ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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今回の主役は魔道具使い、井星リュウ!


Exep.3:井星リュウと侵略の残党

「…………警察に協力?」

 

──────2025年1月9日。

栗茶市役所に呼び出されたリュウは、DGAから新たな任務を言い渡されていた。

 

「はい、警視庁の組織犯罪対策第一課から、明日行われる栗茶市内に存在する暴力団の拠点検挙への協力要請が来ています」

「ヤクザの相手は俺達の仕事ではない筈だが?」

「ええ勿論……それが普通のヤクザであればなのですが」

「ふむ…………続けてくれ」

 

その言葉から察するに、相手はクリーチャー憑きか、それに類する者という事だろう。リュウの表情もすぐに引き締まる。

 

「先日、栗茶市に拠点を置く指定暴力団、坂又組が都内で取引を行うとの情報を得た組織犯罪対策第五課が、現場を抑え検挙しようとしていたのですが……」

「五課というと……銃器と薬物対策の課だったか。ヤクとチャカのどちらだったんだ?」

「両方です。そして、取引の場を警察は張っていたのですが、そこに赤いバイクに乗った集団が表れて品を強奪して行ったという事なのです」

「……ソニック・コマンドの類か」

 

《轟速 ザ・レッド》を初めとした火文明の下級ソニック・コマンド達は、大半が赤いバイクに跨った人型のような外見をしている。恐らく、ギュウジン丸とレッドゾーンZが倒された後散り散りになったであろう侵略者達の残党だ。

 

「発信機を取り付け追跡したところ、そのクリーチャー達は坂又組が出入りする栗茶市内の屋敷に入ったとの事でした」

「つまり、坂又組と侵略者残党達はグルで、取引を反故にしてブツだけ得るために襲撃を演出したと?」

「第一課はそう睨んでいます」

 

ドルマゲドン戦以来、クリーチャーの存在は公に知られる事となった。その負の側面の一端が現れてきたと言えよう。

 

「それで、俺に話が回ってきたということか」

「はい。護守隊員や蟠龍隊員は未成年、このような作戦に駆り出す訳には行きませんからね」

「俺も先日成人したばかりだが?」

「井星隊員であれば適性である、と判断したまでです」

 

1月4日にリュウは誕生日を迎え、晴れて20歳となったばかりである。それに依然として大学生のままだ。

 

「複数体のクリーチャーとの戦闘が想定されます。コントラクトアーマーの使用も視野に入れて作戦を遂行してください」

「了解した。明日の何時からだ?」

「構成員の出入りを見てになりますが、午後1時頃を予定しています」

「分かった。授業は……代返とノートを頼んでおくか」

 

 

* * *

 

 

翌日、1月10日。

栗茶市の北方、郊外の住宅地に建つ大きな日本家屋。ここが坂又組とやらの栗茶市の拠点であるらしい。

 

「本日はご協力感謝致します」

「そちらもクリーチャー相手では大変だろう。制圧は任せてくれ」

「それでは、よろしくお願いします」

 

屋敷の周囲へと警官隊が素早く展開していく。そして、リュウが端末を操作すると、屋敷の敷地が完全にデュエルフィールドに覆われた。

今回使用するデュエルフィールドは認識阻害と一般人隔離機能を切り、内部にいる坂又組の構成員を閉じ込めるように調整されている。閉じられた門扉を、リュウが蹴り開けた。

 

「こちらは警視庁組織犯罪対策課だ!指定暴力団坂又組!君達には銃器密輸と違法薬物の取引容疑により強制捜査の令状が出ている!」

「DGA栗茶市実働部隊、井星リュウだ。お前達には超獣犯罪容疑もかかっている。ああ、クリーチャーが居ないなどと白を切ろうとしても無駄だ。この屋敷内に複数のクリーチャー反応を検知済みだからな」

「大人しく捜査に応じろ!応じないようであれば…………っ!」

 

一発の銃声が響く。彼らが調達した拳銃によるものだろう。飛来した弾丸は、リュウが展開したシールドに容易く弾かれた。

 

「抵抗するようだな。それでは実力行使に入る……覚悟して貰おう」

 

先手を取ってマナをチャージし、ザンバリーを召喚するリュウ。パワー5000の軽量ブロッカーに、人間の扱う銃弾では傷一つ付けられない。

 

「くそっ!奴らを出せ!」

 

屋敷内が慌ただしくなり、クリーチャー達がリュウの前に現れた。《撃速 ザ・グナム》が2体、《音速 タルボ》が2体、《音速 バイクロン》が1体。それなりの数だ、対処を誤ればリュウもただでは済まない。

 

『喰らえぇぇ!!』

「タルボの攻撃をザンバリーでブロック、相討ちだ」

『ならばこっちだぁ!』

「シールドブレイク……《逆転の影 ガレック》のシールドトリガー発動!能力が3回発動、まずはデッキからカードを3枚墓地へ……よし、2回目でコスト3以下のクリーチャー、《魅力医(みろくい) ミョウオウ》を墓地から復活。更に3回目でザ・グナム1体のパワーを3000低下させ破壊する。ミョウオウの登場時能力により更に2枚を墓地に」

『ぎゃぁぁぁ!』

『食らいやがれぇぇっ!』

「バイクロンの攻撃でWブレイク……トリガーはなしだ」

『うぉおおぉおっ!!』

「最後のザ・グナムの攻撃をミョウオウでブロック。返り討ちだ」

 

5体のクリーチャーが残り2体まで減らされる。とはいえリュウのシールドも残り2枚、予断は許さない状況だ。

 

「俺のターン、ドロー。マナをチャージし……《堕魔 ドゥリンリ》を召喚。魔道具が場に出た事により……無月の門を発動する」

『なに!?』

「自分の魔道具をバトルゾーンに出した時、バトルゾーンと墓地から2枚ずつ魔道具を選び……『無月の門』は開かれる」

 

場のミョウオウとドゥリンリ、墓地のザンバリーとヴォゲンムが魔法陣を生み出し、そこから闇の炎が噴き上がる。

 

「深淵より舞い上がり、炎の翼で世を覆え……無月の魔凰《卍 デ・スザーク 卍》!」

『キィィィィィィイイイイッ!!』

 

デ・スザークが降臨し、その炎がバイクロンを焼き払う。残るはタルボ1体のみだ。

 

「デ・スザークは降臨時、相手クリーチャーを1体破壊する……残るはお前だけだ」

『くっ、うぉぉぉおおぉお!!』

 

タルボが突撃し、残るシールドのうち1枚を割る。強い敵がいようと止まれない、それがタルボのもつ能力、宿命であった。

 

「これで終わりだな。タルボへとデ・スザークで攻撃……!」

『カァァアアァッ!!』

 

デ・スザークの炎の翼が、残ったタルボを燃やし尽くす。並の人間では太刀打ちできなかったクリーチャーが瞬く間に薙ぎ払われていく様は、警官隊の面々に畏怖の感情を抱かせた。

 

「残る反応は……2体か。警官隊は警戒しつつ付いて来てくれ」

「りょ、了解ッ!」

 

 

* * *

 

 

逃げ場を失い、抗争のため利用せんとしていたクリーチャー達も倒され、拳銃もシールドとデュエルテクターに弾かれ……戦意を失った坂又組の構成員達は次々と捕縛されてゆく。

しかしこの屋敷の主、組長と若頭は屋敷の奥に陣取り抗戦を続けようとしていた。

 

「ここに頭がいるのか?」

「はい!このまま徹底抗戦するつもりのようで……!」

「仕方が無い、残るクリーチャーの反応も一つある……俺が先頭に立とう。跳弾の危険もあるから一旦離れていろ」

「お願いします!」

 

リュウが先頭に立ち、奥の間の戸を開く。すぐさま中から発砲音が響くが、デュエルテクターは弾丸の全てを弾いた。

 

「これ以上の抵抗は無意味だ。諦めて投降しろ」

「チッ……どうやらここまでらしいな」

「オヤジ!まさかここでイモ引くってんですかい!?あいつらを拾って新しいシノギも軌道に乗りそうだってのに……!」

「そのせいでポリより面倒な連中を敵に回しちゃあ世話無えだろうが!」

 

何やら方針の違いで揉めているのだろうか。言い争う組長と若頭へとリュウが近付いて行こうとするが……。

 

『おりゃぁぁああぁ!!』

「うわぁぁっ!?」

「っ、どうした?」

「ライダースーツを着た女がこっちに!ものすごい怪力で……!」

 

後ろに控えていた警官達の頭上を飛び越え、黒いライダースーツの女が飛び掛かって来た。落下の勢いを乗せたまま、リュウへと蹴りを叩き付けんとして来る!

 

「ぐっ!こいつは……」

『よくもあたしの仲間をやってくれたね……!ここはあたしらの居場所だ、これ以上やらせはしないよ!』

「クリーチャーか……思い出した、珍しい奴でパッと出てこなかったが……《爆速 ダビッドアネキ》か!」

 

どうにか両腕で蹴りを受けたものの、骨に罅でも入ったかリュウの腕に痛みが走る。このままではデュエルでの戦闘は出来そうにない。

《爆速 ダビッドアネキ》……コロコロコミックの増刊の1種『コロコロアニキ』の付録カードとして登場した特別なカードである。バイクの意匠を持つロボットのような姿の者が多いソニック・コマンドの中において、唯一の人間に酷似した姿のクリーチャーだ。

 

「よ、よし!そのままそいつを抑えていろ!」

『任せな!』

「ち……っ、大人しく強制送還される気は更々無さそうだな……」

『ギュウジン丸もレッドゾーンZももういない、また散り散りになったあたしら生き残りの侵略者は、こうして人間の世界で生きて行くしかないのさ!』

「なら引導を渡してやるまでだな……」

 

ダビッドアネキはその速度を活かし、リュウへと掴みかかって来る。デュエマフォンを操作し迎撃しようとした所で……リュウが突然、掴みかかられたまま両者の位置を入れ替えるように動いた。

 

「がっ!」

『え、っぐぁ!?』

 

リュウの腹部を背中から鋼の拳が貫き、ダビッドアネキの腹に突き刺さる。

 

『な……っ、SA-W……!?』

『グゥオォォオオォォ……!』

 

その拳の主は、《超轟速 SA-W》。レッドゾーンに近しい、人型ロボットのような姿のソニック・コマンド……!

 

『なん、で、あたしにまで……』

「よぉしっ!よくやったぞ化け物が!あれを与えて躾けた甲斐があった!」

『何を……っ!?』

「余計な事をお前が知る必要はねえ、そのままそいつ共々……死ねえ!」

 

若頭の指示に従い、SA-Wが左の拳を振り上げダビッドアネキを叩き潰そうとする。彼女は驚愕に目を見開き、動けずにいて──────。

 

 

「どうやら、信じる相手を間違ったようだな」

 

 

その拳を、リュウが掴んで止めた。

 

「何!?」

「井星隊員!?致命傷では……!」

「一手が間に合ったお陰だな……今の俺は、この位では……死なない」

 

貫かれた腹部から紫の炎が噴き上がる。SA-Wは悲鳴を上げ、腕を引き抜くが……紫炎は纏わりついて離れない!

 

「ヴォ、グリ、ドゥ、ザン、ゼーロ……契約に基き、我が身を元に門を開く。この身体を依代とし、現世に現れよ……不死なる炎」

『Contract armor awakening.』

 

紫炎が広がりリュウの全身を覆う。金の冠と鎧が四肢に貼り付き、背には炎の翼が広がる……!

 

「無月の魔凰《卍 デ・スザーク 卍》ッ!」

「ひぃっ!?」

『ギャァァアアァアァァァ……!』

 

紫炎が全身に広がり、SA-Wが燃え尽きて消滅する。デ・スザークの力を纏ったリュウに睨まれ、若頭はあとずさり奥の間の壁際へと追いつめられた。

 

「何故奴はお前の指示に従った?」

「や、ヤクだよヤク!そこの女以外の連中には、海外から仕入れた新しいヤクを与えてやって……引き換えに働かせてやってたのさ!」

『何だって……!?』

「なるほど、クリーチャーにも薬物依存とかあるということか……まあいい、これでお前達の戦力はもう無い。観念するんだな」

「……金路、おめえは手を出しちゃぁいけねえもんに手を出した。その挙句がこの様だ」

「ち……っきしょうちきしょうちきしょうがぁぁああ!!」

「確保ぉっ!!」

 

往生際悪く暴れようとした若頭は警官達に組み伏せられ手錠をかけられる。組長は観念したか、大人しく彼らに拘束された。

 

「さて……後はお前だな」

『……何でさっき、あたしをかばったんだい』

「さあな。まあ…………味方ごと後ろから刺して来る様なのは少し気に食わんというくらいだ」

『…………っ』

 

戦意を失い項垂れるダビッドアネキに、リュウもこれ以上の追撃はせずコントラクトアーマーを解く。両腕の骨も貫かれた腹部も何事も無かったかのように平常のまま…………これが、デ・スザークとの契約による力の一端であった。

 

「元の世界に戻る気はあるか?」

『無いよ……もう、あたしらの居場所はどこにも……』

「…………もう一つ聞くが、人間に怪我をさせた事は」

『…………あたしは、まだ無い。ギュウジン丸が復活した侵略者達を集めていた事を知って、そこに生き残った仲間達と合流はしたけど…………戦いに出る前にギュウジン丸は逝っちまったし、レッドゾーンZも禁断の星の手駒だったからウマが合わなくてね……』

「…………」

 

リュウはスマホを取り出すと電話をかける。通話先はDGAだ。

 

「もしもし……ああ、作戦は終わった。クリーチャー6体を殲滅、1体を捕獲……捕獲したこいつをひとまず監視付きで保護したい」

『え…………っ』

「ああ、超獣世界へ帰還しても行き場が無いそうだ。一先ず受け入れ先を見出すまででいい……了解した、感謝する」

 

通話を切ると、リュウはダビッドアネキへと向き直る。

 

「話は一応付けてやった。人間に危害を加えず働くなら、一時的にDGAの管理下で保護してやるそうだ」

『あ、あんた……何でそんな事を……』

「俺が勝った以上、お前をどうするかは俺の自由だ…………人間の世界で真っ当に働いて生きれるか見定めてやる。出来なければ、今度こそ消すだけだ。良いな」

 

そうして、その日の警察との共同作戦は終わりを告げたのだった。

 

 

* * *

 

 

──────後日、カードショップ『クラインスペース』にて。

 

「あのー、井星さん?そいつクリーチャーみたいですが一体?」

「…………保護するよう話付けたら、付きまとわれるようになってな……」

『あたしは旦那の手となり脚となるって決めたのさ!さあ旦那、何でもしてやるから言っておくれよ』

「今は一応仕事中だから後にしてくれ…………」

 

そうして、井星リュウの住まいに、奇妙な同居人が1人増える事になったのであった。

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