ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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前回、前々回とほぼ同時系列。もう一つの事件が起こる──────。


Ep.42:ドラゴン娘と悪鬼の群れ

「こ、ここは──────どこなんですかぁー!?」

 

目の前の現実離れした光景に、アーシュが叫ぶ。先程まで街中にいた彼女達であったが、突如として……ゾーンとも異なる、謎の場所へ引き込まれてしまった。

どこかの島のような地形。火山が噴火し、その山肌には鬼の顔の如き大穴が穿たれている。その周囲にはいくつもの砲が備え付けられ、彼女達の目の前には巨大な城とそれを守る城壁の門が立っていた。

 

話は、2時間以上前に遡る──────。

 

 

* * *

 

 

「お、アーシュはんも来はったな」

「すみません、遅くなりました!」

「大丈夫だよかいちょー!今夜はここからが本番だからねー!」

 

──────2024年10月31日、18:30。

アーシュ達ドラ娘生徒会の5人は、桜龍学門前駅で思い思いの仮装を持ちより待ち合わせをしていた。

 

「いやーここなら渋谷ほど混まないし、仮装しながら皆で楽しむならこれくらいの方がいいね!」

「そもそもあちらは酒を飲んで暴れる大人もいて危険だからな。わらわ達が行くにはい色々と危険だろう」

「暴漢ぐらいなら朕が何とか出来るわヨ?」

「いや、流石に喧嘩で騒ぎになるのはちょっと……」

 

桜龍高校の周辺地域でも、ハロウィンフェスとして特別な商品や出し物をしている店は多い。彼女達も仮装を楽しみながら、それらを楽しむつもりであった。

 

「もし何かあってドラゴン化しても、今夜なら仮装だと思われて目立ちませんよね……?」

「せやな、今日は何も心配せんと皆で楽しめるはずや」

「じゃあいってみよー!」

「「「「おー!」」」」

 

* * *

 

 

そうして、彼女達はハロウィンの街並みを堪能していった。今日限定のスイーツやスペシャルメニューを出している店が多く、商店街の中心では仮装コンテストなどもやっている。

近くに住む世帯の子供達も、様々な店で無料配布される安価な菓子を求めやってきており、「トリックオアトリート!」の声がそこかしこから聞こえていた。

 

「賑やかですねぇ~、それにカボチャを使ったスイーツも美味しいです!」

「かいちょー、気を付けないと後が怖いよー?」

「うっ……この間クリーチャーと一緒に大量に料理を食べた時の後、カロリーを消費するのが大変だったのを思い出してしまうんですが……」

「あれは後で大変だったやろな……」

「全くあの時はどうなるかと……む?」

「すずちゃん、どうしたノ?」

「いや、あそこの建物の上……何かおかしくないか?」

 

すずが指す先には、3階建ての建物の屋上……そこに、何か赤い光が見えた。ネオンやイルミネーションのものとは異なる、何か異様な光だ。

 

「クリーチャー絡みでしょうか……?」

「どうする?周りの人らはあんま気付いてへんようやけど」

「何か起こル前に朕達が解決デキれば、それが一番デス!」

「では行ってみるとするか」

 

そうして彼女達は建物の屋上へ向かう。光の原因は……何か、空中に開いた裂け目のような物だった。

 

「……何だろこれ?」

「向こう側に何か見えますね……それに、暑い空気がそこから出てます」

「火山と城のような物か?一体何が……ぬあぁ!?」

「すずちゃん!?アブナイ!」

 

急にすずが叫びを上げる。その体が、裂け目の向こう側に吸い込まれるように引き寄せられている!

慌ててゼオスが掴むが、引き込む力が強く、共に引っ張られてゆく。アーシュ達も2人を掴むが、3人がかりでも食い止めるのが精いっぱいだ。

 

「あ、あかん!これは……!」

「みんな引きずり込まれちゃう!?」

「も、もう無理です……っきゃぁぁぁああぁあ!?」

 

そうして、彼女達は異界へと引きずり込まれてしまったのであった。

 

 

* * *

 

 

この世のものならぬ異空間……デモニオと呼ばれるクリーチャー達の本拠、『獄鬼夜城』の前に大量の鬼達が集まっている。

 

『全く、例のブツを探しに行った者達が戻らないうえに、このような者達の侵入を許すとはな』

 

そしてそこには、迷い込んでしまったドラ娘生徒会の5人もおり……今まさに、命の危機に瀕していた。

 

「く、ぅぅ……っ!こやつら、なんという力だ……っ!」

「まずいよ、ゼオちが!」

 

4本の腕を持ち、武者の鎧兜を纏う巨大な骸骨の妖──────《「魂狩(たまがり)」の鬼 ガシャド髑髏》が、その腕の1本でゼオスを捉え、握り締めていた。

デモニオ達の中でも一際巨大な体躯と、相応のパワーを持ち………彼女達全員を相手し、生徒会メンバーの中でも最も武闘派であるゼオスを完全に抑え込む程の力を有していた。

 

『ガシャシャ、あのモモキングと共に我らと渡り合った龍の1体、サッヴァークの力を宿した人間……ここで潰しておくべきと見たガシャ!』

「アグっ!ァアアァァァッ!!」

「ゼオスさん!」

「くっ!姐さんを放さんかい!!」

 

組み伏せられながらも彼女達は抵抗するが、何体もの鬼に押さえつけられビクともしない。

 

『安心しろ、すぐに後を追わせてやる。ヒトでありながら龍の力を宿す人間どもよ』

「こいつら、ドラゴンと敵対しておるのか……っ!」

「このままじゃ、まずいよ……っ!」

 

今にも、彼女達の眼前で、ゼオスがその体を握り潰されようとしている。

 

「だ、誰か……ゼオスさんを、助けて……っ!」

 

その祈りは何処にも届かない………かと、思われた。

 

「でやぁぁぁああっ!!」

『なにぃっ!?』

 

突如として、彼女達が取り込まれた異空間に何者かが乗り込んで来た。手にした竹刀を振るい、入り口を守っていた《ガワラ入道》を押しのけて彼女達の元へ迫る。

彼の顔には5人とも見覚えがあった。先々週の一件で関わった、蟠龍トウリだ。サキトと同様に、その身には赤を基調としたデュエルテクターを纏って身体能力を増強している。

 

「は、蟠龍くん……!?」

「うク……ッ、アナタは、何故ここニ……!?」

「先輩が急に連絡が取れなくなったため、自分は臨時で呼ばれて来ました!そうしたら、建物の屋上にこの裂け目を見つけてすぐに飛び込んだ次第です!サーヴァさん、すぐ助け出しますので待っていて下さい……ッ!」

 

パワーが低い鬼を見極め竹刀で打ち払ってゆく。しかし、この門前に集結した鬼の集団は彼1人の力で倒せるような物ではない。

 

『人間め!多少粋がったところで、我ら鬼に敵うものか!』

『覚悟するがいいわぁ!!』

「これ以上、彼女達に危害は加えさせない!今こそ、自分と共に戦ってくれ……っ!」

 

──────“彼1人”の力では。

 

デュエマフォン・アプリを起動させているトウリのスマホが輝き、空中に文字が投影されてゆく。それはかつてモルナルクとの戦いの際、サキトとドギラゴンが起こした物と同じ──────。

 

With mutual benefit.(互いの利をもって)

Or with mutual faith.(あるいは互いの信をもって)

 

Contract between man and creature.(人と超獣の間に契約を結ぶ)

 

『Contract armor awakening.』

 

トウリのスマホから音声が鳴り響くと、彼の周囲を風が渦巻き、どこからともなく花びらが舞い散りその姿を覆い隠す。

 

「なんや!?一体何が!?」

「これは……桃の、花びらか?」

 

「1つ、瞳を光らせた」

 

『!?』

 

得物を構えた鬼達が、その声を聴き後ずさる。

 

『2つ、不死身の桃の龍』

 

『この声は!』『奴か!?』

 

トウリのものでない声が響き、聞き覚えのある声に鬼達は更に警戒を強めた。

 

「『3つ、醜い悪の鬼……』」

 

「蟠龍くんともう1つの声が、重なって──────」

 

「『倒してくれよう、モモキング!』」

 

季節外れの花吹雪が収まると、そこに装いが大きく変わったトウリが立っている。甲冑を身に着け、二刀を振り翳す侍の如き姿は、彼の相棒たるクリーチャーと契約を結んだ証──────!

 

 

「『《夢双英雄(ドリームヒーロー) モモキングDM》!ここに、参ッ!ジョーッ!!』」

 

 

名乗りを上げると同時に、アーシュ達を捕らえていた鬼達が斬り裂かれた。消えゆく彼らは、自身がいつ斬られたのか理解できないような表情を浮かべている。

 

「おおー!サムライだぁ!」

「あれが蟠龍くんと、そのパートナーの……!」

 

アーシュ達は彼の雄姿に、正しくヒーローたる輝きを見出し、希望の灯をその目に再び宿した。

対して鬼達は、怒りと憎しみを込めた目線でその姿を睨みつけている。

 

『おのれ!ジャオウガ様の仇、忌々しきモモキングめ……ッ!』

『こちらの世界に来ておったか!!』

 

彼らデモニオ、そして鬼札王国とモモキングには原作においても、背景ストーリーにおいても深い因縁が存在する。それは、どうやらこの世界でも変わらないようだった。

 

『だがどうやら、力はかつての奴とは比べ物にならぬほど弱まっている!』

『今が好機!やれぃ、ガシャド髑髏!!』

『覚悟するガシャ、モモキング──────!!』

 

ガシャド髑髏が巨大な二刀を振り上げる。それに対しトウリは臆することなく、小さい屏風のような物を取り出し……そこに記された絵の1つに手を翳す。

 

「事前に先輩から、お守り代わりに貸して頂いたカードが役に立ちそうだ……」

『トウリ氏、拙者と共に行くでござるよ!』

「カモン!」

『王来!』

「『スター進化ッ!!』」

 

2人の掛け声が重なると、その身が光輝き……次の瞬間、ガシャド髑髏の腕1本が斬り飛ばされる。掴まれていたゼオスが宙に投げ出され、それを龍の武者が両腕で受け止めた。

 

「あうっ、っえほ、げほっ!……蟠龍くん?その姿ハ……」

「これがモモキングの力です。デュエマに名だたる伝説のクリーチャー達、12の王の1人より力を授かりし鎧の姿……」

 

巨大な剣と大盾を携え、下半身から伸びる半透明の長大な龍体が、ガシャド髑髏の二刀を受け止め抑え込んでいる。その名は……!!

 

「『《無双龍騎 ボルバル・モモキング》!!』」

 

超獣王来列伝に刻まれた、歴史の裏側に封じられた『殿堂王』《無双竜機ボルバルザーク》の力を受け継ぎし鎧だ。その力はモモキングが纏える鎧の中でも屈指の力を持つ!

 

「『受けよ!必殺!無双龍剣ッ!!』」

 

ガシャド髑髏の刀を弾き返すと、姿勢を崩した敵をそのまま脳天から叩き割る!パワーで完全に上回られたガシャド髑髏は、あえなく砕け散り霧散してゆく。

 

『馬鹿な!ガシャド髑髏が……っ!』

『おのれぇっ!ならば、この龍を宿す娘どもを先に始末してくれる!!』

『この数を相手に守り切れるか!!』

「いいや、もう自分の勝ちだ……この一撃で殲滅する!」

 

ボルバル・モモキングの能力の1つ……自身のターンの終わりに、パワー6000以下のクリーチャーを敵味方問わず破壊出来るというものがある。

味方を巻き込むリスクある力だが、ドラゴンの力を発揮している最中の生徒会メンバーならば、全員ボーダーライン以上のパワーを持っている。故に、遠慮は必要ない!

 

「『龍騎轟砲ッ!!』」

 

大盾を構えると、そこに設置されたレンズのような物が光る……高出力レーザー砲だ!極太のレーザーが放たれ、デモニオ達が一瞬にしてなぎ払われてゆく!

 

「『悪鬼、討滅!我らの勝利だ!!』」

 

 

* * *

 

 

「はぁ、はぁ……!一時はどうなるかと思ったわ……!」

「キサマ、締め上げられていたが大丈夫か?」

「朕も大丈夫デス……すずちゃん、心配してくれてアリガトウね」

「心配など!……まあ、多少はしておるが……」

 

あの場のデモニオ達を撃破した後、空間の裂け目が閉じる前にアーシュ達は脱出する事が出来た。一先ずはこれで安心のはずだ。

 

「それにしても、蟠龍くんが来なかったら危ない所でした……ありがとうございます!」

「いえ、自分とモモキングの使命ですから」

「そういえばあいつら、すごく怒ってた感じだったよね」

「モモキングとあの鬼達……鬼札王国は、不倶戴天の宿敵ですからね。色々と因縁があるんですよ」

 

トウリも同化を解き、いつもの制服姿に戻っていた。初めてのクリーチャーとの戦いがこういった形になるとは思っていなかったが、彼にとってもまずまずの手応えと言えるだろう。

 

「蟠龍くんも、本当にアリガトウございました。朕もマダマダネ……」

「サーヴァさんが酷い怪我にならなさそうで何よりです。あ、でも一応は」

 

その場で小さくデュエルフィールドを張り、デュエマフォン・アプリの簡易機能で彼女のダメージを癒してゆく。機器の扱いも指導を受け身に着けられたようだ。

 

「これでよし、と。あ、連絡が……先輩が見つかった?良かった……」

「もう行っちゃいますか?」

「ええ、臨時の出動は終わりです。帰らないと父が厳しいですから。それでは皆さん、また明日学校で!」

 

そう言うとトウリは建物の非常階段を駆け下りて行った。どうやら門限なども彼の家庭は厳しそうだ。

 

「うーん、護守先輩とはまた違う感じのカッコよさがあったねー」

「……ソウね、度胸も据わっててとても……カッコよかったデス」

「……ほほう?」

 

……直に助けられた故か、彼の去っていった方向を見るゼオスの瞳には、どこか熱いものが感じられた。




蟠龍トウリ、初陣!
デュエルで戦おうとするには攻めの王道だと若干のパワー不足がありますが、有り余る高い素質故に契約と同化を既に可能としています。それを見越して、サキトは事前に特にパワーあるスター進化形態を渡していました。
最大パワーを誇る形態は変身の仕方が特殊かつ条件を満たさないと動けないので契約変身での出番は残念ながら無さそうです。
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