「練習もあるのに、時間を割いてくれてありがとうございますっ!」
「アーシュちゃんの頼みだもん、大丈夫!それで、私達にお話ってどうしたの?」
──────2024年9月12日。
文化祭に向けて各クラスと文化部が準備を始めて行く中、軽音部のバンド「Jack-Pot」のメンバー5人は生徒会室へと呼ばれていた。
生徒会室にはアーシュに加えて、サキトもやって来ている。他の生徒会メンバーは各部活を回っており、ちょうど席を外していた。
「あ、栗茶fesの時の男子じゃん」
「どうも。改めまして、2年の護守サキトです。いやぁ会長に頼んで呼んでもらえて助かった」
「皆さんの安全にも繋がりますからね。ちょっと期間が空いちゃいましたけど……」
「安全?一体どういう事?」
「えー、まあまずは俺の身の上からですね。少しばかり長くなりますが──────っと」
最初にアーシュ達に説明した時と同様に、デュエマフォン・アプリを開き映像を空中に映し出してゆく。最初に必要なのは何より、彼女らに信用して貰う事だ。
* * *
「──────というわけで、俺はDGAという組織に属し、この栗茶市においてクリーチャーと戦っている訳です。ここまでは理解して貰えたでしょうか」
「うちの学校でしょっちゅう変な騒動は起きてたけど、こんな風に対処してた人もいたのね~」
「1学期の頃、クラスメイトが謎の変質者から助けてくれた男子生徒を探してたけど、あなただったってわけね?」
「あー、そんな事もあったな……」
ひとまずは理解して貰えたようだ。クリーチャーに遭遇した経験がある事、サキトが生徒会メンバーから信用されている事の2点も多大に影響しているだろう。
「それじゃあこちらも改めて自己紹介しましょうか!わたしは庵野しゅうら、Jack-Potのキーボード担当よ!」
「庵野水晶です!Jack-Potのボーカルです!」
「オレは星増樹!ドラム担当だぜ!」
「春咲栄久、ギター担当だよ」
「ベースで、リーダーを務めているわ。ルード・ザーナよ。よろしくお願いするわね、護守くん」
校内での有名人ではあるが、改めて間近で顔を合わせると美少女ばかりだ。ドラゴンの力を付与される条件に外見の良さも含まれているのだろうか?
「まあ、ドラゴンと美女の組み合わせは鉄板っちゃ鉄板だが……」
「何?じろじろと見て」
「いえ、これまで会ったドラゴン娘の方々、皆タイプの異なる美少女ばっかりだなと思いまして。普通のクリーチャーは憑依する相手をあんまり選ばない分、こうして力を与えられた人たちは色々と目立つなと」
「そ、そうなんですね」
「皆さんはいつどこでドラゴンの力を?」
その質問には、5人はそろって顔を見合わせる。
「………もしやよく分かってない?」
「ええとその、いつの間にかこうなっちゃってたのよ……」
「いつからこの力が身についていたのか、全く分からないのよね」
「十中八九何者かに授けられているはずなんですけど……誰か接触して来たりしませんでした?」
「今のところは全く覚えがないぜ」
「うーむ……校長なら初手で接触してきそうなもんだし……」
全く情報が得られないというのは厄介だ。まあ、恐らく校長と同格……いずれかの五大龍神である可能性は高いのだろうが、どのような意図で彼女達に力を与えたのだろうか。
「ところでクリーチャー相手に戦ってるって言うけど、オレたちと違って普通の人間のままなんだろ?それって危ないんじゃ?」
「まあ常に危険と隣り合わせですけど、俺達決闘者は共に戦う相棒たちを信じてますから。それに俺に関しては、同化による直接戦闘という方法も取れるようになって、デュエルだけでは対処しきれない暴れ方をする相手にも対応できます」
「同化?」
「意思疎通が出来るようにまでなったクリーチャーと、契約して一つになる事が出来るんです。一体化できる時間は短いけれど、クリーチャーと直接やり合う事も出来ます」
「それはすごいわね!どんな感じなのか、見せて貰ったり出来ないかしら?」
「え?ええまあ……ちょっとだけなら構わないか。そんじゃちょっと失礼します」
『Duel field expansion. Dueltector summoning』
生徒会室を赤いデュエルフィールドで包み、デュエルテクターを身に着ける。そして、ドギラゴン閃のカードを手にして……。
「ふぅ……っ、行きます!」
『Contract armor awakening.』
火と光のマナが噴き出し、サキトに白いドギラゴン閃の鎧が装着されてゆく。竜人の騎士といった見た目のその姿は、初めて見る彼女達にとって刺激的な物だ。
「うわぁ……カッコイイです!」
「おお、何だかテレビのヒーローみたいだな!」
「なるほど……ただの炎ではない暖かさ、《
「……ほう?」
ザーナの言葉に何か考え込むサキト。同化を解除し、スマホを操作すると何かを打ち込みホログラフに出力してゆく。
「……すみません、ちょっと唐突ですが読み仮名クイズを」
「へ?ど、どうしたんですか?」
「第一問、【《蝕王の晩餐》】こちらは何と読む!」
「ショッキング・ダンタル!」
「第二問、【《Q.Q.QX./終葬 5.S.D.》】!」
「キューキュラーキュラックス/ついそうファイブセンスダウン!」
「第三問、【《邪侵入》】!」
「ジャスト・イン・ユー!」
「第四問、【侵略ZERO】!」
「ゼロ!!」
全て即座に、やたら良い発音を交え答えて行くザーナ。サキトは無言で頷くと右手を差し出し、ザーナも無言で手を取り固い握手を交わした。
「なんだか意気投合してます!?」
「侵略ZEROを正式な読み方出来るとは、“分かってる”人でないと無理ですよね……身近に新しくプレイヤーが見つかるとは思いもよりませんでした……!」
「今度一緒に対戦でもどうかしら?」
「是非とも!」
「お、おう。まあ、ザーナの交友関係が広がるのはよかったよ。こーいうのが新しいひらめきのきっかけになるって言うし」
そんな一幕も交えながら、サキトはJack-Pot5人の情報を纏めて行く。
「さて、それじゃあ出来れば皆さんの名前と写真をDGA側で登録しておきたいんですが……大丈夫ですかね?」
「私達がクリーチャー憑きと勘違いされないように、か。私はいいよ」
「オレも良いぜ。そう言う手間はかからない方が良いからな」
「ワタシも賛成よ。しゅうらと水晶は?」
「もちろん良いわ!わたしたちの身の安全のためだものね?」
「わ、わたしも大丈夫です!よろしくお願いします!」
「良かった。それじゃあ失礼して、と」
それぞれの名と写真に、付与されているドラゴンのデータも添付して本部へと送ってゆく。これで手続きは完了だ。
「しかし、こちらの世界でつい最近世に出たばかりのクリーチャーでも力として付与されたりするということは、野良クリーチャーとして出て来る事も警戒しておいた方が良いか……?」
「?何の話ですか?」
「ああいや、ルードさんに付与されてる力の元となったドラゴン、《蒼神龍アナザー・ワールド》は今年の6月にカードとして世に出たばかりでして」
「あくまでこちらで登場したのが最近というだけで、クリーチャーの世界では長く存在していたかもしれないわよ?」
「まあそう考えた方が良さそうですね。しかしまあ、来週末には新たなレギュラーパックが出てまた多くのクリーチャーが世に出るとなると……ちゃんと把握しておかないとなあ」
次の週、21日の土曜日には王道篇第3弾のパック発売が予定されている。新しいクリーチャー達が持つ新能力の登場も既に予告されており、それらが実戦でどのように発揮されるか未知数の状態だ。
「カードゲーマーって大変なんだなー。しかも遊ぶだけじゃなく実際に戦うってなると、相手を知らないじゃ済まされないんだろ?」
「そうですね……こうして戦える人間は少ないですし、背負うものは大きいですけどやりがいもあるかなとは思ってます」
「凄いわね~……学校内で起こる事ならわたしたちも力になれるから、いつでも頼ってちょうだい!」
「はは、気持ちはありがたく受け取っておきます。でも皆さんはバンド活動もあるわけだし、そちらをなるべく優先してください。さて、今日は貴重な時間を頂きありがとうございました」
サキトが最後に礼をし、Jack-Pot相手の説明と情報共有の会はこれでお開きとなった。彼女達は文化祭ライブの練習に向け、音楽室へと戻ってゆく。
「さて、俺も戻らないと」
「あ、先輩!ちょっと思い出したことがあるんですが……」
「ん、どうしました会長?」
部室へ行こうとしたところでアーシュに呼び止められる。
「私達が栗茶fesに参加する事になった時のことなんですけど……あの時、校長先生がフェスの主催者と知り合いだって言ってたんです」
「……あの校長の知り合いかぁ」
なるほど、校長の正体を鑑みればその知り合いに裏があってもおかしくはない。そちらもクリーチャー絡みである可能性は大いにあり得るだろう。
「教えてくれてありがとうございます。まあ、裏は有っても害意は無い……と信じたいところだなぁ」
「その知り合いの方が、Jack-Potの皆さんに力を与えた……とか、あり得ますよね?」
「確証はないが、可能性はありそうですね。まあ、いずれ会う事になるかもしれませんな……それじゃあ、お疲れ様です」
「お疲れ様でした!ゲーム部の出し物の準備も、頑張ってくださいね!」
何はともあれ、今の懸案事項は今月末の文化祭。今度も無事に終わる事を祈るサキトであった。
良い発音の所は概ね原作のハニーQのような感じです。
「ツイソウファイッセンッダァーン 呪文の効果により キュー↑キュラ!↗キュラッ クスをバトルゾォー↑ンへ!」
あのシーンはやたら印象に残って困る。
14日にX指定版の方も更新しましたのでそちらもよろしくお願いします。