Exep.1:護守サキトと初詣
「よし、今日1日はこの3枚をカードスタンドに入れておくか」
「ほんなこつそれで良かと……?」
──────2025年1月1日。
ドルマゲドンとの戦いを終え、地球は無事新年を迎えることが出来た。
護守家は蒼斬家の一家を招き、賑やかに年明けを迎えていた。それぞれの両親は酒を飲み交わしながら談笑している。
日付が変わった後、サキトは自身の部屋の机上に、アクリルカードスタンドに入れたカードを飾る。《激怒! 富士山ン》《芸魔山鷹 トリノドミノ》《ダンディ・ナスオ》の3枚である。
「ほら、初夢の三大縁起物ってあるだろ?折角だからさ」
「クリーチャーで揃えると何だか変な夢見そうやね……」
所謂一富士二鷹三茄子という奴である。起源は諸説あるが、立身出世や運気上昇、家内安全を暗示しているというものが主流である……デュエマのクリーチャーで揃えると富士と茄子に厳つい顔が付いているため、色々と悪い夢に出て来そうというのは正直否定しがたい。
「ところで先輩、初詣に行くなら、今から行く?それとも一旦寝て朝からにすると?」
「んー、折角だから今から行っちゃうか。父さんたちに言って来るよ」
「分かったばい!」
リビングにて炬燵で温まりながら飲んでいる親たちに断りを入れ、2人で初詣に向かう事にした。……ついて行こうかとも言われたのだが、だいぶ酔いが回っている親達を連れて行くのは危なっかしいと判断したためしのぶと2人きりである。
「それじゃあ、行ってきまーす」
「行ってきます」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
コートを着込み、駅に程近い神社へと向かう2人。サキトは夜だというのにサングラスまでかけていた。
「先輩、それ着けとって歩きにくうなかと?」
「これは夜間用だから大丈夫だよ。車の運転手が使う、対向車のライトとかの眩しい光のみカットする奴。流石に学校以外で出かける時はこれ着けてないと……」
ドルマゲドンとの戦闘の映像がクラッキングにより流出した一件は、あの瞬間においては力になったのだが……その後厄介な問題をサキトに残す事となった…………顔バレである。
音声通信は幸いにして盗聴はされなかったが、指令室のモニターへ転送された映像に特殊気密服内のサキトの顔が映っていたため……そこから特定され、一時は全世界にサキトのプロフィールが知れ渡りかけてしまったのだ。
「うちの親や住所まで及ぶ前に、DGAが超獣世界の水文明の力でウイルスばら撒いて情報改竄でどうにかしたらしいけど……俺の顔に関しては流石に見て記憶しちまった人間も多いらしくてなあ」
「大変やね……家にまで人が押し寄せんのはまだ良かったっちゃろうか?」
「一応デュエルフィールドを改修した野次馬避け結界みたいな物は設置してくれたらしいよ。問題は……休み明けの学校かなぁ……」
「あー、囲まれそうやね……」
今後の学校生活がどうなるやらと不安に思うサキト。とはいえそれも、平和を守れたが故の贅沢な悩みであった。
* * *
栗茶市の駅から南側にある、諏訪神社へと2人はやって来た。年が明けたばかりの深夜ながら、既にそこそこの参拝客が来ているようだ。
「あちゃー、少し待ちそうだな。しのぶは平気か?」
「大丈夫ばい。あ、ばってん手が冷たかけん、先輩に握っとって欲しかな」
「ん、分かった」
指を絡めしのぶの手を取るサキト。深夜の厳しい寒さに冷えた手も、互いのぬくもりで温まっていくように感じられた。そうしていると、不意にしのぶが強く手を握り返して来る。
「……ん、しのぶ?」
「えへへ、こげん風に先輩と一緒にお正月ば過ごせてうれしかよ」
「そっか、俺も嬉しいよ。去年の今頃は俺に恋人が出来るなんて思ってなかったしな」
「ふへへ……」
2人で平和な日々の幸せを噛みしめていると、やがて列が進み、お賽銭の順番がやって来た。
「よし、順番が来たな。願い事とか決まってるか?」
「あ、ここん神様にお願いするならなんが良かとやろうか?」
「ここはお諏訪さまだから……俺らであれば厄除け、縁結び、武勇、勝利祈願、健康長寿辺りかな?」
「それならピッタリやね!」
お賽銭を入れ、二拝二拍手一拝。厳かな気持ちで願いが届くよう祈る。
「……よし。次の人もいるし、行こうか」
「うん!」
こうしてひとまずの参拝を終え、絵馬やお守り、おみくじを買うため社務所へ向かった……のだが。
『小吉でっせー』
「…………」
おみくじマシンと思わしきものを凝視するサキト。サングラス越しにジト目で睨みつけ続けている。
『ハーッ、大吉やー!』
「やった!うちは大吉だって!……先輩?どげんしたと?」
「…………」
ひたすら見ていると、心なしか汗をかいているように見えて来て…………。
「……すみません、このおみくじ機、いつからここに?」
「あーこれね、そういえばいつのまにかここにあってねえ?」
「すみませんこれちょっと調べさせて貰いますね」
「あ、ちょっと!」
「先輩!?」
鳥居と水晶玉が特徴的なそれを持ち上げると社務所の裏の茂みへ駆け込む。しのぶが追いつくと、茂みにしゃがみ込んだサキトが両拳でそれをぐりぐりしていた。
「なーんーでーこんなとこに居やがるお前はー!」
『いだだだだだだ!?』
「ちょっ、先輩それって……」
「ああ、クリーチャーだよ……」
そう、これは超獣世界からきたクリーチャー……それも珍しい、ジョーカーズの一員《ウラNICE》であった。
「ジョー星に帰れ!……って言いたいが、たぶんジョー星はもう吹き飛んでどこにも無いんだろうな」
『あ、あんさんどうしてそれを!?』
「一応超獣世界の事情は色々知ってんだよ」
「こん子、帰る場所が無かと?」
「ん、ああ。ジャオウガって強大な敵のせいで、こいつらジョーカーズが済む超獣世界の星の一つ……ジョー星は消し飛ばされて、ジョーカーズの多くは魂だけの状態になっちまってるんだ。生き残りがこんなとこにいるとは」
ジョーカーズの多くは王来MAX篇にて、ジャオウガの強襲によりジョー星が崩壊した際に宇宙空間に放り出され、瀕死の状態だったところをジョニーが回収しスケッチブック状のタマシードにしてどうにか存在を繋いでいる。
『ジョーカーズのうち何体かはジョー星が吹っ飛ばされた時に、こっちの世界に時空の歪みを通ってやって来てて……』
「まだ結構いんのか……どうしたもんかね全く」
「流石に帰る所が無か子ば放り出すとは可哀想やなか……?」
「んん~…………」
少しばかり首を捻り悩むサキト。数秒考えて…………とりあえず現状の対処を考えた。
「とりあえずだ。占うだけで人間に何かしないならここにいても構わん」
『ホンマでっか!?』
「ただし、DGAには報告する。保護観察みたいなもんだ。それで、迎えの伝手が出来たらお前を送り返させて貰う」
「伝手なんてアテはあるん?」
「まあ、一応可能性はあるかもくらいだな。──────ジョニーとジョラゴンが、お前らをきっと探しているぞ」
そう、ジョーカーズのリーダー格、《ジョリー・ザ・ジョニー》と《ジョット・ガン・ジョラゴン》。この2体は王来MAXの戦いを乗り越え、モモキングやジョーカーズのタマシードの復活法を今も探しているはず。
「もしかしたら、こっちの世界でジョニーやジョラゴンを相棒とするDGA実働部隊員がいるかもしれん。その場合はジョニーの所へ連れてってやるさ」
『おお……!おおきに、おおきに旦那ぁ~!』
「良かったね、これでとりあえず一安心なんやろうか?」
ひとまずは処遇が決まり、社務所へとウラNICEは返された。好戦的な類のクリーチャーでなくて何よりと言ったところか。
「とりあえず、もし今後ジョーカーズを見つけたら保護、好戦的なのはDGAで捕獲拘束かね……」
「穏便に済むならそれが良かね」
「まあ、基本悪い連中じゃない……はずだからな」
少し前に校内で起こったアーシュの写真騒動などは、心当たりのあるクリーチャーがいるので少々不安はあるが……まあ何とかなるだろう。
「さーて、それじゃあ帰って寝ようか。もう何だかんだで深夜1時半を回ってるし」
「あ、本当や!早よ帰ろ!」
暗い夜道を連れ立って帰る2人。空は晴れ渡り、冬の星々が空で輝いていた。
新年の定番といえばおみくじ、ということでジョーカーズの一員が登場。無色ジョーカーズ使いの実働部隊員が実際に登場するかは……まだ未定です。
個人的にはジョー星はぶち壊されて良かったと思っていますが!(《希望のジョー星》への私怨)