ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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今回はサキトではなく、別の登場人物に主にスポットが当たります。
作中時間は10月半ば、即ち──────

デュエ!(デュエ!)デュエ!(デュエ!) デュエキング!DreaM!


Ep.39:ドラゴン娘と新たなる風

「すみません、生徒会長………流星さん。今お時間よろしいでしょうか?」

「へっ!?えっと、あなたは……」

 

──────2024年10月19日。

土曜日の午前授業を終え、運動部所属の生徒の多くは部活に向けて昼食を摂っている時間。生徒会室へ向かおうとするドラ娘生徒会の5人へ、1人の男子生徒が声をかけて来た。

 

「確か、同じクラスの人やんな」

「はい、自分は蟠龍(はんりょう)トウリと言います。(わだかま)るに龍で蟠龍、桃に有利不利の利で桃利です」

「確か、剣道部の方でしたよね……予算交渉の時にお会いした気が」

「おお、覚えていて下さりましたか。もう少し早くお伺いしたかったんですが、最近流星さんは他の生徒に囲まれてる事も多くて機会がなかなか無く……」

「それで、アーシュちゃんにどんなご用なのカシラ?」

 

その言葉を聞いて、トウリと名乗った彼は軽く周囲を見回す。廊下にはそれなりに生徒がおり、それらを気にしているようだった。

 

「その、少し人目を憚るお話ですので……他の方がいない所が」

「え、何?かいちょーに告白!?」

「いえそういうのでは」

「即否定されると、それはそれで何だかショックですね……」

「ではどこがよいのだ?」

「ええと、生徒会室にお邪魔してもよろしいでしょうか?」

「うーん……分かりました、それじゃあそちらで」

 

そうして、生徒会メンバーは彼を生徒会室へ招く。変な事を考えているようにはとても見えず、もし何かしようにも1人であるなら5人がかり……いや、ゼオス1人でも止めることは出来ると踏んでいた。

 

「それで、私にどんなご用でしょうか?」

「その、正確には流星さんというか皆さん全員と、2年の護守先輩に関してなんですが」

「え………っ」

 

その言葉に全員顔を見合わせる。その取り合わせについて聞かれるとなると、嫌な予感が5人の脳裏に過ぎった。

 

「……わらわ達とあの先輩の関係性に関して何か言いたい事でもあるのか?」

「言いたいというかその……これ言って良いのかと思うのですが……」

 

一拍置いて、トウリが口を開く。

 

「皆さんのその、角と尻尾とか、先輩の傍にいるドラゴン……『ドギラゴン』についてなのですが」

 

それを聞いた瞬間思わず頭と尻を抑える5人。しかし、今触れる限りは角と尻尾の感触は無い。

 

「ああいえ、実際に今出ている訳ではないですけど、皆さんの身体に、半透明な状態で生えてるのが見えるという状態なんです」

「ど、どういうことですか!?」

「この前の学園祭前日に起きた事件の時から、色々と……見えるようになりまして。誰も騒いでないので、皆には見えていないってのは分かるんですが」

「えっ、あの時の事覚えてるの!?」

「他の皆サンは気を失った後、目を覚ましたら忘れてましたケド……」

「なんというか、霊感ならぬクリーチャー感が強いという奴か?」

 

驚くべきことに、常人には見えない状態のクリーチャーやその力を感知出来てしまっているようだ。このようなケースは流石に初めてであった。

 

「とりあえず、この事は他の誰にも言うたらアカンで?」

「あ、はい。皆さんに迷惑がかかるようならば他言はしません」

「それじゃあその、見えてしまっている以上は仕方ないですし……私達の事情については説明しますね」

 

生徒会メンバーの事情を、かいつまんで説明してゆく。サキトに関しては、本人の居ない場でDGAの事を語るのは憚られたため詳細は一旦伏せ、クリーチャー退治の仲間であるという言い方に留めてある。

 

「なるほど……学校でたまに流れる噂の裏にそんな事があったのですね」

「先輩の相棒サンを知ってタってことは、蟠龍くんは、デュエマのコトはご存じナノかしら?」

「はい!アニメと原作を見て、夢中になってました!残念ながら、カードの方はまだ触れた事はないんですが……」

「あー、カードゲームって本気でやろうとすると結構お金かかるよね……」

「ええまあ……情報だけは追っているのですが、手を出す踏ん切りは中々つかず、というままでした」

「んー、とりあえず先輩に一旦直接会うた方がええかもわかれへんね」

「そうデスね!ではゲーム部に行きマショウ!」

「うむ……ん?今日ってゲーム部は活動しておったか……?」

 

 

 

[本日部活動無し]

 

 

 

「あぁっ!?」

「やっぱり休みであったか……」

「あ、アーシュはん電話!まだ近くにおるかもしれへんから!」

 

 

* * *

 

 

土曜午後にはゲーム部は部活が無く、サキトは既に学校を後にしていた……が、学校に程近い場所に来ていた。

桜龍学門前駅近くのカードショップ「クラインスペース」、サキトが普段から利用している店である。

学校から電話をかけ話を聞き、トウリを連れアーシュ達が向かってみると……

 

「ふぅ……これよりデュエキングDreaM開封の儀を始めさせて頂きます」

「先輩、少し大袈裟やなか?」

 

ショップの一角で、予約していた新パック「天下夢双!!デュエキングDreaM2024」を今まさに2箱分開封しようとするところであった。

同じく本日は陸上練習が休みであったしのぶも付き添っており、楽しそうなサキトの隣に座っている。

 

「あ、あそこに居ました!先輩!」

「ん?おお会長。急に電話してきたと思ったら態々───」

「あ、先輩。何か両面んカード出とーよ?」

「おお!?ドギラゴンXかっ!中々手が出なかったんだよなぁ……!」

「アカンわ、カードのパック開けるのに夢中になっとる」

「まあ、こういう何が出るのか分からないものを開けるのってテンション上がるよねー!」

「開け終わるまで待った方が良さそうだな」

 

しばし、サキトが購入したパックを全て開けるまで待つアーシュ達。その間トウリは、サキトの背後をたまに見つめたり、手を伸ばして何かに触れるような仕草を見せていた。

 

「ふぅ、ボルドリが良い感じに揃ったな。俺のデッキとも相性良いから早速組み込んだ形を考えてみるか!」

「その前に先輩、アーシュちゃん達ん用事ば聞かな」

「おっとそうだった。すまないね、ほったらかして」

「いえ、大丈夫です。それで、お話というのは彼についてなんですが……あれ?蟠龍くん?」

 

ふと見ると、トウリは彼らの方を離れてカウンターを……というより、その奥に置かれたパックを見ているように見えた。

 

「モシモシ?どうしたんデスか?」

「んあ!あ、申し訳ありません……なんだか、あそこから声が聞こえて来るようで」

「声?周りのデュエルしている声では無くか?」

「ええ、あのカウンターの……あの先輩が今開けてた、黒と金のパック辺りから」

「……彼は何を言って?」

「ええとその、彼、なんだか色々見えるらしくて……」

 

人がいるこの場でクリーチャーの事を言うわけにも行かず、言葉を濁すアーシュ。その最中にもトウリは導かれるようにカウンターへ向かい、店員を呼ぶ。

 

「すみません、そちらの……デュエキングドリーム、でしたっけ。1パックくださいますか!?」

「いらっしゃいませー!……初心者さんかな?1パック550円になりますよ」

「うぇっ、思ったより高……」

「その分1パックの枚数も多く、レアな物も出やすい特殊弾ですから。それで、買いますか?」

「……買います。選ばせて貰って良いですか?」

「ええ、どうぞ」

 

レジを担当していたリュウが応対し、パックの箱を持って来る。すると一切迷いのない手付きで、トウリが一つのパックを手に取った。

 

「お買い上げありがとうございます!新しく始めるなら、550円で実戦的なデュエマを始められる『いきなりつよいデッキ』がおすすめですよ」

「あ、はいありがとうございます。その御値段なら……こっちの赤いのを」

「ありがとうございましたー!」

「ちゃっかり他の商品も買わせとるよあの人……」

「新人を招くのに余念がないと言うべきか?」

「お仕事中はあんな雰囲気なんだねー」

 

席に戻って来たトウリを迎え、対面に座ったサキトがとりあえず話を聞く事にした。

 

「それで、君が俺に会いたいって言って来たそうだね」

「はい!蟠龍トウリと言います、どうぞよろしくお願い致します、護守先輩!」

「そんな畏まらなくていいよ。それで、流星さん達がここまで連れて来たって事はちょっと他には話し辛い事だろうから場所を移した方が良いかな」

「はい!」

「まあその前に……人生初のパック開封、ここでしていったらどうだ?」

「え、ここで開けて良いんですか?」

「ここのデュエルスペースであれば店も許可しているから構わないよ。ここで剥いたパックから自分には不要な物を直で買い取ってもらう人もいるしね」

 

トウリは早速不慣れな手つきでパックを開けて行く。中には9枚のカードが封入されており、そのどれもがトウリには新鮮に映った──────そして。

 

「あ──────やっぱり。君が自分を呼んだのか」

 

パックから出て来たカードの1枚を手に取り、まじまじと見つめる。そのカードを見て、サキトは思わず噴き出しかけた。

 

「は、蟠龍くん悪い事は言わん、それを大切にするならこのスリーブ付けるんだ!早く!」

「え、あ、はい!?」

「このインナーと合わせて2重にだ!いいな!?」

「せ、先輩どげんしたんそげん慌てて」

「慌てずにいられるか……!彼、シク版当てたんだよ!」

 

「「「「!?!?」」」」

 

その言葉が聞こえたからか、周囲のプレイヤー達が目の色を変え集まって来る。トウリがスリーブに収めたカード……《夢双英雄 モモキングDM》のシークレット版を見て彼らは悲鳴を上げた。

 

「し、しししシークレットドリームレア!?」

「この目でお目にかかれるとは!!」

「ゆ、譲ってくれ頼む!金ならあるぞ!」

「ええい鎮まれ鎮まれ!初心者にタカるんじゃないよあんたら!!」

 

凄まじい勢いに若干引くアーシュ達。サキトがどうにか拝もうとする他のプレイヤー達を追い払うが、正直彼自身も若干興奮していた。

 

「そんなに貴重ナノですか?」

「ええまあ、このシークレット版はとても貴重でして……出荷される段ボール1箱分買っても入ってない可能性が高いレベルです。お目にかかれるとは……」

「えーと、カードの名前で検索……うわ!?1枚15万くらいするよ!?」

「ひぇ!?そ、そんなにするんですか!?」

 

発売初日で供給が少ない時点での初動価格とはいえ、目が飛び出そうな金額が1枚のカードに付けられているという状況にアーシュ達は恐ろしさすら感じていた。

 

「それで……そのモモキング、どうするんだい?いや、手放しはしないだろうが」

「えっとその、出来れば大事に使っていきたいと思います。原作で一番ハマったのが彼がエースの頃だったので……それに、彼がそう望んでいると思うんです」

「それなら来月出る構築済みデッキの購入がオススメですよ」

「うわぁ!?」

 

急に背後から店員に声をかけられトウリは驚く。井星リュウがデュエルスペースの騒ぎを聞き寄って来たのだ。

 

「そのドリームクリーチャーと相性の良いデッキが発売されるので、買ってそのカードを投入すると良いでしょう。4950円と少しお高めになりますが」

「そ、そうなんですか?ほぼ5000円かあ……」

「まあレアリティにこだわらなければ単品買いでもそれなりの値段でデッキは作れますが、1度にデッキパーツが手に入り新規のカードもあるという物なのでオススメ出来ますよ───デュエマだけに時間を注げるという方でもなさそうですし」

 

トウリが背負う竹刀袋を見てリュウは普段の生活を推察したようだ。武道系の部活に所属し、家に竹刀を持ち帰り練習もするような人間だとすれば、何度もカードショップに通ったりネットでデッキ構築の仕方を調べる事に長く時間を割けはしないだろう。

 

「というわけで、モモキングを使いこなしたいと思い……もし決心が付くなら予約票を」

「……はい、彼を使いこなせるよう、買ってみます!」

「おおう……商魂逞しいな……」

 

好きなクリーチャーの話をとっかかりに、初心者へマーケティングを成功させた様を見てサキトは若干の恐ろしさを感じたのであった。

 

「ところでその………このモモキング、テキストが読めないんですがどんな効果なんでしょう?」

「……後で俺が当たった通常版モモキングを貸すから、メモしておくといいよ」

 

──────シークレットドリームレアは非常に豪華ではあるが……イラストが能力テキスト欄に被さり読みにくいという、カードゲームのカードとしてそれでいいのか?という欠点も持ち合わせているのであった。コレクション用として実戦で使わないプレイヤーが多いのも頷けるというものである。

 

 

* * *

 

 

「……クリーチャーが見える?」

「はい。文化祭前日以降、常に先輩の傍にいるドギラゴンや、皆さんに生えた角や尻尾などが自分には見えるようになりまして」

 

当たったカードを整理した後、近くのカラオケボックスへ場所を移した8人はそこで話し合う事にしていた。こういう時、個室で会話が外に漏れにくいカラオケは便利である。

 

「デュエマのプレイ未経験でそれか……あ、そうだ。スマホ持ってるよな?このバーコードでアプリを読み込んで使ってみて欲しい」

「? はい、良いですけど……」

「あ、もしかして……」

 

サキトの指示に従い、差し出された2次元バーコードから読み込んだURLへ飛びアプリをダウンロードするトウリ。それを起動しタップすると……。

 

「いっつ!?なんかぴりっと来たんですが」

「あー……やっぱり、素質があるって事か。先天的な物とは聞いてたが、ここまでの物は初めてかもしれん」

「それって、先輩とおんなじ……?」

「わらわ達のクラスメイトにそのような者がいるとはな……」

「じゃあとりあえず、俺の事について説明してくぞ」

 

そうして、DGAの存在、成立理由、真のデュエリストの存在などを話してゆく。実際に起こった事件を覚えていたため呑み込みが非常に早く、説明を終える頃には何やら感嘆の眼差しで見られていた。

 

「おお……凄いです先輩、そんな風に皆を守っていたなんて……!」

「あー、それで、君にも同じ素質がある、という事になるんだ。それも、クリーチャーとの繋がり方では……俺以上かもしれない」

「え、それほんま?」

「正直、デュエルフィールド無しでもデュエリストと契約しているクリーチャーがうっすらと見えたり、カードの声が聞こえたりってのは、デュエマ原作の登場人物ばりに高い素質があると言って良いかもしれない。とはいえ、実戦に出すにはまずデュエマの練習をして貰いたいところだけれど、ね」

「彼はセンスはあるケレド、知識はまだ足りナイって事なのネ?」

「それなら、とにかく練習あるのみばい!」

 

ただし、とサキトは続ける。

 

「貴重な才能だからここで俺が誘わずともDGAは接触してくるとは思うけれど……クリーチャーとの戦いは命懸けだ。怪我はしょっちゅうであり、命に関わりかねない大怪我をした人もいる。……年下の後輩をこういう仕事に誘うのは正直俺は気が進まないが……それでもやるという覚悟があるなら招き入れよう」

「……っ」

 

ごくり、とトウリは唾を呑む。しかし、すぐさま首を縦に振った。

 

「よく言いますよね、『力には責任が伴う』って。自分が持つ素質(チカラ)が役立つのなら……戦います。モモキングと共に!」

「……分かった。それじゃあ、さっきインストールしたアプリを再起動させて、色々と規定事項を入力してくれ。そうしたら明日市役所で担当の人間が色々と説明する場を作ってくれる」

「分かりました!」

「それじゃあ……うん。ようこそ、DGAへ。歓迎しよう、トウリ」

 

サキトとトウリが握手を交わした。実質的にこの日から、栗茶市の実働部隊に新たなメンバーが加わる事となる──────。




モモキンドリーム はせ参じるぞ モモから生まれた 切札いいぞ
ドリーム夢双の 勝熱英雄 モモ!(モモ!)モモ!(モモ!) モモキング!(DM!)

そんな訳で、新たに現れたるはジョーカーズ使い……もとい、モモキング使いとなります。
とはいえ本格的な戦線投入は作中内11月、モモキングの書発売から。
モモキングRX、JO、DMを使い各種スター進化で一気呵成に攻めるスタイル予定!

モモキングダムXは……残念ながらJOとのプレミアム殿堂コンビに指定されているので出せませぬな……
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