3人のクリーチャー憑きを取り込み、顕現したデッドダムド。その前に立ち塞がるは、相棒たるクリーチャーとの契約により力を得たサキト達。
「これ以上暴れ回らせはせん、覚悟しろ!」
「先輩!うちらも……!」
「いいや、ドラゴン娘諸君。君達は下がって貰った方が良さそうだよ」
「何故だ!?このクリーチャー相手は全員で戦った方が良いはずだ!」
「そうも言っていられん……こいつらが合体してから、学校を覆う力場が弱まりマナの収奪が止まっている」
「どういうコトデスか?」
「先程までマナを吸われ気絶していた生徒達がいずれ目を覚ますぞ。お前達は戦う姿を見られてはならないだろう」
「そ、それはまずいです!」
「皆は目覚めた生徒がいたら避難誘導を頼む!……時間が惜しい、行くぞ!」
剣を構えサキトが突撃し、アンナとリュウは翼を広げ飛び上がる。上下からの挟み撃ちでデッドダムドを撃滅するつもりだ。
「彼らの言う通り、ここは任せた方が良さそう」
「おのれ、口惜しいが……流星アーシュ!お主が目覚めた生徒達に指示をせよ!儂らも全校生徒の避難を手伝う!」
「……分かりました、皆さん、お願いします!」
ドラゴン娘達が校舎へと駆けてゆく。それを横目に見送りながら、サキトはデッドダムドへと斬りかかった。
『ガァァアアァァアッ!』
「そうだ、こっちを見ていろ!」
「おっと、こちらも見てくれないとね」
「このまま上下から攻め落とす」
アンナが自在に宙を舞いながらアルファリオンの剣で斬り付け、リュウがデ・スザークの炎を弾丸として浴びせて行く。しかし、3体が無理やり一つとなったデッドダムドの耐久力は……これまでのクリーチャーの比ではない。
* * *
『緊急事態発生!緊急事態発生!校庭にて謎の生物が暴れ回っています!全校生徒は直ちに体育館へ避難してください!繰り返します──────』
「うぅ……っなんだ?急に気分が悪くなって……」
校舎の中では、徐々に生徒達が目覚めつつあった。軽い眩暈をまだ覚えながらも、よろよろと立ち上がってゆく。
「あ、あれは何だ!?」
「何かがグラウンドで暴れてるぞ!?」
教室にいた者達は窓の外を見て、グラウンドを駆けまわる人ならざる者の姿を見つける。咆哮を上げ暴れる姿は、とても友好的には見えないものだった。
「あのデカいの、何かと戦ってる……?」
「なんかの撮影、とかじゃないよね……」
何人かの生徒がスマホのカメラを向ける。すると、3メートルの怪物は不意に動きを止め──────そちらを見た。
「ひっ!?」
瞬間、信じられないようなスピードで、窓からカメラを向けた生徒のに向かって怪物が飛び掛かって来た。
「うわぁあぁぁ!?」
生徒達は皆恐怖に顔を覆い………金属質の何かがぶつかり合う音が鳴り響いた。
「さ、せ、る、かぁぁ……っだらぁっ!!」
「え……っ」
甲冑とマントを身に着けた誰かが、壁を足場にし怪物の突進を止めていた。左手の盾で受け止めた巨体を押し返し、回し蹴りでグラウンドへと叩き返す。
「っふぅ……っ、お前達!早めに避難してくれ!!」
「え、っなに!?誰!?」
その問いかけには答えず、甲冑の騎士はそのまま壁を蹴ってグラウンドへ跳び、怪物へ追撃を掛けに行った。一瞬ながらその腰からは尻尾が生えているのが見え、彼もまた人では無い事を示していた。
「みんな!起きてる!?ちょっと緊急事態だよ!」
「体育館に避難や!急いで!」
メガ達達生徒会のメンバーが教室の入り口を開け、室内の生徒達に呼びかける。その言葉に反応し、皆は一斉に扉へと殺到した。
「こら!避難の時は慌てず他の者を押しのけずにと習っただろう!」
「お・か・し・もを守っテ落ち着いてクダサイ!」
「あれは……護守、先輩?」
教室の窓から、校庭にてその騎士が学校施設を護り戦う姿を、1人の男子生徒が見つめ続けていた。
* * *
戦いは佳境に入っていた。コントラクトアーマーを装着し戦える時間は、身体への負担が大きい以上長くとも4~5分が限界である。
その短い時間の中で全力を叩き付け続けた事で、デッドダムドの体力も大きく削がれている。
「っしゃぁっ!!」
「タフな奴め……だが、そろそろ決めさせてもらう!」
「いい加減時間も無いからね……一気に行くよ」
『クソったれがァァァアアァァ!!』
収集したマナを拳に固め、デッドダムドが壊滅的な一撃を放とうとする。
しかし、アンナがアルファリオンの剣を3本投げ放つと、デッドダムドの周囲に刺さったそれから光の魔法陣が展開され、敵をその場に縛り付けた。
『ッ!?動、けねえ!?』
「覚悟したまえ。受けよ!聖霊の剣!」
「深淵の炎よ、焼き尽くせ……!」
『グギャァアァァッ!?』
アンナが手元に残した一振りの剣により装甲を斬り裂き、リュウが黒炎を叩き込んでその身を焼いてゆく。
そして、トドメの一撃を放つべく、サキトが七支刀を構え突撃する!
「一刀、両断っ!」
横薙ぎに振るわれた渾身の一撃が、デッドダムドの胴を断ち切った。収集したマナが制御を失い、爆発を起こしながら世界へ還元されてゆく。
『チ、クショウ!チクショォォォォォオオオオォオ!!!!』
「今度こそ本当の……完・全・決・着ッ!!」
爆発を背にしながらサキトは剣を収める。桜龍高校を襲った災厄の使者は、これにて完全に消え去ったのであった。
* * *
「さて、今度こそこいつらはしょっ引いて貰うとしますか」
「私が新しい車で運ぶよ。今日の事件に備えて先行で借り受けたDGAの新装備、中々役に立ちそうだ」
デュエマフォン・アプリを操作すると、超次元ホールが開きそこから先程見た1台の車が現れる。これがDGAが開発していたという新装備であろう。
「こいつらは拘束した。では俺達は撤収するぞ」
「今日は災難だったね。校庭は少々荒れたけれど、マナの還元作用で力場が消えればすぐに修復されるはずさ。文化祭の準備、頑張ると良いよ」
「ありがとうございました。それでは、また今度」
3人を後部座席に放り込むとアンナとリュウは車に乗り込み発進させる。校門を出るとデュエルフィールドを展開し、そのまま空中を走る様に去っていった。
「あれは便利そうだな……一般人の目に付かずに広範囲を移動できそうだ」
一段落付き、気が緩むとどっと疲れが押し寄せて来る。少々無茶をし過ぎたか。その場に座り込んだサキトはスマホを取り出しアーシュへと連絡を取る。
「……あー、もしもし。こちら護守です、どうにか終わりましたので、皆の避難を終わらせて大丈夫ですよ」
『えっと、それが……変な感覚が消えたと思ったら一般生徒の皆さんがまた気を失って……』
「あー……奴らが張ってた力場が消えた影響かな?とりあえず、そう時間もかからず皆起きると思うので、起きたら全員教室や部室に戻って貰いましょう。俺もそちらに行きますので」
『分かりました!お疲れ様でした、先輩!』
通話を終えて一息つく。立とうとしてふらついたところで、体育館の方からしのぶが駆けて来るのが見えた。
「先輩!大丈夫!?」
「ああ、ちょっと疲れただけで大丈夫……きっちりぶっ倒したよ」
「良かった……とりあえず、とりあえず、肩貸すけん一緒に体育館まで行こうね?」
「ああ、ありがとう。あー、この後また最後の準備に取り掛からねえとか……」
しのぶに肩を貸して貰い、立ち上がって歩き出す。作業をするには小休憩を挟んだ方が良さそうだ。
「それと、ちょっと聞きたかっちゃけど」
「うん?」
「先輩が昔、あん3人と何があったか、教えて欲しかよ」
「……聞いてもあまり面白い話にはならないぞ?」
「ばってん、聞きたかけん」
「……分かった、つっても学校終わって、家でで良いかな?」
「うん、それでよかよ」
* * *
体育館で目を覚ました生徒達は、結局殆どの事を忘れていたようだった。クリーチャー絡みの事件では時折こういう事も起こるらしい。
「──────よし、これで完了と!皆、お疲れ様!」
「お疲れ様ー!」
割れていた窓ガラスは後で学校が業者に交換して貰うとして、どうにか段ボールで窓を塞ぐことで応急処置を終えゲーム部の準備は終了した。S級侵略者襲撃というトラブルはあったが、他の部やクラスの用意も終わったようだ。明日は無事文化祭を開けるだろう。
「そういやなんで窓ガラスが割れてたんだろう?」
「さあ?ともかく、割れた時に誰もケガしなかったようで何よりだよ」
『それじゃあ、明日はよろしくね』
「お客さんそれなりに来ると良いなあ」
そうして各々が部室を後にする。サキトも帰り支度を終えぼちぼち昇降口まで行くと、彼を待っていたしのぶが声をかけて来た。
「お疲れ様、先輩。待っとったばい」
「おう。水泳部は今年も男子が何かやるんだったか」
「うん、ウォーターボーイズの練習しとったばい」
「所謂男子シンクロかぁ、なんか映画の影響とかで一般的になったんだっけか」
「うちらが生まれる前ん映画やけんよう知らんばってんね」
「俺も実際見たことは無いなあ……よし、んじゃ帰ろう」
夕暮れが迫る中帰り道を歩く2人。しのぶを家まで送り届け、約束通り話をするために彼女の部屋へ上がり込む。
「お邪魔しまーす……と」
「それじゃあ先輩、あの3人と先輩について……話して貰ってよかと?」
「……ああ、あいつらが昔何をして、どうしてこの街にいられなくなったのか……しのぶには全部話しておくよ」
そうしてサキトは彼女に語り始める。彼が小学四年生、7年前に如何なる事件があったかを。