ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

31 / 145
※この小説に登場するキャラクターは実在の人物、地名、団体には一切関係ございません──────無いったら無いんだってば。


Ep.29:護守サキトと実働部隊小話

「……少しばかり暇だな」

「そうだね……」

 

──────2024年9月8日。

日曜で職員も利用者もあまり居ない栗茶市役所にて、定例報告に集まったサキト、アンナ、リュウは暇を持て余していた。

報告が早めに終わってしまい、この後実働部隊向けに行われる装備のアップグレードに関する説明会の時刻まで、時間が空いている。

 

「こういうとこで何もやることないと逆に落ち着かないですね……どうしたもんか」

「……そういえば、先日うちの大学の構内に不審者が出たと騒ぎになってな」

「へえ?」

「不審者ですか」

 

リュウが切り出した話に、夏休み中の事件を思い出す。またあのような犯罪者でも出たのか?とサキトは警戒するが。

 

「とても微弱ながらクリーチャーの反応もあってな、その騒ぎの元を見に行ったわけだが」

「そこには何が?」

「ああ、そこには……」

 

ごくり、と唾を飲む音。そして。

 

「……全身タイツにマントを羽織り、デュエマのデッキ型の被り物をした男が」

「《デュエマン》じゃねえか!!」

 

思わずツッコミを入れるサキト。

デュエマンとは、かつてデュエマのCMに登場していた謎のマスコットキャラクター。外見はリュウが言った通りのものであり、デュエマのルールを分からず子供たちにツッコまれるという役柄であった。クリーチャーとしてカード化もされている。

 

「それでそのデュエマン、どうしたんだい?」

「戦意や害意はなかったが放置する訳にも行かんので、捕縛してDGAの本部に送って貰った。今はもう送還されているだろう」

「そんなんまでクリーチャーとしてこっちに来る可能性あるのか……」

「……まあそういう訳で、お前達も何か変なクリーチャーに遭った経験の1つや2つあるだろう。それを肴に暇を潰さないか」

「なるほどね……それなら私も1つ」

「天道さんもそういうのあるんですか」

「ああ、先々月だったかな、会社の昼休みに外へ出て食事に行く所で、道路に人混みが出来ていたんだ」

「ほう」

 

先々月とくれば7月頃。夏真っ盛りの時期に街角で何が起こっていたのか……。

 

「何があるのか見てみたら、《トランプ・だいとうりょう》が街頭演説を」

「ちょっとその話題ヤバくないですか!?」

 

……《トランプ・だいとうりょう》。コロコロコミック等で行われた読者公募のクリーチャーイラスト採用企画で生まれたクリーチャーである。パロディ元は言わずもがな。

パワー52000という高火力に、シールドを全て破壊するワールド・ブレイカー、更に自身が指定したシールドがある限り攻撃時相手全体を除去するという能力を持つコストは重いが強力なクリーチャーだ。

野良クリーチャーであればシールドを持たないため除去能力は使えないが、それでも高パワーは脅威と言える。

……パワー24000を超えるクリーチャーは全てワールド・ブレイカーとなるので妥当ではあるのだが、この名前でワールド・ブレイカー持ちというのはブラックジョークの類に聞こえてしまう。

 

「パワーも大きく放置すると危険そうだったからね、フィールドを形状調節して路地裏に引き込んで戦ったよ。初手にウェルキウスとゲンムエンペラーが来ていてくれて助かったね」

「なるほど、暗殺成功したわけだな」

「だからヤバいですってそれ!?」

 

積極的にブラックジョークを重ねて来るリュウに頭を抱えるサキトであった。

 

「それで、護守君は何かエピソードは無いのかい?」

「あー……まあ一つ、あると言えばあります。あれは先月の中頃で──────」

 

何があったか話しつつ、サキトは当時の出来事を回想する。

 

 

* * *

 

 

──────2024年8月19日。

サキトはその日、母親の鐘凜に付き添い都内のデパートに買い物へとやって来ていた。

 

「あと買うものはどんくらい?」

「服は必要なものは買えたから、後は地下でお菓子でも買っていこうかしら。しのぶさん、遅くても明後日にはお家に帰って来るでしょう?」

「そうだね、明日インターハイが終わって、応援から戻って来るって」

「遠出して慣れない環境で数日過ごすのは大変でしょうし、美味しいお菓子で癒してあげましょうね」

 

そうして、デパ地下でお菓子売り場を見て回る。夏も終盤という時期、水饅頭や水羊羹のような涼やかさを感じる菓子がやはり目立ち、それらを買ってゆく事にした。

 

「ん……今日ここの催事場でヒーローショーやるんだ」

「あら、それで今日はお子さん連れの方も多いのねえ。見ていく?」

「いやいや、流石にそんな歳じゃ……ん?げっ」

 

スマホが急に震え出す。手に取ってみると、小さなものだがクリーチャーの反応があった。それも、座標はこのデパート内、上の階にいる。

 

「どうしたの?」

「ごめん母さん、ちょっと案件が……このデパート内っぽいから、たぶんすぐ戻れるとは思うんだけど」

「あら……分かったわ、気を付けて行ってきてね」

「出来る限りすぐ戻るから!」

 

エレベーターに乗り、上の階を目指す。クリーチャーのいる階に近付くごとに、その詳細が判別され始めた。

 

「(出現してるクリーチャーは……《光線人形イメリウム》?強いクリーチャーじゃないが……)」

 

光線人形イメリウム。コスト3パワー3000で、特殊能力を一切持たない……所謂「バニラ」と呼ばれるタイプの闇のクリーチャーだ。

デスパペットという種族で、その名の通り糸で操られる人形のような外見をしているのだが、イメリウムは極めて特徴的な姿をしていると言える。

……長い歴史を持つヒーロー、ウ〇トラシリーズの人気キャラのパロディクリーチャーなのである。

なお、このクリーチャーのリメイク元と言える古いカードに《光線人形ストリウム》という物もある。こちらの元ネタも名前でお察しください。

 

「(まあ一般人にとっちゃ一応危険ではあるが、こいつの目的は何だ……?)」

 

目的の階に着くと、エレベーターを降りて反応のある方向へと向かう。どんどん催事場の近くへと反応が近付き、ショーを見る子供たちの歓声が聞こえて来る。

 

「何だこいつ、どこを目指して……ん?」

 

ふと、壁に貼られたポスターが目に映る。今日行われるヒーローショー……ウ〇トラマン達のステージだ。

 

「………おいおいおいおいいやまさか!?」

 

今日登場するヒーローの一覧を見て、サキトは嫌な予感に駆られた──────イメリウムの元ネタになったヒーローが出ている。

 

「本物を襲撃するパチモンとか洒落にならんぞ……!」

 

とにかく走り、クリーチャー反応へと近づいてゆく。催事場の裏手、舞台裏の入り口に立つ影を見つけた。扉を強く叩いて中からスタッフを呼び出そうとしていた。

 

『誰だショーの最中に……はーい』

「いかん!」

 

扉の前でイメリウムが腕にマナを収束して行く。扉を開いた所に光線を撃ち込む気だ。

 

『どちらさ──────』

「だあらっしゃぁぁぁあああ!!」

 

開く直前にタックルを食らわせた。同時にデュエルフィールドを展開し、スタッフからその姿を隠す事に成功する。

 

「何だ?誰もいない……?」

 

 

* * *

 

 

「どわぁあぁっ!!」

 

フィールドの内壁を、イメリウムが放った光線が跳ねまわる。直前まで溜めていたエネルギーが暴発するように放たれたためだ。

 

『ブラックホールが吹き荒れるぜ!』

「ええいやめろ元ネタの台詞を言うのは!デュエルだっ!!」

『Dueltector summoning』

 

デュエルテクターを展開し、シールドによって光線が弾かれる。戦いはここからだ。

 

「俺のターン!友情地龍ルピア・ターンをマナへ!」

『デェエヤァッ!!』

 

マナチャージを終えたところで、イメリウムが光線を放ちシールドを1枚砕く。ダブルブレイカーでもないイメリウム単体であれば、はっきり言ってかなり余裕がある。

 

「つぅ、俺のターン!ボルシャック・ドギラゴンをマナへ送りメンデルスゾーン発動!デッキの上から2枚……ち、ホーリーグレイス1枚をマナへ!」

 

2枚の内1枚がメンデルスゾーンで被りを起こし、墓地へ送られる。現在マナは3枚、本命を呼ぶにはもう少しかかる。

 

『食らえ、もう一発!』

 

再びシールドが1枚砕ける。手札へとやってきたのはバルチュリス、シールドトリガーは無い。

 

「俺のターン、ハムカツマンをマナへ送り、ルピアターンをバトルゾーンへ!効果によりデッキから2枚をマナへ送り、マナゾーンから1枚、王道の革命ドギラゴンをデッキトップへ!」

『ちっ、オレより強いパワー持ちか……なら攻撃はやめだ!』

「判断力はあるのか……ならばこっちのターンだ!」

 

現在の場とマナ、そして手札を見てサキトが笑う。勝負はこれで決まりだ。

 

「バルチュリスをマナへ送り……ホーリーグレイスを召喚っ!効果によりお前をタップする!」

『うぉおお!?』

「そしてルピアターンで攻撃時……革命チェンジだっ!」

 

ルピア・ターンがジャンプすると光に包まれ、そこからクリーチャーが飛び出して来る。人型に近い機械の身体、脚には車両のホイール、背には鋼鉄の翼を持つそれは、ドギラゴンの宿敵の平行世界における姿。

 

「《轟く革命 レッドギラゾーン》!!」

『ぶっちぎるぜぇぇぇぇえっ!!』

『う、お、あぁああぁっ!!』

 

その拳がイメリウムへと叩き込まれ、闇の人形はバラバラに砕け散った──────。

 

 

* * *

 

 

「いやぁあの時は焦りましたよ、あれがステージに出たりしたらえらい事になりそうでしたから」

「『にせウ〇トラマン、ヒーローショーを襲撃!?』か……絵面は笑えるかもしれんが事後処理が厄介だったろうな」

 

ヒーローショーは一般客がカメラ撮影している場合もある、ネットに上げられる可能性もあるので極めて厄介だった。

 

「あの手の元が分かりやすすぎるパロディクリーチャーが出てきたうえ人の多い所で騒ぎを起こしたら、制作側も厄介な問題を抱えるかもだからね。手早く処理できたのは何よりだよ」

「コラボカードなんかも厄介になりそうで怖いですよ俺は」

「全くだ……む、そろそろ時間だな」

「それじゃあ会議室に入ろうか。新機能の説明もあるだろう、楽しみだね」

 

リュウの言う通り、説明会の時間が近い。3人で会話を続けながら会議室へ入ってゆく。

 

「そういやこの前秋葉原で別地域の実働部隊員から言われたんですけど、バイクの免許持っておくと良いとか」

「ほう?新装備でも来るのか?」

「バイクや車で部隊の行動範囲の拡大でもするのかもしれないね。まあ、その辺の説明が今日あるかは分からないかな」

 

そうして席へ座ると、時間になりスクリーンに本部からの映像中継が映し出される。この日の集まりの本番、長い説明会が始まった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。