ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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咖喱麵麭……一体何ーパンなんだ……


Ep.30:ドラゴン娘と咖喱麵麭事件

「ふぅ、ちょっと小腹が空いたな……」

 

──────2024年9月11日。

3限と4限の間の休み時間、サキトは教室移動の前に校内の連絡通路へと向かっていた。

その時間と昼休みの間、桜龍高校にはパン屋による総菜パンの出張販売が行われており、食べ盛りの学生たちから人気を博していた。

 

「4限終わりまで保たせたいし、買ってくかな。カレーパンは結構美味いし」

『───レー──ン──────』

「……ん?」

 

少しばかり浮かれながら廊下を歩くサキトであったが、何やら妙な音……いや、声が聞こえた気がして立ち止まる。

 

『カ───パン───』

「何だ?誰の声……いや、何か聞き覚えが──────」

 

 

 

『───カレーパンはどこじゃぁぁぁ!』

「どわぁぁああああああっ!?!?!?」

 

 

* * *

 

 

昼休みの始まり頃、連絡通路の販売所に生徒達が集まっているのだが……何やら騒がしい様子だった。

 

「何かあったんですか?」

「あ、会長。いや、実は人気のパンが何故か完売してて……」

「いつもならこの時間でも半分くらいは残ってるはずなのに、今日は1個も残ってなかったんですよ」

「えー、何が売り切れてるの?」

「カレーパンです」

「カレーパン?」

「この出張販売のカレーパン美味しくてお気に入りの人も多いんですよ!それが今日に限って……」

 

アーシュ達が見てみると、本当にカレーパンだけ綺麗さっぱり無くなっている。他のパンはまだ少し残っているが、カレーパン目当てだった生徒がそちらに手を伸ばしているためいずれ売り切れるだろうか。

 

「おばちゃん、何があったん?カレーパンだけさっさと売り切れるなんて普通ありえへんやろ」

「それがねえ、3限終わりの時間に、男の子が買い占めていっちゃったのよ。金なら十分あるーって言って、止めようとしたんだけど聞いてくれなくてねえ」

「男の子、デスか?何年生かワカリマス?」

「2年の子だったかねえ?」

「うーむ、一体何故カレーパンだけ……」

 

頭を捻る生徒会5人の所へ、何やら探している様子のしのぶと∞が通りがかる。

 

「あ、アーシュちゃん達!護守先輩んこと、どっかで見とらん!?」

「しのぶさん!えっと、護守先輩ですか?」

「朕達は今日は会ってないワネ」

『お昼を誘いにいったら、4限くらいからいなくなってたってクラスの人が言っててね』

「せんぱいの性格でサボりってのは考えづらいよね?」

「電話で連絡出来へんの?」

「一回掛けてみたばってん、出てくれんで……」

「そうなると、クリーチャーの仕業かもしれんな」

「とりあえず、探してみましょう!」

 

 

* * *

 

 

「護守?ああ、そういえばそれっぽい奴が調理実習室の方に行くのを見た気がするな」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

何人かに声をかけると、ようやく1件目撃証言が見つかった。アーシュ達は証言を信じ、調理実習室へと急ぐ。現場へ近づくと、香ばしいスパイスと油の匂いが漂ってきた。

 

「ココですね……」

「前も調理実習中に、クリーチャーが出て来たことあったよね」

「あん時は皆頑張っとったね」

「物音がするな、中に誰かいるのは間違いなかろう」

「よし、踏み込むで!」

 

ガラガラと扉を開き中へ突入する。そこには──────。

 

「もぐもぐもぐ、ガツガツガツガツ……!」

『美味い!美味いぞぉ!』

『さあどんどん食べなぁ!』

 

狼の獣人という見た目のクリーチャーと、緑と青の縞模様に赤い手の先を持つ人型に近いトゲトゲしたクリーチャー、そして何故か王冠らしきものを被ったサキトがいた。

獣人は大量のカレーパンを揚げ続け、サキトとトゲトゲしたクリーチャーはそれをひたすら食べ続けている。

 

「せ、先輩!?クリーチャーと一緒に何してるんですか!?」

「んむぐ?見りゃわかるだろ、カレーパン食ってんだよ」

「そら見りゃわかるけど、そんな事しとる場合とちゃうやろ!」

「あぐ、もぐ、いいやカレーパンは何事にも優先される!!」

『……これ、クリーチャーに憑りつかれてるね』

 

端末を操作する∞が、目の前にいるクリーチャーのデータを出す。獣人は《紅蓮の怒 鬼流院 刃》、トゲトゲの方は《偽りの名(コードネーム) ゾルゲ》というクリーチャーのようだ。

 

「実力行使デス!行きマスよ……っあ、アラ?」

「どうしたキサマ!?」

「変身したら、なんだかチカラが抜けて……」

「ほ、本当にこっちも力が抜けてくばい……!」

 

ドラゴンの力を使いクリーチャー達を倒そうとするが、変身すると何故か一気に身体から力が抜けて行く。

 

『……あの食べてるカレーパン、あれも《ヴォルグ・サンダー》っていうクリーチャーの力が付いてるみたいだ。あれを先輩たちが食べ続けてる間、私達も何故か力が削られていってる』

「それじゃあどうしよう!せんぱいが食べてる速度半端ないよ!?」

「い、一時撤退しましょう!解決策を考えないと!」

 

アーシュの言葉に皆頷き、調理実習室から出て行く7人。それに目もくれず、サキトはカレーパンを貪り続けていた……。

 

「一体どうしましょう……」

「とりあえず昼休み終わるまであんまり時間無いし、校長にここ閉鎖して貰うのはどうかな」

「せやな。今日は5限までやし、授業終わったらもう一回来よう」

「それまでにヤツが正気に戻っていれば一番良いがな……」

「先輩のお腹が心配デスね……」

「あげん一杯食べて、どこに入ってくんやろう……?」

『それじゃあ一回戻ろうか』

 

 

* * *

 

 

放課後、再び調理実習室へ赴くと、未だサキト達はカレーパンを食べ続けていた。

 

「ずっと食べてるんですか!?」

『フフフフフ、このカレーパンは永遠に、無限に食べ続けられるのだよ!』

「ほんとにどうしようこれ、せんぱいも永遠にカレーパンを食べ続けちゃうんじゃ……!」

 

サキトを放置しておくわけには行かないし、調理実習室を閉鎖し続けるのも問題がある。しかし実力行使しようにもまた力を削られて戦闘出来ないだろう。

 

「一体どうすれば……」

『おーい、お嬢ちゃん達ー!』

「あれ?今何か聞こえんやった?」

『こっちやこっち、卓の上や!』

「ダレの声カシラ?」

 

声のする方を見ると……そこには、オレンジ色のハムスターらしき生物が手を振っている。

 

「ハムスター?何でこんなとこに?」

『やっぱりお嬢ちゃん達にはワイが見えるんやな!助かったわ!』

「うわ喋った!?」

「あ……もしかして、先輩が使うとークリーチャーの?」

『せや!ワイの名はハムカツマン!団長の、ドギラゴンの仲間やで!』

 

そう、ドギラゴン剣の仲間達「ハムカツ団」の一員、ハムカツマンだ。見た目は小さくともドギラゴンの戦いを支えた勇士である事は間違いない。

 

「あの、先輩を元に戻せる方法をご存じないですか!?」

『勿論や!要はあいつらが作るカレーパンよりもサキトはんの興味を引き、かつ自分から口の中へ飛び込めるカレーパンを作ればええ!ワイを使って、お嬢ちゃん達が最高のカレーパンを作るんや!』

「いや何を言っておるのだ」

「アナタを使ってって、つまりアナタを先輩に食べさせるノ?」

『本当にそれで何とかなるの?』

『間違いない!ワイを信じてくれ!』

 

彼女達は困惑するものの、他に思いつく案も無い。ならばとりあえずやってみるしか無かった。

 

「分かりました、やってみましょう!」

「先輩のため、うち頑張るばい!」

「腕が鳴りマース!」

「いやキサマはパン生地ををこねるだけにしておけ、レシピは絶対に守れよ!」

「姐さんに他の作業任せるとアカンもんが出来そうやからな……」

 

早々に釘を刺されるゼオス……恐るべきメシマズ娘であった。

 

 

* * *

 

 

「野菜とお肉おっけー!」

「パン生地を叩いてこね回しマース!やぁぁっ!!」

「卵んかき混ぜ終わったばい!」

『鍋もよし。すぐ煮込むよ』

「そろそろカレールーも良さそうです!」

「ではココで隠し味を」

「やめろと言っておろうに!!!!」

 

 

* * *

 

 

「で、出来ました……!カレーパンに入れる分は小分けして冷まし終わってます!」

『よっしゃぁ!後はワイがこれを……ごっきゅごっきゅ』

「うわぁ一気飲みしとる……」

 

ハムカツマンがカレーを入れた器を抱え上げ、中身を飲み物の如く飲んでゆく。

 

「タマネギは人間以外やと毒だって言うばってん大丈夫なんやろうか」

「まあ、クリーチャーだから平気なのではないか?」

『後は彼をパン生地で包んで、卵を塗るよ』

「パン粉をまぶしテ……準備OKデス!」

『一気に焼き上げるんや!』

「いっくよー、メガファイヤー!」

 

メガの炎により、ハムカツマンのカレーパンは高温で一気に焼きあがる。完成したその姿は、何やら光を放って見えるようだ。

 

『完成!宇宙一のカレーパンや!』

「ほ、本当にこれで大丈夫なんですか!?」

『さあ、サキトはんの所へワイを!』

「分かったばい!てやぁぁ!!」

 

調理中もカレーパンを食い続けていたサキトへと、彼女達が作ったカレーパンが投擲される。その軌跡は金色に輝いて見えた。

 

『サキトはん!そして、勝太ぁ!』

「んむ?」

『これで、目を覚ますんやぁぁぁぁ!!』

「んむぐぅっ!?」

 

サキトの口を開けさせて、ハムカツマンが口の中へ入り込む。その味を感じ取った瞬間──────。

 

「あ………っ」

 

サキトの脳内に、知らないはずの記憶が浮かぶ。それはハムカツマンとドギラゴンの、そして、今彼に憑依しているクリーチャーとハムカツとの──────。

瞬間、サキトの身体が輝き出した。

 

「『ハムカツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥッ!!!!!!』」

『何ィっ!?』

『うおおぉおおお!?』

 

 

 

「うわぁ!?」

「何の光!?」

 

その日部活中であった桜龍高校の生徒達は、調理実習室を中心に、金色の光が天に放たれるのを見た。

 

 

* * *

 

 

「──────それで、先輩は何でそんな落ち込んどるん?」

「さぁ……?」

 

2体のクリーチャーが消し飛び、憑りついていたクリーチャーも離れた後……サキトは部屋の隅で膝を抱えていた。

 

「うう、折角なら憑りつくんじゃなくて俺の前に現れて欲しかった……生で勝太に会えたかもしれんのに……」

『いや、それ本人じゃ無くてクリーチャーだよ先輩』

「それでも会いたかったんだよ………」

 

サキトに憑りついていたのは《カレーパン・マスター 切札勝太》。カレーの香り付きカードとして有名な、デュエル・マスターズVの主人公をカード化したクリーチャーである。

かつては消し飛んだ2体及びカレーパンとして提供されていたヴォルグ・サンダーと組み合わせて、相手のデッキを全て墓地へ送る即死ループコンボが生み出されていた事もある。

 

「とりあえず、余ったカレーとパン生地はどうしましょう?」

「それじゃあ皆でカレーパンを作って食べマショウ!」

「そうだな、無駄にしては勿体ない」

「ほら先輩、うちらん作ったカレーパン、一緒に食べよう?」

「………分かった、食べる」

 

あの金色の光の放出により、それまで食べまくっていたカレーパンを消化しエネルギーに変換したからか……サキトは激しい空腹を覚えていた。

 

「──────あっ、母さんの弁当も取って来て食わないと!」

「あっ」

 

──────その日、サキトは夕食を腹に収めるのに苦労したそうな。




無限ループコンボによるライブラリアウトは、ドラゴン娘達に対してはエネルギーが奪われていくような感覚を覚えるという形で影響が出るように設定しております。
プレ殿クリーチャー登場……と言って良いのかこれは?
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