テルタカ経由で命に呼び出されるサキト。その目的は果たして。
「何故俺がこんな所に……」
「まあ、あちらが紹介の場を設けてくれたという事なんで……」
──────2025年11月19日。
桜龍高校の2年生が京都・奈良への修学旅行を楽しんでいる頃。サキト、テルタカ、ユウキの3人は首都圏でもトップの有名進学校……「ピタゴラスアカデミー付属高等学校」へとやって来ていた。
「わたくし達を招いてくださったのは、天さんなのですよね?」
「ええまあ、紹介と同時に以前のお礼もしたいとか……」
「あー、一応クリーチャー絡みの事件で皆面識はあるのか」
そう、彼ら3人は、PENTADRÉのリーダーたる天命によってここへ招かれたのだ。彼女のホームたる聖ゾディア学院ではなくこちらを選んだのは、既に生徒会長を次代に引き継いだが故か、はたまたお嬢様ばかりの学院へ外部の男子生徒を招くのを避けたが故か……。
「ようこそ、DGAの方々ですね?
「あ、どうも初めまして……護守サキトです」
「陽野テルタカです。どうぞよろしく」
「お久しぶりですね、江戸素さん」
「ええ、光明院さんもお元気そうで何よりです」
入構許可証を受け取り待っていると、1人の女子生徒……江戸素・Q・真理がやって来た。彼女がこれから案内してくれるのだろう。
「光明院さんは彼女とも……というか、PENTADRÉの皆さんとお知り合いでしたっけ」
「はい。とは言いましても、生徒会長を退いてから皆さまが力を持っていると知ったため、それぞれどのような力を持っているかまでは……」
「なるほど……どんな方たちなので?」
「皆個性的ですよ?」
「それはお会いする前からなんとなく分かります」
これまでサキト達が出会って来たドラゴン娘達の中で、個性的でなかった者など一人も居ない。あるいはその強い個性こそが、ドラゴンの力と親和するというものなのだろうか?
「そちらはDGAの活動に関しては否定的なスタンスだったのでしょう?」
「それは考えの相違もありましたが、何よりかつてのDGAの高い秘匿性……解らない事があまりに多かったという要素もありますから」
「まあ、秘密組織でしたからね……」
「今でも一般に対して秘匿し続けている情報もあるでしょう。ですが、命から貴方がたについては聞く事が出来ましたから」
改めて、真理は3人へと向き直る。
「クリーチャーの使役という戦術が、私たちとは異なる形ではありますがクリーチャーとの戦いに有効なこと。個人レベルながらクリーチャーと関係を築き共にあるということ、そして……貴方がたがその使命に誇りを持っていること。これらの事から、貴方がたに関しては信用出来ると判断しました」
「それは何よりですわ。わたくし達としても、万が一無用に争うような事は無い方が良いとおもっておりましたから」
「それでは、もしかして今日はそちらの全員にお会いして情報を提供していただけると?」
「ええ、そのつもりです。それだけではありませんが」
「……?」
* * *
長い廊下の先、講義室の前まで来ると彼女はドアを開いた。そこには、サキト達と同年代の4人の少女たちが待っていた。
「ごきげんよう、テルタカさん、光明院さん、そして……先日はお世話になったわ。護守サキトさんだったかしら?」
「えー、天命さん……でしたか。俺の事もご存じなんですね」
「昨年末の事件の事もあるもの、当然貴方の事も知っていたわ」
中心にいるのは当然、天命。そして、彼女らを知るユウキ以外の2人へ向け、残る3人が挨拶をする。
「こんにちは~。マローアートスクール首席、熊田不死子ですぅ~。護守さんはぁ、すーちゃんのお友達なんですよね~?」
「すーちゃんって……熊田、って事はうちの生徒会の、熊田さんの?」
「従姉なんです~」
「世間は狭いですね……従姉妹が2人共ドラゴン娘とは……」
ふんわりとした雰囲気を纏う銀髪の少女、熊田不死子。彼女は学生の身ながら、既にファッションデザイナーとして名を轟かせているという。
「私立龍王学園代表、クリム・
「お久しぶりです。今年もご活躍のことと拝察いたします」
「陸上七種競技の、世界学生チャンピオンでしたっけ……」
(江戸素さんといい凄い名前だが、今は余計な事は言わんでおこう……)
赤と青のツートンカラーという髪色をした、ジャージを羽織る少女、クリム・美心・ギャラクシー。アスリートとして優秀な成績を残しており、将来も引く手数多であると聞く。
「俺が
「すみませんまず学校の名前に突っ込ませて貰っていいですか!?」
「何だヨ、イカす校名ダロ?」
「どこからどんな情報の混線があったら《古龍遺跡エウルブッカ》と名前が被る高校が誕生するんだ……!?」
そして、緑髪と学ランが特徴的な背の低い少女、帝哲人…………ここに来て、サキトはツッコミを抑えきれなくなった。人名はともかく、流石にそのヤンキーのような当て字による
「おかしい…………話に聞く各校に代々伝わるアイテムといい、超獣世界と昔からどっかで繋がってるとしか思えないネーミング過ぎる……!」
「そういえば、皆様はドラゴンの力を今も扱えるのですか?特に天さんは、生徒会長の座を退いて数か月以上は経っておられると思いましたが……」
「ええ……それなのだけれど」
彼女達は一斉に、ドラゴンの力を解放した。5人とも極めて大きな力を持つ、特別な物と言って良いものだ。
「今の所、皆引き続きこうしてドラゴン娘として力を揮えているわ。私も真理も、次期会長に引き継いだら力を失うと思っていたのだけれど……」
「私たちとこの力の相性が極めて良いためでしょうか、今のところ力が消える様子は無さそうですね」
「卒業、消える?」
「その場合俺はあと2年はこのままになりそうダナ?」
「あー、高専だから帝さんだけ5年制の学校と……」
現状、彼女らがドラゴンの力を失う気配は無さそうだった。これはこれで将来的に困りそうなものだが、果たしてどうなるのか。
「……うちに今年赴任してきた先生が、教員ながらドラゴン娘の力持ってるんですよね」
「それって、ワタシ達ももしかしたらこのままかもってことですか~?どうしましょう~」
「色々と条件も異なるようですし、それについては一旦保留しておきましょう。それで、貴方がたから見て私達の力はどうかしら?」
サキト達のデュエマフォンに、彼女らが持つドラゴンの力が表示される。それらには、1つの共通点があった。
「《天命讃華 ネバーラスト》、《龍素王 Q.E.D.》、《魔壊王 デスシラズ》、《爆熱王DX バトガイ銀河》……《真なる邪悪 ザ=デッドマン》」
「これは……全員ドラグハート・クリーチャーですわね」
「ドラグ、ハート?」
「龍の魂が封じられた武具や要塞、それがデュエマに存在するカードの一種・ドラグハートです」
「アイテムに力が宿っているというのは、元となったドラグハートの性質故なのか……?」
彼女達PENTADRÉが得たドラゴンの力は、極めて特殊な物と言えるだろう。そして、その中の1つに、サキトはなんとも言えない表情をしていた。
「というか、邪悪って……聞き捨てならない単語が混じっているわね」
「あー、帝さんの持つドラゴンの力は、元になっているのがなんというか……とんでもない悪党の龍人でして」
「そうなのカ!?」
「夏休みに入ったばかりの頃、クリーチャー達の世界に行った際に俺は直接交戦したんです」
「それは~、ちょっと複雑な気分なのも分かりますね~?」
「テツ、悪者になっちゃう?」
「ドラゴンの力が人格に影響を与えたという例は今の所無いので、帝さんが悪者になるという事はないかと思われますわ」
哲人に対する懸念点は、今までの例からして心配は無いだろうとユウキがフォローし、彼女らは安堵する。
……何とも言えない表情になったもう1つの要因については、サキトとテルタカは伏せておく事とした。「デッドマン」の元ネタたる人物については、ここでは言わぬが花というものだろう。
「それじゃあこちらも改めて……DGA栗茶市実働部隊員兼、暫定のデュエルマスターキング……護守サキトです」
「新宿区実働部隊員兼、火文明のデュエルマスター、陽野テルタカです。どうぞよろしく」
「千代田区実働部隊員兼、光文明のデュエルマスター、光明院ユウキですわ。以後よしなに」
「ええ、よろしくお願いしますね」
「それでは、本日の用事はこうして互いに挨拶を交わすくらいですかね……?」
「いえ、私から少しばかり、貴方がたにして貰いたい事があるの」
命がそう言うと、真理が何やらプリントを彼らの前に持ってきた。
「……これは?」
「ご安心を、少しばかり……学力テストを受けて貰いたいのです」
「テストォ!?何故に!?」
「理由は後で説明します。では、席に着いてください?」
急に彼らに課される事となった、学力テスト。講義室の席に座らされ、3人は答案用紙と格闘する事となった……。
* * *
「お、終わった……」
「なるほど、皆さん抜き打ちにしては良い点数でしたよ」
「その、改めて理由をお聞かせいただいても……?」
真理の言う通り、突然のテストながら3人は上出来と言える点数を出していた。ユウキとテルタカが80点台後半、サキトも70点台後半である。
「3人とも、大学に進学する予定なのですよね?」
「ええ、まあ」
「DGAで働いてはいますが、一応は大学を受験するつもりではいます」
「それが何か……?」
「ですが……突発的なクリーチャー災害の対処などもあり、勉学を妨げられる事も多い」
「うっ」
そう、彼らの頭を悩ませる問題の1つが、勉強時間をクリーチャーの対処に追われ削られるという事態がそれなりにある事であった。それをどこまで見越していたのか……命と真理はテストの結果を見ながらPCに何かを打ち込んでいた。
「それでしたら、それぞれの志望校は?」
「え、あー、俺は──────」
「え、俺もそこです」
3人ともそれぞれの志望校を述べてゆく。その中でなんと、サキトとテルタカは第1志望校が被っていた事が判明する。
「なるほど、分かりました。……以前助けてもらった際の恩、私はいずれ返したいと思っていました」
「ええと、前にも言ってましたけど、そんな大げさな……」
「ですが、物品や金銭で返すというのは、貴方がたにとっても望むものではないでしょう。ですので──────こうさせて貰いました」
「出来たわ、命」
「ありがとう、真理。さあ、こちらを」
3人にそれぞれ、用紙の束が手渡される。そこには、様々な問題文や文章が書き連ねられている。
「これって……」
「皆さんの志望校とセンター試験の過去問、そして学力に合わせ効率化した自主学習のスケジュール表です。勿論、DGAの任務などがある場合に備えて時間的な余裕も持たせていますよ」
「おお……分かりやすいポイントとかも書いてある。良いんですかこんなのいただいて?」
「ええ、私からお返しできるもので、貴方がたが必要とするのはこのくらいでしょう?」
「これはなんとも……ありがとうございます、天さん」
どうやら、受験勉強のサポートという形で、命は恩を返す事にしたようだ。確かに、大学受験を控える3人にとってはありがたい物だ。
「しかしまあ、そのためにテストまでここでするとは」
「皆さんの解ることと解らないことを把握するのが重要なことなのです。解らないということが解ったら解らないけどそれは解ることを解ったということなのだから、解らないことを解ろうとすることが解るというわけなのです」
「えー、あー、うん?」
「あー……あれですかね。論語に書かれた言葉の1つみたいな」
「『
「お2人とも、良く勉強していますね」
『
「ええとつまり、知らない、解らない範囲を自覚する事で、そこを新たに知り理解する足掛かりにしようとかそういう……」
「護守さんも飲み込み自体は早いようで何よりです。では、残り少ない受験への期間、頑張ってくださいね」
「そういう皆さんは……」
「スポーツ推薦、決まってる」
「ワタシは本格的にデザイナー業ですね~」
「俺は卒業まであと2年ダ!その後は就職だかラ、心配は──────」
「進級試験は頑張りましょうね?」
「うぐっ」
「江戸素さんと天さんはもうそちらの心配は無さそうですものね」
こうして、サキト達とPENTADRÉの対面は平和に終わったのであった。
「ゲーム、得意?」
「え?ああ、ゲーム部でしたのでそれなりには」
「対戦、そのうち」
「……なるほど、イケる口でしたか。それじゃあネット対戦でも機会があれば」
「楽しみ」
期せずして新たなゲーム仲間も出来る事となったが……2人の戦いは、また何処かの機会があれば。
そんなわけで、PENTADRÉ対面回でした。高校3年終盤は……忙しい……!
クリムが対戦ゲームも得意との事なので、サキトにとってはゲーム関連の交友関係となりそうです。
次回、超獣世界側も状況が変化し始める……か?