ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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ハロウィンの夜、この世と霊界の間に見えない門が開くという。


Ep.40:護守サキトと万聖節前夜

「《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》で攻撃!この際、攻撃時能力が発動!デッキトップを表にし、ドラゴンなら場に出す!……よし来た、メガ・マグマ・ドラゴン!焼き尽くせ!」

 

──────2024年10月30日。

夜の栗茶市日神町……そこに発生したゾーン内部で、サキトはクリーチャー退治を行っていた。

調整したデッキの実戦試験も兼ねての戦闘であったが、その日は普段以上にゾーン内のクリーチャー殲滅に力を入れていた。

 

「出来れば明日の夜はゾーンが発生しない方が良いからな……気休めレベルだろうと、クリーチャーを減らしてゾーンを最大限縮小させておく!」

 

そう、翌日はハロウィン……渋谷程ではなくとも、学校や桜龍学門前駅の周辺は仮装した人々が夜中に騒ぐであろう事が想定される。

そんな夜にゾーンが発生すれば、迷い込んでしまう人間の数も普段より多くなるだろう。

 

「ふぅ……しかし、新たなボルシャックは、俺のデッキには相性が抜群だな。4枚首尾よく手に入って何よりだ」

 

《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》。先日のデュエキングDreaM開封で手に入れた、彼の新たな戦力となるカードだ。

コスト7というそこそこの重量あるクリーチャーながら、マナゾーンのドラゴンの数が4以上であればコストを3軽減し4マナで召喚できる能力を持ち、速攻革命チェンジ戦法に極めて噛み合っていた。

更に登場時には相手クリーチャーを1体タップさせて攻撃の的となる相手を作り、攻撃時には山札の1番上を見てドラゴンであれば踏み倒せる……サキトの戦術を大幅に強化する凄まじい能力の持ち主である。

流石は、デュエマのドラゴンの元祖たる存在のリメイククリーチャーと言った所であろうか。

 

「よーし、ひとまず感知できる範囲のクリーチャーは消えたな……ゾーンも縮小してる、今夜はここまでか」

 

苦戦を強いられるような高パワーのクリーチャーが出て来る事も無く、徘徊するクリーチャー達を排除した事でゾーン内部は片付いた。離脱を考えていた所で……ふと、視界の端に何か光る物を見つけた。

 

「ん……?何だ?」

 

近寄ってみれば、地面に何かが落ちていた。拾い上げたそれは1枚の板のように見え、サイズはちょうどデュエマのカード程だった。

硬質で透明な物質で出来たそれの中には、何故かデュエマのロゴマークが刻まれていた。

 

「──────何だこりゃ?」

 

 

* * *

 

 

「うーむ、夜中に連絡したから向こうも準備出来てなかっただろうとはいえ、今の所正体は不明か」

『それが例の拾ったカードみたいなもの?』

「何だか見た目はきれかね」

「見た目綺麗でも厄ネタってのはあり得るからなぁ」

 

翌日、10月31日。昼休みに屋上で時間を潰しながら、昨日拾った物を見つめサキトは考え事をしていた。

昨夜発見した、謎のカードらしき物体の写真をDGAに送り問い合わせてみたが、まだ回答は帰って来ていなかった。

今日1日は他の職員も、他自治体の職員たちも忙しくなる見込みであり、本格的に調べるには明日以降に時間を作る必要がありそうだった。

 

「まあ、明日くらいに本部に送って解析とかして貰うしかないかなと思ってるけど……しかし、持ち歩いても大丈夫なもんかねこれ」

『割れたりはしないの?』

「材質は不明だけど意外と頑丈そうでね。流石にわざと割ろうとまではしてないが……そこそこ耐久性はありそうだ」

 

ゾーン内部で拾った物となると、未知の物質か何かであるという可能性もあり得る。一応今の所触っても害は無さそうだが……。

 

「まあ、それよりも考えるべきは今夜の事か……ふわぁぁ」

「先輩、眠そうばってん大丈夫?」

「昨日の夜は家に戻った後トウリに付き合ってリモート練習もしたからな……」

 

先日新たに仲間となった後輩、蟠龍トウリ。最近サキトは彼のデュエマ練習にリモートで付き合っていた。

実際にデュエルで相手をしたり、対クリーチャー戦を想定してシールド無し、1ターン目から大型クリーチャーが1体盤面に居る状態での対戦などを繰り返している。

 

「ほぼ平日夜のみ相手してるとはいえ、1週間経っていきなりつよいデッキでの動きはほぼマスターしたようだからな。次はプロキシでも渡してモモキングのデッキでの動きを練習して貰うかと思ってるよ」

「プロキシ?」

『確か、プロキシカードの事だよね。持っていないカードや、発売前のカードの代用品カードを作って練習用に使うっていう』

「俺の場合は普通の紙にマナコストと能力テキストを書いて、使っていないストレージのカードと一緒にスリーブに入れて普通のカードみたいに手持ち出来るような形にしてるよ。特に今回は赤の他人に渡すわけだし」

 

カードの画像を印刷した紙を使うという人もいるが、それを私的利用ならともかく家族などでない相手に渡すのは法に触れる危険性もあるためサキトはそれを避けていた。

 

「そういや2人は、今夜は出歩いたりするのか?」

『ハロウィンの仮装のこと?私は外出はしない予定だけど』

「うちも出かける予定は無かよ。先輩は?」

「俺というか、DGAは今夜は総出で警備になりそうだな……浮かれて出歩いてる人らが本物に出くわしたりゾーンに迷い込んだら一大事だから」

「あーね……気ば付けんしゃい、先輩」

「ああ。今夜を乗り切ればある意味一段落ってところだからな。頑張るよ」

 

そうして喋っていると、昼休みの終わる時間が近付いてきた。

 

「そろそろ時間か。それじゃあ、2人ともまた後で」

「はーい」

『授業中に寝ないようにね、先輩』

 

2人と別れ大きく伸びをすると、サキトも次の授業が行われる教室へ歩き出してゆく。次の授業が始まるまでに気を引き締めなければ。

 

 

* * *

 

 

そして学校も終わり、時刻は夜──────21時頃。

街に夜の帳が降り、ハロウィンの仮装をした人々で賑わう中。サキトは、想定とはまた違った修羅場の只中にあった。

 

『カードだ……』『見つけた……』『クリスタルカードだ……!』

「何だこいつら!?デモニオだと……!?」

 

駅近郊の警備中、急に発生したゾーンへ引き込まれたサキトはその中で異形の『鬼』達に囲まれていた。

デモニオ………鬼とも呼ばれるクリーチャーの一種族であり、平行世界の超獣世界───『鬼の歴史』からやってきた侵略種族である。

 

「例のカードらしきものを狙ってるのか!?何のために!」

『キサマが知る必要は無い……!』『キサマの相棒たる龍共々、ここで果てるがいい!!』

 

刀を構えた人型に近い鬼《「辻斬」の鬼 サコン丸》と、頭と胴体に鬼火を宿す《クニトリ童子》が襲い掛かって来る。サキトは2体の刃をギリギリで躱し、カードを取り出そうとするも……大量の鬼達を前にシールドや手札を構える隙が無い。

 

『死ね!』『死ね!』『死ねぇい!!龍の使い手!!』

「させるかよ!ドギラゴン!俺に力を!!」

『Contract armor awakening.』

 

数を頼みに襲い掛かろうとした鬼達を、コントラクトアーマーを纏いドギラゴンの力で撃退せんとした所で……。

 

 

黒い刃が、閃く。

 

 

次の瞬間には、サキトを囲んでいた鬼達が胴を両断され、地面に転がっていた。そして屍の上にただ一人、何者かが立っている。

 

「な……っ、に!?」

「……こいつらの反応。小僧お前、アレを持っているな?」

 

突如現れた、大鎌の男。彼はサキトへとその刃を向け、ゴーグル越しに睨みつけて来る。

 

「妙な技術を使っているが、どうやら同類のようだな。それも、中々のクリーチャーと契約していると見える」

「あれは……あの格好は、間違いない。俺の知る姿より大人になってるが───」

 

右腕を異形と化し、大鎌を構えるその男の姿に、サキトは覚えがあり過ぎた。黒い長髪、外套の下に網シャツと黒のズボンという特徴的な服装、そしてその声にも……。

 

「ウィンに続いてあんたと出会うとはな………()()()()()──────!」

「──────オレだけでなくあの小僧も知っているのか。まあいい、出して貰うぞ、お前が持つ『クリスタルカード』を!」

 

デュエル・マスターズ、その原作に登場する人物──────あの黒い死神が、未知の力をもってサキトへ襲い掛かる!




遭遇、黒い死神──────!

8日にX指定パート更新しております。そちらもよろしければ。
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