チェンジ元にもなれるニバイケンの手札捨て能力を併用することでドギラゴン悪がある程度狙った多色クリーチャーをリアニメイトできるのが好相性だとは思っていましたが、早くも結果を出すとは。やはり団長の系譜は強かった。
クリーチャーに飲み込まれたテルタカと命。
2人の命運は。そして、縁談の行方は?
『次は、お前達かぁ…………?』
「なんなの、このクリーチャー……!」
「こいつは、《
胸に龍頭のような口を持つ、金色の鎧を纏った異形のクリーチャー、《偽りの悪魔神王 デス・マリッジ》。パワーもさることながら、相手の呪文を常に封じる強力な能力を持ち合わせている。
対するサキトは王道の革命の力を纏い、敵と同等のパワーに自らを上昇させた。
「2人を助けないと!」
『当然です!なのでこいつの中から引っ張り出さなきゃなんですが……パワーがデカい上こっちの呪文を封じて来るとなると、最悪遅滞戦術が必要になりそうですね』
「除去は出来ないの?」
『食われて取り込まれたとなると、下手に破壊やマナ送りをかますのは危険なところです。パワーで上回るクリーチャーを使える援軍が来るか、自力で2人が脱出するのを待つ事になるかと…………っちぃ!』
腕を変貌させた会社員風の男が、しゅうらへ向けて殴りかかって来るのをサキトがガードする。
『妬ましい……俺は見合いも結婚も悉く失敗したってのに、この店で縁談して結婚する奴らも、幸せそうな奴らも恨めしい……!』
『くっだらねえ理由でクリーチャー憑きになりやがってるなこの野郎!そんな他人を妬んでばかりの性根だから結婚出来ないんじゃねえのか!!』
『何だとガキがぁっ!!』
『ちなみに俺は結婚を前提にお付き合いしてる彼女がいるぞーっ!』
『ぶっ殺す!!』
サキトが挑発すると、頭に血が上った男はデス・マリッジ共々サキトへ勢いよく襲い掛かる。
『っし食いついた!庵野さんは隙が出来るまで待っていてくれ!』
「分かったわ!…………ここに楽器は無いけれど……!」
しゅうらはサキトとデス・マリッジの戦いを見守りながら、歌を口ずさみ始めた…………。
* * *
「っ、ここは…………?」
「奴の腹の中、といったとこですかね」
デス・マリッジに呑まれたテルタカと命は、暗闇の中に浮かんでいた。憑依元の嫉妬と怨嗟の念が闇のマナとなって空間に渦巻き、常人では徐々に命を削られていただろう。テルタカはデュエルテクターによって、命は自然にドラゴン娘の力が発現する事でその身を守っている。
「ここから出るには…………出口を探すしかないようね」
「とはいえ上下左右の感覚も曖昧ですね。どうすりゃ出口を見つけ出せるやら」
2人は今、重力の感覚も無い宇宙空間に浮かんでいる状態に近い。目印になるものもない状態では、闇雲に動くのは危険だ。
「デュエルテクターの守りは何時まで保つか…………っ、いてて」
「まったく、私を庇わなければ貴方は飲み込まれずに済んだでしょうに。しかもそんな身体で……まだドラゴン娘の力を使える私なら、この空間でも問題無く耐えれるはずよ」
「そういうわけにも行かんでしょう。人々を守るのが俺達の役目ですから、助けようとするのは当然です。まあ今回はちとしくじりましたが、貴女だけで何か不測の事態に陥らないとも限らないでしょうし」
店の崩壊で負った負傷に苛まれながらも、それが当然と語るテルタカ。その様を見て、命は頬を染めながらため息を吐いた。
「はぁ……困った人ね。そういうところに惹かれてしまった私もどうかと思うけれど」
「そんな事言われても俺には本当に覚えが無いんですが?」
「そういう風に自然に、仕事でも無いのに何の欲も下心も無く私を守ろうとした人は貴方くらいだもの」
「…………買い被り過ぎでしょう。俺以外の実働部隊員であっても、きっと同じようにするはずで──────」
「その考え方は少し間違っているわね」
自身のやった事は別に特別な事ではない、と言うテルタカに対し、命は不満げな顔で彼に指を突き付けた。
「自分の行いを他の人でも出来る事、という人は多いけれど、その言葉には一つ重要な視点が抜けているわ」
「というと?」
「その時そこにいて、行動に移したのは貴方であるという事。その力で人を守る事の出来る場に居合わせる、天命のようなものを引き寄せる事もまた、その人の力であると言って良いはずよ」
「…………なるほど」
誰かを守れる力があっても、危機に陥った人を守れる場に居合わせなければ宝の持ち腐れ。駆け付けるのが間に合わなくてはどうしようもない。そういった要素を技術と組織力である程度は埋められるとしても、最終的に全てを決めるのは「運命の力」と言えるのかもしれない。
「だから、貴方の成したことは私にとって特別で、嬉しい事だったという事はどうか理解して欲しいの」
「まあ……言いたい事は理解出来ました」
「ふぅ、良かったわ」
その力を抜いた笑顔に、テルタカは初めて彼女の年相応の顔を見た気がした。
「さて、話の続きはここから出てからにしましょうか」
「とはいえ出口はどこにあるのか…………ん?」
「どうしたのかしら?」
「声が…………いや、歌が聞こえて来て」
テルタカが意識を集中させると、微かに歌声のような物が聞こえて来た。これは…………。
「これは……やっぱりしゅうらさんの」
「ということは、外から聞こえて来ていると思って構わないのね?」
「ええ、大まかな方向も分かります!」
「それなら、一直線にそちらへ突き進むというのも良いかもしれないわ」
命がその手にネバーラストの槍を出現させる。そして、テルタカの手を取りその身を寄せた。
「ちょっ、天さん?」
「貴方と、貴方の相棒の力も必要よ。この槍で貫き通し、突破するために…………貴方達の翼を借りたいの」
「──────分かりました。バクテラス、行けるか」
『無論だ、我らの力を見せてくれよう』
「よし、行くぞ!」
『Contract armor awakening.』
テルタカがボルシャック・バクテラスの力を身に纏う。大きな腕が命を抱え、炎の翼が大きく広げられる。
「……不思議ね。全身が燃え盛っているような姿でありながら……大きく、温かい手」
「準備は良いですか?行きますよ。目指すは…………一点!」
テルタカが、バクテラスが闇を斬り裂いて飛ぶ。彼の耳に届く歌は徐々に大きさを増してゆく。そして──────。
* * *
『この……っ!口を開けろぉ……!』
『グギギギギギ……!』
サキトがデス・マリッジに組み付き、両手両足を使って胸部の口を無理矢理こじ開けようとしていた。2人が出て来るための出口を作るか、最悪手を突っ込んで引きずり出せないか試すつもりだ。
憑かれた人間の方は背中のアームと剣で叩き伏せ押さえつけているが、サキトのみでは引っ張り出す前にデス・マリッジに引き剥がされかねない。
『どうしたものか……っ!?うお!?』
『ギャァァアア!?』
急にデス・マリッジが悶え苦しみ暴れ出す。振り回されたサキトは引き剥がされてしまうが、敵は追撃どころではない様子だった。
『何だ急に……っ!?』
そして突然、デス・マリッジの頭頂部から…………刃が突き出した。そこから罅が広がり、内側から大きな龍の腕が現れ──────。
「「『はぁぁああっ!!』」」
体内から敵を引き裂くように、テルタカと命が姿を現す。自らの手で脱出に成功したのだ。
「テルタカさん!」
「ご心配かけました!こいつは俺達が仕留めます!」
「行くわよ、覚悟なさい!」
命が槍から光の刃を放ち、テルタカが凝縮させた火炎を撃ち出す。既に内側からダメージを受けたデス・マリッジには、パワーで上回るバクテラスと、自身含め光のクリーチャーを無敵化するネバーラストの同時攻撃の前には…………。
『嘘だぁぁぁああああ!!』
呆気無く吹き飛ばされるのであった。
* * *
「とりあえず俺はこいつをしょっぴいて行くので、後はまあ……当事者同士で解決しといてください」
「ちょっ、待ってくれ……!」
サキトは気絶したクリーチャー憑きだった男を縛り上げた後、担いでその場を立ち去る。残されたのはテルタカと命としゅうらの3人。色々と気まずい状況である。
「初めまして、天命よ。貴女が、庵野しゅうらさんね?」
「ええ…………あなたが、テルタカさんのお見合い相手……」
「そうよ。──────陽野テルタカさんを、お慕いしているわ」
「うっ……」
テルタカは胃が痛くなりそうだった。命もかなりの美少女、そんな彼女に想いを寄せられる事自体は男として悪い気はしないが、しゅうらを裏切るという選択肢は無い。かと言って、彼女が納得できないままこの縁談を蹴ったら厄介な事になる気がしてならない。
「けれど、貴女とテルタカさんを別れさせるというのは、本意ではないわ。そんな事をしても、彼の心は私に向きはしないでしょうし、むしろ恨まれるのは目に見えているわ」
「そ、そうなのね。それなら…………」
「けれど、私にとっても初めて好きになった男性。そう易々と諦める事は出来ないわ。だから…………」
命がしゅうらの手を取る。一体何をする気か、宣戦布告でもするつもりかと身構えていたら──────。
「私と貴女の2人で彼を愛するというのはどうかしら!?」
「はいぃ!?」
「何でそうなるんですか!?」
飛び出たのは斜め上の答えだった。このお嬢様の爆弾発言には、成り行きを見守るしかないと思っていたテルタカも流石に突っ込む。
「私だって無茶を言っているというのは分かっているわ。けれど、私は彼を諦めたくない以上…………思い付いた解決法がこうなのよ」
「い、いやそれは流石に…………法律的にも問題があるでしょ?」
「いざとなれば、法を変えてみせるわ……!」
「冗談に聞こえないのが怖いんですが!?」
AMANOコンツェルンの影響力というものがどれほどか分からないが…………冗談抜きに国を動かせそうな規模なのが彼女の実家たる大財閥なのである。下手をすれば本気で実現して来るだろう。
「今日はここまでにしておきます。けれど、またいずれ貴方達2人に納得して貰うべく、話を纏めて来るわ。だから──────覚えておいて?」
「ひ、ひぇ…………」
そう言って、命は去っていった。後に残されたテルタカとしゅうらはしばし呆然とし…………。
「……す、凄いお嬢様ね……」
「えらい人に目を付けられてしまった……正直逃げられる気がしないですが、どうしたものか……」
「テルタカさんは、彼女の事はどう思っているの?」
「悪い人ではないのは分かりますし、好かれて悪い気はしないですが……」
先程脱出する時に手を取られ、身を寄せられた時は少しばかりどきりとした。しかし、しゅうらと付き合っている以上そういう事は……。
「……真剣に3人で付き合うことを考えていそうな顔だったわね、彼女……」
「……しゅうらさんとしては彼女の事、どう考えますか」
「それは……ちょっと色々考えたいかなと……今後も会いに来そうよね……」
2人の脳裏には、今後更なる混迷の道が続く予感が過っていたのであった。
そんな訳で対クリーチャー戦決着と、命の抱く想いの話でありました。
両手に花ルートしか進ませない勢いの命に対し2人はどう出るのか。2部ラストまでに描くのは作中スケジュール的に難しそうですがいずれ書こうと思います。
次回投稿は私用により少し遅れそうです。ご了承ください。