「驚きました、彼女もドラゴン娘の力をお持ちになっていたとは」
「解析完了……これは、《天命讃華 ネバーラスト》!?ドラグハート・クリーチャーか!」
目の前で姿を変えた命を見て驚きを隠せない2人。そしてそれは、デモニオを率いる2体も同様のようだった。
『ぬう!?また龍の力を宿す人間か!』
『焦るなウコン、まずは奴をぶつけるまでよ。この預かった巻物を使ってな』
4本腕の鬼、《「双打」の鬼 ウコン丸》と太刀を構えた鬼、《「辻斬」の鬼 サコン丸》が大きな巻物らしきものを取り出し広げる。その中から、封印されていた大鎌を持つ龍の如き鬼の姿が浮かび上がった。
『オォオォォオォオ…………!』
「何をする気かしら?」
『死を知らざる魔壊の鬼よ、封じられしその力を現せい!《シラズ死鬼の封》!現世へ黄泉返れ、ガシャド髑髏!』
浮かび上がった像が揺らぐと、2本の刀が突き出される。そして、ひび割れた殻を中から破る様に、巨大な骸骨が現れた!
『ガシャシャシャシャ!』
「あれは……《「魂狩」の鬼 ガシャド髑髏》ですか」
「普通は援軍はフィールド内に呼べないが、死んだクリーチャーを蘇らせるという手なら使えるのか!パワーだけなら随一だが……!」
『また龍の力を宿す人間!となれば、邪魔が入る前に捻り潰してくれるガシャ!!』
巨大な刀を振り翳し、命へと振り下ろすガシャド髑髏。対する彼女は、避けるそぶりも無く手を掲げ──────その細腕で、刃を受け止めた!
『ゲェッ!?』
「その程度で、私の正義を揺るがせるなどと……思い上がりも甚だしいわ」
刀があっさりと砕ける。命の背に3対の白い翼が現れ、右手には輝く槍が出現する。それを一振りすると、ガシャド髑髏の身体がバラバラに吹き飛んだ。
ネバーラストは場にいる限り、自身及び自軍の光文明に属するクリーチャー全てがバトルに勝利するようになる力を持つ。更に、自身のシールドを犠牲に破壊を免れる力も持ち合わせる強力なドラゴンだ。
「ネバーラストの能力が強えな……って見てる場合じゃない!俺のターン、Vol-Val8をマナチャージ!」
「その通りですね。わたくしのターン、アルカディア・スパークをマナに充填します」
テルタカとユウキの2人も続く。確かに彼女は強いが、全てを任せるという訳には行かない。残る30体近い鬼の群れ、その面子を見れば猶更だ。
『ふむ…………ガシャド髑髏が打ち負けるか』
『ならばこちらだ。行けい!!』
ウコン丸の命令に従い、糸で吊られた操り人形のような鬼が命へと突っ込んでゆく。ガシャド髑髏と比べれば明らかに弱い個体であるが……。
「っ、そいつに触れるな!」
「っ!?」
テルタカの声を聞くと同時に、命の背筋にぞわりと悪寒が走り、その突進を躱す。彼女自身もその感覚で、身に迫る危険を察知したようだ。
「今のは……」
『ほう、勘は良いようだ。だが──────後ろはどうする?』
「はっ!?」
突進を回避された鬼、《アヤツリ入道》はそのまま命の背後にある──────デュエルフィールド内で動けなくなった、彼女のボディーガードと運転手が乗るリムジンへ襲い掛からんとしていた。
「させないわ……っ!」
これでは立場が逆というものだが、彼女は迷わず彼らを庇いに入った。アヤツリ入道を彼女の槍が払い──────直後、爆発を起こす。
「くぅっ!?自爆ですって……!」
「天さん!」
「スレイヤー能力……!」
アヤツリ入道は、バトルした相手を戦闘後に破壊するスレイヤーの能力を持つ。戦闘で勝てなければ、能力で破壊してしまおうという魂胆だ。
爆発で生じた煙が晴れると──────命はまだドラゴンの力を保ち立っているが、身に纏う服のあちこちが破けている。
『耐えたようだが、長くは続くまい!畳みかけよ!』
『『『オォォオオォォオォオッ!!』』』
2人が割り込む前に、即座に更に5体、鬼達が襲い掛かる。アヤツリ入道に加え、下半身が1輪ホイールのようになっている機械の鬼《ミチズレ入道》と、大柄な操り人形の鬼《カラクリ入道》が2体ずつ命へ飛び掛かった。どれも…………スレイヤー持ちだ!
「くっ!うっ!あ…………ぁあっ!?」
爆発が起こる度に、彼女の護りが剥がされて行き…………5度目の爆発によって、ついに限界が訪れる。角と翼が消え去り、リムジンのドアに叩き付けられる!
『隙ありだ!死ねい、小娘!!』
「く、っ!!」
大きなダメージを受けたために、すぐにはネバーラストの力を再度使う事が出来ない。ウコン丸の一撃が無防備な命に襲い掛からんとして…………。
「させるかっ!!」
『ぬぅうっ!?』
今度こそ、テルタカが間に合う。シールドの斥力で押し返すが、ウコン丸の膂力で1枚のシールドが砕かれた。
「天さん、そこから動くなよ、ッ!」
「貴方……っ!」
シールドの破片が飛散するが、テルタカはその身で受けて命とリムジンへの被弾を防ぐ。……流石に車体の長さによりいくらかは被害を受けるが、最低限乗員とエンジン部は守れている。
『邪魔立てするか!』
「ったり前だろうが!シールドトリガー、《ボルシャック・大河・ルピア》!パワー3000以下の相手クリーチャーを全て破壊する!消し飛べスレイヤー持ちども!」
『やってやるッピ~!!』
ウコン丸の背後に控えた、残るミチズレ入道、アヤツリ入道、カラクリ入道、ネブダシ入道が計8体吹き飛ぶ。残るはキリツケ入道が1体に、《クニトリ童子》《キズグイ変化》が2体ずつとウコン丸自身だ。
『ならばこちらからだ!』
「させませんわ……!」
車体を挟んで反対側からサコン丸が太刀を振り翳すが、そちらをユウキが2枚のシールドを犠牲に止める。そこからは、2つのシールドトリガーが一気に発動する。
「シールドトリガー、ツインパクト呪文《ゾンビ・カーニバル》が発動致します。墓地のクリーチャーを回収致しますが……現在わたくしの墓地にクリーチャーはなし。空撃ちでそのまま墓地へと送られますわ。そして……呪文《ヘブンズ・ゲート》!いざ参ります、《魔光大帝ネロ・グリフィスII世》!《悪魔聖霊ジェミニアス》!」
『すぐに退治して差し上げますわ』
『じゃじゃーん』
光のゲートから彼女の主力クリーチャー2体が現れ、サコン丸率いる鬼達の前に立ちはだかる。敵の数は、サコン丸含め15体!
「ネロ・グリフィスII世の能力により、デッキの上から5枚を開示致します。《煉獄魔弾グレイテスト・ゲート》《幻双の絆》《天雷の導士アヴァラルド公/魔弾アルカディア・エッグ》《魔光王機デ・バウラ伯/魔弾グローリー・ゲート》を手札に加え、《双子悪魔バレンタス》を墓地へ送りますわ。そして、ジェミニアスの能力で貴方方のクリーチャーを2体、そちらに選ばせて破壊します!」
『ちっ、クニトリ童子とネブダシ入道、犠牲となれ!』
サコン丸側で率いる鬼が2体、消失マジックの如く消え去った。彼女の場には強力なブロッカーが2体、それも、既に完全なる守りと化していた。
「お気を付けください天さん。こうして軍の如く動くクリーチャー達は、場合によっては相討ちを躊躇なく行いますわ。平時に出没する野生のクリーチャー達よりも、遥かに厄介となります」
「動けるようになるまで身体を休めていてくれ。と言っても、先に片付く可能性が高そうだが」
「く……分かったわ。一旦貴方達に任せます」
残るシールド4枚のテルタカと、3枚のユウキ。2人が揺るぎない守りとして鬼達の前に立ち塞がった。
「──────警告させて頂きます。これ以上の攻撃は貴方方の滅びを意味しますよ」
『下らん。如何に守りに長けていようが、道連れにしてやれ!』
サコン丸の指示の下、ミチズレ入道がユウキへと飛び掛かる。そこへ、ジェミニアスが割って入って遮った。
「ジェミニアスでブロックし、ミチズレ入道を返り討ちです。同時にスレイヤー能力で破壊されますわね」
『フン、所詮は──────』
「──────これで、わたくしの勝利ですわ。ネロ・グリフィスII世とジェミニアスの能力が発動!」
──────破滅の引き金は、鬼達自身の手によって引かれた。
「ネロ・グリフィスII世の能力により、わたくしのナイト、ジェミニアスが破壊された時手札からシールドトリガー呪文を発動……《煉獄魔弾グレイテスト・ゲート》!この呪文はナイト・マジックであるため、ネロ・グリフィスII世が場にいる事で2度発動致します。墓地から進化ではないクリーチャーを1体蘇らせる効果が2回、それによりジェミニアスと《学校男/ゾンビ・カーニバル》が復活します。そしてジェミニアスが一度場を離れた事で、墓地の呪文を2枚……グレイテスト・ゲートとヘブンズ・ゲートを手札に回収しますわ」
墓地からジェミニアスが、そして学校の校舎を取り込んだヘドロのような怪物……学校男が蘇る。そして、2体の力が発揮される。
「ジェミニアスの登場時能力で再びそちらのクリーチャーを2体選ばせて破壊します」
『ちぃっ!キリツケ入道2体だ!』
「そして、学校男の能力により、わたくしのクリーチャーを2体破壊してそちらのクリーチャーを1体選ばせて破壊しますわ。私が破壊するのは学校男自身と……ジェミニアス」
『クニトリ童子を犠牲とする!』
キリツケ入道2体が消失し、その後クニトリ童子がヘドロに飲まれ消え去る。そして──────。
「──────わたくしのナイト、ジェミニアスが破壊された事により再びネロ・グリフィスII世とジェミニアスの能力が発動しますわ」
『何!?ま、まさか貴様!?』
「お気付きになりましたね?再びネロ・グリフィスII世が魔弾を放ち、ジェミニアスと学校男が蘇り、ジェミニアスが魔弾を回収し、そして学校男と共に再び破壊されながら貴方方を3体破壊します──────そちらが、全滅するまで永遠に」
これが彼女の【ネロ天門】デッキの強烈なコンボ、ネロループである。学校男とジェミニアスの2体を蘇生し破壊し続ける事で、破壊耐性を持たないクリーチャーであれば何体いようとも殲滅する事が出来る……無限ループだ!
『これで終わりですわ!』
「鬼の魂に誅罰を──────ごきげんよう」
『ぬ、おぉおおぉおおおお!!』
蘇生と破壊のループが4度繰り返され──────サコン丸側の鬼達は全て消滅した。
「あっちはえげつねえな……さあ来い!」
『行けいクニトリ童子よ!』
『カァァアッ!!』
クニトリ童子の剣がテルタカのシールドを2枚砕く。破片が再び降り注ぐが、テルタカは傷付きながらも怯む事は無い。
「《ボルシャック・ロマネスク》のG・ストライク!キリツケ入道はこのターン攻撃不可!」
『グギィ!?ウゴケン!?』
「更にシールドトリガー……現れろ、《ボルシャック・セブンス》!登場時能力によりもう1体のクニトリ童子と、キズグイ変化の1体をタップさせて行動不能に!」
『ぬうう……!残るキズグイ変化よ、行け!』
「セブンスはブロッカーだ、パワーでもキズグイ変化に勝る!ブロックして返り討ちだ!」
四足獣型の鬼、キズグイ変化を新たなボルシャックの龍……ボルシャック・セブンスが打ち払う。先日発売された『ボルシャックの書』にて新たに登場したボルシャック達が、テルタカのデッキを支える新たな力となる!
「さあ、こちらの番だ。《ボルシャックライシス・NEX》をマナへ送り、メンデルスゾーン発動!山札から、《ボルシャック・ボルバルザーク》と《地封龍 ギャイア》がマナへ送られる……行くぞ!ボルシャック・セブンスでクニトリ童子に攻撃!コスト7以上の多色ボルシャックによる攻撃時……革命チェンジ!」
ボルシャック・セブンスは以前投入していたホーリーグレイスよりも、タップ出来るクリーチャー数では劣っているが──────素でブロッカーである事、そしてコスト7、火と光の多色ボルシャックである事が最大の利点となる。彼の切り札を喚ぶ力となる事が出来るのだ。
「爆臨せよ!《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》!」
『行くぞ、テルタカッ!』
「バクテラスの登場時能力により、山札から4枚を見てアーマード軍団を呼び出す!現れろ、《ボルシャック・ネオウルフェウス》!《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》!《ボルシャック・ロマネスク》!」
太陽の龍、バクテラスがボルシャック軍団を率いて降臨する。そこには、新たなるボルシャックの姿もあった。
「ボルシャック・ネオウルフェウスの超魂レイド!山札の上から3枚を見て、その中からクリーチャーを1枚ネオウルフェウスの下に!ネオボルシャックを選び、残りは山札の下へ!そしてロマネスクの登場時能力で、山札から4枚をマナへ送り……2枚目のバクテラスを手札に回収!」
『砕けろ、デモニオよ!』
『ガァァアアァッ!?』
バクテラスの拳がクニトリ童子を打ち砕く。そして、テルタカもこのまま勝負を決めに行く!
『お、おのれ……!』
「ネオウルフェウスでウコン丸に攻撃!この際、ネオウルフェウスのメテオバーン発動!下にあるカードを墓地へ送る事で、手札から光または火の呪文をタダで使える!使用するのは……ツインパクト呪文《インビンシブル・サンバースト》!」
革命チェンジで手札に戻ったボルシャック・セブンス……その下面、ツインパクト呪文の力が発揮される。それは、彼が今出せる最大の火力呪文だ。
「名前にボルシャックとあるクリーチャーを1体、マナゾーンから出して次の俺のターン始めまでブロッカーを付与!更に、これで選択したクリーチャーよりパワーが低いクリーチャーを全て破壊する!」
『!!』
「俺が出すのは……《ボルシャックライシス・NEX》!パワー25000!よってパワー24999以下のクリーチャーを全て──────爆砕する!」
『オォオオオォォォオッ!!』
二振りの剣を手にした、金色の角を持つボルシャック……ボルシャックライシス・NEXが現れる。そして、その剣を灼熱の炎が覆った。
『おのれェェェェェェェ!!』
「これで、焼滅完了だっ!!」
『滅びよ!』
剣が振るわれ、放たれた炎が──────残るデモニオ達を、完全に焼き尽くした。
* * *
「これで良し。天さん、怪我は無いか?」
「ええ、お陰で…………これが貴方達DGAの戦い方なのね」
「こうして見せる事になるとは、思っておりませんでした」
2人によって命も彼女のリムジンもどうにか無事に済んだ。まだフィールドを解かないまま、彼らは互いに関する情報や認識を改める。
「まさか、天さんがドラゴン娘でしたとは……どこでその力を?」
「私達PENTADRÉは、各校に伝わる由緒あるアイテムに選ばれ、この力を得たのよ。そして、この世界にやって来たクリーチャー達と戦って来た……」
「私達って事は、他にもいるのか……他校だったから接触が無くて、護守さんからの報告が無かったわけだな」
他のドラゴン娘達はともかく、サキトの人脈では他校の人間であるPENTADRÉと接触する機会をこれまで逸し続けていた。これから機会があるかは未知数と言えよう。
「ともかく……助かりました。今後はあのような戦法を取る相手にも対策が必要ね……」
「ある程度認めてはいただけたかな」
「不本意ですが……貴方達のように、クリーチャーと共に戦うという手段も、このような時は有効であると認めるしかないわね。今回の礼は必ず10倍にしてお返ししましょう」
「いえ、そこまで気にせずとも──────」
命が手を伸ばし、テルタカの手を取った。彼等の力を認めた証として握手を交わそうとしたのだろう。
その時、ぶつり、という音が聞こえた。
「は?」
「──────あっ」
鬼達の自爆特攻により、ズタボロになっていた命の服の──────前面が、完全に千切れた。
「────────────ッ!?」
慌てて目を逸らすテルタカ、瞬間顔を真っ赤に染め大事な個所を隠す命。最後の最後に、とんだハプニングが待ち受けていた。
「見──────っ!見たの!?」
「す…………っすみません命ばかりは!!」
「~~~~~~~~~~~~~~!!」
下手に嘘を吐くと後が怖い、テルタカは即座に白状し謝罪するしか無かった。
「その、どうして服がここまで……ああ、なるほど。ネバーラストの持つエスケープ能力、そのコストとして──────破壊を免れる度、天さんの服が破損して行くようになっているようです」
「なんだそのヘンテコな仕様!?」
「こ、こんな、私の肌を…………!」
「と、とりあえずデュエルフィールドの修復機能で直せるか試して見ますね」
幸いにして、デュエルフィールドの機能が働くと、彼女の着ていた服は修復されていった。直らなければこの格好のままリムジンで家に帰る羽目になっただろう。
リムジンの修復も完了し、デュエルフィールドは完全に解かれた。
「ひ──────陽野テルタカさん!色々と覚えていなさい!」
「ひぃっ!」
そう言い残すと、彼女が乗り込んだリムジンはすぐに発進し、すぐに見えなくなっていったのだった。
「その…………大変な事に、なりそうですわね」
「と、父さんに累が及ばなければ良いんだけど……AMANOコンツェルンに何かされるとか勘弁願いたい…………!」
かくして、陽野テルタカに新たな受難が襲い掛かったのであった。
天命さんとの最初の接触はこれにて締め。スレイヤー持ちが単独で出て来た場合などは普通に対処していたでしょうが、軍団として戦術的に能力を使ってくる者達との交戦経験は初めてである、としています。
エスケープ能力はどう表現しようか思案したところ、このような形に。命さんはなんというか、高貴なお嬢様であるが故にヒロピンくっころみたいな絵面が似合う印象があります。正直すまんかった。