今後しばらくの番外編パートでは、本編とは時系列が大きく前後する事が多くなりそうなのでエピソードに番号は振らない形でお届け致します。
リアルでは2部完結から時が流れた間に色々とありましたが……
セイカ「そんなぁーっ!」←前回殿堂後エターナル型サイバーを使用
ザーナ「まあ……仕方ないわよね……」←9月以降バンドモチーフの光水自然ダーバンデをサブデッキとして使用
トウリ「」←フェアリー・ギフトプレ殿の上モモキングとジャオウガが闇落ちジョー君の手でガッチャンコされた疑惑により放心
ゼオス「トウリ君、しっかりしてクダサイ!」
サキト&ハヤト「「ヒャッホホホ、ヒャッホイ!」」←ディスペクターとしてはかなり纏まった姿かつ、オメガ○ンじみた左腕になっているレッヴォゾーンにテンションが上がる2名
とまあ、殿堂発表と新情報に彼らも様々な反応をしていたのでありました。
今回のエピソードは、物語が幕を開ける少し前の話。
Exep:護守サキトと出会いの話
『新緑が日に鮮やかに映る季節となるなか、私たちは今日、この私立桜龍高等学校の門をくぐりました。真新しい制服を身にまとい──────』
──────2024年4月8日。
この日は、私立桜龍高校の入学式。今年の首席合格者であり新入生代表として舞台に上がった、1人の少女を見ながら……2年3組に属する護守サキトは関係のない物事に思考を割いていた。
(うーむ……未だほぼ二強環境か。どこまでやれるもんかね……)
こう言ってはなんだが、挨拶をする代表生徒でもない限り入学式というイベントでは在校生は暇を持て余すもの。午前中のクラス確認、ロッカーの移動等もあり今の彼は上の空状態で自分の趣味……デュエマの事ばかり考えている。
この時点で、デュエマの大会環境は概ね【闇自然アビス】と【火水マジック】の二大巨頭。新弾の発売を週末に控え、カードリストも出揃った現在も、それぞれのデッキに勢力の大きな変動は無さそうに思えた。
彼が相棒とするデッキは環境外。使えるカードを取り込みながら調整は続けているが、大会などでの戦績は苦しいものであった。
(まあ、
新入生代表の挨拶が終わり、皆が一斉に拍手する。緊張した面持ちの少女は、礼をすると舞台を降りてゆく。続いて校長が話を始めると、周りの生徒達は再びこそこそと話を始めた。
「(なあ護守!あの代表生徒の流星さん、素敵だったな……!)」
「(ん?ん、ああ、そうだな)」
適当に相槌を打つサキト。確かに髪色以外の印象は精祖可憐な優等生という感じであったが……。
「(俺らには縁が無さそうな人だがな)」
「(夢の無い奴だな!先輩として頼られる所から始めればワンチャン!)」
「(主席合格の子が俺らを頼る事なんてあるか?)」
「(ぐ、ぐうの音も出ねえ……)」
彼らの成績も悪くはない程度ではあるが、相手は主席合格の優等生。勉強の仕方等も自力で身に着けられるだろう彼女が態々彼らに相談など現実味の無い話だ。
「(そんなことより、俺は部の方で新入生を迎える用意を優先せにゃならんからな)」
「(あー、副部長になってんだったな。そりゃ部活が忙しくもなるか)」
「(うちのゲーム部はどれだけ見学に来てくれるかねえ……)」
今のサキトにとって重要な事は、彼が属するゲーム部の盛り立て。前年度頼りになった先輩達が去った後、現メンバーのみでは戦力不足に陥るかもしれない。e-sports部の側面もある以上、強豪プレイヤーが欲しい所ではあるが……。
(そんなに都合よく凄腕の新入生が来るはずも無いからなあ。そっち方面は得意じゃねえが俺も力を入れるしかないか……)
そんな風に、この時の彼はゲーム部の将来を少しばかり憂いていた。
* * *
「嘘……!?」
「部長が三本勝負で完敗……っ!」
翌日、4月9日の放課後。見学に来た新入生達にゲームをプレイして貰い、希望者には部員達が対戦相手となっていたのだが……1人の新入生に対して、部員たちは皆目を丸くしていた。
「…………」
帝王坂∞と名乗った少女は、凄まじい実力で部員達を圧倒。現状部内で最も格闘ゲームに強かった部長をも下してしまったのである。
「いや、びっくりした。こんな子が新入生にいるとは……」
「……あ!も、もしかして帝王坂さんって、あの『emperor』か!?」
「え、有名人?」
「ああ!中学生にしてFPSの世界大会優勝、今プレイしてた格ゲーでも優勝経験がある……!」
「マジか。そりゃ部長でも太刀打ちできんな……」
そんな逸材が今年桜龍高校へ入学して来るとは。他の部員たちは既に目の色を変えて彼女を勧誘したがっている。
『次は副部長さんが相手をしてくれるの?』
「あー、それは……俺が一番得意な物は少しジャンルが違うからな。帝王坂さんは、カードゲームの経験はあるかな?」
『カード……?そっちは未経験』
「そりゃそうか。じゃあ格ゲーの類は苦手だから、ちょっと別のものを……」
サキトは部内にあるゲームや持ち込んだ私物のゲーム機からやれそうなものを探す。それを見る他の部員たちは、こっそりと彼に話しかけて来た。
「な、なあ副部長。本当に一番得意なカードで戦うんじゃダメなのか?」
「ルールのレクチャーに時間が取られるだろう。それに、初心者を俺の得意な土俵に引っ張って来て狩るとかダサい真似はできん!……よし、これだな」
サキトが選んだのは、人気のハンティングゲーム。彼がカードゲーム以外でやり込んでいるゲームは幾つかあるが、その中で対戦として使えそうなものはこれくらいであった。
「このゲームはプレイ経験はあるかな?」
『勿論あるよ』
「では、こいつの闘技大会でタイムアタックと行こう。装備は固定のものになるから、互いに平等な条件でやれるはずだ」
『こっちも問題無いよ』
先にサキトが武器を選び、クエストを開始する。相手は強敵、彼は頬を叩いて気を引き締めた。
「それじゃあ行かせて貰うぞ……っ!」
「ぬあーっ!負けた!」
『でも差はそれほど無かった。よくやり込んでるね』
最終的に、討伐時間は∞がサキトの記録を上回った。とはいえ記録差は2分以内、サキトは十分に善戦したと言えるだろう。
『アクションが苦手という訳じゃ無いのに、格ゲーは不得手なんだ』
「なんというか、コマンド入力の類が苦手でね……しかし、帝王坂さんは凄いな」
「ああ!良ければ是非うちの部活に!」
『良いよ。ここではFPSはやれる?』
「力を入れているジャンルの1つだよ!」
『それじゃあ、今日からよろしく』
これ以上ない即戦力となれる新入生が彼らの部へ舞い込んで来た。今年度のゲーム部の活動に、彼女の存在は欠かせない物となるであろう。
* * *
更に2日後、4月11日。多くの新入生が仮入部期間を過ごす中、∞は既に入部を済ませ黙々とゲームをプレイしていた。
「傍から見ているだけでも彼女の腕前の凄さが分かるな……だいぶ変わった子というのも分かるが」
一昨日もそうだったが、まず彼女は基本的に喋らない。普段から手にする端末で、機械音声によって会話する変わり者だ。
そして、ゲームのプレイ中はそれすら使わず完全な無言となる。曰く、声を出そうとするとゲームに集中できないとの事で、ボイスチャットの類は使用した事は全くないそうだ。これ自体は、そういう宗派のゲーマーもたまに見るためそう驚く事でもないが……。
「本当に黙々とプレイしてるな……連携とか協力プレイの類に支障とか出ないんだろうか」
「∞ちゃんはばり強うて孤高んゲーマーやけん、ピンチも1人でなんとかなるけんね」
「とはいえ世の中1人でどうにかなるものも限界が…………、?」
彼女のプレイを観戦しながらの呟きに返事をされ、サキトの思考が一瞬停止する。……全く聞き覚えの無い声が近くから聞こえてきたのだから、当然だ。
見れば彼が座る卓の陰に、いつの間にかジャージにスク水姿という凄い格好の女子が1人しゃがみ込んでいる。
「……誰ぇ!?いつ入って来た!?」
「あ、どうも初めまして。うちは蒼斬しのぶ、1年生ばい」
驚きを隠せないサキトに対し、しのぶはけろりとした表情で返した。自分がここにいるのはごく自然なことだと言わんばかりに、全く素の反応である。
「え、あー……君も仮入部希望だったりするのかな?」
「ううん。うちゃ水泳部一筋やけん」
「ならどうしてここにいるのか」
「うふふ、うちは∞ちゃんをいつも影から見守ってるんよ。だってうちは∞ちゃんの忠実な犬やけん」
「お、おう」
何やら犬を自称し、はぁはぁと息を荒げて∞を見つめるしのぶに微妙に引くサキト。しかし、気付かれずに部室に入って来るとは……そういう技術や才能でもあるのだろうか。
「とりあえず、自分の部活の方に行った方が……って、今日は水泳部は休みか?」
「そうばい。やけん今日はここで∞ちゃんの活躍ばじっくり見よーつもりばい」
「そ、そうかい……」
彼はしのぶへの接し方をどうしたものかと考えていた。新しい部員の友達……友達?であれば無下に追い払うというのは気が進まない。それに、こう言っては何だが華の無い趣味にのめり込む彼にとっては、女子との交流は慎重を期するべきものであると考えていた。
「……まあ、他の部員の邪魔とかはしないでくれれば構わないけど」
「うへへ……」
「大丈夫かな本当に……」
…………この後、しのぶは他の部員達にも見つかったものの、一応この日は見学も許可している日であったため問題とされることは無かった。男子達は美少女の見学者という事で若干テンションも上がっていたが、彼女は∞以外全く眼中になく相手にされる事は無かったのであった。
「何というか……大変な1年になりそうだな、これは」
数日後に、彼の身に起こる非日常の洗礼も。
そこから始まる、ドラゴン娘となった少女達との関りも。
そして、目の前にいる少女との間に生まれる縁も…………。
──────この時のサキトには、全く知る由も無かったのであった。
というわけで、言わばエピソード0といった感じの話でありました。
この先に長い長い戦いの日々が待ち受けているなどとは露知らず、まだ普通の学生であったサキト。そんな彼にとって、全く無自覚な運命の出会いの話。
少々時間をおいたため執筆勘を取り戻すのに難儀しております。またちょくちょく書いていかなくては。