彼らの戦闘の形式上、極めて厄介な相手が現れます。
金トレ蒼龍の大地イラストの擬人化団長かっこいいですなぁ……
「くっ、こいつ……!どう攻めればいい……!」
『ヒヒヒ、こんなもんか?ならこれで終わりだな……!オレ自身でダイレクトアタック!』
青い粘体を纏った男が、何体ものクリーチャーを従えもう1人の男へと迫る。
ブロッカーを展開しているものの、それらをすり抜け槍のように伸ばした粘液が、その身体を打ち据え吹き飛ばした。
「ぐぁあああぁあぁぁっ!!」
『あばよヘボデュエリスト!さあ、こっからがお楽しみってなぁ?』
「い、いやぁあぁぁああぁっ!!」
絹を裂く様な悲鳴が響き……映像が、途切れた。
* * *
『──────と、これが先日、隣の市で起こったクリーチャーとの戦闘記録映像です』
──────2024年8月9日。
栗茶市の市役所へ集められた実働部隊の3人は、少々気分が悪くなりそうな映像を見せられていた。
「……この時対処した実働部隊員はどうなった?」
『一命はとりとめ、現在入院中です。ただ、被害者の女性は……』
「……下衆だな」
リュウが極めて気分が悪そうに吐き捨てる。サキトもアンナも同意見であった。
「見る限り憑依型だね。しかし、こいつは……」
「恐らく、憑かれている人間は正気……というより、自身に憑いているクリーチャーの力を利用して犯罪を行っている」
『ええ、上層部も同じ見解ですね』
周辺の市で起こっている、連続婦女暴行事件。その犯人が、クリーチャー憑きの人間である事が判明したのだ。
そして予測される行動範囲を見る限り、いつ栗茶市に犯人が現れてもおかしくない。
「そして、戦闘の推移を見るに……こいつは、デュエマのセオリーをある程度知っている」
「正直私には相性が悪いね。ブロッカーをすり抜けられては対処法が限られて来る、厄介な相手だ」
「相性が明確に良いのは、井星さんの闇魔道具による除去コンですかね」
「そうだな、低コストでも破壊で対処できる効果持ちがいる……発見時は可能ならこちらに要請を飛ばして貰おう」
一先ずの対策を練りつつ、遭遇した場合の対処法を練っていく3人。所持しているカードプールを使えば、どうにか対策は成りそうであった。
『それと、本日より戦闘システムがアップデートされます』
「アップデート?」
『はい、これまであまり有効にできなかったバウンス系能力が、憑依型以外に対しては有効に働くよう改良されました。対象クリーチャーを確実に超獣世界へ送り返せるよう、再設定を行ったとの事です』
「それはありがたいね。こちらに再度出て来る可能性があるとはいえ、強制送還が可能になったのは良い事だ」
「水闇複合の魔道具を考えておくのもアリか……まあ、今は手に馴染んだこのデッキのままでも良いが」
「憑依型の場合はまあ、憑りつかれた人間ごと超獣世界に送ったらそれはそれで大変ですからね。仕方ないでしょう」
こうしてその日は解散となった。新たな敵に対して闘志を燃やしながらも、サキトは明日は平和に過ごせるよう祈っていた。
* * *
──────翌日、2024年8月10日。
この日はサキトにとっては誕生日であり、同時に待ちに待った「発売日」であった。
「おお、これがドギラゴンの書……!」
『ドリーム英雄譚デッキ ドギラゴンの書』……彼の相棒、ドギラゴンに関する新規カードが収録された構築済みデッキである。
自身への誕生日祝いとして、予約していたデッキを店頭で受け取ったサキトは早速新カードを吟味しデッキへ組み込んで行く。
情報解禁時、この構築済みそのままでは使いづらいと評されていたが……現状のサキトのデッキを改良するには極めて有用だ。
「──────お?おお!?シク版だっ!?」
『何ぃっ!?』
2箱目のフィルムを剥いたサキトの目に、他とは異なるドギラゴンが映る。極稀に封入されている絵違い、シークレット版の新ドギラゴンがそこにあった。
「おお、これが……!」
「なんという豪運……!売ってくれ!頼む!」
「売らんわ!これも運命、俺はこいつと一緒に戦う……っ!」
流石に緊張しながらスリーブに収め、デッキへとこの新たなドギラゴンを組み込む。
そうして新たなデッキが完成し、ひとまず試運転をするべく軽くシャッフルする。
「さぁて、誰か相手を──────、っ!」
フリー対戦相手を探し視線を巡らせたそのタイミングで、スマホのデュエマフォン・アプリから通知が出る。
内容は……あまりよろしくない。
「急用が出来た、今日は帰らせて貰います!」
「お?あ、おーい!」
引き留める他の客もいたが、それどころではない。クリーチャーの反応が、桜龍高校へと向かっている。
その上表示されたクリーチャーは……今最も警戒すべき相手であった。
* * *
夏季休業中の桜龍高校。その日は土曜日でもあったが、いくつかの運動部系は夏季の大会に向けた練習のため登校していた。
蒼斬しのぶが属する水泳部も、その一つである。
「ぷはぁっ。休憩前にもう一周行くかな……」
結局時間が取れず、あの後しのぶはサキトと会えずじまいであった。心にもやもやとした物はあったが、泳いでいる間は一旦悩みを忘れスッキリとした気分になれる。
再度泳ぎ始めようとしたところで、何か頭がむずむずとする。
「うん?何か変やな……って!?」
いつの間にやら角が伸びている。普段練習中にこうなる事はないため、彼女も戸惑っていた。
「す、すみませんちょっとお手洗いに行ってくるけん!」
「む?あ、ああ分かった。戻ったら小休憩でいいぞ!」
先輩に断りを入れると、プールから上がり、更衣室の方へしのぶは降りていく。
「(急に角が出たって事は、近くにクリーチャーがおるって事ばいね!)」
なんとなく嫌な気配を感じる方へ向かう。恐らく更衣室、それも女子の側に何かがいる。
「そこにいるのは誰なん!」
「アァ?誰か降りて来やがったのか……」
そこには、怪しげな男が一人。明らかに校内の人間ではない。
「ただの変態や不審者じゃなかね……クリーチャーに憑かれとー……?」
「ほぉう?ほうほう……なぜクリーチャーの事知ってんのか知らねえが……」
しのぶの身体を舐め回すように見る男。その瞳は欲と悪意に塗れていた。
「良いカラダしてんじゃぁねえか」
しのぶの背筋が怖気に震える。この男はどう考えても危険人物、ここで退治しなければまずいことになる。
「はぁっ!」
先手必勝とばかりに、水の手裏剣をしのぶが飛ばす。それが男に突き刺さり……。
ぬるり、とすり抜けた。
「!?どげんことね!」
威力の高い水流攻撃はここでは難しい。再度手裏剣を飛ばし、同時に忍者刀を出現させ斬り付けんとする。
『ヒヒヒ、残念だが……そいつぁオレには通じねえ』
「な、っ!」
男の身体がスライムのような粘体状になり、手裏剣がすり抜けて傷を与えず、忍者刀は粘液に包まれ抜けなくなる。
更に男が伸ばした粘液の触手により、しのぶは拘束されてしまう。
『どうやらそれなりのクリーチャーの力を持ってるようだが……俺にはパワー負けしちまうようだなぁ?』
「放し、っむぐぅ!?んんぅう───!?」
口に無理矢理スライムが入り込んで声が出せなくなる。その上、何か妙な味のする液体が流し込まれる。
絡み付かれた部分からも何かが浸透し、身体がだんだんと熱くなってゆく。
『ヒヒ、さあ、お楽しみと行こうぜ?天国へと連れてってやるからよぉ』
下劣な笑みを浮かべる男の顔を前に、恐怖が溢れ出し涙を流す。薄赤く染まる視界の中で、彼女は祈る事しか出来ずにいた。
他の部員や警備員では、太刀打ちできない。他のドラゴン娘は今日は学校におらず、いたとしてもこの男のような犯罪者と戦えるかどうか。先輩は、気付いて来てくれるか……分からない。
(たすけ、て、せんぱ──────)
それでも他に縋る物は無く、か細き一縷の望みは──────。
「でぇぇぇええありゃぁあぁぁぁっ!!」
奇跡的に、届いた。
『げぶっ!?』
光の壁が、男に叩き付けられた。シールドが持つ斥力に男は弾かれ粘液の触手が千切れ、床に投げ出されそうになったしのぶを、少年の腕が受け止めた。
「大丈夫か、蒼斬さん!」
「げほ、っかはっ!せん、ぱ……い?」
「ああ、俺だ。サキトだ!危ない所だった……良かった、間に合って」
しのぶの様子を見ながら、サキトが安堵の表情を浮かべる。
この男に憑いたクリーチャーの反応を追い、すぐさま桜龍高校へ向かったサキトは、倒れている警備員を発見して緊急事態を悟った。
そのまま居所を探り、屋外プール付近に反応を見つけ……寸での所で、更衣室内で襲われるしのぶから犯人を引きはがす事が出来たのだ。
『ヤロウ、邪魔ァしやがって……!』
「蒼斬さん、立てるか?どうにかここを離れられれば離れて欲しいけど……」
「あ、脚に力が入らんで……立てんばい……!」
「分かった、じゃあせめて俺の真後ろに。そこから動かないでいてくれよ」
シールドを展開し、手札を手にサキトが男と対峙する。
「応援は既に呼んだ、DGAのスタッフと事情説明済みの警官がじきに来る。お前はもう逃がさん!」
『ヒ、ヒヒヒ、オレの中のこいつが言ってるぜえ、ドギラゴンの契約者。女を奪うついでにテメエをぶち殺してやれってなぁ……!』
しかし、サキトは少しばかり冷や汗をかき、クリーチャーに憑かれた男は余裕の態度を崩さない。邪魔をしに割って入ったサキトを、この男は返り討ちにする自信があった。その最大の要因が………。
『オレは……《D2S 皇帝ワルスラ》!オレがいる限り、
これである。