ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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ドギラゴンは我が青春。


Ep.1:護守サキトと始まりの夜

──────遡る事2日前、2024年4月13日。

 

「っしゃ来たぁぁ!新たなドギラゴンッ!!」

 

サキトは普段から足繁く通う街のカードショップでガッツポーズを決めていた。

その日は待ちに待った、トレーディングカードゲーム「デュエル・マスターズ」の最新弾発売日。

溜めたバイト代を使い予約で2箱分購入していた彼はなんと豪運に恵まれ───新レアリティのカードを2箱から1枚ずつ引き当てるという奇跡を目の当たりにしたのであった。

 

「何だとォ!?」

「羨ましいぞこのドギラゴン使い野郎!!」

「それ売ってくれ!ぜひ此処で!頼む!」

「誰が売るかぁ!」

 

事前情報が出た時からずっと待ち焦がれた、新たなるカード。“ドギラゴン”は彼にとって思い入れのある存在だった。

小学生の頃アニメで惚れ込んだ、憧れのエースカード達の一角。当時はカードゲームは高価で手が届かなかった。

その後中学1年の頃に発売した特別なデッキ、それを小遣いを溜めて買った日から、彼はそのデッキをベースに自身のデッキを構築し使ってきた。

 

「こいつを投入して……色のバランス的にはこいつと入れ替え……こうか?よし!」

 

そうして組んだ新たなデッキの試運転……と意気込んだその時、店員がアナウンスを始めた。

 

「フリー対戦や店舗大会開始前に、本日の新弾購入者様にお配りしたQRコードをスマートフォンで読み込んでくださーい!」

「コードで取得できるページからアプリをダウンロードすることで、公式開催キャンペーンで使用できるポイントをデュエルで獲得できるようになりまーす!」

 

おおおおおお!!と店内に歓声が広がる。この手のイベントで得られるポイントは溜める事で様々な限定アイテムを交換できるものだ。

特別なイラストを使ったプレイマットに公式スリーブ……盛り上がるのは当然と言えるだろう。

 

「よし、早速ダウンロード……っと」

 

店内にはWi-Fiも完備されており、ダウンロードは少々時間はかかったが完了。サキトは直ぐにルールを読み始めるべくアプリを起動させた。

 

「おお……アニメのデュエマフォンかこれ。懐かしいなぁ」

 

起動画面にて、アニメ版に登場した携帯型のアイテム「デュエマフォン」が映りその液晶部分がズームされる。

初起動に伴い利用規約……ユーザー情報とデュエル履歴を公式がデータ収集する旨等が書かれていた。

それらを読み同意すると仕様説明のチュートリアルが始まり、画面内のボタンをタップするよう指示が出る。

 

「ほいよ……っ、んっ?」

 

タップした瞬間妙な感覚が指先に走ったような気がしたが……周りのプレイヤー達は特に変な様子は見られない。

 

(気のせいか?……っと、始まった始まった)

 

チュートリアルが進行したため、変な感覚についてはすぐに忘れてしまうのであった。

 

 

* * *

 

 

「はー、だいぶ遅くなったな。もう日が落ちてる」

 

カードショップでの対戦を終え、帰路に就くサキト。戦績はまあまあと言う所だが、新たなデッキの試運転としては良好だったと言える。

デュエル及び新パック購入によるポイントも得られて万々歳である。

 

(交換するならやっぱり特別なプレマが良いかな、好みのデザインの奴があったし……うん?)

 

交換対象のアイテムを思い返しながら歩いていると、不意にスマートフォンが震える。

手に取ってみると、デュエマフォン・アプリが通知を出しているようだった。

 

「何だこれ、要警戒?変な通知だし震えっぱなし………ん?」

 

手にしたまま別の方向を向くと、振動の強さが変化するようだ。言わばダウジングのように。

一番強く震える方向を向いて見ると。

 

「……何だアレ」

 

建物の隙間、路地へ入る道。見覚えのある場所に、緑に光る壁のような物があった。

 

「壁?カーテン?それにしちゃ……うぉっ!」

 

触れてみるとそこから水面のように波紋が広がる。異様な光景だった。

更に奇妙な事に、他の通行人達はこの光の幕?を全く気にも留めていない。

更に指を押し込んでみれば、突き抜けて向こう側へ入り込めそうだ。

 

「………よし」

 

危険な物かもしれなかったが、好奇心と興味が湧き出したサキトはその幕の向こうへ入る事を決めた。

一歩踏み出し、隔てる物を突き抜けて──────

 

 

彼の非日常が、始まった。

 

 

* * *

 

 

「………なん、だこれ」

 

「ダメだ!これ以上の足止めは厳しいっ!」

「実働部隊員はまだか!?」

「別の個所で()()()に踏み込んだ一般人救出のため交戦中!こちらへ来るにはまだかかりますっ!!」

 

機動隊と思しき数人の男性が、ネットランチャーを構えながら叫んでいる。その視線の先に、何かがいた。

 

『はぁぁぁぁ………ウザってぇ、舐めたもん使いやがって……』

 

姿は概ね人間。だがその体に銀色の装甲を身に纏い、角を生やし、赤黒い光を漏れ出させているそれはサキトの理解を超えた物だ。

しかし同時に、どこか見覚えもあった。

 

「何だ、紋様?いや──────文字?」

 

漏れ出す光が空中に描き出した紋様。それを見た時彼の記憶が刺激され、知識を呼び起こす。

 

「禁断、文字?そんなまさか……っ!」

 

スマホを取り出しそれを確認しようとしたところで、起動し続けていたアプリの画面に一つのカードが表示されている事に気付いた。

 

《D2V2 禁断のギガトロン》

 

目の前の何者かが纏う装甲やそこから生えた機構の特徴は、正しくこのクリーチャーと一致していた。

 

『そんなもんで………オレが止められると思うなァッ!!!!』

 

ネット弾を引き千切り、ギガトロンの力を持つ男が突進する。その軌道にはサキトと一人の機動隊員───

 

「危ないっ!」

 

咄嗟に身体が動いていた。

サキトはタックルをかけ隊員を押し倒し、ギリギリで二人とも回避する事が出来た。

光の幕に突っ込んだ男は全身にスパークを纏いながら止まる。幕の外へは出られないようだ。

 

「なっ、一般人!?そんな、ここに入れるはずが……!」

「あ……ああ!さっき報告があった、この地域で発見された二人目の候補!」

「とりあえずよく分からないこと言ってないで、早くここから……!」

 

ギガトロン男が再び彼らの方を向く。このままではまた突進を食らうだろう。

 

「キミ!デュエマフォン・アプリを……起動しているな!デュエマのデッキは!?」

「はい!?も、持ってますけど!」

「アプリのホーム画面を開いて、光っているボタンを押してくれ!」

 

『オラぁぁッ!!』

 

突っ込んで来るギガトロン男。それを見ながら、訳も分からずサキトはボタンを押した。

 

『Duel field overwrite. Dueltector summoning』

 

周囲を包む光の幕が、緑から赤に変わってゆく。

そして、ギガトロン男の眼前に突如光の壁が現れた。不意に現れた障害物に顔面からぶつかり弾き飛ばされる。

 

『ぶげっ!?』

「こ、これは……っ」

 

気付けばサキトは、赤い装甲を身に着けていた。左腕にはデッキが収まり、ドローを待つかのように淡く光っている。

 

「すまない、情けないがあれを倒せるのはこの場では君だけだ!頼む、カードを使って、あれと戦って欲しい!」

「んな、カードを、デュエマを使ってって……」

 

デュエマ原作のアニメや漫画のような、「真のデュエル」。その危険性にサキトは思い当たる。

敗北は、下手をすれば死に繋がる。あの様子では相手はこちらを殺さずには済ませてくれないだろう。

 

(怖え、ヤバすぎる!………っ、けど!)

 

退路は無い。暴れまわるこいつをどうにかしなければ、何が起こるかも分からない。ならば。

 

「やるしかないなら……!頼む、応えてくれよ、俺のデッキ!!」

 

5枚の手札をデッキから引き抜く。現れた光の壁は5枚に増え、彼にとってある意味慣れ親しんだ光景を見せる。

 

「勝負だっ!俺のターン、《ボルシャック・栄光・ルピア》をマナゾーンへ!」

 

初手は自然を含む多色マナを溜める。彼のデッキにとって最も優先する動きで、次のターン以降に備えるもの。

しかし──────これは、普通のデュエルとは全く異なるものだ。

 

『オラァァァッ!!』

「っ!?」

 

ギガトロン男は、カードをプレイしない。クリーチャーである自身の力で、殴りかかって来る。

シールドが2枚破壊され、その破片がサキト達を襲う。

 

「うわぁぁぁあっ!!」

「ぐっぅ、1ターン目からWブレイカーが殴って来るのかよ、冗談キツイぜ……!」

 

幾つかの切り傷を身体に負いながらも、カードをドローする。

ブレイクされ手札に加わった2枚は、《龍装 チュリス》と2枚目の栄光ルピア。シールドトリガーは無い。

 

「マナ加速も無いか……なら《ボルシャック・サイバーエクス》をマナゾーンへ!」

 

再びマナを溜める。動き出すには最速でもあと1ターン、サキトの傷も心もヒリついて来る。

 

『割り込んできて生意気な野郎だ……っォォォオオオオオ!!』

「何!?」

 

ギガトロン男が吠えると、アスファルトを突き破り巨大な手が生えて来る。

掌の上に浮かぶのは特徴的な「D」のマーク……これもサキトには見覚えがある。

 

「《業火の禁断エリア》!?D2フィールドかっ!」

 

D2フィールドの支配下において、ギガトロンは真価を発揮する。

ギガトロン男が再び突撃してくると同時に、掌の上に黒い穴が開きそこから新たなクリーチャーが飛び出て来た。白い人型の禁断の使徒《禁断C マーモ》だろう。

 

「ぐあぁっ!まずい、これ以上頭数を増やされたら……っ!!」

 

シールドが再び2枚砕かれる。現れたカードは──────

 

「っ来たか!それも今最高に欲しかった奴が……!シールドトリガー、発動ッ!!」

 

砕けたシールドが光を放つと、巨大な腕が消し飛んで、路地に神社を思わせる柱が立ち並んでゆく。

 

「《Dの牢閣 メメント守神宮》っ!こいつが場に出た事で業火の禁断エリアは消える!!」

『チィッ!?』

「更に!《切札勝太&カツキング -熱血の物語-》の革命2、発動!シールドが2枚以下の時、こいつはシールドトリガーとなるっ!バトルゾーンに現れろっ!」

 

かつてのデュエマの主人公、切札勝太の小学生時代のエースであったカツキングが実体化する。

その雄々しい姿が、細かな傷を負ったサキトを奮い立たせてくれる。

 

「カツキングの登場時能力!山札の上から5枚めくり、その中の1枚を相手に見せて手札に加える。その他の4枚は好きな順番でデッキの1番下に!」

 

公開したのは2枚目の《ボルシャック・ドギラゴン》。これで万一の備えにも出来るはず、そして。

 

「そしてこの効果で手札に加えたカードが火か自然なら、相手クリーチャーを1体選び手札へ戻してもよい!選択するのは「待ってくれっ!!」っ!?何ですかいったい!?」

 

口を挟んできた機動隊員に文句を言いたくなるサキトだったが、隊員側も必死に訴えて来る。

 

「アレはクリーチャーに憑りつかれた人間だ!それに対し『持ち主の手札に戻す』効果を適用した場合……憑依元の人間の住居に送還されるケースがあるんだ!」

「んな、マジか……っ!?」

「通常クリーチャーでも、どこへ飛ばされるのかははっきりしていない……出来ればバウンスは避けてくれ!」

「つまり、クリーチャーで殴るか破壊して対処しないといけない、って訳か……仕方ない、手札へ戻す効果は任意だ、作動させない!」

 

今の手札では、パワーが足りない。再び相手のフィールドを展開されれば戦闘で倒すのは困難になりかねない。

決着を付けるには……引き当てるしか道はない。

 

「頼む、来てくれよ──────俺の、切札ッ!!」

 

デッキに添えた右手が、一瞬光った気がした。

力強く引いたデッキトップ、そのカードは………

 

「──────来たっ!行くぞ、カツキングでギガトロンを攻撃!からのっ!」

 

カツキングが攻撃を終え隙を晒すギガトロン男へ迫る。しかし、今のカツキングではギガトロンにパワーが及ばない。

それをひっくり返す、相棒が彼の手へと舞い込んだ。

 

「“革命チェンジ”だ!現れろ、蒼き守護神──────」

 

カツキングが跳躍し、手を振り上げる。

そこにもう一体の竜が現れ、バトンタッチするようにその手へと触れた。

大地へ降り立ったのは、紅白の鎧と蒼い外套を纏い、七支刀を咥え振りかざす気高き英雄の竜───

 

「ドギラゴン(ノヴァ)ッ!!」

『ギァァアアァアァァッ!!』

 

ドギラゴンの咆哮が空気を震わせる。ギガトロンに憑りつかれた男は、その威圧感にたじろいだ。

 

「ファイナル革命発動っ!デッキの上から4枚をめくり、その中から進化ではない多色クリーチャーを、コスト6以内の範囲で2体まで場に出す!」

 

4枚のカードが宙を舞う。露わになったカードは《メンデルスゾーン》《鳳翔竜騎ソウルピアレイジ》《ボルシャック・栄光・ルピア》、そして最後に。

 

「《ボルシャック・サイバーエクス》をバトルゾーンへ!登場時能力により、相手に自身の場の一番パワーが低いクリーチャーを1体選ばせて破壊させる!当然破壊されるのは禁断Cマーモ!」

 

赤と青の巨大な手甲を身に着けた竜が現れ、禁断の使徒を炎と水で消し飛ばす。

そして、ドギラゴンの刃がギガトロンに叩き込まれる。

 

「───完・全・決・着!」

『ぐぁあぁぁぁぁあっ!!』

 

切り伏せられたギガトロン男から、赤と黒の粒子のような物が抜けていく。それが治まった後には、気を失い倒れ伏した男性と宝石のような物体が残った。

 

「つ………っかれた、ぁ……」

 

戦いが終わり、気が抜けて地面へへたり込むサキト。そんな彼を機動隊員たちが囲む。

 

「ありがとう、本当に助かった!」「もうだめかと思ったよ……!」「ところで君の怪我は!?」

「ああ、大丈夫そうっす……それより、一体何なんです?さっきの奴も、皆さんも」

「それについては……明日は空いているかい?」

「ええまあ、一応は」

「では13時に市役所に来て欲しい。そこで詳しい説明をしよう。それと、これを」

 

隊員が名刺を渡して来る。そこには、彼らの組織名が書かれていた。

 

「私達はDGA、あのようなクリーチャーと戦える人間を探し、集めているんだ。是非……君にも力を貸して欲しい」




クリーチャーとの直接戦闘は、通常のデュエルと異なる要素が多くなります。
「相手プレイヤー」がいないために攻撃できる対象がクリーチャーのみである事などが代表例でしょうか。
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