ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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修学旅行3日目、彼らの次なる行き先は福岡へと……。
そして日付的にはサキト的にもう一つ大きなイベントがある日でもあったり。


Ep.48:護守サキトと柳川観光

「全員荷物の用意は出来たかー?それではバスに乗り込めー」

「はーい!」

 

──────2024年11月21日、修学旅行も3日目だ。

彼らは長崎のホテルを後にして、福岡へと観光バスで向かう予定となっていた。

 

「なんだかあっという間だったなー」

「楽しい時間ってのはそんなもんさ。さて、予定だと昼食も兼ねて柳川の観光だったか」

 

福岡県柳川市。江戸時代から残る文化財が多く、また市内を縦横に流れる堀を使った川下りなどもある、福岡の観光名所の1つである。

高速道路に入り、佐賀を経由して彼らは柳川へと向かう。

 

「後輩のご家族からお勧めの店とか聞いて来てあるからな、楽しみにしとけ」

「おお!柳川はアレが有名だからなー、ある意味一番楽しみにしてたぜ!」

「昼食代も十分持ってきたしな、多少お高いとこでも行けるだろ」

 

各班がわいわいとバス内で喋り倒す中、バスが発車する。長い移動の始まりだ。

長崎の市内を窓から眺めながら、その風景を彼らは心に刻んでゆく。

 

「機会があれば、また来ることもある………かね」

 

東京から遠く離れたこの長崎。そこに再び訪れる未来が来るかは、サキトには分かるはずも無かった。

 

 

* * *

 

 

観光バスに乗って数十分、既に高速道路に入り福岡へと向かう中、サキトはスマホを見ながら少しばかり落ち着かない様子であった。

 

「今日のメンテが明けたらいよいよか……」

「何してんのかと思ったら、スマホでもデュエマなのか護守」

「おうよ、いよいよ待ちに待ったカードが今日実装されるんだよ」

 

サキトは当然の如く、スマホアプリ版デュエマ───「デュエル・マスターズ プレイス」もプレイしている。この日はついに、革命ファイナル編のカードが実装される予定となっていた。

 

「俺がデュエマに本格的に手を出した頃にはもう殿堂入りしていたドギラゴン剣が、4枚デッキに入れられる……素晴らしい環境だ……!」

「名前は聞いたことあるな、めっちゃ強いカードなんだろ?」

「ああ、今でも愛用してるよ。今はデッキに1枚しか入れられない制限がかかってるけどな」

「それ4枚使えるのはヤバいんじゃ?」

「まあ暴れまわるだろうが、これの運営なら他のカードをアッパー調整したり強力なオリジナルカード出したりするから1色とまではいかないんじゃねえかな。実際同時実装のカードが中々強烈な性能しているし」

 

……実際にこの後、紙より強化されたギガトロンが大躍進を遂げたり、キリコ・アンプラウドが想定以上の暴れ方をする事になるが……まだこの時のサキトには知る由もない事である。

それはさておき。

 

「乗り物酔いしてる奴はいないかー?」

「大丈夫でーす」

「着くまであと1時間くらいはかかるし、何すっかねー」

「外でも眺めるか?まだ紅葉が見れる時期だし」

「そーだな。お、あの辺なんか良い感じじゃね?」

 

目的地に着くまでの間、彼らはバスの中でワイワイと騒ぎながら過ごすのであった。

 

 

* * *

 

 

それから更に1時間程が経ち、観光バスは高速を降りて柳川市の一角へとやって来た。生徒達はバスを降り、教師の誘導に従って歩いてゆく。

 

「よーし、ここから2班ずつ、船に乗っていくぞー」

「おぉ、この川を下るのか!」

「川って言うか、堀割って奴だな。江戸時代に作られた、かつての城の守りだ」

 

現在値は松月乗船場、ここから1時間どんこ舟に乗り、柳川の名所である「立花氏庭園」へと向かう。

 

「それじゃ出発するよー」

「はーい」

 

2班が舟に乗り込むと、ゆっくりと舟が岸を離れ川を下り始める。狭い水門を通り、柳川の古い歴史を感じさせる堀を船が進んでゆく。

 

「おー、なかなか風情あるなぁ」

「結構橋の下通る個所も多いって聞いたけど……うお、早速来た」

 

堀には橋が架かっている場所も多く、狭い水路や低い橋の下を度々舟が通過してゆく。

 

「せ、船頭さん大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、慣れとーけんねー」

 

船頭さんがしゃがんでも頭すれすれくらいの低さの橋もある。慣れた様子で舟の上でしゃがみ、バランスを崩さずに進んで行く様はある意味で凄い。

 

「あそこの櫓に掛かってる網は一体?」

「あれは蜘蛛手棚って言うて、あそこん櫓から網ば下ろして魚ば獲る漁に使われとーばいー」

「へぇー……せっかくだしメモっておこう」

 

蜘蛛手漁、佐賀では「棚じぶ漁」、岡山では「四つ手網漁」と呼ばれるその漁法は、古くから日本の内海に面した地域に伝わる物だ。

今は廃れているが、そういった伝統の痕跡はこのような所に残り、新たな世代に伝えられて行くのだろう。

 

「お兄しゃんたち、もうすぐ水上売店ば通るばってん何か買うていくかい?」

「へー、川に浮かぶ売店か!」

「軽食と飲み物があるのか、それじゃちょっとお願いします」

 

日本唯一の川に浮かぶ水上売店に舟を寄せ、その場で品物を見て買っていく。福岡産のイチゴを使ったスイーツやら甘辛い揚げ餅などと飲み物を買い、味わいながら川下りを楽しんで行った。

 

 

* * *

 

 

「ここが立花氏庭園かぁ」

 

川下りを終え桜龍高校の生徒達が辿り着いたのは、国の名勝に指定されている「立花氏庭園」だ。

江戸時代の柳川藩主、立花家が所持していた邸宅が、100年前の姿をそのままに残されている。

 

「あ、Jack-Potの皆さん!」

「あら、ごきげんよう。今日も一緒に回るかしら?」

「是非とも!」

「こいつ……まあよし、それじゃああちこち見て回りますか」

 

一行はまず西洋館へと向かう。こちらは明治に建てられた迎賓館で、白く美しい外観が実に目を引く物だ。

 

「へー、ここの大広間、良い感じ」

「こういう古い洋館の雰囲気、惹かれるものがあるわよねぇ」

 

漆喰の塗られた壁に廊下に敷かれた赤絨毯、当時の西洋的な内装もそのままに残されている様がタイムスリップしたかのような感覚を覚えさせる。

 

「折角だし写真も撮っていこーぜ!ガイドの人に撮って貰おう!」

「そうね、旅の心絵(メモリー)は大事だもの」

「皆さんと写真!?ひゃっほう!!」

「おいこらはしゃぐな!んでもって押すな!!」

 

7人でどうにか画面に収めて貰い、西洋館をバックに写真を撮る。全員に画像をシェアし、旅の記録がこうしてまた1つ増えた。

 

「んでもって次はこっちと……おおぉぉ、こりゃすげえ」

 

隣に建つ和風の屋敷には、大きな池庭「松濤園」がある。大きな池に見事な木々、風光明媚な日本庭園が、彼らを圧倒する。

 

「おお、鴨が来てる。そろそろ渡りの季節も近いもんな」

「もうすぐ冬ねえ、1年は早いものだわ……」

 

 

* * *

 

 

「よし、昼はここだ。美味いらしいぞ」

「……まずいな、店外に漂ってくる匂いだけでお腹が減って来た」

 

7人がやって来たのは、下船場所からすぐ近く、堀に面した観光通り。多数のうなぎ店が軒を連ね、蒲焼きのたれの香りが入り口から漂ってくる。

サキトが皆を連れ入ったのはその中の1店だ。事前にしのぶの両親からオススメされたところで、店内も盛況のようだった。

少々待ったが無事席に通され、全員お品書きに目を通す。

 

「注文は当然あれだよな!」

「勿論。すみません店員さん、うなぎのせいろ蒸しの並を7人前お願いしまーす」

「かしこまりました」

 

奥で調理している音が聞こえて来る。炭火でじっくりと焼き上げたうなぎをせいろで蒸し上げる、ここ柳川の名物料理「うなぎのせいろ蒸し」に、彼らの期待は高まり続けていた。

 

「お待たせいたしました」

「ん~!とってもいい匂いね!」

「それじゃあ開けてみましょうか」

 

一斉に蓋を開けると、湯気が立ち込めて良い香りが一気に広がる。蒲焼きにしたうなぎの上に錦糸卵が乗り、下に敷かれた白米にはたれが絡んで褐色に艶めいている。

 

「あーやばい、匂いだけでどんぶり1杯いけそう……」

「いやいや折角食えるんだ、匂いだけで満足してどうする!」

「それじゃあ……」

『いただきまーす!』

 

箸で口へと運び、味わった瞬間……皆は目を見開いた。

 

「美味い!すっげえ美味いっ!!」

「旬の時期なだけあって脂がのってて絶品ね!」

「「………っ!……っ!」」

「やべえよ護守と春咲さん無言で味わってる……いや気持ちは分かるけど」

 

お勧めされただけあって実に良い店、良いうなぎだった。後でしのぶの両親に礼を言わねばなるまい。

 

「そういやうなぎって夏のイメージあるけど秋から冬が旬なんすね」

「あれは夏バテに負けないよう、栄養のあるうなぎを食べようって話なのよね?」

「冬眠前に養分を蓄える10月から12月が一番美味くて、夏はむしろ味が落ちるそうだぜ」

「なるほどなぁ……」

 

美味なるうなぎとご飯を味わい、彼らは満足げに店を後にした。

 

 

* * *

 

 

「ん、すまんちょっとトイレ行って来る」

「おお?分かったいってらー」

「水でも飲み過ぎたのかー?」

 

皆と一度別れてトイレへ……向かわずに路地へと入る。そこでスマホを取り出すと、振動を与え続けて来た通知を切り、デュエマフォン・アプリを起動させた。

 

「上か……ドギラゴン、俺に力を!」

『Duel field expansion. Contract armor awakening.』

 

極小のデュエルフィールドを張ると、コントラクトアーマーで新たな鎧……ドギラゴン天の力を纏い、大きく跳躍する。一跳びで上空50mまで達すると、手にした三叉槍を突き出した。

 

『ギャンッ!?』

「折角の修学旅行なんだ、邪魔をするんじゃない……!」

 

上空を飛び回っていた、狼の被り物のような兜と囚人服を纏った天使のようなクリーチャーを、ドギラゴンの槍が貫き消滅させる。

福岡に入った頃から通知が来ていたのだが、1人になれるタイミングを見計らうのが難しくここまで手を出す事が出来なかったのだ。

 

「《Jの翼 プリズルフ》……イニシャルズの尖兵か」

 

ここに来て、因縁あるイニシャルズのクリーチャーが出て来たとなるとサキトも警戒せざるを得ない。どちらのマスター・イニシャルズが出て来るにせよ少々面倒な相手になるだろう。

 

「仕掛けて来るなら今夜か明日か……全く、嫌になるなこんな時に」

 

修学旅行を最後まで楽しみたいというのに、トラブルの予兆が表れうんざりするサキト。元の路地へ着地し変身を解くと、何事も無かったかのように皆に合流するのであった。

彼らは柳川観光が終われば、福岡市へ向かいホテルへ泊まる予定となっている。果たしてそこで何が待っていることか。




柳川のうなぎは良いぞ……!
そして、本格的な波乱の予感を見せつつ、彼らは福岡のホテルへ向かいます。
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