迎え撃つは、人類と超獣世界の力を結集させた組織───DGA!
『ハローヒューストン。こちらシャトル「ガーディアン」、目標の小惑星に接近、30分後に着陸を試みる』
『シャトル「オデッセイ」。こちらも目標に接近中。なんて大きさだ、月に並ぶサイズだぞ』
──────2024年12月17日。
NASAが打ち上げた複数機のシャトル、その第一陣が地球へ迫る小惑星へと今まさに接触しようとしていた。
目的は、小惑星の内部からの破壊。あまりに巨大な目標を内部からの衝撃で破砕すべく、各国から集めた核兵器を積み込んでいる。これらを小惑星の核近くまで掘削して仕掛け、起爆するという作戦だ。
『こちらヒューストン。地球の存亡は諸君らにかかっている。細心の注意を払って行動して欲しい』
『了解した。しかし、こんなものが一体いつどこから来て……』
『待て、何だありゃ……顔、か?』
『顔だと?』
『画像データを送信した。恐ろしい、まるで悪魔のような顔が──────』
突然、『ガーディアン』からの通信が途絶した。トラブルが発生したか、管制室に緊張が走る。
『ガーディアン!応答せよ!オデッセイ!ガーディアンに何が起こった!』
『が、「ガーディアン」ロスト!船体が爆発した!』
『何だと!?』
『デブリ衝突による事故か……っ!?あ、あれは何だ!?』
『本船に謎の……謎の「生命体」が接近!
『攻撃だと!?』
最早シャトルの乗員はパニック状態だ。彼らにとって未知の存在が、目の前に現れ攻撃を仕掛けているのだ。外は地球生命の生存を許さぬ宇宙空間、彼らに……逃げ場は無い。
『あ、悪魔だ!角の生えた、悪魔が!』
『神よ!お助け──────』
そして、『オデッセイ』からの通信も途絶する。職員たちが絶句する中、彼らが最後に送って来た画像が中央モニターに表示される。
「Oh my God…」
巨大小惑星に埋まる、巨大な人型。そして、星の周囲に飛ぶ、複数の白い人型。それらは正しく、世界を滅ぼさんとする悪魔の群れであった。
この瞬間、必要な核兵器の3割とシャトル2機を喪失し──────NASAの小惑星破壊計画は、失敗に終わったのだ。
世界の終焉が──────やって来る。
* * *
『現在地球軌道に接近しつつある巨大天体は、今夜には軌道を交差するように通過し去ってゆくと発表されていますが、有識者によりますと──────』
──────翌週、2024年12月24日。
地上からも肉眼で視認出来るようになった、空に現れた赤く光る星。徐々に地球へ接近しているというそれは、ここ数日の間で、世界各地で様々な憶測を産んでいた。
地球に衝突するか否か、どこからあの星はやって来たのか、NASAの公式発表は本当に信用できるのか。そして、あの不気味に赤く輝く星の正体は、一体何なのか。
『結局、テレビでもネットでもあの星については正しい情報が出てこない。噂だけが広まって、皆不安がってる』
「先輩やったら、DGAん方で何か情報ば知っとーかもしれんね」
『クリーチャー絡みかもしれないからね』
現在は朝の登校時間、12月も終盤となり朝はだいぶ冷え込むようになっていた。しのぶと∞は、終業式を迎える桜龍高校へ向かう道中で、サキトから話を聞かんとして一緒に彼を家まで迎えに行っていた。
「ばってん、何だか詳しか事ば話してくれんっちゃんね……」
『守秘義務とかかな?』
「うーん……あれ?先輩ん家ん前に車が……」
護守家の前に1台の車が止まっている。政治家などが乗るような、黒い高級そうな車だった。そして玄関から出て来るサキトを、彼の母が抱きしめ泣いている……何か異常な事が起こっているのは明らかだった。
「先輩!」
『一体どうしたの?』
「うあ、しのぶと帝王坂さんか」
2人に気付くとサキトがバツが悪そうな表情を浮かべる。
『……何かあったんだね』
「先輩、もしかして、何か危なか事に巻き込まるーと?」
「ん、あー…………」
サキトは車の傍に立つ黒服の男性をちらと見るが、彼は首を横に振り何かを否定する。頭を掻きつつ、サキトは言葉を選んで2人に話し始めた。
「あー、内容の詳細は言えないけど……ちょっと重要な仕事があってな。今日は学校に行けそうに無いんだ」
「うちにも言えん事ね?」
「───すまん、今回ばかりは言えない」
その様子にしのぶは不安に駆られる。恋人にも言えない任務などと言われたら、何か危険な事が起こっているのは間違いない。
「じゃあ、先輩について……」
「すまん、それも駄目だ。──────心配しないでくれしのぶ、きっと帰って来るからな。信じて待っていてくれ」
そう言うとサキトは車に乗り込み、すぐさま発進していった。
『……心配なの?』
「……うん、先輩、『必ず』じゃなくて『きっと』って……」
今回ばかりは、言い知れぬ不安を感じてしまう。これが今生の別れになるのではないかと…………。
「……どうにかする自信は無いとは言わんが、今回ばかりは万一がな……すまない、しのぶ」
「では、栗茶飛行場まで向かいます。よろしいですね?」
「ええ、お願いします」
栗茶飛行場。防衛省が管理する、栗茶市に存在する軍用飛行場だ。ここからC-2輸送機に機材と共に乗り込み、サキトは一路、南へと飛ぶ……。
* * *
──────およそ1時間後。
「まさかこんな形でまた九州に来るなんてな……」
九州・鹿児島県……種子島。東京から遥か南西の地にサキトはやって来た。DGAが講じた最終手段、禁断迎撃作戦の要として。
「DGAの護守サキトさんですね?こちらにお乗り下さい、センターへご案内します」
「ありがとう、助かります」
既にアンナとリュウ、そのほか各所から招集されたデュエリスト達がこの地へ集まっているはずだ。
『……先輩、本当に自分は同行不可なのですか?』
「だから言われたろう、確かに奴をねじ伏せる事は可能かもしれんが、その後モモキングの機動力では戻ってこれんって」
『ですが……』
「それに、トウリは本当に最悪のケースの時の最終防衛ラインだ。地球で留守を護っていてくれ」
桜龍高校は今頃終業式前のホームルーム中のはずだが、一時教室を抜けて連絡して来たトウリからの電話にサキトは応えていた。
「なに、作戦通りに事が進めば問題無いさ。それじゃあまた後でな」
『ちょっ───』
車が宇宙センターへ到着し、サキトはトウリとの通話を切った。ドルマゲドンXの地球直撃まであと9時間を切っている、一刻も早い作戦開始のためサキトは会議室へと向かった。
「お待たせしました。護守サキト、現着しました」
「待っていたぞ。こちらも準備は出来ている」
「では始めましょう。各員、最終確認に移ります」
そうして、作戦の内容を再確認してゆく──────。
* * *
今回の作戦行動、最終禁断クリーチャー・ドルマゲドンXに対する迎撃作戦は、3つの段階に分かれる。
まず第一段階として、本作戦における迎撃要員として選定された護守サキト隊員を宇宙へ上げる事となる。
知っての通り宇宙空間は真空と絶対零度の環境に、有害な宇宙線が飛び交うの死の世界。そのまま彼を放り出しては、1分と生命を保てないだろう。
その対策として、デュエルテクターを改修した特殊気密服を開発した。これは並大抵の衝撃やデブリとの物理接触に耐えることが出来、水文明のテクノロジーによる高度な生命維持装置が組み込まれている。また手足を動かす行動を阻害しないよう圧迫式で全身を覆う形状になっている事を留意されたし。
大気圏突破方法は、鹿児島支部所属の実働部隊員、
第二段階として、宇宙空間で禁断の星に接敵、禁断爆発を起こさせるまでの間に護守隊員の展開したシールドを守りながら戦闘を行う。
NASAから提供されたシャトルの最期の映像を見るに、禁断の星を護衛するクリーチャーが周囲に存在する事は明白である。よって、これらにシールドを消耗させられることを防ぎながらドルマゲドンXの解放まで戦闘する必要がある。
よってここでは、護守隊員以外の複数名の実働部隊員が、あらかじめ護衛としてクリーチャーを召喚し同行させる事となる。
本来のデュエマのルールからは逸脱するであろうが、世界を守るため我々は手段を選んでいる余裕は無い。特殊プログラムを構築し、遠隔マナ供給により彼を護衛するクリーチャー群を維持するシステムを技術班が完成させてくれた。これを各員のデュエマフォン・アプリに組み込み使用する。
防御担当部隊は、天道アンナ隊員の指揮の元、場を離れない耐性を持つブロッカーで攻撃をひたすらに防御する。マナコストが大きいほど使用者に遠隔マナ供給の負担がかかるため、残念ながら強大なゲンムエンペラーの使用は不可能となる。留意されたし。
攻撃担当部隊は、井星リュウ隊員の指揮の元、高パワーや破壊効果を持つクリーチャーで禁断の星を守るクリーチャーを減らしていく事に専念して貰う。禁断爆発後に護衛クリーチャーが残っていた場合、総攻撃が護守隊員を襲い作戦遂行は非常に困難となるだろう。護守隊員を宙域まで運び終えた《“轟轟轟”ブランド》もそのまま戦闘へ参加する事とする。
第三段階。禁断の星が封印を解かれ、禁断爆発を起こしたら、作戦は最終段階へと移る。
護守隊員はデュエルテクターをコントラクトアーマーへと覚醒させ、ドギラゴン超への変身からドルマゲドンXへの除去を一気に叩き込む。
ドギラゴールデンの力を扱えれば最適であるが、現状では護守隊員の体内マナ量がドギラゴールデンへの変身に必要な量に満たないと報告を受けている。
そのため、外部からマナを供給出来るよう、栗茶広域防災基地にマナ転送設備を新たに設置した。ここから戦闘に参加しない各地域の実働部隊員が持つマナを護守隊員に供給する手筈となっている。
これにより一時的に膨大なマナを護守隊員に集積、禁断を倒す切り札を起動させる事となる。
そして撃破後はドルマゲドンXの末期の爆発が予想されるため、護守隊員はコントラクトアーマーを纏ったまま全速で宙域を離脱、爆発に巻き込まるのを防ぎながら地球へ帰還して貰う。
ドルマゲドンXを一気に攻め落とす火力と、戦域の高速離脱を両立しうる護守隊員が今回の作戦に最適と判断されたため、このような役目を負わせることとなった。
未成年である彼にこのような重責を背負わせるのは本意では無いが……我々は、彼らの力に全てを託す他に道はない。作戦の成功と、無事の帰還を心から祈る。
一同、敬礼ッ!
──────作戦名『ドギラゴン・スターバスター』を、ここに開始する!
* * *
いよいよ、打ち上げの時がやって来た。宇宙用デュエルテクターに身を包んだサキトが、《“轟轟轟”ブランド》の背に器具で固定される。
「流石にこんな格好で宇宙に行くのはあまり格好付かんなぁ……」
『まあ、これも貴重な体験だよ護守くん。……頼んだよ』
「了解です。皆のクリーチャーの力、貸して貰います」
召喚された護衛のクリーチャーは、一時的に非実体化状態で待機している。大気圏突破後に地上からのマナ供給で実体化し、防備を固めた状態で禁断の星へと接近していく予定だ。
『カウントダウン開始します。30、29、28……』
『攻撃担当部隊では、普段の対クリーチャー戦では出番が無いお気に入りを嬉々として出している者も多い。心しておけ』
「分かってますよ。ミスったら全てが終わりだ、俺の全てを賭けて戦います」
カウントが進んでゆく。誰もが固唾を呑んで見守る中、ブランドの機構が動いてゆく。待ち受ける戦いを思うと、サキトの手は震え始める。
「大丈夫だ、これは武者震いだ……絶対に、負けはしない」
『3、2、1、イグニッション!』
『《“轟轟轟”ブランド》ロケットモード、リフトオフ!』
サキトを中心としたデュエルフィールドに包まれた、“轟轟轟”ブランドが宇宙を目指す。禁断の星を迎撃すべく、人類最後の希望が天へと昇ってゆく。
「世界を滅ぼさせはしない。待っていろ……ドルマゲドン!」
──────世界最後の日、来たれり。
本作における栗茶市の所在地は、八王子元ネタの八獣子駅が近い地域として現実の立川市辺りとしています。自衛隊駐屯地もあって話が大規模になる場合も実に便利。
いよいよ、決戦の時。大いなる厄災に、サキト達が立ち向かう。