ハムカツ団の紋章が付いていたり勝太のビクトリーモードのようなVの字の光が頭から出ているのも含め、どのような立ち位置なのか今から気になるところです。
今回は修学旅行1日目の夜から2日目にかけて。
クリーチャー同士の抗争、その行方は果たして。
「さっきは大変でしたね……」
「でもアーシュちゃんのおかげで助かったよ」
修学旅行、1日目の夜。あの後無事逃げる事が出来た2人は、メガ達と合流してどうにか平穏に京都見学を行う事が出来た。
明日の2日目も回る予定の所は多く、引き続き水晶、トウリ、初は生徒会と共に行動する事になりそうだった。
風呂上がりの身体を冷ましながら、2人はクリーチャー達との出来事を思い返す。
「やっぱりアーシュちゃんは凄いね……クリーチャーにも怯まず立ち向かって……」
「隙が出来たのは水晶ちゃんのお陰です」
「ううん……わたしは何もできなかった……わたし1人じゃ何もできないし……」
「水晶ちゃん……」
水晶は思い悩んでいた。クリーチャーと戦う勇気も無く、腕力に自信も無い。姉のしゅうらやJack-Potの仲間が危険に晒された時も、サキトやテルタカに護られてばかりで自分は役に立てているとは思えない。一体どうすればいいのだろうか……と。
「あ、会長に庵野さん。上がられましたか」
「あ、蟠龍くん!……どうしたんですか、それスポーツチャンバラの剣ですよね?」
「実は先生に言われて不埒者の成敗を……修学旅行で浮かれて覗きに行こうとする連中がいまして」
「そ、そうだったんですか?」
「恋葉さんだったかな?彼女も手伝ってくださりました。会長をお守りするとかなんとか言って……」
アーシュ様親衛隊(アーシュ非公認)なる組織の護衛担当を名乗る別クラスの少女、恋葉ココア。変わった子ではあるが水鉄砲を使った射撃の腕は確かであり、そして彼女もまた……桜龍高校のドラゴン娘の1人であった。
「それ、私がお風呂に入ってたのを知ってたって事ですよね……」
「……護衛と名乗ってるだけのストーカーなんですか?」
「大変だねアーシュちゃん……」
「あ、あと『俺達は会長を見守るだけだ!』とか抜かしてた男子連中も纏めて伸しておきました」
「ありがとうございます……!」
まず親衛隊そのものに綱紀粛正が必要なのではないだろうか?
「それはともかくとして、何か浮かない顔ですが悩み事ですか?」
「ええと、そのですね……」
アーシュはトウリに事情を説明して行く。合流直後にクリーチャーと遭遇した事自体は話していたが、具体的に何があったか、そして水晶の思い悩む事を改めて伝える事となった。
「なるほど……サムライは基本善玉側の種族なので、誤解が解ければそちらから襲われる事はないと思います。ダークロードの方は少し危険そうですね」
「クリーチャーにも色々あるんですね……」
「それと、庵野さんは……そんな風に思い悩まずとも大丈夫だと思いますよ」
「でも……」
「自分達DGAの構成員も、別に全てがクリーチャーと戦う訳ではありません。現場に一般人が近付かないよう封鎖する方もいれば、巻き込まれた方のフォローやケアを行う方もいますし、現場に行かない研究職の方だっています。皆それぞれ、得意分野を活かして人々のために働いているんですよ」
一般からも直接クリーチャーと戦う実働部隊ばかりが注目されがちだが、彼らのみではDGAの使命は成り立たない。バックアップスタッフや研究班の助けがあってこそ、彼らは己の力を揮えるのだ。
「それにデュエマにも、戦う力が無くても勝利に寄与する能力を持つカードがあります。何も直接戦うだけが役立つ事という訳ではありませんよ。一人一人出来る事は違う、そんなことは当たり前なんですから」
「……はい、ありがとうございます」
何というか、彼女にはあまり響いていないとトウリには感じられた。となるとここから先は彼女自身が自信を持つなり、親しい友人であるアーシュに諭されるなり、自身の殻を破る切っ掛けが必要なのだろう。
「さて、それじゃあ今度は自分が風呂に行ってきますね」
「のぼせないよう気を付けてくださいね」
トウリはそのまま風呂へと向かう。入浴の時間が終わるまでもう少し、ゆっくりとは入っていられなさそうだ。
『うぅむ……彼女を放っておいても大丈夫でござろうか、トウリ氏?』
「まあ、最終的に必要なのは彼女が自分でやれることを見出す事だから……自分からこれ以上アドバイスは出来ないよ」
『問題はクリーチャーの方でござるな。また襲ってくるやも』
「そちらは本当にどうしたものか……」
* * *
翌日、2025年11月19日。修学旅行2日目。
この日も各班に分かれた生徒達が、京都に伝わる様々な日本の伝統文化を学んでいく。
「ここで作った刀って持って帰れるのかな?」
「いやぁ、銃刀法的にどうだろ……」
刀鍛冶の体験として模造刀製作の体験教室に赴いた班もあり、しのぶ、∞、ジュラ子といったアオハル組の面々も参加していた。
「Wow!これがJapanのSoul Weapon……刀ですわね!」
「∞ちゃん見て!うちが作った刀!」
「私も作った」
「それどげんして作ったと!?」
何故か完璧な造形の《叡智と追撃の宝剣》を作っている∞。鍛造ではなく型に金属を流し込む鋳造で作ったのであろうか?
「旅行中でも絵を描くのか」
「京都の建造物はアートの宝庫でし!絶対見逃せないでし!」
ドーラとマロンは一時別行動し、京都の甘味を楽しんでいたが……マロンに関しては、それよりも街の風景を見ながら絵を描くことが優先というところであった。
「…………」
「…………」
とある寺では、訪れた生徒達が座禅体験をしていた。その中にはギャイとトウリの姿もある。
「喝ッッ!!」
「あだぁぁぁあっ!?」
雑念が生じたのか、身体が揺らいだギャイが思い切り叩かれ悲鳴を上げる。他の生徒も次々と叩かれる中、トウリは目を瞑ったまま微動だにしない。
「全く動じてませんね……」
「実家が道場だからか、瞑想にも慣れておるのか……?」
「ギャイ大丈夫~?」
「ま、まあな……叩き方が上手いんか、痛みが全然長引かへんかったわ」
「タツジンのゴクイデスね!」
「叩き方の達人とかいるのか?」
結局、最後まで叩かれずに終えたのはトウリのみであった。
「朕ノ舞妓姿、ドウドスカ?」
「とっても素敵です!」
昨日アーシュ達が着物をレンタルしたのとは異なる、舞妓衣装の着付けを体験できる専門店にて。ゼオスが煌びやかな着物を纏い簪で髪を纏めて、普段とは全く異なる雰囲気を見せていた。
「本当に、凄く綺麗ですよゼオスさん」
「おおきにデスドス~♪」
「語尾がまざってめちゃくちゃになってるぞ……」
「それじゃあトウリ君!」
「はい?」
何故か自らの帯の端を持たせるゼオス。これは……。
「せっかく舞妓姿ニなったのだモノ、『ヨイデハナイカ』をやりマショウ!トッテモ楽しそうネ!」
「あれがどういう場面か分かって言ってます?」
「あー、時代劇の定番だっけ?」
「変わった日本語といい、どこで学んだのかな……?」
そもそもあの悪代官の定番は、町娘相手にやるものであって舞妓とは無関係であるのだが。まあ、ゼオスとしてはくるくると回るのが楽しいという考えだけかもしれない。
* * *
「次はお土産買いに行かないとね~!」
「あーしはあぶらとり紙とか欲しいかな。メイク崩さずに使えるのがよさげ」
「いいですね!」
「あ、自分ちょっとそこで飲み物買って来ます」
「行ってラッシャイネ!」
ある程度回り終えたところで、一行はお土産屋を見て回ろうとしていた。トウリは自販機を見つけ、ペットボトルの飲料を調達しに駆けてゆく。
(昨日は1人でどうなるかと思ったけど、アーシュちゃんのおかげで生徒会の皆と合流できて今日はすっごく楽しいな!)
水晶は、こうして友達と共に観光できる事を心から楽しんでいた。もしもアーシュ達と知り合い友達になっていなければ、修学旅行中ずっと1人という寂しい思いをしていたかもしれなかった。
そんな楽しい事の最中……つい、皆と同じく気が緩んでしまったのだろう。
「それじゃあ次は……むぐっ!?むぐぐ~!?」
「水晶ちゃん!?」
「なんだキサマ!?」
水晶が後ろから口を塞がれ、強引に引き寄せられる。見ればそこにいたのは……昨日アーシュと水晶が遭遇したダークロード、《暗黒皇女メガリア》!
『この娘はいただいていく』
「昨日のクリーチャー!?」
「うわ、見るからに悪そう……」
「水晶はんをどうするつもりや!」
水晶を人質に取ったメガリアは、彼女達を見据えながら不敵に嗤う。
『この娘の声を使い、目障りなサムライどもを滅ぼしてくれる!』
「そんな強引に……させません!」
『ならば追ってくるが……っ!?』
周囲が赤く染まり、デュエルフィールドが展開される。同時にメガリアの背後から木刀が振るわれるが……寸前で気付かれ、回避される!
「トウリ君!」
「彼女を放せ、クリーチャー!」
『ふっ、小賢しい……!』
メガリアは左手に魔法陣を展開すると……魔術によってフィールドの壁をこじ開ける!
「何!?」
『サムライ共の協力者と同じ力か、こんなものは見慣れているわ。さあ、追ってくるがいい!』
そうして、凄まじい速度でメガリアは離れて行く。向かう先は、西の方角であった。
「水晶はん!」
「あっちは……嵐山か!」
「不覚です、逃げ場を封じてからかかったつもりでしたが、まさかデュエルフィールドを抜ける手段を持っているとは……!」
「流石にあれは予想できないって」
「とにかく、追いかけよう!」
方角は明確、更にトウリがデュエマフォンによってメガリアの反応を追う事が出来る。取り逃がしはしない!
「(しかし、サムライ共の協力者……この土地の実働部隊員と戦っているのか?)」
この京都にも、DGAの実働部隊員がいるのは間違いない。その中の1人が、抗争を起こしているクリーチャー達と何らかの関りがあるのだろうか?
* * *
『ゆけー!ダークロードたちを殲滅するのだー!』
京都西方、嵐山。ここに集ったサムライ達は、この場でダークロード達と決戦を行うつもりであった。しかし…………。
『……ん!?』
「やああああ!」
そこに、アーシュ達生徒会メンバーを乗せた台車を引いて、ゼオスが突撃して来た。隣にはデュエラッドに跨るトウリもいる!
『うわあああ!?なんだお前たちは!?』
『ダークロードの援軍か!?』
「桜龍高校生徒会だ!」
「大切な友達を……水晶ちゃんを助けにきました!」
既に生徒会メンバーは全員ドラゴン娘の姿になっている。いざという時に備え、臨戦態勢だ。
『曲者め!皆の者……』
『ま、待て!昨日の娘がいるという事は手を出しては……!』
『構わぬ!我らの戦の邪魔立てをする以上は、敵とみなすのだ!』
静止する者もいたが、血気盛んなサムライ達は彼女達に刀を向ける。戦いは避けられそうにない。
「凄い数のクリーチャーだ!」
「ミンナで一斉にケンカしてマス!」
「なんの、わらわが相手だ!」
「アーシュはん!ここはうちらに任せて水晶はんを!」
「自分達であれば足止めも容易、行ってください!」
「皆さん……!お願いします!」
アーシュが山道を駆けのぼって行く。それを見送りながら、トウリがデュエルフィールドを展開する。これでこの場にサムライ達は押し止められるだろう。
「行くぞ!」
「承知!」
「「「「やああああ!」」」」
『おおっと、ちょっと待ったぁ!』
サムライ達とトウリ達が激突する寸前、上から降って来た炎の塊が間に割って入った。
「なっ!?」
「何者や!」
『お、お主は火の棟梁の使い!』
炎の勢いが弱まると、その中に立つ何者かが見えて来た。それは赤く燃えるような肌に白い髪をした女性の姿をしており、鎧を纏い太刀を携えた……クリーチャーだ!
「あれは……金トレ版の、《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》!?」
『全く、うちの主殿が言ってただろう。無関係な観光客に手を出すなって』
『しかしですな……!』
『しかしも案山子も無いよ!全く、宇迦之御魂神様の真ん前で戦をし出さなかった事は褒めてやるけどねえ……』
その女性、ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」に制されサムライ達は刀を収める。彼女は振り向くと、一行に対して頭を下げて来た。
『すまなかったね、こいつら水文明のくせに血気盛んでこうなりやすいんだ。主殿の御同輩もいるってのに全く』
「て、敵ではないのか?」
『そちらには手を出さないよ。お友達を助けに来たんだろう?早く行っておやり』
「ありがとうございマスね!」
「こっちは良いですけど、ダークロードの方は……?」
『ああ、そっちは──────もう済んでる頃さ』
『お、おのれ……』
『サムライの、首領め…………』
地に伏したダークロード達、《妖舞皇女ユリア》《死蝶将軍レイラ》《猛菌恐皇ビューティシャン》が黒い闇のマナとなり消えてゆく。
その様を見据える1人の男。その背後には二刀流の人型剣士、鎧と副腕で複数の太刀を構える龍、そして青い鎧と翼を持つ武者の龍が従っていた。
* * *
山頂に近い森の中、水晶を攫ったメガリアは怯える彼女を見据えていた。
「どうしてわたしなんかを……」
『貴様、歌が得意だそうだな』
「なんでそれを……!?」
『まるで呪文のようなその歌声……聴く者の力を増減できる能力と見た。私たちダークロード軍のために役立ててもらうわ!』
メガリアの狙いは、水晶が持つ歌声の力の利用。それを使ってサムライ達を駆逐し、ダークロード達でこの地を支配するつもりだ。
「ひいっ……!」
『さあ歌うのだ!闇に捧げる勝利の歌を!』
(助けてお姉ちゃん……皆……!)
怯えすくむ水晶は、思うようにドラゴンの力も使えない。このままでは……。
「そこまでです!水晶ちゃんを返してください!」
「アーシュちゃん!」
『貴様……!』
そこに、彼女の友が、アーシュが駆け付ける。既にドラゴンの力を全開にし、戦う準備は万全だ。
「歌は心に秘めたものを歌うもの……水晶ちゃんの歌声は、水晶ちゃんの気持ちだから良いんです!」
『戯言を……!』
「無理矢理歌わせたって、あなたの力は増したりしません」
『ならばその気にさせるまで!』
「させません!」
メガリアとアーシュがぶつかり合う。力を発揮していても、元となったドラゴンと比べればアーシュの力は多少劣るもの。仮にも闇の君主たるメガリアには苦戦を強いられる。
「アーシュちゃん……!」
(押されてる……このままじゃわたしのせいで……!どうしてわたしはこんなに弱いんだろう……いつも自信がなくて……いつも誰かに守られてばかりで……いつも一人で怯えて……)
自分の弱さに歯噛みする水晶。そんな彼女の脳裏に、これまでの思い出が過ぎる。
(……違う!わたしはもう一人じゃない!)
アーシュに出会い、彼女の言葉に背中を押され勇気を出してJack-Potに参加したあの日。そこから、彼女は変わっていった。
(大切な仲間や友達がいる!わたしがJack-Potのボーカル……大切な人たちのために、歌で想いを届けるんだ!)
そして、トウリが言っていたように……彼女だけに出来る事を!
『これで終わりよ!』
「くっ……!」
追い詰められつつあるアーシュ。トドメを刺さんとしたメガリアが腕を振り上げたその時……その動きが止まった。
『ぐはあ!?貴様……!』
「水晶ちゃん!?」
水晶の頭に白い角が生え、背には蝶の翅の形状をした、ステンドグラスのような翼が広がっていた。《水晶の王 ゴスペル》の力が顕わになっている!
「わたしも一緒に戦う!もう守られるだけじゃないよ!」
彼女が放つ光がメガリアを抑え込み、同時にアーシュの身体を包む。その力が、彼女が負った傷を癒していく。
「受けた傷が回復していく……!それに力が溢れてきます!」
『なに!?』
「いこう、アーシュちゃん!」
「はい!」
2人が翳す手に、聖なる力が収束していく。それは2人の力と混ざり合い、
『おのれえええ!』
「
『ガハッ……!』
そして放たれた光の力は──────メガリアを完全に消し去ったのだった。
「アーシュちゃん!」
「水晶はんも!助け出せたんやな」
メガリアとの戦いに決着が付いたところに、ゼオスを先頭に生徒会の皆も登って来た。トウリは最後尾に付き警戒を払っていたが、デュエマフォンからクリーチャーの反応が完全に消えたため一先ず安堵していた。
「皆さんも無事ですか?」
「途中で色々あって、みんなどっかにいっちゃった」
「割って入って来た者に仲裁されてな……何者だったのだ?」
「誰かの使いらしかったですからね。あの言い方的に、京都の実働部隊の一員じゃないかと」
サムライ達との諍いも避けられ、これで一応の一件落着であろう。
「皆……助けに来てくれてありがとう!」
「友達を助けんのは当たり前や!」
「友達……えへへ……!私もみんなのこと、助けられるようになるね!」
かくして、水晶は自分に自信を持つ事が出来るようになった。これからの彼女は、力不足を嘆く事は無いだろう。
「みんなー、大丈夫ー……?」
「あ、ういちゃそ!追っかけてきたの!?」
「麓で待ってても良かったんですよ……?」
「あーしも、一応友達だし。いてもたっても居られなくて」
「うん……!原戸さんも、ありがとう!」
これにて2日目のイベントは完了!
ダークロード達との決着は付きましたが、彼らの前に姿を現していない何者かがいる様子。その正体やいかに。