「『おぉぉおおぉおぉぉぉっ!!』」
『オラァァアァァアァァァッ!!』
──────地球時間、2025年11月23日。
超獣世界の1つ、『新章世界』における火文明の領域、アチーチ・タウン近郊にて。
『俺ちゃんのスピードに反応できてるとはなぁッ!』
「バクテラスの力あってこそだ……っ!」
火文明のマスター・クリーチャー、ブランドとコントラクトアーマーを纏ったテルタカが拳を交えていた。
ブランドは基本形態たる、《“罰怒”ブランド》の姿でボードを駆り、速度を活かした攻撃を放ち続けている。
一方のテルタカは、ブランドの攻撃を拳と翼で迎撃し続け、最後のカウンターを仕掛ける機を伺っていた。
『右だ!』
「おう!」
『うおっ!?今のにも反応しやがるか!』
「俺は1人ではないからな!」
一体化している事を活かし、テルタカとバクテラスは常にそれぞれ逆方向を警戒し続けていた。互いの死角を補い、ブランドが襲い来る方向を見極めて対応する。同化の練度が高い者だからこそ成せる業だ。
『なら、そろそろケリを付けようじゃねえか!』
ブランドが一気に加速し……2人の視界から、姿を消す。
『むっ!?』
「どこに……っ!」
バクテラスとテルタカの意識が、同時に上方へ向けられる。そこには、ボードごと高く舞い上がったブランドの姿!
『喰らいなァ!“必駆”蛮触礼亞!!』
「なんのぉっ!」
『ボルシャックの拳、受けるがいい!!』
落下速度を加え流星の如き一撃を放つブランド、それを、炎の翼を広げ飛び上がったテルタカが迎撃する。
互いに紅蓮の炎を纏った一撃が、正面から交錯し──────。
『気に入ったぜお前ら!俺ちゃんと真正面からやり合って怯まないその根性に、その熱いドラゴンの力!』
「ふぅ……なんとか認めて貰えたかな」
『ああ、俺ちゃん達はお前らをダチだと認める!もしジャオウガの野郎が蘇るってんなら、一緒に戦おうじゃねえか!』
『私とは異なる世界の火文明……気質は全く違うが、燃えるような闘志は共通しているようだ』
テルタカとブランドが拳を合わせる。火文明との協力体制を築くべくやってきたが、やはり彼らとはぶつかり合って分かり合う事となったようだ。
「こちら陽野テルタカ、火文明との協力は取り付けられました」
『お疲れさまでーす陽野さん!こちらもじきに終わりますよー!』
『闇文明の方もケリは付いた。デ・スザークと零龍の両者と契約済みだったからな、すんなりと話は終わったよ』
現在彼らは、各々が担当する事となった文明へと赴いていた。京都での1件が報告され、ジャオウガ復活が近いとの判断が下されたため……DGAは一気に、新章世界との協力体制を強めるべく動いていた。
「光文明の方は?」
『今は取り込み中のようだな。まあ、彼女は相棒が闇文明との合いの子だ、やはり実力で示す必要もあるだろう』
『後は護守さんの方ですねー、大丈夫でしょうか?』
『あ、護守くんの方も今から始まりそうだよ!』
何よりも必要となるのは、デュエルマスター達が己の力を超獣世界の住人達へと示す事。それ故に、彼らはそれぞれの場で文明の主達相手に戦いを繰り広げていた。セイカのみは方式が異なるようだったが……。
『自然文明の地でやりあって、平気なのか?』
『女王様の許可あっての事だし、大丈夫なんじゃないかな?』
そして、サキトの前には3体のクリーチャーが立ちはだかろうとしていたのだった。
* * *
「よーし、これで……『コード実行!』」
『ム……』
水文明の領域、《パラダイム・パラダイスLab.》。その内部で、セイカは端末を操り、彼女なりの戦いに臨んでいた。
この世界における水文明のトップと言える存在……《マザーブレイン》と、《
彼らが用意した端末内に送り込まれるウイルスプログラムを、如何に処理してゆくか。マーキュリー・スターフォージと同化し自身の頭脳をフル稼働させたセイカは、凄まじい速度でプログラムを構築していった。
『……ナルホド、オ見事デス。コレナラバ私達ヲ導クデュエルマスターニ相応シイデショウ』
「やった!それじゃあ今後の協力、よろしくお願いします!」
コントラクトアーマーの限界時間ギリギリまでプログラミング作業に費やしたものの、その甲斐あってプログラムの完成度は彼ら水文明の生み出す物と遜色ないレベルとなっていた。
電脳の世界上でプログラムがウイルスを無力化、排除していき、同時に破壊や書き換えの被害を受けたデータを解析し元の状態へ戻してゆく。
「そういえば、私たちの知るこの世界と似た歴史を辿った超獣世界では水文明のマスターを貴方が作り出してましたけど、こちらではどうだったんです?」
『私ハ、過去ニ超獣世界ヘト訪レタトイウ人間ノデータカラ、文明ヲ守護スルマスターヲ作リ出ソウトシマシタガ……データガ足リズ、失敗ニ終ワリマシタ。ソノ過程デ生ミ出サレタノガ、《ア・ストラ・ゼーレ》、《Code:1059》、《Wave All ウェイボール》ラデス』
「なるほどー……」
この世界には、ジョー篇における各文明のマスター達はいない……いや、例外的にカードとして存在する《闇王ゼーロ》のみは存在した可能性はあるだろうか。
この水文明においても「キャップ」と「ギャップ」は存在せず、彼らの役割をマスターレアカード達が担っていたようだった。
『コウシテ、実際ニ人間ヲ観測シテ、ソノデータノ複雑サニ驚キマシタ。コレハ現物モ無シニ生ミ出スコトナドワレワレデモ至難ノ業デショウ』
「ほえー……人間の身体の機能を再現しようとすると、現代の科学では身体より大きな機械になってしまうって聞いたけど、同じ事がこの世界でも言えたのかな」
『サテ、ソレデハ他ノ文明ノ様子モ見マショウカ』
「中継できちゃいます?やったー!」
研究所内のモニターに、他文明の様子が映される。その中の1つでは、1人の少女が龍と戦いを繰り広げていた。
* * *
『裁キヲ受ケヨ!』
「『そうは行きませんわ!』」
光文明の領域、煌めく鉱石に覆われた世界に銃声が鳴り響く。
光のデュエルマスターとしてユウキが光文明を訪れ、対面した相手は……《煌龍 サッヴァーク》。光文明を守護する人造のマスター・ドラゴン……そして、サーヴァ・K・ゼオスの身に宿るドラゴンの力の源たるクリーチャーだ。
『汝ノ正義トハ何カ!』
「無辜の人々、戦う力を持たぬ人々を力あるわたくし達が守護する事!それがわたくしの果たすべき義務であり、掲げる正義ですわ!」
サッヴァークの翼から放たれる何本もの光の剣を、ネロ・グリフィスII世と同化したユウキが手にした魔銃で的確に撃ち落としてゆく。踊るような彼女の動きは、光文明の住人も感嘆するものであった。
「『お返し致しますわ!』」
『ムゥンッ!』
跳躍し、一気に距離を詰めたユウキが、刃の如き魔銃の銃身で斬り付ける。その一撃を、サッヴァークは難無く翼で防ぐが…………。
「『魔弾ゴッド・ジェノサイダー!』」
『ッ!?』
破壊の力を持つ、闇の魔弾が至近で放たれる。その一撃を受けたサッヴァークは、大きく後ろへ後退した。
『正義ヲ為スタメニ闇ノ力モ扱ウカ!』
「闇もまた、わたくしの騎士達の力。破壊の力も他者を守るためのものとなりますわ。そして、正義を為すための不滅の力も同時に与えるのです!」
『ナラバ受ケテ見ヨ、裁キノ光!』
サッヴァークが一本の光剣を手にし、光のマナをそこへ収束させる。対するユウキも、魔弾を装填し正面からぶつかる体勢を整えた。
「『はぁぁぁああぁあぁっ!!』」
『オォオッ!』
魔弾と光剣がぶつかり合い、交じり合ったマナが炸裂する。爆風が周囲を揺るがし、戦いの行方を見守る光文明の住人達の視界を一時的に遮った。
爆煙が晴れてゆくと、そこには…………互いに消耗した、ユウキとサッヴァークの姿。
『認メヨウ。汝ハ共ニ戦ウニ相応シイ力ト、正義ヲ持ツ者デアルト』
「認めてくださり、感謝致しますわ……ふぅぅ……」
激戦を繰り広げ、サッヴァークにその力を認められたユウキ。これで、全ての文明がそれぞれのデュエルマスターを認める事となった。
「後は、護守様ですわね……どうか、お気を付けて」
* * *
──────世界をつなぐ柱の一部、張り出すように作られた舞台。この場所にて、サキトは3体のクリーチャーと対峙している。
『君以外の人間達は、無事力を示したようだ。ならば次は、君が我々に力を示す番だ』
銀色の人型と、その背後に浮かびリンクして動作する黄金の巨大な鎧、という姿のクリーチャー……《「
『ドギラゴンには力を借りた事がある、お前がその力に相応しい度胸を持っているか試してやるぜ!』
腕と翼から爆炎を放つ、金と白の装甲を纏った赤い龍……《爆龍皇 ダイナボルト》。
『デュエリストなるそのアビリティ、我がテストしてやろう!』
緑と青の、液体が固まって形作られたような質感をした獅子の姿のクリーチャー……《キング・マニフェスト》。
「3人のキングマスター、それと配下が相手か……!」
十王篇にて登場した、味方陣営のリーダーたるクリーチャー達、キングマスター。彼らはそれぞれ自身のチームメンバー《「
「皆は同化状態でタイマンを張ってるようだが、こっちはデュエルで戦う事になりそうだな。よし、勝負と行こう!」
『よし、見せてみろ!』
「デュエルッ!!」
サキトはシールドを展開し、手札を引く。彼ら相手では、一瞬の油断が敗北に繋がるだろう。
「俺のターン、《双龍覇王 モルトVERSUS》をマナチャージしターンエンド!」
『行くぞ!覚悟しろ!』
「正義帝」が拳を振り上げる。その動きに連動した黄金の鎧が、巨大な拳をシールドへ叩き付ける。トリプルブレイクだ!
「ちっ!シールドチェック……よし!シールドトリガーが2枚!《次世代龍覇 Q.E.Deux》!そして、《ドラゴンズ・サイン》!手札から現れろ、《最終龍覇 グレンモルト》!」
『出番のようですね』
『ここは任せろ!』
シールドからQ.E.Deuxが、そして呪文の力で手札からモルトが現れる。彼らはそれぞれ、ドラグハートを呼び出して自らに装備する!
「モルトとQ.E.Deuxの登場時、それぞれにドラグハートウェポンを超次元ゾーンから呼び出し装備!来い、《将龍剣 ガイアール》!《熱血剣 トリプルレジェンド》!そして、Q.E.Deuxの登場時能力により……《「正義帝」》をバウンス!戦場からご退場願う!」
『離れてもらいます!龍素転送!』
『何っ!?』
Q.E.Deuxが龍素の力で短距離転送ゲートを生み出し、正義帝を戦場から離す。これで、彼の持つ自軍クリーチャーが攻撃もブロックもされなくなる能力の影響は消える!
「トリプルレジェンドの能力で、デッキの上を1枚見る!よし、こいつを手札に!更にガイアールを装備した事で、モルトと相手クリーチャーをバトルさせる!モルトのパワーはドラグハート2つが場にあることにより、12000!ソーシャル・マニフェストII世を撃破!」
『喰らえっ!』
『なんとっ!?』
ガイアールの力が封じられた剣を振るい、モルトがソーシャル・マニフェストII世を断ち切る。これで残る相手は4体!
『ならばまずは、そちらから!』
「くっ、すまんQ.E.Deux!いい仕事だった!」
『く……!』
キング・マニフェストがマッハファイター能力により、Q.E.Deuxへと攻撃を仕掛ける。トリプルレジェンドのブロッカー付与で凌いでもらうつもりのサキトであったが、プランの一部はこれで崩れた。
『喰らいなぁっ!!マジボンバーッ!!』
「く……!そのままシールドで受けるっ!」
そこに、ダイナボルトの一撃が襲い掛かる。Q.E.Deuxの撃破によりトリプルレジェンドは超次元ゾーンへ戻り、モルトのパワーは9000に低下している。更にダイナボルトのWマジボンバーが、更なる援軍……《DORRRIN・ヴォルケノン》と《ロック・クロック・六九》を呼び出す。敵の数が増えては、攻勢を防ぎきれない……!
「……!来たかっ!シールドトリガー《王道の革命 ドギラゴン》!そして……ツインパクト呪文!《「ここはまかせて、お姉ちゃん!」》!タレット、力を貸してくれ!」
その危機を、仲間の力が救う事となった。ドギラゴンが戦場に現れると共に、タレットの得意とする魔術……光の鎖が放たれ、ダイナボルト達を縛り付けた!
『何ぃ!?』
「相手クリーチャーを全てタップ!更に、ドラゴンが2体以上場にいることで、山札の一番上をシールド化!」
『我らのアタックからリカバーしたか!』
「王道の革命ドギラゴンの能力によりデッキの上から2枚をマナへ、Q.E.Deuxと新世代龍覇グレングラッサがマナへ送られ、グラッサを手札に回収!反撃の時だ……ドロー!ターン開始時に、最終龍覇グレンモルトの能力により新たなドラグハートを呼ぶ!来い、バトガイ刃斗!」
このターンで決めなければ危うい。サキトは、一気に攻勢へ出る。
「グラッサをチャージし、メンデルスゾーン発動!デッキから最終龍覇グレンモルトと、ドギラゴン天がマナに!そして、モルトで七色の残像へ攻撃!この時、バトガイ刃斗の能力により、デッキの一番上がドラゴンであれば場に出す!」
デッキトップが表となる。そこにいたのは──────。
「《夢双龍覇 モルトDREAM》!こいつの登場により、コスト10以内の範囲でドラグハートを場に出す!《闘将銀河城 ハートバーン》と、《爆熱天守 バトライ閣》!」
『決着を付ける!』
最強のモルトがサキトの場へと現れる。彼が手を翳すと、虚空から2つのドラグハートの城郭……ハートバーンとバトライ閣が現れる!
「ドラグハートが4つになったため、パワー18000となったグレンモルトが七色の残像を撃破!」
『くっ!?』
「モルトDREAMでキング・マニフェストを攻撃!バトライ閣の能力によって、デッキの一番上がドラゴンかヒューマノイドであれば場に出る!──────来い!《蒼き守護神 ドギラゴン閃》!」
『行くぞッ!!』
サキトの相棒、ドギラゴン閃が場へと現れる。更に、この登場により、条件が満たされた。
「このターン2度目のドラゴン登場により、バトライ閣とバトガイ刃斗の龍解条件が達成ッ!」
『『!!』』
「ダブル、龍解ッ!!《爆熱DX バトライ武神》!!《爆熱王DX バトガイ銀河》!!」
『『カァァアアァアッ!!』』
2つの城郭が力を解き放ち、巨大なドラゴンへと変わる。強力なドラグハート・クリーチャー、バトガイ銀河と、バトライ武神!!
「モルトDREAMでキング・マニフェストを撃破!」
『素晴らしいバズだ……!』
「モルトDREAMはアンタップする!それにより、ハートバーンが龍解!《超戦覇龍 ガイNEXT》!!」
『ガイ!NEXTッ!!』
更に、ガイギンガとガイバーン、2体の龍が1つとなったドラゴンガイNEXTが姿を現した!
「バトライ武神でロック・クロックを攻撃!そしてバトライ武神の能力発動!デッキの上から3枚を表にし、そこからドラゴンとヒューマノイドを全て場に出せる!……来い!グレンリベット!「GG」-001!ゲンムエンペラー!」
モルトの父が、テクノ・サムライとなったグラッサが、そしてチーム零のキングマスター・ゲンムエンペラーが戦場へ姿を現す。勝負は、完全に決した。
『おぉ……っ!来い!デュエルマスターッ!!』
「総攻撃だッ!!」
サキトの率いるドラゴン軍団が、残る相手を打ち倒してゆく。そして、ダイナボルトがドギラゴン閃とぶつかり合い……決着が付いたのだった。
「完・全・決・着!」
『良い勝負だった。今後我々も、君達に協力すると我が正義に賭けて誓おう!』
「ありがとう、チーム銀河、チームボンバー、チームウェイブの皆」
力試しを終え、握手を交わすサキトと「正義帝」。これにて、新章世界との協力関係が完全に築かれる事となった。
『しかし本当か?あのジャオウガが復活するというのは』
「ああ、それもそう遠くないうちに」
『我々がエスティメーションしたところ、一か月以内にデモニオ達はオールアウトオフェンシブの体制を整えるだろうね』
復活のための鍵は既に揃ってしまった。大鬼札王国との決戦は、最早避けられない。その前に、サキト達も可能な限りの対策を整えなくてはならなかった。
「今こちらで、対ジャオウガ戦のため対抗手段を開発中とのことですが……間に合うか」
『我々Instant Waveの力もシェアしようではないか。マザーブレインもOKを出すはずだ』
「それはありがたい。では、決戦の時は……」
『『『我らの力を合わせ、大鬼札王国と戦おう!』』』
暫しの平和が訪れていた新章世界。そこで再び、大いなる戦いが巻き起こらんとしていた。
各文明のマスタークリーチャー、そしてキングマスター達の戦い!今回は一気に行かせて貰いました。
正義帝のブロックと攻撃されない付与は、対クリーチャー戦においてはいるだけで相当な脅威でありました……。サキトの側もクリーチャーを大量に出す事になって大変でした。
いよいよ、第2部もクライマックス間近。どうかお付き合いよろしくお願いいたします。