配下にニイカ達を襲わせ続ける。そして、ウィンに対しエースたるジャシン帝を召喚させようとする。

 

「ジャシンだと?お前ジャシンのことを……?……いいだろう」

 

ウィンは手札からマナをチャージすると、そのマナを使い、手札から1枚のカードを翳す。既に手札へと来ていた、彼の相棒──────。

 

「召喚!アビスベル=ジャシン帝!!」

 

──────しかし。

 

「ジャシンが出て来ない……!?」

 

盤面に出したアビスベル=ジャシン帝のカードは、反応を示さず沈黙するのみ。今行われている真のデュエルにおいて、これは厄介な枷だ。

 

「ジャシン!!どういうつもりだ!!」

『この期に及んで!邪神の名が聞いて呆れる!』

 

水神の放つ水流がウィンのシールドを2枚破壊する。シールドトリガーは無く、ウィンの手にカードが渡って来る。

 

(ジャシン抜きのデュエルか。落ち着け……まずは状況を……相手の場を見るんだ)

 

攻撃を受けてもジャシンは姿を現さない。ならばと、ウィンは思考を切り替える。ジャシンが頼れないならば、他のアビス達を駆使してデュエルを進めるまでだ。

 

(相手……!?)

 

しかし、水神達の後ろには、相手の──────デュエリストの姿は無い。

 

「デュエリストがいない!?これはデュエルなんじゃ……!!」

「そんな……!相手のシールドも見えないの?これじゃどうやって戦えば……!!」

(どうする!敵の盤面もわからなくては……)

「大丈夫だウィン、そのまま進めろ!」

「サキト!?」

「そちらで相手の盤面は見えなくとも、これはデュエルだ!間違いない!リモートデュエルのようなものだ!!」

 

リモートデュエル。近年のネット環境の普及により、カメラ機能とボイスチャットアプリを使用する事で、遠隔地の相手ともデュエルをする事が可能となった。サキト達にとっても、顔も知らない相手とのデュエマは既に珍しくもない。

 

「そうだ!斬札ウィンであれば、勝てるはずだ!」

「……っ、分かった。今は、やるしかない!オレのターン!マナをチャージし、《邪幽 ジャガイスト》を召喚!手札を2枚捨てて、アビス・メクレイド5!……来い、《危険深淵 デンジャラス=ジャック》!ターンエンドだ!」

 

新たなアビスのクリーチャーを呼び出し、その能力で更に軍団を展開してゆくウィン。勝てない相手ではないはずだ。

 

 

 

「さて、こっちをどうしますか……ボルメテウスが倒しても倒しても再生しますよ!」

「……ひらめいた!それなら、倒さずに動けなくすればいい!2種の内片方をオレが止めます!オレのターン、ドロー!」

 

彼らを取り囲む水神の眷属達を前に、ハヤトが1つの策を思い付いた。先程手札に来たカードであれば、この戦術が可能となる!

 

「バルチュリスをチャージ!火の2マナで、ポレコからスター進化!《オンソク童子 <ターボ.鬼>》!登場時能力により、手札を1枚捨てて1枚ドロー!そして、オンソク童子で攻撃時……」

 

青い炎を噴き出す、ソニック・コマンドの力を得た鬼が走り出すと共に、ハヤトの墓地から1枚のカードが輝き飛び出す。

 

「墓地からS級侵略[轟速]を発動ッ!!闇か火のコマンドが攻撃する時、こいつは手札か墓地、または場から攻撃するクリーチャーに重なる!──────駆け抜けろ!《禁断の轟速 ブラックゾーン》!!」

『オォォオォッ!!』

 

オンソク童子の姿が、銀と赤、そして紫色に彩られた新たなクリーチャーに変わる。レッドゾーンの進化した姿、禁断の力を持つS級侵略者──────ブラックゾーン!

 

「ブラックゾーンの登場時、相手の一番パワーが低いクリーチャーすべてを封印する!」

『喰らいなァッ!!』

 

その身を切り揉み回転させたブラックゾーンから、禁断の力を宿した槍が放たれる。それは一行を囲む狛犬型のうち、半数を貫き活動を停止させた!

 

「よし!これでこいつらはカカシも同然!」

『でかした!』

「よし、残る半分は封じた奴よりパワーが高いようだが、余裕が出来たな……マナをチャージし、メンデルスゾーン発動!」

「こちらも!」

「同じく!」

 

サキト、トウリ、テルタカは一斉にメンデルスゾーンによりマナを加速させる。次のターンには攻勢に出るつもりだ!

 

 

 

ウィンの戦う盤面には、遠方から新たなクリーチャーが迫って来た。アメンボ型のロボットに乗る、水滴を人型にしたような姿のクリーチャーだ。

 

「新手のクリーチャー……!」

 

それが戦場に辿り着くと共に……狛犬型の1体がカードの姿になり、新手が来た方向へと飛んでいく。

 

「!カードが飛んで行った!?」

 

すると同時に、青い光が放たれてジャガイストを縛り付け、攻撃とブロックを不可能にする。これは、狛犬型の能力か。

 

「ジャガイストの動きが封じられた!?これは……コンボ!場に出た時に自分のクリーチャーをバウンスする能力と、バウンスされた奴の持つ場を離れた時に発動する能力か!」

 

数々の決闘を制して来たウィンのデュエルセンスが、未知の相手の能力を少しずつ看破する。そして、一度どこかへ戻った狛犬は再度召喚され場に現れた。

 

「オレのターン、ドローしてマナをチャージし、召喚!《謀遠 テレスコ=テレス》、そして、新たに出て来たクリーチャーはデンジャラス=ジャックの能力でタップされた状態で場に出ている!デンジャラス=ジャックでクリーチャーに攻撃!」

 

バイクに乗った姿のフォーク=フォック……デンジャラス=ジャックが新たなクリーチャーへとフォーク型の槍を振り翳す。しかし、その身にミヅハノメノカミの尾が巻き付くと、攻撃先が強制的に変えられる。

デンジャラス=ジャックの槍は完全に力負けし、ミヅハノメノカミの前に粉砕された。

 

「デンジャラス=ジャック……!今のは……攻撃先が変わった?攻撃誘導能力……!?」

 

 

* * *

 

 

「頑張れ……頑張れ」

 

遠い地にて、モニターに映るウィンの姿を見ながらカードを操る何者かがほくそ笑む。

 

「悲しいねぇ、ご自慢のデュエルの腕で、必死になってるその姿……でも、所詮無駄なあがき。キミの結末は『死』あるのみ」

 

そして、その何者かが1枚のカードを取り出した。

 

「もうお遊びはお終いにしよう、斬札ウィン」

 

 

* * *

 

 

「──────シールドトリガー発動!《ドラゴンズ・サイン》!」

 

サキトを襲う狛犬に割られたシールドから、新たな呪文が発動する。光のドラゴンを呼び出す、防御の呪文だ!

 

「さあ、来てくれ──────《最終龍覇 グレンモルト》をバトルゾーンに!登場時能力により、ドラグハートウェポン《爆熱剣 バトライ刃》を装備!」

『行くぞ!』

「バトライ刃!?持って来てたのか!?」

「解禁情報が出たと同時に、クリーチャー戦限定なら先んじて使用許可が出ていてな!早速使わせて貰う……こちらのターンだ!ターン開始時に更にドラグハートウェポン、バトガイ刃斗を装備させる!ドローしてグレンリベットをマナに置き、グレンモルトで攻撃!これによりバトライ刃とバトガイ刃斗の能力で、山札から2枚めくる!現れるのは──────《新世代龍覇 グレングラッサ》と《蒼き守護神 ドギラゴン閃》!これでドラゴンが2度登場した事により、バトガイ刃斗が龍解!現れろ、バトガイ銀河!!」

『助けに来たよ!』

『私達の力、ここに見せる!』

『バァトガイ、銀河ァッ!!』

 

サキトの場にモルトとグラッサの親子、そしてドギラゴンとバトガイ銀河が並び立つ。狛犬がモルトの斬撃に断たれ弾け飛ぶが、再び復活してゆく。

 

「こいつらももういっぺん封印するしかないか!」

「とはいえ、もう1枚ブラックゾーンは来てますか!?」

「流石に無いっす!これならレッドギラゾーン辺り入れるべきでしたかね……っと!」

『フン!再生出来なくなるまで焼き尽くし蒸発させるのみだ!』

 

ボルメテウスの火力支援も受けながら敵を倒し続けるサキト達。その一方で、ウィンと何者かのデュエルが動く。

 

──────《奇天烈 シャッフ》召喚。

 

場に新たに、カジノのディーラーを思わせる人型ロボットが現れる。その手が1枚のトランプ……スペードの5を表にすると、ウィンのクリーチャー達が行動を停止する。

 

──────コスト5のクリーチャーを行動不能に。

「オレのクリーチャーが全員封じられた!?この相手、相当できる……!!」

 

ウィンの場にいるクリーチャーは、テレスコ=テレスとジャガイスト。2体ともコスト5であり、このターンは攻撃もブロックも出来ず、ウィンを守る術がない!

ミヅハノメノカミとアメンボに乗るクリーチャーが攻撃し……残る3枚のシールドが全て砕かれた!

 

「くっ!シールドトリガー、《ドアノッカ=ノアドッカ》!相手クリーチャーのパワーを4000低下、これを2回行う!」

 

残る狛犬型2体が動く前に、ドアノッカーのような顔面を持つアビスがシールドから現れる。その能力で力を奪う事で、狛犬型が2体とも破壊された。

 

「はぁ……はぁ……」

(何とかしのげた……!でも、クリーチャーが封じられた。シールド0.ここで決着をつけないと……!)

 

ウィンにはもう後が無い。次のターンで逆転し決着を付けなくては、トドメを刺される!

 

『……何を勘違いしている?』

 

そのミヅハノメノカミの言葉と共に、一行を囲む狛犬型達がマナを注がれ吠え猛る。

 

「きゃっ!?さらに凶暴になってない!?」

「やめろ!オレとのデュエルだろ?アイツらを巻き込むな!」

『デュエル?これは貴様らへの「裁き」だ。罪人には須く「裁き」を』

「何だとぉ!?」

「──────ふざけた事を!」

 

ミヅハノメノカミの言い分に、トウリが怒りを露わにする。

 

「罪を裁くというならその前に、罪人が自らの罪を自覚しなければならないはず。何も知らない、覚えていない人間に何も明かさず一方的に断罪した所で、何の意味があるというんだ!やるぞモモキング!」

『いざ参る!カモン!王来!スター進化ッ!!キング・モモキングKG、ここに参ジョー!!』

 

場に現れたモモキングRXが、その力でスター進化し最強の姿へと変じる。その刃が、幾度も再生する狛犬型達をその度に断ち切ってゆく。

 

「モモキングの剣で何度斬り裂いてもどんどん補充されていく……!」

『己の無力さを呪うがいい!』

「やめろ───!!」

 

ミヅハノメノカミが、再び水流で全てを薙ぎ払おうとする。絶叫するウィン。そこに……。

 

 

 

太陽の光が、降り注いだ。

 

 

 

「この光は!太陽……?」

 

眩い輝きが狛犬達を消し去る。そして、ウィンの耳にだけ、言葉が届いた。

 

──────斬札ウィン……デュエルを続けろ。勝つんだ!斬札ウィン!!

(その声は……)

 

先程、サキト達が知覚できなかった間にウィンが見た人影。彼の声。それは──────。

 

「これがラストターンだ!ドアノッカ=ノアドッカとテレスコ=テレスをタップし、ハイパーエナジー発動!コスト軽減し、6マナで《超暴淵 ボウダン=ロウ》召喚!」

 

暖炉をモチーフとした巨体のアビスが現れ、その腹部にウィンのデッキから5枚のカードを吸い込む。

 

「その能力で山札から5枚を墓地に送り、コスト5以下の、コストが異なるクリーチャーを好きな数、自分の墓地から出す!デンジャラス=ジャックと《フォック=ジャック》を蘇生し、デンジャラス=ジャックを《邪龍 ジャジーブラッド》に進化!」

 

墓地から、アビスの軍団が蘇る。そして、骨で形作られた龍が口部にマナを収束させる。

 

「そしてジャジーブラッドの能力発動!自分の山札の上から3枚を墓地に置いて、その後、クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻す。そしてそのクリーチャー以下のコストの相手のクリーチャーを1体選び、破壊する!テレスコ=テレスを手札に戻し──────ミヅハノメノカミを破壊!」

 

戦場を支配していた水神が、ジャジーブラッドの多頭が放つブレスにより消し飛ぶ。

 

「まだまだこれからだ!ジャジーブラッドが進化クリーチャーである時、オレのクリーチャーは全てスピードアタッカーを得る!ボウダン=ロウでシールドに攻撃時、再度能力発動!墓地から、フォック=ジャックと《ゴブレット=ブレゴ》、更に2体目のジャジーブラッドを蘇生!集結せよ、アビス軍団!!」

 

ウィンが怒涛の勢いでクリーチャーを展開してゆく。アビス達は不死身の軍団、その爆発力は凄まじい。

 

「ジャジーブラッドとゴブレットの能力で、残りの2体も破壊する!」

「すごいわ!ウィンくんの怒涛の反撃!相手のクリーチャーは全滅よ!」

「やっちゃえウィーン!!」

「このターンで決着を付ける気だ!」

「行け、アビス軍団!そのまま一斉攻撃だ!ボウダン=ロウとジャジーブラッドでシールドをブレイク!」

 

相手が展開しているはずの、5枚のシールドがこれで破壊されるはず。そして、相手からの反撃は──────。

 

 

 

「……意味がないというのに……」

 

 

 

反撃は、来ない。シールドトリガーは無く、ガードストライクで攻撃を制限したようだが、まだウィンのクリーチャーは攻撃を残している。

 

「シールドトリガーは無いようだな!だったら……フォック=ジャックでダイレクトアタック!これで……この戦いを終わらせる!」

「やった!」

「やっと決着ね……!」

『いや、よく見ろ!』

 

ボルメテウスの言葉と共に、フォック=ジャックの動きが止まる。

 

「っ!まさか」

 

「残念。今更気づいたか」

『貴様は我が策にハマったのだ。所在を知らずに我が決闘者(デュエリスト)へトドメを刺すことなど出来ない!!』

「なっ!」

『どこまでも卑怯な!これが決闘(デュエル)なものか!』

 

ボルメテウスが怒りの叫びを上げる。そして、蘇ったミヅハノメノカミが、膨大な水を収束させた。

 

『死ね!』

 

その力が、ウィンへと放たれる──────その寸前に。

 

「──────ドギラゴン閃でブロック!!」

『ッ!?』

 

割り込んだドギラゴンと、その背に乗るサキトが一撃を防ぐ。その表情は、憤怒に燃えていた。

 

「──────居場所が分からないからダイレクトアタック出来ませんだと?ふざけやがって。リモートデュエルで、相手に住所を知られなければトドメが刺されないなんて妄言が通るとでも思っているのか?」

『貴様……!』

「デュエルのルールに則るんならと静観していたが──────その決闘(デュエル)を穢すような行い、絶対に許さん」

『Hyper dimension hole open.』

 

デュエマフォンのシステムボイスが大きく鳴り響く。彼らの眼前に超次元の穴が開き──────その先に、1人の少年が見えた。

 

「ッ!?」

「俺達のデュエマフォンには、ずっとお前の存在は見えていた。そこから逆探知して、超次元の穴を使ってこの場に繋げた……ウィン!食らわせてやれ!」

「──────ああ、分かった!改めて、フォック=ジャックで…………ダイレクトアタックッ!!」

「──────ッ!!」

 

穴の向こうに、フォック=ジャックの槍が突き込まれ…………ミヅハノメノカミが叫びを上げて消え去り、同時に超次元の穴は閉じた。

 

「やったのか…………うわ!?」

 

急に、風が吹き荒れ竜巻の如く荒れ狂う。それは彼らを巻き上げ、バラバラに飛ばそうとする。

 

「ウィン!」

「くそっ!」

「くぅっ…………ボルメテウス!」

『任せろ!』

 

ウィン、ニイカ、ワユミはボルメテウスが掴み。

 

「うおお!?」

「先輩!」

「くっ、頼む──────バクテラス!」

「ヤバい、飛ばされる!」

『掴まれ!』

 

サキト達は、テルタカのバクテラスが大きな腕で抱え込み。

 

そして彼らは、竜巻に飲み込まれた。

 

 

 

『──────フン、余計な真似を』

 

 

 

そのジャシンの呟きは、誰の耳にも届かぬまま、暴風の中に消えた。

 

 

* * *

 

 

「──────はっ!?」

 

気付けばサキト達は、晴れ渡る空の下で地面に転がっていた。身を起こせば、そこには本来の野島崎灯台が……。

 

「こちら側のロストフィールドが消えて、元の世界に戻ったんでしょうか?」

「かもしれんな……いつつ、ちょっと擦り傷が出来てるな」

「ウィンの対戦相手、誰だったんでしょうね」

 

事態は解決したかもしれない。しかし、結局あちらで起こった事に関しては分からない事だらけだ。

 

「……まあ、こちらの世界でそれが明かされるのを待つしかないんじゃないか」

「どのくらいかかりますかねえ?」

「というより、本誌の展開からして──────ジャシンの存在自体、何か怪しいですよね」

「そうなんだよなあ……」

 

LOSTの物語は、まだまだ謎を残している。その一端に生で触れた彼らにとっても、理解が及んでいない所は多い。

 

「とりあえず、皆に連絡しよう。通行止めも解除されて、ホテルに戻れるはずだしな」

「考えても仕方ない、休暇モードに戻りましょうか!」

 

斯くして、奇妙な平行世界との接触は終わり──────彼らは再び休暇へと戻る。

 

 

 

「斬札ウィン。そして、あのデュエリスト達……許さない」

 

 

 

あちらの世界に、再び触れる時がもし来た時は……新たな戦いが待っているかもしれない。




忘却の太陽編、これにて一区切り!
デュエルを蔑ろにする奴は許せねえよなあ!?というわけで決着の形をLOST原作とは結構変えました。今月末くらいから新編始まるようですが……神崎ロスト、一体何者なんだ……。
次回は旅行からの帰りという話になる予定です。
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