ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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夏休みの最中、ユウキからとある相談を受ける事となったテルタカ。そこへもう1人、厄介な令嬢がやって来る──────。


Ep.47:陽野テルタカと2人の令嬢

「本日はお付き合い頂き、ありがとうございます。陽野様」

「正直ここには場違いな気がしますね俺は……しかし珍しいですね、光明院さんが俺に相談とは」

 

──────2025年8月19日、現在時刻16時。

東京都千代田区、東京駅に隣接するホテルのロビーラウンジ。陽野テルタカは、光明院ユウキに呼び出されここへ訪れていた。

彼等の席にはアフタヌーンティーのコースが運ばれて来ている。テルタカとしては、こういう類の料理や茶菓子は苦手意識があったりもする。

 

「わたくしが親交あるデュエルマスターの方々の中では、本日日程が合うのは陽野様だけだったのです」

「一緒に戦ったりしたっていう、護守さんじゃダメだったんですか」

「護守様は確かに適したお方だったのですが、本日は、お付き合いしておられる方の応援で広島に行っているとの事で……」

「あー……インターハイですか」

 

全国高等学校総合体育大会……インターハイ。7月下旬から8月中旬にかけて行われる、運動部に属する高校生達にとっての夏の一大イベントである。

この日はインターハイも終盤、水泳系競技が17日から20日にかけて行われており、サキトは今年はしのぶの応援のため広島まで泊りがけで行っていた。

 

「いやまあ、彼もこの場に呼ばれたら場違い感が凄そうですけど……それで、相談とは?」

「ええ、わたくし……これからの活動をどのようにして行けば良いか、少々思案しておりまして」

「ふむ?」

「因縁ある、キング・ロマノフに関わる事なのです。陽野様は、彼の者の配下と交戦なされたのでしたね?」

「ええまあ、出張先の箱根で」

 

箱根での一件以降、キング・ロマノフ配下と思われるナイト系クリーチャーの出現報告は今の所無い。息を潜めているのか、もしくはこちらの世界ではなく超獣世界側での活動に注力しているのか……。

 

「護守様は飛ばされた先で、キング・ロマノフに対抗せんとする組織の旗揚げに関わったとお聞きしました。であればわたくしも、そちらに本格的に協力すべきなのでしょうか、と」

「なるほどそういう……」

 

紅茶とサンドイッチを味わいながら、彼女の考えを聞くテルタカ。確かに、キング・ロマノフのその後の動向は重要な問題ではあるが……。

 

「聞く限りでは、あちらこちらの世界で奴が狙う魔導具を先んじて回収、対抗するって話ですけど……応援に呼ばれるだけだとしても何時呼ばれるか分かったもんじゃないのは大変じゃないですかね」

「それは確かにそうなのですが……」

「急に呼ばれて、最低3時間はこちらの世界からいなくなるというような状況を考えると……要請を受けて行くという形ではなく、こちらが手の空いた時、学校が無い日限定で参加という形にしなくては」

「やはり、そうなってしまうでしょうか」

「俺達にも生活がありますからね。……そういえば将来的には、光明院さんは進学とかどうするつもりなので?」

 

現在テルタカもユウキも高校3年生。進学するかこのまま就職先を決めるか、そういった進路に向けて行動する時期である。

 

「わたくしは大学に進学するつもりです。そちらの卒業後は、父の土地管理と不動産の管理を段階的に引き継ぎつつDGAの活動を行っていく事になるでしょう」

「俺もひとまずは大学進学ですかね。その後は……父さんの勤める会社に行くか?それとも完全にDGAの職員という方に行くか……政府が関わる公的組織だから、実質公務員扱いになるんですかね?」

「陽野様でしたらどちらもやって行けそうとは思いますわね」

 

そうして、2人が話し合っていた所に……2つの人影が近付いてきた。

 

「あら、アナタもこちらに来ていたのね?光明院ユウキさん」

「ん?」

 

前に立つ誰かがユウキに声をかけて来た。テルタカがそちらを向くと、そこには金の長髪を靡かせた同年代の少女が立っていた。

 

「……(あまの)さんですか」

「あまの?というと……」

「光明院さんのお知り合いかしら。私は(あまの)(みこと)。聖ゾディア学院の()生徒会長よ」

「天……聖ゾディア学院……まさか、あのAMANOの!?」

 

 

* * *

 

 

AMANOコンツェルン。世界四大財閥の1つとされる、日本を拠点とする大財閥である。その令嬢であり、次期AMANOコンツェルン代表に就くとされているのが……目の前の彼女、「天 命」であった。

 

「それで、そちらの方はどういったご関係なのかしら?」

「こちらは陽野テルタカ様です。わたくしとは……同僚、と言えばよいでしょうか」

「まあ、間違っちゃいないか……?」

「同僚……そう、つまりはあのDGAの所属なのですわね」

「っ、光明院さんがDGA所属なのも知っているというわけ……ですか」

「AMANOの情報網をもってすれば、不可能は無くってよ……と言いたい所ですが、彼女が所属していた事を昨年のうちに掴めなかった事は不覚でしたわ」

 

ボディーガードを伴い2人と席を共にする命。彼女は財閥の人脈と情報網により、ユウキの事は既に調べ上げていたようだ。

 

「それに、陽野……確か、AMANO傘下のグループ企業……そちらの常務に同じ苗字の者がいたわね」

「……ええ、うちの父が勤めています」

「父からは優秀な役員であると聞いていますわ。このような場所で会うとは思っても見ませんでしたが」

「しかし、光明院さんとはどちらで?」

「わたくしは以前、首都圏の各校代表が集まる会議でお会いしまして……」

 

光明院ユウキはこの千代田区にある名門女子校の生徒であり、そこで生徒会長を務めていたらしい。そのため、命とは会議の場で幾度か会っている。

 

「私達PENTADRÉは、栗茶市におけるクリーチャー出現頻度の増加に対して対策を打つため、桜龍高校の廃校と対クリーチャーに特化した専門の教育機関を設けるべく準備をしていたのですが……昨年末の事件で、それどころの話では無くなってしまいました」

「そんな動きがあったのですね」

「栗茶市のみに抑えられず、クリーチャー達が溢れ出すという事態への対処だったのですが……事は世界規模、いえ、地球規模の事態へと一気に拡大を見せてしまった。DGAという組織が先んじて設立されていなければ、今のこの世界は無かったでしょう」

 

禁断の星の襲来。それは宇宙開発事業等を含むAMANOコンツェルンの総力を結集したとしても……否、全世界の力をもってしても、人間の力のみでは跳ねのけられなかったであろう厄災だった。人間が持ち得る最凶の兵器を使用したとしても、天体の大きさを持つ怪物には傷一つ付けられない。ましてや、それを守る尖兵も存在するとなれば猶更だ。

 

「しかし、何なのかしら?貴方達DGAという組織は。AMANOコンツェルンでもその存在を掴めなかったというのは……」

「まあ、認識阻害の効力があるフィールドとか使っていましたからね。よほど才ある人間が組織にいなければ現場を見る事すら出来んでしょうから」

「それに、秘密組織であった時期は記憶処理班などもいたとの事でしたから」

「全く、PENTADRÉで進めていた計画はほぼ水の泡ですわ。…………正直に言えば、私達は貴方達の活動を認める事は出来ません」

 

命の口から語られる、DGAへの否定。それは、DGAによる活動が、彼女達の目指す物とは異なるがためのものだ。

 

「…………それは何故でしょうか?」

「クリーチャーと人間は相容れません、根本的な力の差があるのですから当然です。こちらの世界で事件を起こすクリーチャーは、殲滅されなければならない……だというのに、DGAは捕獲・送還なども視野に入れた作戦展開を行い、更には保護観察としてこちらで生活させている者もいるという有様。一体何を考えているのかしら?」

「──────それは、最終的に目指すのがある意味での『共存』だからですかね」

「共存?」

 

テルタカが、DGAの活動理念を語る。それは、デュエルマスターに任命された際、2体の龍神に語られたDGAの目的だ。

 

「無論人に害を為すクリーチャーは退治します。ですが、彼等にも知性があり、様々な個体がいる。俺達の相棒のように人と共にある事を受け入れた者もいて、人に救われ……人を愛するようになった者もいる」

「けれどそれは、クリーチャーの中でもごく一部でしょう」

「勿論。ですがそもそも、人間やこちらの世界を知らない者だって多い。知らないが故に偶発的にこちらへ来て事件になってしまう者もいる。だから俺達が橋渡し役となり、同時に悪意ある侵略や、超獣世界で起こる争いのこちらへの波及を防ぐ者──────デュエルマスターとして間に立つんです」

 

正面から彼女を見据え、DGAの掲げる目標を語るテルタカ。その毅然とした表情に、彼女も何か感じたようで。

 

「なるほど、基本的には住み分けを前提として、その上での共存ですか……それは苦難の道ですよ?」

「承知の上です。その上で、わたくし達は既に取り掛かっています。先日は、超獣世界の1つの文明と協力体制を取り付ける事に成功しました」

「既に成果も出していましたか……そちらの理念に賛同は出来ませんが、理解は出来ましたわ」

 

命はそう言うと席を立ち、2人に一礼する。

 

「それでは、ごきげんよう。光明院さん、例の件については色よい返事を期待していますわ」

 

最後にそう言って、彼女は去っていった。

 

「例の件とは?」

「将来的に天さんの下で働く気は無いかと、誘われておりまして…………」

「あー……学生の時期から地盤固めのためのスカウトか。大変そうですね」

「少し時間が経ってしまいましたね。お茶が冷めないうちに、いただいてしまいましょう」

 

そうして2人はダージリンティーと、コースで用意されたお茶菓子を食べ終えると帰途に就く。

ホテルのロビーへ降りて来た所で──────ユウキのスマートフォンから緊急コールが鳴り響いた。

 

「はい、こちら光明院ですわ」

『大手町駅近辺に多数のクリーチャーが出現!大手門へ向けて進行しています!』

「ッ──────すぐに向かいますわ。陽野様、デュエラッドを!」

「了解!乗ってくれ!!」

 

テルタカがデュエラッドを転送し、サイドカーを出現させてユウキを乗せ発進する。現場は千代田区内、それも、重要な場所であった。

 

 

* * *

 

 

東京の地下を走る幾本もの地下鉄、そのうち4本が停車するターミナル駅……大手町駅。その近辺に、多数のクリーチャーが出現した。それらを率いるのは、三鈷杵が掌に突き刺さったような四本腕の怪物と、太刀を携えた青肌の鎧武者──────どちらも、『鬼』。デモニオのクリーチャーである。

 

『かかれい、木っ端共!我ら鬼札王国のために!』

『目指すは、あの堀を巡らせた城よ!』

 

デモニオ達が目指すのは、大手門。そしてその先にある──────皇居。

 

「行かせるな!」

「止めろぉぉぉぉ!!」

 

警察と機動隊が侵攻を阻もうとするが、クリーチャーの力の前には全く歯が立たない。

 

「DGAの応援は!?」

「半蔵門と乾門にも敵が出現!少数のようですが、そちらの対処に追われています!」

 

現在皇居には、大規模なクリーチャー除けの結界が常時展開されている。これもDGAの技術であり、皇族の周辺で事件を起こさないよう配慮されてのものだ。

そこへ積極的に向かい、結界を破ろうとするのであれば──────デモニオ達の影響は、無視できないものとなるだろう。

 

「いかん、これ以上は──────」

「警官隊!機動隊!下がってくれ!!」

 

そこへ、デュエラッドを駆るテルタカ達がどうにか駆け付けた。ようやく対抗できる戦力がやって来たが、それは年若い少年少女であり、彼らは一様に驚き戸惑う。

 

「なっ、未成年2人!?何を考えて…………!」

「お気遣いなく。わたくし達は、実働部隊でも上位の者です。皆さまはお下がりを……巻き込まれては危険ですから」

「っ、総員後退!」

 

盾を構えた機動隊員達が下がると、デモニオ達が一気に押し寄せる。対して堀と橋を背にした2人は、落ち着き払った仕草でスマートフォンを取り出した。

 

「ここから先は何があっても通さん!」

「お覚悟なさいませ」

『『Duel field expansion. Dueltector summoning.』』

 

テルタカとユウキが構え、デモニオの軍勢を閉じ込めるようデュエルフィールドが展開されるその瞬間──────一台のリムジンが滑り込んで来た。

 

「「なっ!?」」

『何だァ……?』

 

停車したリムジンのドアが開き、中から──────先程別れたばかりの少女が姿を現した。

 

「天さん!?」

「ちょっと待ってくれ、何故この中で動ける!?」

「これが貴方達が用いる、デュエルフィールドですか。なるほど、市民を守るには最適の機能ね」

 

リムジンの運転手、及び彼女に同行していたボディーガードは動けなくなっているようだが……命自身は平然と立っている。

 

『ギヒャヒャヒャァ!』

「いかん!下がってくれ!」

 

テルタカ達とデモニオの軍勢の間に立った彼女へ、宙を浮遊する日本刀のようなクリーチャー……《キリツケ入道》が瞬く間に襲い掛かる。テルタカはこのままでは拙いと駆け出さんとした。

 

──────しかし。

 

「心配には及ばないわ」

 

彼女が手を払うと、飛び掛かって来たキリツケ入道が…………一瞬にして、粉々に砕け散った。

 

『何!?』

「な…………っ」

「私は、私自身の力で…………このクリーチャー達を倒して見せましょう」

 

そう宣言した彼女の頭には──────青白く輝く二本の角が現れていた。

 

「彼女も──────ドラゴン娘!?」




PENTADRÉのリーダー、天命登場!正統派お嬢様キャラもたいへんよろしいですな。
次回、デモニオ第三次攻勢!対するはテルタカ、ユウキ。そして命!
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