それはそれとしてオオスズメバチのスペックと機能美すら感じるフォルムは自分は好きです。
「ハチの巣駆除……ですか?」
「うむ、生徒会と共に、中庭の木に営巣された巣を駆除して欲しいんじゃ」
──────2024年9月17日。
昼休みに校長室に呼び出されたサキトは、校長に厄介な頼みごとをされる事となった。
「校長……普通そういうのは業者に頼むものじゃないですかね」
「それは勿論、普通のハチの巣駆除であればのう」
「え?あ~………」
その言いようで察する。つまりは、クリーチャー絡みの案件なのだ。
「彼女達のみだと不安要素があるから協力をして欲しいと?」
「うむ、まず君が相手を外へ逃がさないようにしてくれるだけでもありがたいからのう」
「まあ分かりました。出来る限りの事はやってみます」
「今は生徒が近付かぬようにしておるが、いつまでも封鎖していては文化祭の準備に支障がでるのでのう。よろしく頼んだぞ」
校長室を辞すると、ちょうどやってきたアーシュ達が話しかけてきた。
「護守先輩!もしかして先輩も?」
「ああ、校長に頼まれたよ。皆はもう話を聞いたのかな?」
「うん、ハチの巣退治だって?」
「ウチらに頼むって事はまあクリーチャーが関係しとるんやろうけど、勘弁してほしいわ全く」
女子は虫が苦手な子も多い以上、気が乗らないのも当然であろう。
「しかし、あそこに巣を作るとはどんなクリーチャーなのだ?」
「クリーチャーとハチの巣は別件だったら楽かもしれまセンネ?」
「いや、逆にそっちの方がヤバいかもしれないかと……この時期のスズメバチは危険だからなぁ」
「ソウなんデスカ?日本のムシは小さいのが多いノニ……」
「ハチに関しては逆に世界最大級ですからね……」
「4cm大のハチが時速50㎞でカッ飛んでくるって恐ろしいですよね」
7月から9月は巣の拡大期、9月から11月は新女王が誕生してそれを守るためスズメバチ達の攻撃性が最も高まる時期である。下手なクリーチャーよりも今の時期はオオスズメバチの方が危険と言えるかもしれない。
「ともかく、放課後に行ってみますか」
「そうですね、規模によっては時間がかかるかもしれませんし!」
そんな訳で、放課後に害虫駆除を行う事になったのだが………。
* * *
「うぉ……えらい事になってる」
放課後、中庭に集まった6人はまず双眼鏡で遠巻きに木を観察していたのだが、中々に厄介なことになっていた。
「えー、《エイトビートルズ》に《オブラディ・ホーネット》《アークティック・ハッチャー》……おまけに《ラルド・ワースピーダ》か……ハチ型のグランセクトまみれだ……」
「かなりの数がいるな……」
「ど、どうしましょう……?」
「とりあえず誘い出して、ボクが燃やしちゃうとか?」
「大物以外を倒せれば楽になりマス!」
「それなら俺が誘い出しましょう。んじゃ、行きますよ」
『Duel field expansion. Dueltector summoning』
木を中心にデュエルフィールドを展開し、閉じ込めて逃げ場を無くす。そのまま巣に近付いてわざと足を踏み鳴らすと……。
『侵入者!』『侵入者だ!』『巣を守れ!』『『『『オォオォォォォォ!!』』』』
「うおわぁああ大量に出て来た!!」
木の洞に巣を作っていたハチ型グランセクトたちが大量に飛び出して来る。体長は10cmほどのサイズとなっているが、なにぶん数が圧倒的に多い!
「ぎゃぁあぁ!アカンてあれは多すぎる!」
「真久間さんヘルプ!ヘルプミー!!」
「い、いくよ!メガファイアー!!」
メガの炎によってグランセクトたちがなぎ払われてゆく。しかし、巣の中から援軍が続々と出撃してくる。これではキリがない。
「わーっ!近付くなぁぁ!!」
「ひぃぃぃ!」
「皆さんを傷付けるのは許しマセン!」
「くそ、トリガー無しだとこの数はきついが……っ行くぞぉ!」
シールドを展開しマナをチャージするが、あまりの大群によってシールドが続々と割られてゆく。
「あ、アカン先輩!この数じゃシールドは頼りにならん!」
「ぐぅっ!何のこれしき……っ来た!シールドトリガー発動っ!!」
割られきったシールドから、2体のドラゴンが姿を現す。ドギラゴンと、ホーリーグレイス!
「王道の革命ドギラゴンの能力でマナを2枚チャージし、マナゾーンからクリーチャー1体を手札に!更にホーリーグレイスの能力で、ハチどもを全員タップさせ行動不能にする!」
「よし、動きが止まったぞ!」
「もう一発、メガファイアー!!」
炎が群れを成すグランセクトを次々と燃やしてゆく。ドギラゴンも牙を剥き、レーザー照射でひたすら敵を撃ち落としてゆく。
「ワースピーダを破壊したことで、そのラスト・バースト能力によりツインパクト呪文の効果が発動し、俺のマナが2枚チャージされる……!これで全部か?」
「いえ、まだ何か出て来ます!」
木の洞から、何かがずるりと這い出して来る。その身体が大きくなり、人間より頭一つ大きい昆虫型クリーチャーが現れる。
「あれは、《Q.Q.QX.》!?」
「強いのか!?」
「単純なパワーはそうでもないですけど、あいつの能力というか毒は少しばかり……!」
『キュラァァッ!!』
「アブナイ!」
すずを狙い右腕の刃を構え突撃して来たQ.Q.QX.からゼオスがその身で庇い、デュエルフィールドの壁に叩き付けられた!
「だ、大丈夫かキサマ!?」
「イタタタタ……っ、アラ?」
「どうした姐さん!?」
「み、皆さんの声が……アラ?何も……っ」
「ちぃ、何が何でも倒さなきゃならなくなったな……っ」
「ど、どういうこと!?」
「Q.Q.QX.の毒は、刺すごとに相手の五感を一つ奪います!サーヴァさんは今、聴覚が麻痺している……!」
これがQ.Q.QX.の能力、「
「どうすれば良いんですか!?」
「こいつを倒し、こいつ自身のマナから血清を作って解毒します!」
「なら話は早いな……!」
『排除!』『排除!』『『『排除!』』』
「またワラワラと……!蹴散らすぞ!」
再び数を増やして来たハチ型グランセクトたちの群れを、サキト達は迎え撃つ。
「攻撃はドギラゴンが全て防ぐ!数は多いがパワーは低い、無限にブロックできるドギラゴンであれば迎撃は容易いっ!」
「いい加減終わってよ!メガ……ファイアー!!」
「これでも食らいやぁっ!」
「やぁあぁぁっ!!」
連携して敵を殲滅していく5人、しかしその隙を突いてQ.Q.QX.は毒を仕込んでゆく……。
「あいたっ!?うわ、真っ暗に!?」
「メガ!?あんた視覚を……っうっ!?あかん、こっちも……!」
「メガちゃん!ギャイちゃん!!」
「まずいぞ、連続で刺されたら……!」
「大丈夫だ、いい加減あいつを守る働きバチも尽きて来た……!」
倒しては補充され、という攻防を繰り広げて来たハチの群れも、ついに底が見えて来た。後は、女王バチたるQ.Q.QX.を打ち倒すだけだ。
「俺のターンっ!……よし!2体目の王道ドギラゴンを場に!マナを2ブーストし、1体を回収っ!そしてドギラゴンで攻撃時……革命チェンジっ!」
ドギラゴンが翼を広げ空へ舞い上がると、全身の鎧が弾け新たな鎧が装着されてゆく。金色の鎧が放つ光が、彼らを照らす。
「《龍の極限 ドギラゴールデン》ッ!登場時に、相手クリーチャー1体をマナゾーンへ!ワースピーダをマナに!」
『ギィィィッ!?』
「さらに、
『ウォォオオオオッ!!』
『させないっ!!』
ドギラゴールデンの剣を残っていた最後のアークティック・ハッチャーが受け止め庇う。しかし、それもここまでだ。
「2体目の王道の革命ドギラゴンで、全てのタップしているクリーチャーに攻撃!ドギラゴン・フルバーストォッ!!」
『お、のれぇぇぇええ!!』
最後に放たれた全方位レーザー攻撃で、今度こそQ.Q.QX.率いるグランセクトたちは殲滅されたのであった。
* * *
「血清作成、これでよし………皆、少しちくっとしますよ」
「いっ!あ、目が見えるようになってきた!」
ハンコ注射型の血清注入機が取り出され、刺された彼女達にサキトが処置してゆく。
「うう、酷い目に遭いました……」
「まあ他の生徒が被害に遭わなくて何よりですよ。さて、それじゃあ最後に巣の始末と行きますか」
「そういえばまだそれもあったのだな……」
先に木の洞へとドギラゴンの剣を突っ込み、穿り返して巣を取り出す事には成功した。成虫となったハチのグランセクト達は始末したが、幼虫や蛹は中に残っているかもしれない。
「正直、虫の幼虫もちょっと気持ち悪いんよな……」
「デモ、料理して食べるコトもあるって聞きマース!」
「いやクリーチャーを食うのはやめんか!」
「そりゃ蜂の子の甘露煮とかありますけどねえ……!」
散々苦労させられたクリーチャーの幼虫を食べるというのは正直サキトも気が進まなかった。
取り出した巣はメガとドギラゴンにより念入りに燃やされ、厄介な害虫駆除はどうにか無事終わったのであった。