ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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ドラゴン娘本編、全校集会回で言われていた通り……2年生は11月に修学旅行があります。
行き先は原作で言及がないため、この小説では筆者が独自に選定しております。今後原作本編と矛盾が生じる可能性もありますがご容赦を!


Ep.45:護守サキトと修学旅行の始まり

「さてと、それじゃあ行って来るか」

 

──────2024年11月19日。

今日から4日間、サキト達桜龍高校2年生にとって最大のイベント、修学旅行が始まる。行き先は長崎、そして福岡。東京の学生にとっては定番の行き先の1つと言えるだろう。

現在時刻はまだ早朝。集合時間までに羽田空港へと着くため、この時間に電車に乗る必要があった。

 

「DGAにも4日間栗茶市を離れる申請をしたし、大丈夫なはず……トウリにもある程度代理を頼めるよう、デュエルの立ち回りと契約しての戦い方を教えたし、4日くらいはどうにかなるだろう」

 

予定では初日と2日目は長崎、3日目にバスで移動し福岡での活動、宿泊予定だった。蒼斬家のご両親に、特に福岡でお勧めの店などは事前に聞いてある。3日目に移動途中で訪れるであろう柳川市は特に食事が良質そうだ。

駅の近くまで来ると、近所に住むクラスメイト達の姿もちらほらと見えた。

 

「お、おはよう。そっちもこれから電車か」

「おーっす護守。いやーついに来たなあ修学旅行!」

「一応勉学のためって建前を忘れるなよ?」

「分かってるって!いやーしかしあのJack-Potのメンバーも一緒となれば、テンションも上がるってもんだろ!」

 

そう、校内で人気のJack-Potメンバーの内4人、庵野しゅうら、春咲栄久、星増樹、ルード・ザーナの4人はサキト達と同じ2年生。当然この修学旅行に参加しており、彼女達のファンは沸き立っている。

 

「もしかしたらこの旅行中にお近づきに……」

「そうかー、がんばれよー。……っと、電車の時刻がもう少しだな、さっさと行かないと」

「っとそうだな!」

 

早朝の時間帯ともなればまだ電車も空いている。服を詰めた旅行鞄を持ち歩く学生達にはちょうどいい時間帯だ。

 

(さて、デッキも2種類ちゃんと持った。何事も起こらないに越したことは無いが……)

 

クリーチャー出現報告や、被害報告は都市部ほど多い傾向にあるらしい。人間が多い場所を好んでいると見るべきか、はたまた他の要因があるのかは今のところは不明であるが……。

今回の行き先でも、長崎市や福岡市は九州でも有数の都市。不意のクリーチャー遭遇は備えておくべきであろう。

 

そうして考えながら待っていると、ホームへと電車がやって来た。さあ、旅の始まりだ。

 

 

* * *

 

 

彼ら桜龍高校の2年生は、飛行機に搭乗した経験がある者は少なかった。今年のインターハイの会場の都合、夏に佐賀県へ行くため初めて飛行機に乗ったという運動部系の生徒達もいるが、これが人生初の旅客機体験となる生徒達が過半数を超えている。

窓際の席になったサキトは、離陸してどんどん地上が遠ざかっていく様をある程度までは楽しめたが……一定高度に達すると、雲しか見えなくなったため逆に暇になりつつあった。

 

「ふわぁ……。まあ、暇に感じるくらい平和なのは良い事か」

『そんなものか?』

「ひょぁ!?」

 

急に声を掛けられ素っ頓狂な声を出したサキトを皆が見るが、何でもないとサキトが手を振るとすぐ目を離し他の生徒達とのお喋りに興じて行く。

サキトに声をかけて来たのは、彼の相棒たるドギラゴン。やはり真のデュエリストとしての素質が更に引き出されてきたのか、偶に日常の中でも彼らの声が聞こえる時がある。

 

「(び……っくりさせんでくださいよ!?)」

『すまない、サキト。しかし、このような飛行機が人の世界にはあるのだな』

「(クリーチャーの世界だと、飛行機はあっても戦闘機のようなものくらいでしょうからね)」

 

1人乗りの戦闘機であったり、複数人が乗る場合もある水文明の一部兵器等はクリーチャーの世界にも存在するが、完全に非戦闘用でこれだけの人数を運ぶ旅客機は基本的に存在しない。

自ら空を飛ぶ種族がいたり、もしくは魔術で長距離転移等をする者達もいるともなればこういったものは発展しづらく、また戦闘への備えが無い乗り物などほぼあり得ないものであろう。

 

『サキトの住むこの国は平和なのだな』

「(まあ、少なくとも今のところは、うちの国は表面上平和と言えますね。現在進行形でドンパチやってる国もありますが)」

『成程……む』

「(どうしました?)」

『外を飛んでいる者がいる』

「(え゛っ)」

 

慌てて窓の外を見ると、ステルス爆撃機を模したような装甲を持つ、火の鳥がこの旅客機へ徐々に近づいて来る!

 

「(《鳳皇 マッハギア》……っ!こんなところで!?)」

『ふむ……少し待っていてくれ、話を付けてこよう』

「(ちょっ!?)」

 

常に傍にいるらしい、ドギラゴンの気配が少し遠のいて行くのをサキトは感じ取った。数分の後に、マッハギアは反転して遠ざかって行きドギラゴンの気配も戻って来る。

 

『戻ったぞ』

「(ど、どうだったので?)」

『どうやら仲間も何体かいるようだ。こちらに来て、自主的に空を警戒し、害ある飛行クリーチャーを追い払っているとの事だ』

「(ああ……そういえば彼らは元々ドギラゴンの仲間みたいなものだったな)」

 

マッハギアが属する「ファイアー・バード炎」という種族の大半は、革命編でドギラゴンが治めていた「火の国」の住人であり、革命軍の所属である者も多い。こちらでは人間に友好的な種族として、密かに働いていてくれたようだった。

 

「(空の危険が減ってるならありがたい話だな……正直今戦えって言われたら凄く困るので)」

『ここでは外に出る事もままならないだろうからな。これがもし地に墜ちれば、殆どの者は為す術もない』

「(メーデー案件は御免ですよ)」

 

そしてその後は何事もなく──────離陸から約2時間後、サキト達は九州・長崎の地に到着したのであった。

 

 

* * *

 

 

「実際に目にしてみるとやっぱり、神妙な気持ちになるな……」

 

サキトは現在、巨大な像──────『平和祈念像』の目の前にいる。初日は長崎市内の史跡と資料館を巡るよう予定されており、最初に訪れるのは当然この場所、長崎市平和公園であった。

サキトと班を組んでいる、普段は口数の多いクラスメイトも今は流石に普段より静かになっていた。

 

『この場所は何なのだ?』

「(今から80年ほど前に……1発の爆弾がこの地に落とされました)」

 

サキトが生まれるよりもかなり前の時代……彼の大戦の話は、当時実際に体験した人々がどんどん少なくなっている事もあり……彼らの世代には伝わり辛くなりつつある。

だからこそ、忘れてはならない悲惨な出来事の資料に触れ、平和の尊さを学ぶ事が必要なのだ。

相棒に大戦末期に起こった惨劇を説明しながら、サキト自身も資料館を回り様々な当時の資料へと触れて行く。

 

「(超獣世界だと、行き過ぎた科学によって生まれた兵器が起こした惨劇っていうのは……あー、例がない訳ではない、のか)」

『そうだな。しかし、このような形で住民を苦しめるような物は流石に少ない』

 

例えば、『超銀河弾』の連発による大災害と時空の裂け目の発生、そして『超次元の穴』の出現は多くの平行世界において、超獣世界の歴史に残る惨劇であり後の世まで戦乱を呼ぶものであった。

しかし、あの爆弾が炸裂した後、救援のため現地に来た者にまで二次被害を及ぼすというその性質は彼らの世界から見ても悍ましい物に見えるだろうか。

 

「(悪魔の兵器と呼ぶに相応しいでしょう。だからこそ、二度と使われないよう願いたいですが……)」

 

遠い異国の地では戦火が未だ広がっている。そこでこのような兵器が使われない事を祈るしか無かった。

 

 

* * *

 

 

「おーっす護守!退屈してないかー?」

「お、どうも。そちらも今から出島巡りですか」

 

午後は長崎市内の史跡を巡る予定となっていた。幕末以前の江戸時代において、唯一開かれた西洋への門戸……長崎出島へとやって来ている。

サキトが生まれる前は、埋め立てによりかつての姿は失われていたが、現在は復元事業が進み江戸時代の建物の再現が成されている。かつての人工島であった頃の姿を取り戻すため、いずれは周囲を堀で囲み水を通すよう予定されているらしい。

どこから回ろうか考えていた所で、Jack-Potの面々がサキトに話しかけて来た。

 

「資料館の方でも何度か見かけたけど、流石にあそこで話しかけるのはね」

「まあ場所的に気軽に喋る気分にはなりませんからね」

「ご……護守お前……っ」

「ん?どうしぐぇっ!?」

 

同じ班の男子2人がサキトに絡み出す。目が敵意か、あるいは嫉妬に燃えている状態だ!

 

「貴様どこでJack-Potの皆さんとお近づきになったんだ!?」

「ぐぇ、ま、待てそんなんじゃねえ……っ放せ!共通の友人経由の顔見知り程度だ……っ」

「あら、ワタシはもうお友達だと思っているわよ?」

「「こぉの裏切り者ォォォォ!!」」

「ギブ!ギブ!そろそろマジで苦しい……っ!」

 

多少すったもんだした後、解放されたサキトは彼らをザーナ達4人に紹介させられる羽目となった。どうにかそれで落ち着いてくれた後は、2班で共に出島の各建物を回る事となる。

 

「全く酷い目に遭った……」

「面白いクラスメイトね。それより色々と大丈夫かしら?」

「半分はそちらが余計な事言ったせいですが!?」

 

楽しそうな顔で話しかけて来るザーナに、流石に文句の一つも言いたくなるサキトであった。そんな事はどこ吹く風と言った様子で、ザーナは更に話を持ちかけて来る。

 

「今晩1戦、どうかしら?」

「……早速ですか。もしかして毎晩宿でやる気ですか?」

「ええ、楽しみにしてたもの!あなたの炎霊(ソウル)が込められたデッキ、早く見てみたいわ」

「先日新しく組んだデッキを使いますが……そちらがどんなデッキでも、頑張らせて貰いますよ」

 

9月から機会を伺っていたものの対戦出来なかった彼らは、予定が完全に一致するこの修学旅行をある意味楽しみにしていたのだ。互いに拳を合わせ、今夜の戦いへの期待に笑みを浮かべていた。

 

「また親しそうにしている……っ!」

「いや、アレはどっちかと言うとライバルみがあるやり取りなんだが……どういう事だ?」

「あはは……、あの2人の仲はとっても健全だと思うわよ?それに護守くんには彼女さんもいるもの」

「「……彼女!?」」

「あ、教えてなかった奴かこれ」

「「貴様彼女とはどういう事だー!?」」

「何だいきなり!?ぬわぁぁあ!?」

 

こうしてぎゃあぎゃあと騒ぎながら、修学旅行1日目の昼は過ぎて行くのであった……。




途中は行き先が行き先だけにかなり真面目な話になってしまいました。その分終盤で息抜き。
次回は漸くの、ザーナとのデュエル予定!
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