まだクリスタルカードの正体がよく分かっていないためLOST絡みで出来る事が少ない……!
「とっととアレを渡せ……!」
「ちぃっ、鎌の軌道は読みづらい……!!」
サキトの七支刀と、黒城の異形の鎌が幾度も切り結ぶ。切先による刺突に強烈な斬撃と、普通であれば扱い辛い大鎌という武器を黒城は自在に操りサキトへと襲い掛かる。
対して、相手を傷付けるわけにも行かないサキトは凌ぐのみで手一杯となっている。
「どうした、その剣はそんなものか」
「俺は人間を傷付ける気は無いんだよ……っ、この!」
七支刀の枝分かれした刃が大鎌を引っ掛ける。そのまま手首を捻り、鎌を跳ね飛ばそうとするも……異形の腕と繋がった鎌は簡単には飛ばせない。
「小細工は上手いようだがオレには通じんぞ!」
「この……っ!!」
切りかかって来る刃を光盾で防ぐ。拮抗しているように見えるが、サキト側はタイムリミットという弱点がある。そろそろぶつかり始めてから3分が経とうとしていた。危険域が近い………!
「く、こうなったら……っ!黒城凶死郎!」
「何だ?」
「そちらが欲しがってるこのカードらしきもの、渡すこと自体は別に構わないが、こちらにも必要な建前って物がある……だから」
そう言うと同時にコントラクトアーマーを解き、デッキを取り出してシールドを展開する。
「デュエルで相手をして貰おう!俺が負ければこいつはすぐにそちらへ渡す!」
「………」
正直、賭けであると言わざるを得ない。そんなもん知った事かと襲い掛かられればコントラクトアーマーを解除したサキトはひとたまりもないだろう……しかし。
「……いいだろう、だが分かっているだろうな?これは──────『真のデュエル』だ」
「ああ、当然だ。覚悟は出来ている……!」
黒城が腕の同化を解き、デッキを構える。互いに5枚のシールドが現れ、戦いの火蓋が切って落とされる。
「「デュエル!!」」
* * *
黒城が先攻を取り、戦いが始まる。手札は悪くはない、そして闇文明の使い手相手に長期戦を考える余裕は無い。
最短最速で、駆け抜けるのみだ。
「オレのターン、《ダーク・ソング》をマナチャージして終わりだ」
「俺のターン、ドロー!《轟く革命 レッドギラゾーン》をマナチャージし、ターンエンドだ!」
マナへと置かれたカードは、デュエルにおいて重要な情報となる。黒城のデッキは、マナ加速を得意とする自然文明を加えた闇文明デッキである事がこの時点で看破出来る……即ち、彼の切り札も相応の速さで出て来るだろう。
「オレのターンだ。ドロー……《悪魔神バロム・コバルト》をマナチャージし、呪文《ダーク・ライフ》を超動!山札の上から2枚を見て1枚をマナへ、もう1枚を墓地に送る!《悪魔神ドルバロム》をマナへと送り、《威牙の幻ハンゾウ》を墓地に!」
「ドルバロムを、マナゾーンに……?」
極めて強力な効果を持つドルバロムを、墓地ではなくマナゾーンへ送る意図がサキトは掴めない。闇文明の使い手であれば、墓地からの回収手段等を使い手札へ持って来たいカードのはず……。
「俺のターン!《メガ・マグマ・ドラゴン》をマナチャージし、呪文《メンデルスゾーン》を発動!デッキの上から2枚をめくり、その中からドラゴンをマナへ!ドラゴンではないカードは墓地へ送られる!……っちぃ!」
めくられたカードは、ドギラゴン超と2枚目のメンデルスゾーン。マナチャージは1点にとどまる。
「オレのターンだ。《凶骨の邪将クエイクス/クエイクス・ハンド》をマナゾーンへ送り、ツインパクト呪文《カオス・チャージャー》を超動!山札の上から4枚を見てその中からデーモン・コマンドを2枚まで手札に加え残りは好きな順序で山札の下に置く。《魔令嬢バロメアレディ》と《悪魔神バロムスポーン》を手札に加えさせて貰うぜ」
「今のクリーチャーは……?」
アンナがよく使用しているギャラクシー・チャージャーもそうだが、手札増強をしつつのマナ加速は強力だ。しかし、手札に加えたバロメアレディというカードに見覚えは……いや。
(まだ発売前の、『バロムの章』の新カード!?)
そう、こちらでは先日情報公開されたばかりの新たなカード、バロメアレディだ。効果はうろ覚えだが、新たなバロムデッキのサポートとして優れたものであるはずだ。
「動き出す前に決着を付ける……!俺のターン、ドロー!《光鎧龍ホーリーグレイス》をマナチャージし……《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》を召喚!こいつはマナゾーンにドラゴンが4枚以上あれば、コストを3減らして召喚できる!」
「ボルシャックだと?ち、懐かしい奴を思い出させてくれる」
「ボルシャック・ドリーム・ドラゴンでシールドを攻撃!この際ボルシャックの能力がトリガーすると同時に、革命チェンジを発動!行くぞ……《蒼き守護神 ドギラゴン閃》!」
ボルシャックと交代するように、ドギラゴンが戦場へ現れる。そして2体の力が、更なる仲間を連れて来る。
「ボルシャックの能力、デッキの1番上をめくりそれがドラゴンなら場へ出し、ドラゴン以外ならば墓地へ置く!……っ、来たか!並び立て!《轟く革命 レッドギラゾーン》!!」
『オォォッ!!』
「更にドギラゴン閃のファイナル革命!デッキの上から4枚表にし、その中から進化ではない多色クリーチャーを合計コスト6以内で好きな数場に出す!よし、《王道の革命 ドギラゴン》をバトルゾーンに!ドギラゴンの効果によりデッキの上から2枚をマナへ送り、クリーチャーを1体マナゾーンから手札に!ボルシャック・ドギラゴンを手札に戻す!」
「このターンで決めるつもりか」
「ドギラゴン閃でシールドを、トリプルブレイクッ!!」
3枚の盾をドギラゴン閃が両断する。残るは2枚、レッドギラゾーンと王道ドギラゴンで攻撃すれば──────!
「──────ヒャーハハハハハ!シールドトリガー、ツインパクト呪文《デーモン・ハンド》超動!レッドギラゾーンを始末する!」
「ちぃっ!?」
「更にバロメアレディのG・ストライクで王道の革命ドギラゴンを攻撃不可にさせてもらう!」
仕留め損ねた。黒城のターンが来る!
「オレのターン、ドロー!悪魔神バロムをマナへ送り……《魔令嬢バロメアレディ》を召喚!登場時能力により、墓地からダーク・ライフとハンゾウをマナゾーンへ!」
「来るかっ!」
「バロメアレディのマッハファイターにより王道の革命ドギラゴンに攻撃……そして!攻撃時に能力が発動する!自分のマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストを持つ、バロムと名の付く進化クリーチャーをマナゾーンから場に出す事が出来る!」
「!!」
バロメアレディの姿が闇に溶け、新たなクリーチャーが姿を現す。それは彼の代名詞にして、闇のクリーチャーの代表──────!
「降臨せよ!《悪魔神バロム》!ヒャーハハハハハ!!死ねぇ!!」
バロムの降臨により、その能力……闇以外のクリーチャーを全て墓地へ置く力がドギラゴン2体を葬り去る。攻撃目標を失ったことで攻撃は止まるが、サキトにとっては危機的状況だ。
「なるほど、これが新しいバロムデッキの力か……!俺のターン!よし、再びボルシャック・ドリーム・ドラゴンを場に!行くぞ!攻撃し、革命チェンジ!《蒼き団長 ドギラゴン剣》!ファイナル革命により、マナから2体目の王道の革命ドギラゴンを!そしてボルシャック・ドリームの能力で……《風波の1号 ハムカツマン》を場に!マナを計3枚チャージし、《“龍装”チュリス》を手札に!」
再び3体のクリーチャーが並び立つ。2枚とも除去トリガーないしG・ストライクでなければ……決着が付く。
「ドギラゴン剣でWブレイク!」
「シールドトリガー、ツインパクト呪文《クエイクス・ハンド》超動!王道の革命を破壊し、手札を1枚見ないで選び捨てさせる!───そいつだ!」
「ちぃっ!?」
手札からボルシャック・ドギラゴンも墓地へ送られる。だが、まだハムカツマンがいる!
「ハムカツマンで、ダイレクトアタック!」
『いくでぇぇええ!!』
ハムカツマンのヌンチャクが黒城の目の前に迫る。しかし彼は……凶悪な笑みを浮かべた。
「《悪夢神バロム・ナイトメア》の能力、超動!」
「っ!!」
「クリーチャーがオレを攻撃する時、シールドが1枚もないプレイヤーがいて、オレの場にバロム・ナイトメアがいなければこいつを手札から相手に見せ、デッキの1番下のカードを墓地へ送る!そのカードが進化でないデーモン・コマンドであれば……バロム・ナイトメアが降臨する!」
「そんな賭けを……っ、いや違う!さっきのカオス・チャージャーでデッキボトムは確定している!?」
黒城のデッキボトムからカードが墓地へ送られる。そのカードは──────。
「《混沌の獅子デスライガー/カオス・チャージャー》!よって、悪夢神が降臨する!《悪夢神バロム・ナイトメア》!」
『ゴァァァ……!』
こちらでも世に出たばかりの、ナイトメアクリーチャー……バロム・ナイトメアが現れる。その瞬間、ドギラゴン剣とハムカツマンが空間に開いた穴へ吸い込まれていく。
「ドギラゴン!」
「悪夢神バロム・ナイトメアの降臨時、デーモン・コマンドでないクリーチャーは全て超次元の向こうへ放逐される!これでお前の攻め手は失われた!オレのターンだ!」
「く……!」
「ドロー!《悪魔龍ダーク・マスターズ》をマナへ送り……再び来い!バロメアレディ!登場時能力で《マッド・デーモン閣下/デーモン・ハンド》と《凶骨の邪将クエイクス/クエイクス・ハンド》をマナゾーンへ!バロム・ナイトメアでシールドをトリプルブレイク!」
「ぐぁあっ!く、シールドトリガー……!きた!3体目の王道の革命ドギラゴンの革命2によりバトルゾーンへ!」
「だが、バロム・ナイトメアがタップされている時、相手クリーチャーはタップ状態でバトルゾーンへ出る!」
「ち───ブロックできん!?」
「バロメアレディで王道の革命に攻撃時……能力によりマナからコスト10以下のバロムを出せる!」
「な、まず……!」
「葬り去れ!《悪魔神ドルバロム》!!」
悪魔神ドルバロム。その登場は、戦況を完全に塗り替える程の力を持つ。サキトの場のみならず──────マナゾーンのカードが、全て墓地へ送られた。
「バロムで残りのシールドを破壊!」
「く、シールドトリガーは……!駄目か!」
サキトの手は、尽きた。G・ストライクを持つハムカツマンが来たが、黒城の場のクリーチャー全ての攻撃を終えた状態であり無意味。マナは0、チャージしても1では召喚も不可だ。
「く……俺のターンは、何も出来ん……!ハムカツマンをマナとし、ターンエンド!」
「終わりだ……バロム・ナイトメアで攻撃!」
バロム・ナイトメアの攻撃が迫る。最後のあがきとして、サキトは2枚の手札を翳した。
「《ボルシャック・ドギラゴン》と《革命の絆》の革命0トリガー、発動!デッキトップを見て、ボルシャック・ドギラゴンは火の進化でないクリーチャーなら、革命の絆は火か光の進化でないクリーチャーならば場に出る!1枚目!……ルピア・ターン!よってボルシャック・ドギラゴンが場に!続いて2枚目……!《龍の極限 ドギラゴールデン》!!」
ルピア・ターンとドギラゴールデンが場に現れ、それぞれが進化し2体のボルシャック・ドギラゴンと、ミラクル・ミラダンテの姿に変わる。
「進化元となったドギラゴールデンの登場時能力により、バロムをマナゾーンへ!更に、ボルシャック・ドギラゴンの登場時能力で、バロム・ナイトメアとバトル!相討ちだっ!!」
バロムがドギラゴールデンの砲撃により吹き飛ばされる。バロム・ナイトメアへとボルシャック・ドギラゴンが突撃し、触手に全身を貫かれながらも拳でその腹を貫く。両者は相殺され、消滅した。
だが──────ここまでだ。
「革命の絆はブロッカーのようだが、バロム・ナイトメアが攻撃時タップしていたことによりタップ状態で場に出ている!よってお前の身を守ることは無い!」
「ああ……完敗だ。流石は黒い死神──────良いデュエルだった」
ドルバロムの掌から、闇の奔流が放たれる。シールドが無い今、サキトを守る術はなく。闇が全てを打ち砕く──────。
* * *
「──────生きてる」
「ふん、負けたくせに清々しい顔をしやがって……お前の負けだ、さっさとクリスタルカードを出せ」
サキトの周囲の地面が、激しく抉れていた。下手に動いていればドルバロムの攻撃が彼の命を奪っていただろう。約束通り、サキトは謎のアイテム、クリスタルカードを取り出して黒城に投げ渡す。
「聞かせてくれ、そいつは何なんだ?」
「──────さあな。人類の運命を示すカードだそうだが、お前には関係ねえだろう」
「そうか……っ」
黒城とサキトの間を境界線が遮る。ウィンの時と同じく、彼もまた彼の世界に戻るのだろう。
「はあ、勝ちたかったな──────カードを渡す代わりにサインでも貰いたかったんだが」
「アホかテメエは!何考えてやが──────」
最後の彼の罵声が届ききる前に、ゾーンが縮小し………サキトは元の街へ戻っていた。
「あー、例のカードは無くなりましたって後で報告しないとな……分析前に失われたせいで結局分からずじまいだし」
* * *
『何故!何故僕を呼んでくれなかったんだい護守君!』
「んな暇あるわけ無いでしょうが!」
──────後日。本部へと連絡したサキトは画面越しに萱野シンヤから詰められる羽目になった。無印世代からのデュエマファンである彼からすれば、死んでも会いたかった相手の一人が黒城凶死郎だろう。その機会を得られなかった事でか画面の向こうのシンヤは半泣きになっていた。
「勝てればサインでも貰ってそっちに送りたかったんですがね、すみませんね負けちまって」
『くぅ、惜しい事をした……!でも、戦闘記録は映像が自動で撮られているだろう!全て送ってくれ!全て!』
「分かりました!分かりましたから!」
そうして、デュエルログと映像を報告書共々提出するため、サキトは貴重な休日を丸1日使う羽目になったのであった。
久々のガチデュエルと相成りました。バロメアレディによってホイホイ出て来るようになったバロムは驚異の一言。
マナチャージ系呪文でピン差ししたバロム派生がマナ落ちしても出て来るのは強い……!