ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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京都での戦いは終わった。しかし、本当の戦いはこれから始まる……。


Ep.62:蟠龍トウリと京との別れ

「さて、お嬢ちゃんはちゃんと大丈夫かいな?」

「うん、あーしはもうだいじょぶ。助けてくれてありがと」

 

一先ず、初を狙う脅威は去った。改めて、トウリと初はセイジへと向き直る。

 

「それで、DGAの隊員だったのは分かりましたけど……陰陽寮ってどういう事なんですか」

「まあ、当然聞いて来るわな。今の陰陽寮、その中でも対妖課は裏の京都におる妖怪の中で荒くれもんや、人間に積極的に危害を加えようとする奴を退治する役割を担っとって……」

「いや、まず妖怪がいることがまだ飲み込めないんですが!実物を見たとはいえ!」

「しゃあないなあ……」

 

曰く、近代からの人間社会における科学技術の発達に伴い、神や妖怪たちは次第にその勢力を衰えさせていたという。

そこで、一部の力ある妖怪達と神道の神は京都の街と重なり合う別位相の空間を結界によって作り出し、『裏京都』と呼べる都を作り上げた。大半の妖怪たちは現在その都に移り住んでいるらしい。

しかし、一部の妖怪は都に閉じこもるのを嫌い表の京都や他の地域へと姿を現したり、時には人に危害を加える事もある。

よって、人間側にも対抗手段として陰陽寮の秘密裏な継続、そして妖怪退治を生業とする者達の育成を行う必要があったというのだ。

 

「そないなわけで、今もこうして密かに陰陽寮は活動しとるんよ。僕も中学ん頃から対妖課で働いとったけど、去年からは才能あったおかげでDGAの仕事までせんとあかんようになって、ほんま大変やわ」

「それはまあ……お疲れ様です」

「でもこの京都だからこその利点もあるんよ。他のとこではゾーン……今はロストフィールド言うんやっけ、アレはここでは発生せえへんからね」

「そうなの?」

「既に別位相の空間、裏京都が常に存在しとるからかな?あのけったいな空間が新たに割り込んで発生する事は無いらしいわ」

 

既に特殊な異空間が存在している座標には発生し得ないという事だろうか。未だ謎多いロストフィールドであるが、その被害が一大観光地である京都市において発生しないというのは間違いなく良い事ではあった。

 

「さて、ほな宿まで送ったろか。夜は宿の中におったら、何も近寄ってけぇへんから、安心してや」

「それも結界的なものの効果って事なんですね」

「そうやねん。折角の京都旅行やのに、あいつのせいでひどい目に遭わせてもうてごめんな。できれば、またこの京に来てくれると嬉しいわ」

「んー……考えとく」

 

そうして、彼らは陰陽寮側が回した車で桜龍高校一行が宿泊する宿へと送り届けられた。情報操作があったのか、大して宿の周りでは騒ぎにはなっていなかった。

 

「初ちゃそ、無事でよかった~!心配したんだよ~!」

「心配させてごめんね皆」

「何があったんか聞かせてくれへん?」

「えー、他に言わないと約束して下さるなら……」

 

そうして、とりあえず生徒会メンバーにのみは真相を話すのであったが……。

 

「なるほど、、そんなものが実在するとはな……」

「妖怪……おばけ……本当に……」

「アーシュちゃん、大丈夫デスカ?」

「だっ、大丈夫ですよ!その人が言った事を信じるなら、宿の中なら安全って事ですよね!?ね!?」

「えー、ええまあ……」

 

ホラーの類が苦手なアーシュは、妖怪というものが実在しているという事実に恐れ慄くのであった。

 

 

* * *

 

 

──────翌日、2025年11月21日。修学旅行最終日。

午前中最後の自由行動にて、生徒会一行と水晶・トウリ・初の8人は行ける限りの京都の名所を楽しんでいた。

 

「ここは?ふつーの居酒屋みたいだけど」

「あれですよ、有名な新撰組の活躍した、池田屋があった場所」

「当時の建物はモウ無いのね、残念ネ……」

「まあ流石に、神社仏閣以外で江戸時代やそれ以前の建物がそのまま残っている所は少ないからな……」

 

歴史にそれほど興味関心が無い者でも、新撰組の話となれば知っている者はそれなりに多い。彼らのネームバリューは流石の一言である。

 

「今日は新幹線の時間に間に合うよう、最後は駅に向かっていくように見て行く予定なんだー!」

「このまま新撰組祭りやっけ?」

「はい!屯所があった壬生寺と西本願寺に行きましょう!」

「最後まで楽しもうね!」

 

そうして、彼女らは最後の史跡巡りを楽しんでゆく。

 

 

 

「おー、この銅像が……」

「近藤さんと土方さんの銅像ですね。やっぱり良いなぁ」

「蟠龍さんも新撰組が好きなんですか?」

「時代劇や大河なんかでも新撰組が出て来るものは見ちゃいますね。あと、近藤さんは実家が道場主だったというのもあって少しばかりシンパシーが」

「なるほどなあ」

 

壬生寺の境内にて。新撰組隊士達の墓である壬生塚を訪ね、近藤勇と土方歳三の像を中心として彼女らは寺を見学して行く。

 

「道場を継いだらやっぱり大きくしたいの?」

「いやあそこまでは……とりあえず自分の子や孫の代まで継いでいければいいとは思っていますが」

「朕も手伝うから大丈夫ネ!通いに来る子タチに、お母さんと一緒ニ料理を……」

「そう言う事をしたいならまずうちの母さんに指導を受けて下さい……何卒……!」

 

果たして、将来的にゼオスの料理の腕を改善できるのか。それは神のみぞ知る。

 

 

 

「うひゃー、お堂がいくつもある!」

「西本願寺、かなり広いですね……!」

「流石安土桃山時代から続く寺院、京都でも有数の観光スポットだな」

 

続けて、時間的にも最後の見学できる場所。京都駅から北西にすぐの場所にある西本願寺にやって来た。

数多くの国宝が立ち並び、世界遺産にも認定された由緒ある寺院だ。

 

「ご本尊がある阿弥陀堂も、隣り合う御影堂もでっかいなあ……!」

「これが400年以上残ってるんだっけ?そう聞くと凄いよね」

「一度に参拝できる人数も1000人以上らしいですから、とんでもない建物ですよ」

 

門から入って目の前にある阿弥陀堂と御影堂、そしてその2つを繋ぐ廊下すらも国宝として認定されているこの巨大な木造建築物には皆目を見張る。

本尊に参拝した後、皆は敷地内の東北角、太鼓楼へ向かう。そちらは、池田屋事件以降隊士が増えた新撰組が壬生寺と八木邸に代わり屯所とした場だ。

 

「ここで新撰組の方々が稽古や生活を……」

「正直お寺側も困る事多かったんやないかな?やっぱり血生臭い仕事はしとったわけだし」

「うーん……まあ色々と苦労してたってエピソードは残ってたりしたかなとは」

 

地方の寺等であればともかく、西本願寺のような宗派の本拠地レベルの場所ともなれば真っ当な僧も多く、その分新撰組絡みで苦労した事も多かっただろう。

……戦国時代以前であれば寺自体が武装集団であった場合等もあるが、流石に江戸期であれば今とそう変わらないはずである。

 

「日本の昔の建物は、木造が多いノニこんなに長く残って凄いワネ!地震とか大丈夫だったのカシラ?」

「外国だと地域によっては地震なんて全然ない国も多いよね……ゼオスさんのところもそうだったの?」

「ハイ!日本で過ごしてたら地震が度々起こってビックリネ!」

「まあそれだけ、昔から地震への備え込みで建築技術が発展してきた事の表れがこういう国宝となった建物なんでしょうね」

 

日本の木造建築の技術は世界でも最高峰であったと言える。その技術が駆使された本願寺を始めとした京に残る建物たちは、正に国が誇る宝なのだ。

 

 

* * *

 

 

そうして、時は過ぎて行き。いよいよ京都を発つ時間が近付いて来る。

桜龍高校の生徒達は自由行動を終え、京都駅へ集まっていた。

 

「各クラス、点呼は済んだかー?それでは全員切符を配って行くぞー」

 

帰りの新幹線に乗り込む時間もすぐそこだ。トウリと初も切符を受け取り待機している最中、彼のスマホに着信があった。

 

「?誰だろう……もしもし」

『やあ蟠龍くん、僕やで』

「渡辺さん!?」

「あ、あの人から電話来たん?」

 

電話をしてきたのはどうやらセイジであったようだ。何故彼の番号を知っていたのか?

 

『急にごめんなあ、DGAの方で連絡出来んか聞いたら番号教えてくれたんよ』

「困るなあ色々と……それで、どういったご用件ですか?」

『まあ例の鬼の話や。茨木と連んどった鬼どもをしばいたんやけど、連中あの晴明に協力したら表の世界を制圧する兵力を貰えるて言われとったらしいんよ』

 

裏京都にいるという鬼達。彼らはデモニオに協力する事で、酒呑童子を蘇らせた後鬼の力で人間達と戦うつもりであったようだ。

 

「……正直信憑性は薄くないですか?」

『僕もそう思うわ。大方目的達成したらポイ捨てするつもりだったんやろうな。ともかく、陰陽寮側は落ち着いたけどこれから大変なんはDGAの方やろね。何せ、あのジャオウガが復活するかもしれんと来とる』

「……ええ、自分もモモキングも嫌な予感がずっとしてます」

 

モモキングの宿敵、デモニオの首魁ジャオウガ。その復活となれば、超獣世界を揺るがす決戦が行われる事は間違いない。

 

『東京の方におるいうデュエルマスターの人らにいろいろうちでも協力する事になりそうやから、その時はよろしゅうな』

「協力ですか?」

『なにしろ僕は鬼と戦った家系やからね。色々と策を練って、ジャオウガと戦う準備を整えようって話やさかい』

「なるほど……ではその時は、よろしくお願いします」

『蟠龍くんもしっかりな。それじゃまた』

 

そう言って、通話は切られた。彼や陰陽寮による協力というものは、果たしてどこまで戦いに影響するだろうか。

 

「話は終わった感じ?」

「はい。この先起こるだろう、ジャオウガとの戦いに色々協力してくれると」

「ふーん……その戦いが終わったら、あーしも本当の意味で自由かな」

「そうですね……何があろうと必ず勝ちますので、ご安心を」

「──────おけ、信じてるよ」

 

…………決戦の日は、そう遠くない。ジャオウガとの戦いが起こる時は、トウリとモモキングも最前線に立つ事となるだろう。

大きな、非常に大きな戦いの前哨戦を終え、彼らは東京へと帰ってゆくのだった。




これにて、京都修学旅行篇終了!いよいよ第2部も終わりが近付いて参りました。
果たしてセイジはいかなる形で決戦に関わるのか。今後の展開をお待ちください。
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