ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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まだまだ夏休み期間中。暑い日が続く中、アーシュに一つの誘いが──────。


Ep.46:流星アーシュと夏のデート

「え、えっと、次の日曜ですか?」

『はい。もし会長がお暇でしたら、なんですが』

 

──────2025年8月6日。

旅行から戻り数日しか経っていないこの日、アーシュの下にハヤトから電話で連絡が来た。これは……デートの誘いであろうか。

 

「今度の日曜は……はい!大丈夫です!」

『それで、学校からは少し離れた所の方が良いでしょうか?』

「えっと……そうですね、部活の関係で学校に来ている生徒の方もいるでしょうから……」

『それじゃあ、吉祥寺辺りどうでしょう?』

「良いですね!行きましょう!」

 

行先は、桜龍高校及び栗茶市からは少し離れ、同時にアーシュもハヤトも電車1本で行ける場所として……吉祥寺となった。様々な楽しみ方がある、良い街だ。

 

『行きたい所とか見たい物とか、ありますか?』

「そうですね…………できたらいろんなお店を回ってみたいです」

『分かりました、それじゃあオレの方で行先は考えておきます。ご期待に沿えるといいんですけど』

「き、きっと大丈夫です!たぶん!」

『それじゃあ日曜日の11時に、吉祥寺の北口で待ち合わせで』

「はい!」

 

…………通話を終えると、アーシュは通話アプリで生徒会の皆にメッセージで助けを求めた。

 

『どうしましょう!?日曜日にデートする事になっちゃいました!』

『お~!赤坂君とかな?いいねいいね~』

『アーシュはんのデートかー、どこ行くん?』

『吉祥寺です!たぶんお買い物デートとかになると思うんですが……行先は赤坂君が考えてくれるって』

『ふむ、商店街などを回るのかもしれんな?』

『ショッピングデスか、楽しそうネ!』

『デートなんて緊張します……どうしましょう?』

 

こうして異性と2人で出かけるなど、中学時代ぼっちで高校でも女友達と出かけた経験しかないアーシュにとっては未知の領域だ。本番は4日後だというのに、既に緊張してしまっている。

 

『んー、服装は前に遊園地行ったときのでオッケーだと思うよ?かいちょーの私服もかわちかったし!』

『後は海の時みたいに、日焼け対策はしとった方がええかな?』

『買い物の内容次第では、少しサイズのあるバッグを持って行くのが良いかもしれんな。服を買う場合は逆に小さいポーチがよいか?』

『朕はトウリ君の応援で10日までヒロシマデスから、見守れないのが残念ネ……でも、心は何時でもアーシュちゃんを草葉の陰から見守ってるワ!』

『キサマ、それは死人に対して使う表現だぞ?』

『姐さんも相変わらずやな……』

 

 

* * *

 

 

そして、デート当日、8月10日。

ハヤトは約束の時間より早く、10時45分に吉祥寺駅のJR線中央口へとやって来ていた。ここから北口に出れば、目的地もすぐそこだ。

 

「流石に早かったかな……?いやでも、この暑い日に待たせたりしたら悪いし」

「あ、赤坂君!」

「へ?」

 

声の方を見れば、アーシュがちょうど改札から出て来るところであった。

 

「会長!もう来たんですか!?」

「そ、その緊張してて、心の準備しようと早めに……赤坂君ももう来てたんですね」

「ええまあ、今日も暑いですからね。時間丁度よりは早めに来た方が待たせないと思いまして」

「あはは……結果的に早めに揃っちゃいましたね」

「そうですね……それじゃあ、早いけど行っちゃいますか?」

 

ハヤトがアーシュへと手を差し出す。それを受け、ドギマギしながらも彼女は手を取った。

 

「えっと、それじゃあ……その、きょうは会長じゃなくて……その」

「え、あ、えー……い、行きましょう。『流星さん』」

「──────はいっ!」

 

そうして、彼らは北口へと向かってゆく。行き先は駅を出てすぐ、バスロータリーの向こう……吉祥寺サンロード商店街だ。

 

 

* * *

 

 

サンロード商店街には、様々な店がある。飲食店、雑貨屋、衣服、ドラッグストア、理容室。アミューズメント施設もある。

 

「この帽子、どうでしょうか?」

「んー……イイと思います。流星さんの髪色なら、対照的な紫系やピンクに近い色のが合いますね」

 

帽子専門店で、それぞれに似合いそうな帽子を探してみたり。

 

「ここのスマホストラップ、色々あってオシャレですね」

「アクセサリーは校則に引っかかりそうですけど、こういうのなら……!」

 

女性向けアクセサリー店で、身に着ける物とはまた異なる装飾品を手に取ってみたり。

 

「あむ……っんぅ~!これ美味しいですね!」

「餡子ほぼ無しで、フルーツを薄く包んだだけのフルーツ大福か……うん、美味いですねこれ」

「もう少し買って帰っちゃいます!」

 

和と洋の交わったスイーツを堪能してみたり。女子高生が存分に楽しめる店も多く、楽しい時間を過ごしてゆく。

 

「……えっと、どうですか?赤坂君」

「どうとは?」

「その、ちゃんと楽しいかなって」

 

全国展開しているカフェチェーンにて、遅めの昼食を摂りながら2人は会話していた。高品質で少し贅沢なコーヒーとサンドイッチ、そしてケーキを食しながら、アーシュは彼に問いかけた。

 

「勿論楽しいです!今回の行先は流星さんに喜んでもらえたようで何よりでしたし」

「はい!色々なお店が見れて良かったです!……って、そうじゃなくて、その……」

 

思えば、今日はアーシュばかり色々と買っている気がして来た。ハヤトも全く手を伸ばしていないわけではないが、明らかに彼女の方が購入した物は多い。

 

「その、私ばっかりお買い物したりもなんなので……赤坂君も、好きな物や買いたい物があったら、言って欲しいんです!そこに連れて行ってください!」

「え……良いんですか?」

「はい!もっと赤坂君について、教えてください!」

「ん…………分かりました。それじゃあ、1つ行きたいとこはあるので、最後に付き合っていただいて良いですか?商店街ではないので、後回しという事で」

「勿論です!」

 

アーシュ側からも、ハヤトに対し一歩踏み出した。それを受け、彼は趣味の一端を曝け出す事を決める。

 

「その……ちょっと女性だと微妙に理解しづらいものかもしれないですが…………それで良ければ」

「へ?は、はい……」

 

 

* * *

 

 

「ここは…………?」

 

アーシュに促されて、ハヤトが彼女を連れて来たのは、家電量販店の5階。それも、プラモデルの売り場であった。

 

「赤坂君、プラモデルが好きなんですか?」

「プラモデルがというか……まあ、とりあえずこっちですね」

 

ハヤトがプラモ販売スペースの奥の方へ向かう。多くの客が目を止める通路側には、有名ロボットアニメのキットが多く展示されているのが見える。そして少し奥に行くと、所謂美少女プラモなどを置いているコーナーもあった。

 

(け、結構予想外!いや、ゲーム部だからむしろこっちの方が普通なの……?こういう女の子系のプラモが趣味……って、あれ?)

 

ハヤトはその辺りの棚も通過し、更に奥側へ向かう。そして辿り着いたのは──────。

 

「これって、バイクのプラモデルですか?」

「はい!」

 

棚に陳列されているのは、大手模型メーカーが販売している1/12サイズのオートバイのプラモデルシリーズ。作例が飾られたアクリルケースを見ながら、ハヤトは目を輝かせていた。

 

「あそこの新作は10月発売だったっけな。ならとりあえず、持ってなかったヤツで……よし、コイツが良さそうだ」

「なるほど、バイクが好きなんですね?そういえば相棒になったあのクリーチャーも……」

「あーまあ、レッドゾーンとの縁はバイク云々というより初心者用デッキとして肌に合うものを買ったってのも大きいかなと。バイクは元々親がモータースポーツとか見るのが好きで、オレも影響受けた所はありますね。……後は親が撮りためてた、平成前半期のニチアサヒーローなんかの影響も少々」

「あー……なるほど、それはバイクが好きになるかもですね」

 

今も尚続く某ヒーロー番組、それを見てバイクに憧れた子供は少なくない。平成シリーズ前半期の、バイクアクションに力が入っていたシリーズ等を見れば猶更だろうか。

 

「それでまあ、まだ乗れない年齢のオレがバイクが欲しいと言ったら、親父が買って来てくれたのがプラモデルでして。最初の一つは親父と一緒にそれを作りましたね。以後たまに買っては組み立ててます」

「良いお父さんですね!お父さんもやっぱり本物のバイクを持ってたりするんですか?」

「いやあそれが全然。見るのは好きだけれど本物のバイクは手が出ないみたいですね。車の運転は普通に出来るんですけど」

「そうなんですか……それにしても、赤坂君が持ってるそのバイクのデザイン、なんだかカッコいいですね」

 

ハヤトが手にしたバイクのプラモデルは、パッケージのイラストを一目見たアーシュもそう評するものであった。黒く鋭角的なボディは力強さを感じさせ、後輪のキャストホイールの星型も彼女にとっては目を惹かれる物だった。

 

「なんだかアニメやマンガに出て来そうなデザインですけど……これって、実際にあるバイクなんですか?」

「はい、この手のオートバイプラモは基本的に実車をそのまま再現したものですね。オレには憧れの機種の1つです」

「そういえば、赤坂君はもう16歳でしたっけ?」

「ええまあ、4月生まれなのでもう16ですね」

「それなら、バイクの免許って16歳から取れるから、本物を買っちゃうのももう夢じゃないですよ!」

 

そう、バイクの運転に必要な普通二輪免許は満16歳であれば取得する事が出来る。DGAにはデュエラッドという装備もあるため、免許を取得して自分でも本物を購入するという選択肢もあるにはある。のだが──────。

 

「いやぁ……バイクって排気量で必要な免許が変わって来るんですよね。こいつは1000㏄のモデルなので、もしこいつに実際に乗るなら大型二輪の免許取らないとなんですよ」

「あっ、そうなんですね……そっちは何歳からでしたっけ」

「18からですね。あと2年はお預けです」

「あう……すみません、そういうのをあんまり知らないのに口出しちゃって」

「いえいえ、元々普通二輪の免許は夏休み中に取るつもりでしたし、同じシリーズで排気量の少ないものなら手が出せそうなので買うかなとは思ってたんですよ。幸い、DGAの給料なら手が届く範囲になりましたし」

 

ずっとサイドカーで相乗りを続けるという訳にも行かない。ハヤトも、彼自身のデュエラッドを得る事は既に視野に入れていた。

 

「えー、それでですね……流星さん」

「は、はいっ」

「オレがバイクを買ったら、いずれ……ツーリングデートでも行きませんか」

「わぁ……!良いですね!行きたいです!」

「ほっ、良かった。それでは……これからもお付き合いよろしくお願いします、流星さん」

「はい!」

 

こうして、最後にハヤトの趣味を新たに知る機会を得て、2人のデートは概ね良い結果に終わったのであった。




以上、アーシュとハヤトのデート回でありました。趣味を知るのは理解の一歩。

ハヤトが買ったプラモは、タミヤの「1/12 カワサキ Ninja H2 CARBON」になります。Ninjaシリーズの鋭角的なデザインはよいものだ。
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