ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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ネタ回です。紛う事なきネタ回です。模擬訓練と書いてシミュレーションと読む。


Ep.28:護守サキトと恋の模擬訓練

「──────は?」

 

──────2024年■月■日。

目が覚めると、サキトは桜が満開になった桜龍高校の正門前に立っていた。

 

「いやまてまて今は9月だったはず……また変な夢か……?」

『夢とも言えるし異空間とも言える!ようこそデュエリスト君!』

「うわ何だ!?」

 

天から声がする。見れば、金色の鎧を纏った目隠れヘアーの男が空に映し出されている。周りの人間は全く気付いた様子も見せないが……。

 

「《龍覇 ラブエース》?お前がやってるのか!?何を考えてこんな事を!」

『ははは、君達人間の愛の形を様々な形で見せて欲しいだけさ』

「なんつー傍迷惑な!ええい、具体的にどうしろってんだ……!」

『君と、君に関わりあるドラゴンの力を与えられた少女達をこの空間に呼んでいる。君には彼女達の好感度を上げて、“攻略”してもらうよ!名付けて「ドラゴン娘の恋の心絵(メモリー)」!』

「何やってんだお前ェッ!!」

 

リアルギャルゲー空間を作り出して引きずり込んだ人間を攻略キャラにするとは、下手に攻撃してくる奴より性質が悪い。というか背景ストーリーのキャラとは大幅に違い過ぎる。人間世界でなんか変な物でも見てバグったのだろうか?

 

『彼女達の好感度を上げるには───デュエマだ!デュエマの対戦で勝利し好感度を上げたまえ!まあ他にもプレゼントをあげたりも出来るけどね』

「なんでデュエマで好感度が上がるんだよ!?しかも勝つと好感度上がるの!?」

『そして好感度が一定の値になれば、イベントが発生する。立ちはだかる障害をタッグデュエマで乗り切るのだ!全ての障害を越えた時、伝説のフィオナの木の下で彼女らと結ばれるだろう!』

「お前K〇NAMIとテ〇キーにしばかれて来い!!」

 

どこぞのカードゲームもできるギャルゲーか!?と絶叫するサキト。流石にプレイ経験は無いが、噂は幾度も耳にしたある意味伝説のシリーズである。

 

『ああ、それと彼女達は基本的に私が布いたルール通りの事しか出来ないが、攻略する事で一人ずつ現実の記憶を取り戻して自由に動けるようになるぞ!では頑張りたまえ!』

「ふざけるなァーッ!!」

 

空に映った像は消えていき、サキトの叫びのみが虚しく響くのであった。

 

 

* * *

 

 

「早くなんとかしねえと……しかしどこから手を付けるか……!」

 

幸いにしてリアルで持っているデッキやカード資産は持ち込まれているようだが、まず肝心の攻略対象が何人いて校内のどこにいるのやらだ。

 

「ともかく攻略していくとして、優先すべきなのは……」

『護守先輩?どうしたの?』

「んあ?」

 

いつの間にやらゲーム部の部室まで自然に足を運んでいた。部室内にいた∞が、サキトへと声をかけて来る。

 

「ええと───ってうお!?」

 

返事をしようとした瞬間、なにやら目の前に文字と枠が浮かび上がって来た。これは──────。

 

「選択肢ウィンドウって、マジでギャルゲーだなおい……!」

 

デュエマする、会話する、プレゼントする、連れ歩く、何もしないという選択肢が書かれたウィンドウが現れた。この選択肢で話を進めろというのか?

 

「プレゼント出来そうな物は……持ってねえ!会話かデュエマで稼げという事か……!」

 

選択肢を選び、デュエマを選択する。ここまでゲーム的な空間なら彼女にまず協力を仰ぐのが良いはずだ。

問題は、勝てるかどうか。やたら強いデッキをぶん回してくる可能性は十分にある、用心しなくては。

 

『デュエマ?分かった、相手になる』

「ありがとう、それじゃあ……」

 

机の上にそれぞれのデッキを置き、シールドを設置する。この空間では彼女も慣れた手付きでカードを扱っている……一筋縄では行かないかもしれない。

 

「『デュエマスタート!』」

 

 

* * *

 

 

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* * *

 

 

「……こういう時は、ちゃんと自分の口で言いたい。───先輩の事が、好きなんだ。付き合ってくれる……?」

 

電子音声ではない自身の声で、∞が告白の言葉を紡ぐ。普段無表情な∞が、顔を赤らめて見つめて来る様は中々破壊力が高い。サキトも一瞬本気でドキッとしかけてしまう。

 

「(いかんいかん!これはゲーム、あくまで彼女はルールに従って台詞言ってるだけだ、落ち着け……!)って、う、ぉおぉっ!?」

 

彼女のイベントをどうにか完遂すると、世界が暗転して最初の桜が舞う校門前に戻される。次の攻略対象を探せという事になるだろう。

 

「はぁ、はぁ……っ!よう、やっと1人か……!」

 

強かった、フリーのデュエルもイベントデュエルもやたら強かった。その上好感度上げのため連戦してだいぶ疲労が来ている。

 

「ともかく、もう一度帝王坂さんに接触してどうなったか確かめないと……!」

 

まずはゲーム部部室へと急ぐ。1周目で彼女がそこにいたのだから、今回もそこにいるはずだ。

 

「帝王坂さん、いるか!?」

「………」

 

部室の扉を開くとすぐに∞の姿が目に入る。

 

「えっと、その……ちゃんと意識とか記憶とか戻ってるよな」

『うん、先輩、色々と大変みたいだね』

 

どうやら現実の記憶を取り戻し、事態を把握してくれたらしい。記憶を取り戻したらそのまま退場するとかでは無くて助かったと言えるだろうか。

 

『あと、さっきの事は忘れて。いい?』

「お、おう。いやまあ本来の意志に関係なくあんなん演じさせられるのは嫌だよな、うん」

『それで、私は何をすればいい?』

「まず、攻略対象の数と効率のいい好感度稼ぎのチャート立てる所からかな……調べられる?」

『任せて。後、こんな事も出来そう』

「へ?」

 

彼女がウィンドウを開き、サキトへと見せて来る。そこには、ある意味で攻略の助けになりそうな項目が表示されていた。

 

『殿堂カード解禁モード』

 

 

* * *

 

 

「うおお《ヘブンズ・フォース》!《爆龍覇 ヒビキ》を場に!登場時能力で《爆熱剣 バトライ刃》を装備!攻撃だぁぁああ!!」

 

∞の協力により殿堂ゼロデッキを解禁したサキトは、無法なカードパワーを使いひたすらデュエルで好感度を稼いでゆく。

デュエルで得たポイントでプレゼントを入手し、それぞれドラゴン娘の皆に相性の良いプレゼントも渡してゆく。

連戦の疲労で箍が外れたのか、サキトのテンションはおかしくなっていた。

 

「これが【連ドラグナー】!禁断(殿堂ゼロ)の力だぁぁああ!!」

「先輩落ち着いて下さい!目が危ない感じになってますよ!?」

 

義務感が混じるとゲームを遊ぶに当たって碌な事にならない、なので皆も気を付けて欲しい。

さておき、強力なデッキと効率化のお陰で順調に攻略は進み、既にアーシュ、メガ、ジュラ子、ゼオスと半分ほどのドラゴン娘が解放された。色々と気恥ずかしくなってかジュラ子はルート攻略後接触してこないが……。

 

「えー……総勢10人だからあと5人だね、頑張ってせんぱい!」

「これあとで現実で気まずくならないと良いなぁ……!」

『先輩以外は記憶が消えるよう設定されてるみたいだから、大丈夫なはず』

「俺の記憶も消してくれ!?」

 

意外な一面が見れると言えば聞こえは良いが、現実に知っている相手をこうして攻略するというのは、勝手に他人のプライベートを覗いている気がしてあまり良い気がしない。

 

「アニメや原作のデュエマキャラ相手ならまだ悩まなかったんだがなぁ……!」

「ソレだと攻略するのがほぼ小学生になってしまいマスよ?」

「それはちょっと絵面が問題ありますね……」

『ところで、しのぶの所には行かないの?』

「あー……しのぶは最後に行くつもりだった」

「え、なんで?付き合い始めたんだよね?真っ先に行くかと思ってたけど」

 

その言葉を聞くとサキトは少しばかり遠い目になる。

 

「……例えば皆に恋人がいたとしてさ、その相手が事情があるとはいえ他の女子を口説いて回るような光景をずっと見せられ続けたら……どう思う?」

「「「「………」」」」

「俺だったら正直モヤっと来る気持ちを抑えられそうにないから、しのぶは最後にしたいかな……と思ってるんだけどダメかね」

「それはまあ確かに、私だったら嫌かな……」

「我慢できそうにないデスね……」

 

そんな語らいをしながら一旦の休憩を終え、食事も済ませて次の攻略へ向かう。全くなんとも厄介なゲームだろうか。

 

 

* * *

 

 

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* * *

 

 

「∞ちゃんへの『好き』とも違う、この気持ち……やっと分かったばい……!うちは、先輩のことば好きやけんね!」

「(2度目の告白というのもなんだか変な感じだなぁ)」

 

その後も連戦し続け、漸くしのぶのルートのラストへと辿り着いた。最後ばかりは少しゆっくりとした進行になってしまったのは許して欲しい。

 

「ああ、俺も好きだ……!」

「良かった……!これからよろしゅうお願いします!」

 

何にせよ良かった、これで皆無事に解放される……と、思った瞬間。

 

世界が、また暗転する。

 

「なにぃぃ!?」

 

──────11度目の、春の校門前。どうしてこうなったか分からず、急いでゲーム部へと向かう。

 

「帝王坂さん!ど、どういう事だ!?」

「先輩!?これって一体どげな事と!?」

「しのぶも来たのか……!」

 

他の皆も続々と集まって来る。その間に∞は解析を急ぎ、一つの結論を導き出す。

 

『先輩。どうやら……全員攻略し終わった事で、隠しキャラが現れたみたい』

「「「「「「「「「「隠しキャラァ!?」」」」」」」」」」

 

何という事だ、最後までやり終えたと思ったら新たなキャラクター登場のフラグとなっていたとは。

 

「そ、その隠しキャラはどこに?」

『この場所は……私達が使ってた空き教室だね』

「むぅ、あそこか………儂ら以外にそこに訪れる者がいるというのか?」

「じ、事情がよう分かっとらんっちゃけど……さっきまでのといい、先輩は何ばしよーと?」

『恋愛ゲームの主人公として攻略させられてるよ……しのぶのために順番は最後に回してたんだけど、こうなるなんてね』

「ともかく行ってくる、モニタリングとアドバイスを頼む……!」

 

急いでアオハル組が使っていた空き教室へ向かう。扉を開くと、骨で出来た翼や尻尾の生えた、見た事もないドラゴン娘が這いつくばっていた。

 

「くっ!?人間だと……!このような、半端でおかしな解放をされた様を見られるとは……!」

「だ、誰だ……?」

 

『あれ?なんか……微妙に見覚えない?』

『いやいやメガ、そないな訳……』

『いいえ、ジュラ子もどこか、deja vuを感じますわ』

 

モニターで見守るドラゴン娘達も、妙な既視感を覚えるその少女。サキトは恐る恐る近付いて様子を観察し……。

 

「っ!?ま、まさか……黒龍神……?」

「な、なぜワタシの事を!?」

 

『モ……モルナルクぅッ!?』

 

 

* * *

 

 

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* * *

 

 

「お前のような人間にこの身を気遣われるなど、情けない……」

 

 

「なかなか大したものだ……クリーチャー達の力を、こうして扱うとはな」

 

 

「……お前の生命を宝石にすることも考えたが、何故か気乗りがせぬ。何故だろうな……」

 

 

「抗うな!ワタシはお前を、ドラゴンにする!そして、悠久の時を……お前と──────!」

 

 

「そうか……我らより短い命だからこそ、ヒトは瞬く間に強く大きく成長するのだな……」

「頼みがある。お前のその命尽きる時まで、ワタシが傍で見守る事を……許してくれるか……?」

 

 

* * *

 

 

「お、終わった……!妙に力入ってた気がしたぞ最後のシナリオ……!」

 

自ら復活の為の力を集めるべく奮闘するモルナルクと、それを支えるため共にデュエルするという流れ。そして、最後は彼女?自身と、一騎討ちの末に真の絆と愛を結ぶ。

どんな意図があってこのシナリオをぶち込んだのか製作者に問い詰めたい。

ともかく全てが終わり、ドラゴン娘達とサキトは白い謎空間にいつの間にか立っていた。

 

「お、終わったのか?」

「恥ずかしい思いをさせられたでし……!」

『やあやあお疲れ様!素晴らしい愛の物語たちだったよ!』

「うっせえ!早く皆を解放しろ!」

「先輩、だいぶ荒くなってますね……」

「まあ皆助けるために何度も何度も周回したみたいやからね……」

 

こんな所に来たという事はとうとう全て終わったはず。ようやく解放される、そう思っているサキトであったが。

 

『では今度は、「ドラゴン娘の恋の心絵(メモリー)X-rated」の時間だ!全シーンを回収して貰おう!』

「はぁあぁぁ!?」

 

この日最大の叫び声を上げるサキト。まあ当然の反応と言えよう。

 

「∞ちゃん、X-ratedってどげなもんと?」

『いわゆる……成人向けだよ。先輩と私達が[封印]して[封印]するようなシーンを記録しろって事になる』

「ぅえぇぇぇぇええ!?」

『さあ、是非君達の愛の営みを!さあ!!』

『Contract armor awakening.』

「いい加減にしろォォォォォ!!」

『どぱがっ!?』

 

ドギラゴンとの契約形態になったサキトが、盾を持った左腕で強烈なアッパーカットを決める。天高く飛ばされたラブエースが何かにぶつかると、白い世界に罅が入り──────。

 

 

* * *

 

 

翌日、無事に目を覚ましたサキトは登校後皆にそれとなく確認したが、全員何も覚えていなかったようだ。自分だけ記憶があるのは良かったのか悪かったのか……。

 

「いや、悪いなたぶん。ほんと酷い目に遭った………寝た気もしなかったし今日は早めに帰ってゆっくりしよう……」

 

今日ばかりは部活を早めに抜け、帰って休むことを決めるサキトであった。

 

──────なお。

 

『全く、あのような妙な夢を見るとは……我ながら何の気の迷いなのだ、一体』

 

夢の記憶を残した、もう1人の存在については……一切気付くことは無かったそうな。

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