『グォォオォオオ!!』
『禁断……機動!』
「いかん!皆、逃げろ!」
動き出したドキンダムXが、巨大な槍を天に投げ放つ。するとその槍が無数に分裂し……アーシュ達へと降り注ぐ!
『うわぁぁあぁあっ!?』
「皆!」
「すぐ助け……っ!がはぁっ!?」
幸いにして直撃はしなかったものの、ドラゴン娘達は大量の槍に身動きを封じられ、力を奪われてゆく。ドキンダムXの持つクリーチャーを封印する力が、ドラゴンの力を身に宿す彼女達へと襲い掛かったのだ。
同化状態になっていなかったサキトとトウリは難を逃れ、彼女達を救出せんとするが……瞬間移動したかのように接近してきたVV-8が、2人を撥ね飛ばし瓦礫に叩き付けた。
「先輩っ!」
「護守くん!蟠龍くん!」
「う、動けない……っ!大丈夫でしか!?」
「な、何とかな……っぐぅ、流石にキツいが……っ!」
「み、皆さん……動けないうちは逆に狙われません、少しばかり待っていてください……っ!」
「んな事言ったって、大丈夫なのかよ!?」
「正直あんまり大丈夫じゃないけれど、どうにかしなきゃならんのが俺達の仕事なのでね……行くぞ、ドギラゴン!」
「モモキング、自分に力を!」
『『Contract armor awakening.』』
サキトとトウリがコントラクトアーマーを纏う。ドキンダムX相手には分の悪い戦いとなるが、相手は禁断のクリーチャー。ここで戦わなければ、ゾーンの外まで出た場合凄まじい被害が齎されるだろう。2人に選択の余地は無い。
「『ドギラゴンッ!閃ァッ!』」
「『夢双英雄、モモキングDM!参ジョーッ!!』」
相棒の力を纏った2人の決闘者が、禁断の力へと立ち向かう。そして、彼らが活性化させたマナの影響が、周囲へと伝播してゆく。
「む、これは……っ!」
サキトがドギラゴン閃と同化した瞬間、ドラゴン娘達の動きを封じている槍のうち何本かに変化が起きる。力が弱まり、封印が解けかかっているようだ。
「護守サキト!儂を解放せよ!少しでも彼奴と戦う者は多い方が良かろう!」
「伍代さん!?……そうか、封印の解除条件か……っ!」
クリーチャーに施された禁断の封印は、そのクリーチャーと同じ文明の力を持つ「コマンド」種族のクリーチャーが場に出た時解除される。ドギラゴン閃の持つ火と光のマナの力に、ドーラをはじめ7人の封印が反応したのだ。
「封印が解けそうな者の中では儂が最も力がある!頼む!」
「了解っ!っ、ぬあああ!!」
力が弱まったドーラの周囲の槍を引き抜かんとするサキト、そこにそれを阻止せんとVV-8が迫る!
「護守先輩!後ろっ!!」
「ちぃ……っ!」
「させない!カモン!」
『王来!』
「『スター進化ッ!!』」
VV-8の突進を、トウリが受け止めんとする。その姿が、また新たな鎧に包まれてゆく……!
「『《アルカディアス・モモキング》ッ!』」
金色に染まった刀と、「天聖王」アルカディアスの胸像を模した盾を持つスター進化形態、アルカディアス・モモキング!その強固な盾をもって、突進してきたVV-8を弾き返し、距離を取らせることに成功する!
更に、アルカディアスの種族を引き継いだスター進化形態が現れた事で、再び火と光のマナに影響され封印が弱まってゆく!
「これは……よし!ゼオスさん、今動けるようにします!」
「アリガトウネ、トウリ君!これで朕も戦えマス!」
「サキト先輩!VV-8は自分達がやります!そちらはドキンダムの進行阻止を!」
「分かった、気を付けろ……っしゃぁぁああ!」
「ぬうう!こやつらめ、よくもやってくれたな……!成敗してくれる!!」
ドラゴン娘達の中でも、武闘派の2人が封印から解き放たれた。ドラゴンの力を全開にし、翼を広げた彼女達が、それぞれサキトとトウリに追従し、大いなる敵へと挑んでゆく!
* * *
「テヤァァァ!!」
ゼオスがドラゴン化した腕でVV-8に殴りかかる。しかし、再び瞬間移動したかのようにVV-8の姿が消え、パンチが空を切ったゼオスの背後から襲い掛かる。
「させない!」
『!!』
高速回転するタイヤが、盾の表面とこすれ合いギャリギャリと不快な音を立てる。激しい反発力が生まれ、互いに後退して大きく距離を取った。そこへゼオスがサッヴァークの翼から光剣を投げ付けるが、VV-8へと命中する前に突然消滅する。
「ちょっ、今のなに!?どういうことなの!?」
「奴の、VV-8の能力ですね。時間を組み替え、自身が有利となる状況を作り出す……時間改変能力!」
「そんなもんどないすりゃええん!?」
「反則にも程があるわ!」
攻撃を受けた時間を組み替え、無かった事にする。そういった反則級の能力を持つVV-8は、あの時間操作を扱う伝説のクリーチャー、《時の法皇 ミラダンテⅫ》と互角に渡り合う力を持った凶悪な存在だ。封印で身動きが取れないまま、戦いを見守る事しか出来ないアーシュ達は歯噛みする。
「……でも、蟠龍君は攻撃を防げていますよね?」
「このスター進化の、アルカディアスの能力です。『秩序を保つ』力によって、時間の正常な流れを保とうとする力が改変と拮抗して防御出来ているのかと……」
「なら、そのパワーをもう少し強く出来マスか?そうすれば朕達の攻撃を当てるコトが出来るハズデス!」
「……20秒奴の攻撃に耐えてください!それだけ集中できれば、力を発揮出来ます!」
「マカセテ!さあ、行くワヨ!!」
ゼオスが一歩前へ出て、VV-8の注意を惹き付ける。20秒間の攻防が始まる。
* * *
一方、サキトとドーラはドキンダム相手に攻めあぐねていた。翼により空を舞うドーラと動きの素早さで有利を取ろうとするサキトだが、頑強な巨体と高いパワー……99999を誇るドキンダムXからの攻撃は、掠めただけで大ダメージとなり得る!
「おのれ、厄介な……!でぇぇえい!!」
拳や蹴りを叩き込むも、ドキンダムXの身体には大したダメージとならない。ドギラゴンの七支刀も簡単には刃が通らず、苦戦を強いられていた。
「護守サキト!奴を倒す方法はあるか!」
「背景ストーリーでは、ドギラゴンと同格の味方が、同時に必殺の技、ファイナル革命を叩き込んで倒しましたが……それほどの威力がこの場で出せるかは怪しい!」
「ならばどうするのだ!?」
「1つ、奴に効きそうな力はあります。あれを発動できれば……っぬあ!!」
槍を振るい、足で踏み潰さんとしてくるドキンダムXの攻撃を避けながら、機を伺うサキト。ドーラが頭部に拳を叩き込み、注意が逸れた瞬間を見計らい、賭けに出る。
「よし、今だ!ドギラゴン、ハイパ……っ!?ぐぅあ!?」
姿を変えようとした瞬間に、全身に痛みが走り蹲る。そこへ、ドキンダムXの蹴りが迫る!
「ちぃっ!無事か、護守サキト!」
「た、助かった……っうぐ、ダメだ、ドギラゴン超になれない……っ!」
ギリギリでドーラが間に合い、サキトを抱えて空中を飛び回る。
『恐らく、ドリームクリーチャーである超の姿になるには今のサキトでは……身に蓄えられるマナが足りないのだろう。あの時は、外部から注ぎ込まれた力があってこそ成功したようだ』
「トウリの方はモモキングDMと容易に同化できているのにか!?」
『あちらはドリームクリーチャーであるDMと直接契約を交わしているからだろう。それに、マナ総量で言えば恐らく彼の方が上……』
「俺が自在に使うにはもっと力を強くせにゃならんって事か……っ!」
ドキンダムXを倒せる可能性の1つが使用不可能となり、より状況は悪くなった。打破するためには援軍を待つか、この場で勝つためのピースを見つけ出さなければならない。
* * *
「拙いわね、護守くん達の方は押されてるわ」
「手伝いたくても、これじゃピクリとも動けねえぜ!?」
手を出されないとはいえ、身動きも力を使う事も出来ず、戦いを見ている事しか出来ない彼女達。そんな中、水晶が
「お、お姉ちゃん、手を握って……」
「水晶?どうしたの?」
「せめて、少しでも力になりたい。皆の力に、だから──────」
庵野水晶が動けない体のまま、歌を唄い始める。それを見て、傍で動けなくなっているしゅうらが、水晶の手を握りながら皆に呼びかけた。
「みんな!近くにいる人と手を取って、護守さんたちの勝利を祈って!」
「それでどうにかなるんですの!?」
「ええ、水晶の歌が、きっと……彼らに力を与えてくれる!」
その言葉に従い、近くにいる者同士でドラゴン娘達は手を取り合い固く結んでゆく。
「∞ちゃん!先輩達を!」
『うん、信じるよ』
「マロン!しっかり!」
「手が……っ!届いたでし!」
「すずちゃん!手を!」
「うぎぎ……っ!あいつら、負けるんじゃないぞ……!」
「ギャイ、こっち!」
「分かっとるでメガ……!姐さん達、一発かましたれ!」
「ザーナ!栄久!」
「力が入らないけど……これくらいなら」
「頼んだわよ、4人とも……!」
そして……水晶の歌に合わせて、彼女達の身体が…………少しずつ、光を放ち始めた。
* * *
「デヤッ!クゥっ!ウォリャァアァッ!!」
時間改変によるVV-8の奇襲攻撃、それをギリギリでゼオスは捌いていた。どんどん加速していく敵の攻撃に、限界が近付きつつあった……その時。
「コレは、水晶ちゃんの歌!?力が、湧いてキマス!!」
庵野水晶が祈り、歌う。その歌が届くと、ゼオスの内からマナが高まっていく。彼女の持つサッヴァークの力が強まり、VV-8の攻撃速度に追いついてゆく!
「……よしっ!行きます!『—全ての秩序は保たれる—』!!」
そして20秒が経ち──────トウリの、アルカディアス・モモキングの宣言が響き渡る。その瞬間、VV-8の動きが大きく乱れた。
「今デス!セリャァァァアア!!」
『!?!?!?!?』
ゼオスの拳による反撃が、VV-8のボディに突き刺さった。時間改変が働かず、攻撃を当てられたことに理解が追い付かず禁断の機関は混乱し動きが更に精彩を欠いた。
「こちらも、力が湧いてきました……今ならっ!ゼオスさん!サキト先輩!」
「っ、何だ!?」
「勝利のために、皆に力を!天聖王儀──────」
トウリが手にする刀が形を変え、天使の翼のような意匠を持つ一振りの剣となる。アルカディアスの力が込められた、秩序の聖剣──────。
「『アルカディア・グローリー!!』」
平和への願い、そして可能性を集約した聖なる闘気がサキト達4人を包み込む。動きを止めたサキトとドーラへドキンダムが槍を叩きこもうとするが……!
『グォォオオォオォオ!!』
「っ、でぇぇやぁぁぁああっ!」
「はぁぁあああぁっ!!」
サキトの剣とドーラの拳が、槍を正面から打ち砕く。聖闘気が彼等を守り、絶大な力を発揮させている!
「これなら!」
「やるぞ!儂らの一撃を叩き込む!」
「トウリ君、朕達も!」
「ええ、行きます!」
サキトとドーラが、トウリとゼオスが、それぞれドキンダムXとVV-8へと吶喊する。アルカディア・グローリーの力に守られた彼らは……決して負けることは無い!
「「「「いっけぇぇぇぇえええええぇぇえええ!!」」」」
そして、二振りの剣が、2つの拳が。ドキンダムXと、VV-8を──────貫いた。
『グ、ォォォォオオァァアアアアア!!』
『ガ、ガガガガガggggggg──────』
最後の一撃を叩き込まれた個所から、聖闘気が体内に注ぎ込まれ、中から爆発する。2体の禁断が、崩れ去ってゆく──────。
* * *
気付けばゾーンは消え、彼らは桜龍高校の校庭にいた。封印の槍もドキンダムXの消滅と共に消え去り、どうにか皆動けるようになっていた。
「あー……身体がしんどい……」
「こっちもです……アルカディア・グローリーの反動ですかね……」
ドギラゴン超の力を発揮するのに失敗した反動を受けたサキト、そして伝説の超獣の力を借りた奥義を発動したトウリは地面に大の字になって倒れていた。
「2人とも大丈夫!?」
「あー、まあこの程度なら、すぐ回復できるかと」
「お疲れ様デス、トウリ君。立てマスか?」
「ゼオスさんも、お疲れ様でした……肩を貸して貰えばどうにか」
しのぶとゼオスに肩を借りてそれぞれ立ち上がるサキト達。既に辺りは暗く、時刻は19時近くになろうとしていた。
「ここに居ると拙いわね、警備の人に見つかったら大変よ」
「た、確かにヤバいな、どうする!?」
「先輩、一旦あのフィールドで見つからんごと出来ん?」
「監視カメラとかもありそうだしその方が良さそうだな……よし、皆集まって」
『Duel field expansion.』
アプリを操作しデュエルフィールドを展開するサキト。これにより、どうにか無事気付かれずに学校の敷地内から出る事には成功した。
「全く、大変な目に遭ったでし……」
「すまなかったね、俺絡みの敵に絡まれて巻き込んじゃって……」
「まあでも、あれが親玉だったんでしょう?倒したんなら今後は絡まれる事も減るんじゃないかしら?」
「いや……そうでもないかと」
ドラゴン娘の皆とトウリは、それぞれの戦闘に注力していたために、ギュウジン丸を背後から襲ったあの腕を見ていない。その正体は、一体何なのか。
謎を一つ残したまま、この日の騒動は一応の決着を迎えたのであった。
* * *
──────
午前7時というまだ朝早い時間帯。職員たちは、不測の事態により慌ただしく動いていた。上から下までひっくり返ったような騒ぎである。モニタールームには怒声が飛び交っているような状態であった。
『間違いないのかね?』
『はい。午前5時頃、観測機器が突如としてこの星を発見しました』
『あり得ない!こんな近くまで接近してきた、このサイズの小惑星を見逃していたのか!?』
『いえ、それが……突如として、「出現」したとしか言いようがないのです!』
『馬鹿な、何という事だ……』
『各国首脳に連絡を。軌道計算の結果、この小惑星は…………』
『およそ718時間後、12月24日の午前5時に……地球に衝突する軌道にあります』
──────■■■■■■まで、あと30日。
次回からはいよいよ話も大詰め。
決定的にドラゴン娘本編と設定が乖離するであろう時が、近付いて来ました。
レッドゾーンのナイトメア・クリーチャー抜擢嬉しいですねえ……。