ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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Epilogue:ドラゴン娘と───

『先週24日に栗茶市で起こった災害、並びに小惑星の地球接近時に見られた様々な現象についてのニュースです。政府は、栗茶市に現れた怪獣及び小惑星の正体であった巨大怪獣についての情報を開示、「クリーチャー」と呼称される異世界の生命体の存在を明らかにしました』

 

──────2024年12月30日。

ドルマゲドンⅩとの戦いからもうすぐ1週間。世間は、突如として明らかになった「クリーチャー」の存在に混乱の最中にあった。

ネット上にドルマゲドン戦の映像が拡散、更に栗茶市に降下したドキンダム9体もその高パワー故か、はたまた広域にデュエルフィールドが展開されたからか、認識阻害が働かずにトウリとの戦闘の様子が多くの民間人に目撃され、メディアに取り上げられる事となった。

幸いにして、ドラゴン娘の皆は目撃されずに済んだため平穏に過ごせているようだが……クリーチャーと、それに対処する組織たるDGAの存在は明るみに出る事となった。

 

『このDGAという組織、未成年をクリーチャーとの戦いに利用していた事への是非が問われていますが、皆さんはどう思われるでしょうか』

『いやぁ、人道的に問題があると言われればそうなんでしょうけど、彼らがいなければ今頃我々は地球ごと宇宙の塵になってたわけですよ?彼らが地球を守ったからこそこうしていられるという厳然たる事実は、我々皆が受け入れないといけないでしょうね』

 

ここしばらくは、ニュース番組もDGAの事ばかりを取り上げている。批判も確かにあるが、それ以上に明確な功績が全世界に周知されているため、概ね世間には受け入れられていた。

 

「あ、そろそろ時間やけん、お迎えに行かな……」

 

しのぶはテレビの電源を切ると、コートを着込み家を出て桜龍学門前駅へと向かう。2024年ももうすぐ終わり。肌寒い空気の中、すっかり歩きなれた道を歩いてゆく。

駅に着くと、ちょうど電車が来た所だった。改札口からぞろぞろと人が出て来る中、サングラスをかけた男性が目に映る。それを見たしのぶは、顔を綻ばせた。

 

 

 

「おかえり!お疲れ様──────先輩!」

「おう、ただいま──────しのぶ」

 

 

* * *

 

 

「ぁ、ああぁ……せん、ぱい…………せんぱい……っ!」

『しのぶ……』

 

ドルマゲドンの爆発直後。デュエマフォンからの通信も監視衛星の映像も途絶え、広域防災基地の指令室は悲しみに包まれていた。しのぶの嘆く声だけが響き、皆声も出せずに呆然とするばかり。

地球は守られたが、重い代償を彼らは支払った…………誰もが、そう思っていた。

 

「……監視衛星の映像、あと数分で回復します。護守隊員の端末からの信号──────えっ!?」

「何だ、どうした……」

「し、信号を感知!彼の端末が、まだ生きています!」

「何だとぉっ!?」

 

その声にスタッフたちが顔を上げ、一気に慌ただしく動き始める。一刻も早く監視衛星との通信を回復させようと躍起になっていた。

 

「し、しのぶさん!顔を上げて!」

「頼むで先輩、ちゃんと生きとってくれや……!」

「早く、早く映らぬか……!」

 

あまりにも長く感じる数十秒が過ぎ──────ノイズばかりを映していた衛星の映像が、回復する。

 

「映像、来ます!」

「…………っ!」

 

固唾を呑んで見守る中、映し出された映像は……宇宙空間に浮かぶ、徐々にマナへと還元されゆく禁断の星の、ドルマゲドンの残骸群。そして──────

 

宇宙空間に煌々と輝く、金色の光。

 

「あれだ!拡大、拡大しろ!」

「あれは、間違いない──────!」

『ザザ……ザーッ……ちら、ご……きと、応……』

「っ!ノイズが酷いですが、通信が!」

 

拡大された、金色の光の元。それは紛れもなく、宇宙空間に浮かんだ、金色の鎧を纏った龍人の姿──────。

 

『ザ……ザッ……こちら、ごのか……サキト、応答願います』

『──────おぉぉおおぉおおおおっ!!』

 

指令室が歓声に包まれた。如何なる奇跡か、サキトが健在で、あの宙域にいる!

 

「こちら栗茶広域防災基地、指令室!護守隊員、応答せよ!」

『ザザッ……良かっ……繋がった!』

『こちら種子島宇宙センター!全く、冷や冷やさせてくれる……!』

「よ、かったぁ……っ、安心したら力抜けちゃったよぉ」

「ほれしのぶ!護守サキトの奴め、生きておったぞ!」

 

ドーラがインカムを拾い、しのぶへと渡す。震える手で受け取ったしのぶは、泣きながらマイクへ呼びかけた。

 

「せん、ぱ、先輩!」

『ああ、しのぶ。正直本気で死ぬかと思ったけど生き残れ───』

「馬鹿ぁぁああ!!」

『へぇあっ!?』

 

通信中に大きく叫ばれ、素っ頓狂な声を上げるサキト。

 

「馬鹿っ、馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!先輩の馬鹿ぁ!うち、先輩が死んでしもうたら、どげんしたらいいとか分からんばい……っ!うわぁぁあぁ……っ!」

『ご、ごめん!悪かった!俺もああするしかないと思って……っ!』

「あー、サキト先輩。とりあえず、早めに帰って来てください。心配かけた事を謝るなら、ちゃんと顔を合わせた方が良いですよ──────あ、でもどうやって戻るんでしょう。ISS経由でしょうか?」

『あ、ああ、幸いこのまま帰れそうな感じはあるな。少し待っててくれ』

 

そうして一旦通信は切られた。ようやく肩の荷が下り、一息をついたところで……。

 

「…………あれ?コントラクトアーマーの装着可能時間を、大幅に過ぎて無いか?」

「──────はっ!?」

 

再びDGAのスタッフ達は、大慌てでサキトの状態を計測し始める事となったのだった。

 

 

* * *

 

 

『ふぅ…………ドルマゲドンが消えて、眷属のドキンダムやイニシャルズ達もほぼ消えたようだな』

 

衛星軌道にて、消えていくドルマゲドンの残骸を見ているサキト。その中に、気になる物を見つけた彼は翼を羽ばたかせ近付いてゆく。

 

『……ああ、お前か。あの爆発に巻き込まれてまだ消えきってないとはな』

『…………ドギラゴン、貴方は何故無事なの』

 

禁断の星の外殻、消えかかる岩塊に横たわっていた、ボロボロのレッドゾーンZ。四肢は砕け、彼女自身も消える寸前といった所だった。

 

『あの爆発、いくら貴方といえど、無事で済むはずは無い。それも、あんな至近距離だったというのに』

『まあ、ある意味皮肉な話だが───どうやらお前のお陰と言えるみたいだな』

 

サキトの手には、1枚のカードが握られていた。こちらも徐々にマナへと還元されており、光の粒子が放出されてゆく。そのカードは──────。

 

『……レッドギラゴン?』

『ああ。爆発の瞬間、突然俺の身体からこいつが飛び出して来て……レッドギラゴンの鎧が俺を覆った』

 

《燃える侵略 レッドギラゴン》。その能力…………このクリーチャーが破壊された時、その下に重ねてあった進化ではないドラゴンをすべてバトルゾーンに出すというものがある。

 

『俺が契約したドギラゴンとは異なる、別の意志が宿っていたのかもしれないな。このレッドギラゴンの侵略の力が、最後の最後に俺を爆発から守り、身代わりとなってくれたみたいだ』

『…………そう。想定外……本当に皮肉』

『なあ、何故俺を仲間にしようとしたんだ?侵略ウイルスを俺に大量に注ぐよりも、ばら撒いて同士討ちを誘った方が良かっただろうに』

 

サキトの問いかけにレッドゾーンZは目を瞑る。そして、少しばかり間を置いて、答え始めた。

 

『……私は、何故かあの時と違う、ヒトに近い体で蘇った。そして、オリジナルの代わりに禁断の星に選ばれ、その意思に従う事となった……けど』

『けど?』

『オリジナルとは違う未来を、欲しくなった。頭に浮かんだのは……ドギラゴン、貴方に打ち勝つのではなく、貴方を味方とする事で拓ける未来……結局、それは叶わなかったけれど』

 

徐々に彼女から放出される赤い光の粒子が多くなってゆく。消滅が近いのだろう。

 

『……最期に、貴方の名前を教えて。ドギラゴンでない貴方』

『……サキトだ。護守サキト』

『そう……サキト、もしまた逢えたら……今度こそ、貴方を味方にしたい』

『そういうのは、そっちから俺達人間に寄り添ってくれる方が近道だぞ』

『…………もし覚えていたら……考えておく』

 

そう言い残して……レッドゾーンZは完全に消え去った。最後に、光の粒子がサキトに触れた気がした。

 

『……さあ、帰ろう。しのぶが待ってるからな』

 

翼を翻し、黄金の龍人は地球へと飛ぶ。故郷へ、愛する者が待つ地へと。

 

 

* * *

 

 

「検査ん結果はどうやったと?」

「ん。なんでも……ドギラゴンと俺は今、完全に一つとなってるらしい。色々試したけど、いつでもどこでもコントラクトアーマー無しにドギラゴンの力を引き出せるみたいだ」

 

ドギラゴールデンの力を纏い、ドルマゲドンXと決着を付けた時。あの時から、サキトとドギラゴンは一心同体となってしまったようだった。ある意味では、ドラゴン娘達と同じような体質になったと言える。

 

「なんか、うちと先輩で御揃いごたーね」

「そういう考え方なら悪い気はしない、かねえ?あとは副次的に、デュエルフィールド抜きでもシールドやクリーチャーの実体化が出来るようになったらしい。デュエマ原作の“真のデュエリスト”や“デュエルマスター”に限りなく近いかも、ってさ」

「それって大丈夫ね?」

「まあ、同レベルの素質持ち相手と本気でデュエマしない限りは大丈夫……なはず。たぶん」

 

流石に店舗大会とかでいきなりシールド実体化、周囲と対戦相手が大惨事!……という事は起こらない筈である。この世界にはまだ、サキトのレベルまで真のデュエリストの素質が高まっている者は今はいないのだから。

 

「む……ごめんしのぶ、市の北側でクリーチャーが出たみたいだ。出動要請が来た」

「またクリーチャーが出るごとなって来たね……」

 

禁断の星来襲まで、鎮静化していたクリーチャー絡みの事件だが……25日以降、また徐々に増え始めている。人間世界の危機が去ったからか、再び超獣世界からクリーチャー達が不法に渡って来ているようだった。

 

「それじゃあ、早よ行こう!」

「……危ないかもしれないから帰って欲しいんだけど……」

「やだ。もうじぇったい離れとうなかし、離さんけん!」

「……分かった分かった。それじゃあ、連れてくよ」

 

デュエマフォンでデュエラッドを呼び出し、2人で跨ってヘルメットを被る。決して振り落とされないよう、しのぶは強くサキトの背を抱きしめた。

 

「大晦日と正月くらいはゆっくり休みたいからな。速攻で片付けてやるぞ!」

「うんっ!」

 

年の瀬の栗茶市を、デュエラッドに乗った2人が駆けてゆく。戻って来た日常を、これからも守るべく──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ついに、「マスター」候補が1人成熟したな』

 

『ああ、それも想定以上……「キング」の域にまで成長している』

 

『護守サキトか…………彼であれば、期待できよう』

 

『ではこれより、計画を次の段階へ進めよう』

 

 

 

『『全ては、ヒトと我々の世界、双方の安定のために』』

 

 

 

──────彼らの戦いは、まだ終わらない。




およそ5か月に渡った連載もこれにて──────『第一部』終了になります!皆様応援ありがとうございました!
今後は番外編として幾つか本家の短編を元にした話を書きつつ、長編のプロットを練って行こうと思います。最初から最後までのプロットが組めていたのがここまでだったとも言う。
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