デュエキング発売日も間近。蒼斬丸……ディスペクターにしては王道でかっこいいフォルムじゃないの。しのぶちゃんの強化フォームに出来そうだ。
今回はハヤトの回。そして、本編では名前のみの登場となっていたあの娘の出番です。
「うーん……?」
「どうした赤坂?」
「いえ、ここんところ妙に視線を感じるというか……」
──────2025年5月28日。
先の邪道レッドゾーン騒動から数日、ゲーム部の部室で赤坂ハヤトはぼやきを漏らしていた。
昼間、学校生活中に何度も感じる謎の視線。それも多少の敵意も混じっているのが彼には感じ取れた。
「あー……あれだな、たぶん会長絡みなんじゃないか」
「会長の?どういうことです?」
「赤坂はまだ知らんか。会長には親衛隊を名乗る追っかけがいてなぁ……」
桜龍高校には、昨年生徒会長に就任したアーシュと生徒会の活躍を見てファンとなった生徒が多数存在する。
その中でもアーシュ個人に心酔する熱狂的なファン達は、本人非公認の「アーシュ親衛隊」なる組織を作り活動しているのである。
ただしその活動内容は、様々な問題を孕んでおり…………。
「半ばストーカーみたいな事してる連中もいてなあ……例の事見られたんじゃないか」
「あー、それはあり得るっすね……それでこう、その人らから悪い虫扱いされてると?」
「たぶんな。直に何かしてくるようなら流石に手を打つか」
「いやまあ、そう言う原因なら大丈夫っすよ。会長自身に迷惑がかからなければ大したことはないかと」
ハヤトは極めて楽観的に構えていた。程度によるだろうが、嫌がらせの類は気にしないのが一番だ、と。
また、過度な嫌がらせは彼らが信奉するアーシュ自身の評判にも関わりかねない。そういった事を考えられる程度には理性がある……と思っているようだ。
「ただなあ、その親衛隊の中にはちょっと……色々な意味で厄介な子がいるんだよな」
「厄介?」
「ああ。一言で言えば──────」
「会長達の
* * *
「そろそろ会長も出て来る頃かな?」
その日の夕刻、ハヤトは校門前でアーシュが出て来るのを待っていた。
大抵の場合、生徒会の業務が終わり生徒会室を施錠して彼女が帰るのは他の生徒達が帰宅した後となる。彼はそんなアーシュを駅まで送るため、この時間まで校門前で待機している。
「──────そこの1年男子!」
「はい?」
スマホを見ながら時間を潰していたハヤトに、威勢のいい声で誰かが呼びかけて来た。声のする方を見れば、薄い金髪に赤系のショートパンツと外套らしきものが特徴的な少女が立っている。
「……えー、どちら様で」
「アーシュ様親衛隊の護衛担当・恋葉ココアだ!貴様がアーシュ様に近付こうとする不逞の輩のようだな……!」
「不逞の輩扱い!?」
思ったよりも話が通じなさそうな人間が来たことにハヤトは面食らった。制服の原型もほぼ無い格好であったため桜龍高校の生徒だと一瞬認識できなかったのもあり、とんだ不意打ちを喰らってしまった。
「あー、先輩?落ち着いてくれませんか……不逞もなにも会長には正面から告白したので文句言われる筋合い無いと思うんすけど」
「こここ告白だとっ!?麗しのアーシュ様に対してそのような恐れ知らずな……!」
「そう言われても一目惚れだったんだからしゃあないでしょうが!」
「それですぐさま告白したのか!?」
とはいえ、ハヤトも引くつもりは毛頭ない。彼の言う通り、真正面から想いを告げお友達から始めるという形でアーシュと付き合っている以上、常識的な目線であれば他人がどうこう言う筋合いは無い。
……まあ、親衛隊の一部は常識から外れた行動に出る事があるというのが多少問題ではあるのだが。
「ともかく、オレと会長はお友達から始める健全な付き合いしてるんで疚しい事は無いっす!」
「ぐぬぬ……いいやまだだ、アーシュ様に相応しいか私が見定めるまでは!」
「会長の家族でもないのに!?」
「あ、あのー……ココアさんも赤坂くんもどうしたんですか?」
「会長!」「アーシュ様!」
主張をぶつけ合っていたところに、作業を終え校舎を出たアーシュがやって来る。2人が言い争う様を見て、やってしまったかと少々頭を抱えているようだ。
「お疲れ様です会長。今日は他の皆さんは居ないと聞いてましたし、駅まで送りますよ」
「何!?アーシュ様、いけません!私が陰ながらお守りしますので、彼のような者を連れずとも……!」
「いやいやいや、それなら一緒に送ってください!おふたりとも私の大切なお友達なんですから!」
「アーシュ様がそう仰るならば……」
「大丈夫かね本当に……」
「それじゃあ、駅まで行きましょ──────」
そう言って、アーシュが校門前の道路へと歩み出たところで。
校門前に、奇妙な車が急停車した。
「へ──────」
その車は、
「…………アッ」
「アーシュ様ァァァ!?おのれ何者だ!!」
「ちょっ待っ、アレは──────」
車道に跳び出て二挺の水鉄砲を取り出すココア。それを制止しようとするハヤトの前で……ココアの姿が変貌する。
「逃がすものか!」
「んな、その姿は……先輩が言ってた……っ!」
そう、彼女こそサキトが行っていた会長達の同類──────親衛隊のドラゴン娘、恋葉ココアであった。
構えた水鉄砲から水流が放たれるが、走り去る車はすぐに射程外へと逃げ去っていく。
「なんという不覚……!アーシュ様をお助けしなくては!いざ──────」
「ええいちょっと待った!生身であのスピードに追いつけるとでも!?」
「離せー!アーシュ様を見捨てるつもりか!?」
「今から追いつく準備をするんすよ!行くぞレッドゾーン!!」
『おうよ!』
『Duel field expansion. Contract armor awakening.』
ハヤトがデュエマフォンを起動させ、2人を取り込んでデュエルフィールドが展開される。同時にハヤトの身にレッドゾーンが同化し、彼の全身が赤い装甲に覆われてゆく。
「な、それは…………!?」
「『背中に乗って!これでヤツに一気に追いつく!』」
「……っ!本当に追い付けるんだな!?」
戸惑いながらも、ココアはハヤトの背に乗った。そして、片膝を付いた彼の……レッドゾーンの脚部の車輪が音を立てて駆動する。
「『発ッッ進ッッ!』」
「うひゃぁぁぁぁあぁぁ!?」
そうして、デュエルフィールドを展開したまま轟速の侵略者が発進する。
* * *
「『目標捕捉!』」
「な、なんてスピードだ……!」
発進から数十秒もかからずに、ハヤトとココアはアーシュを攫った車……否、クリーチャーへと追いつこうとしていた。F1カーとオフロードバギーの合いの子と言った見た目をした緑色の車体に、ミスマッチにも見えるドラゴンの尾。そしてミサイルを搭載したメタリックな翼……人間の操る車でない事は明らかだ。
「『確かアイツは、ゴルギーニ系の……何つったかな。ともかく、距離を詰めてデュエルフィールド内に奴を捉える!攻撃はその後で!』」
「わ、分かった!下手をすると周りの車を巻き込みそうだからな!」
敵クリーチャーもハヤトも、一般車両が通行する道路を凄まじい速度で進んでいる。あまりの移動速度により一般へのクリーチャー警報が働く暇もないこの状況、長引かせれば非常に拙い。
「『デュエルフィールド拡大ッ!ッラァァッ!』」
「ぅうわっ!?こ、のっ!」
デュエルフィールドを拡大しクリーチャーを捉えると同時に、ハヤトは大きく跳躍した。使用者を中心に球形に展開されたフィールドは、彼の動きに併せてクリーチャー諸共に空中へと舞い上がる。
舞い上がったクリーチャーを水鉄砲で狙うココアであったが、先手を打って敵の翼からミサイルが放たれる。ハヤトは咄嗟に各部の車輪を高速回転させ、ジャイロ効果によって空中で身を捻り回避する。
「『危ねえっ!』」
「わぁっ!?あまり動くな、目が回る……っ!食らえ、アーシュスプラッシュ!」
「『何すかその技名はぁ!?』」
目が回りそうな回転の中、ココアは優れた動体視力によりクリーチャーを捉え水鉄砲を放った。並程度のクリーチャーであれば容易く撃破出来るそれは──────。
「な……っ!?」
「『無傷!?』」
敵に届く寸前、障壁のようなものに弾かれ飛び散った。
「くっ、ならばもう一度……!」
「『っ、データ照合よし……!恋葉先輩、無駄っす!奴には攻撃は効かない!』」
「何故だ!?」
「『奴はスーパーカー・ドラゴン、《ウィリデ・ゴルギーニ》……面倒な能力を持っている!』」
「ドラゴン!?アレもドラゴンなのか!?」
超獣世界の1つ、通称『GoA世界』に存在する光文明のクリーチャー……メカ・デル・ディネロ/スーパーカー・ドラゴンという車の姿をした機械の龍。それが、アーシュを攫ったクリーチャーの正体であった。
そしてウィリデ・ゴルギーニは、こうして戦う際には極めて厄介な能力を持ち合わせており……。
「『奴は攻撃した後、次の攻撃準備が整うまでの間絶対無敵状態になります!なんでどんな攻撃を当てても通用しないってわけで!』」
「はぁぁ!?何だそのズルい能力は!?」
「『デュエルで出される分には相手プレイヤーを攻めるって選択肢がありますが、対クリーチャー戦となると厄介が過ぎる能力だ……!』」
ウィリデ・ゴルギーニは登場時または攻撃時に、『自分の山札の上から1枚目をシールド化する』か『次の自分のターンのはじめまでこのクリーチャーは離れない』かのどちらかの力を選んで使用する事が出来る。プレイヤーがおらず、シールドも持たない野良クリーチャーであればその選択は実質一択、自身をバトルゾーンから離れなくする……すなわち、無敵化する事となる。
バトルで打ち勝とうと、除去能力を使おうと、バトルゾーンを離れない状態のウィリデ・ゴルギーニを倒す手段は存在しない。
「ならばどうすればいいと!?このままみすみすアーシュ様を攫わせたままにする訳には!」
「『そこはオレにお任せあれってね!なあに、こういう相手は……除去せずにどうにかするっ!』」
デュエルフィールドごと宙を舞っていた彼らは、近くのビルの屋上へと着地する。そのまま再び攻撃せんとするウィリデ・ゴルギーニより先に、ハヤトが動いた。
「『“S級侵略[轟速]”ッ!』」
ハヤトの纏う装甲が形を変える。より刺々しさを増し、各所が黒色に染まる。そして更に、その身に禁断の力を宿した槍が生え……!
「『禁断の轟速!ブラックゾォォォォンッ!!』」
「姿が変わった!?しかし攻撃は!」
「『こいつは攻撃じゃない!喰らえァ!!』」
その身に生えた2振りの禁断の槍を引き抜き、ウィリデ・ゴルギーニへと投げ放つ。それらが敵を抑え込むように屋上に突き刺さると──────。
『ガガガッ!?!?』
「『攻撃や除去効果ではない、「封印」であれば奴に通じるってね!』」
「よくやった!アーシュ様、今お助けします!」
ココアがハヤトの背から飛び降りると、完全に動作を止めたウィリデ・ゴルギーニへと近付き運転席らしき箇所に手をかける。そのまま抉じ開けようとするが、強固に閉ざされたキャノピーはなかなか開かない。
「『オレも手伝います!』」
「よし、行くぞ!せーのぉっ!!」
ハヤトとココアがタイミングを合わせて一気にキャノピーを上下に引っ張り……バキン、と音を立てて運転席が開放された。
「アーシュ様!ご無事ですか!?」
「な、何度も左右や上下に揺られて、空中に放り出されて……ちょっと気持ち悪いです……」
「『それでも大事無さそうなら良かったっす。あー、エラい目に遭った……』」
その後、数十分してDGAの処理班が駆け付けウィリデ・ゴルギーニを回収するまで、彼らはそこで時間を潰すこととなったのであった。
* * *
「お疲れ様でした、会長」
「赤坂くんも、今日はありがとうございました。それではまた明日!」
桜龍学門前駅の改札口。ハヤトは電車に乗るアーシュを送り届け、ここで別れようとしていた。
「…………赤坂ハヤト!」
「はい?」
「今日のクリーチャーは、貴様の手が無くてはアーシュ様を助けることは出来なかった……そこは感謝する」
「はあ、それはどうも……」
先程の戦いに関する礼をされ、ハヤトも礼を返す……が、そこにココアは指を突き付けた。
「しかしだ!まだアーシュ様とのお付き合いを認めた訳ではない!貴様にアーシュ様の……アーシュ様の純潔は穢させんからなぁ!」
「ちょっちょっとココアさん!?」
「話を数段階すっ飛ばさんでくださいよ!?そういうのは流石に付き合ってからだ!」
「では行きましょうアーシュ様!」
「話を聞けぇぇ!!」
ハヤトの言葉も聞かず、ココアはアーシュを連れてホームへと行ってしまった。残されたハヤトは困った顔で頭を掻きながら自身も家路に就く。
「はぁ……変な人だった……これから突っかかられ続けたら面倒だなぁ?」
──────なお、この後親衛隊内部で何らかの話が着いたのか、ココア以外の一般生徒によるハヤトへの接触はほぼ無くなった事を記しておく。
ココアによる礼であったのか、はたまたDGA隊員相手に手を出す事のリスクを考えた故かは定かではない。