「そろそろデートも終わりでしょうか?」
「何だか様子がおかしくないか?」
「確かに、何か変だねー?」
1月19日、夕刻。栗茶駅南口、駅ビルの入り口付近にて、4人の少女達が同級生2人の様子を観察していた。
アーシュ達ドラ娘生徒会の皆は、今日1日こっそりとトウリとゼオスのデートを尾行し、見守っていたのだった。
「あ、蟠龍はんなんか頭下げて帰ってもうたな」
「うーん、ちょっと声かけてみる?」
「そうですね……ゼオスさーん!」
「……アーシュちゃん?」
駅ビルから伸びるデッキの上、トウリが去って行った方を見続けるゼオスへと声をかけ……振り向いた彼女を見て、4人は仰天した。
「き、キサマ!?一体どうした!?」
「姐さん、泣いとるん!?」
「あ……ご、ゴメンナサイ!」
彼女も気付かぬ間に涙が零れていたらしく、それに気付いて拭うものの、まだショックから抜け出せていない様子だった。
「朕、フられちゃいマシタ……」
「「「「……ええーっ!?」」」」
* * *
「はぁ!?なんなんそれ!?訳わからんわ!」
「ギャイちゃん落ち着いて……でも、確かに蟠龍くんの意図がよく分かりませんね……」
ひとまず馴染みのファミレスに場を移し、温かい飲み物を飲みながら経緯を聞いてゆく生徒会メンバー。やはり、トウリの最後の言葉の意味が分からずギャイがテーブルを思わず叩く。
「その、実は皆でデートの様子を見守ってて……すみません!」
「心配してくれたのよネ?大丈夫ヨ、ありがとうアーシュちゃん」
「しかし、途中まではヤツも楽しげだったというのにどんな心変わりがあったというのだ?」
「つまらなかった訳じゃないって蟠龍くんも言ってるんだよね?」
首を捻り考え込むアーシュとすず。とにかく、真意を探るべく彼の発言を読み解こうとしていた。
「ゼオスさんが好きだと伝えようとしたら、先んじて自分も好きだと言って、なのに付き合えない……うーん……どういう事でしょう……!」
「何で嫌いやないどころか好いとるのにフるねん!?あーもう意味が分からんわ!」
「あり得るとしたら、家庭の事情か?よっぽど親が厳しい家庭とか……」
「そうだったら、趣味にも先に口を出されてそうですけど……」
「確かに、そうだったらデュエマを買うのも難しそうデス」
家庭環境の問題説を上げてみるが、それなら交際より先に趣味方面が壊滅しているはず。すぐにこの説は否定された。
「実はこっ酷く振られたことがあるとか……?」
「それならむしろ、女性不信になってわらわ達と仲良くはせんだろう」
「う、それもそうですね……」
過去の人間関係という線は、推測の域を出ない以上説得力のある理由は思い浮かばない。
「あ、そうだ!あのときのギャイみたいに急な引っ越しが決まって、離れ離れになっちゃうからとか!?」
「いや、確か蟠龍はんちは結構大きな家で、剣道の道場も構えてるって聞いたことあるで。そんな家が簡単に引っ越すやろか?」
「あーそっか、それじゃあ無いねー……」
以前の自分たちの経験から、突然の別れ説というものも飛び出すがそれもすぐに否定され──────。
「……いや待て、離れ離れというのは案外……」
「……あ、もしかして!」
「すずちゃんもアーシュちゃんも、何か分かったノ?」
「うむ、あくまで推測ではあるが、ヤツはキサマがいずれ故郷に帰る事を重く見ているのかもしれん」
「あ……」
そう、ゼオスは留学期間を終えれば、母国へ帰る。彼女達5人にとっても、そしてトウリにとっても、いずれ避けられない別れの時が来るのだ。
「そう……だよね、ゼオちは留学期間が終わったら帰らなきゃいけないんだった」
「それで、傷が余計に深くならんように付き合えんって言ったわけなん?」
「結局は蟠龍くんに問いただしてみないとなんとも……ですが、今思いつく中では一番ありそうです」
「そういえばキサマの留学期間はどのくらいなのだ?」
「少なくとも高校卒業までは、皆と一緒にいられる期間のザイリュウシカク?を貰いマシタ!」
ほっと一息を吐く4人。今まで一緒にいるのが当たり前で、その終わりがいつ来るのかは意識していなかった。幸いにして、彼女達は高校生活の間は共に居られるだろう。
「それで、キサマは諦めるのか?」
「すずちゃん?」
「ヤツに振られて、そのままはいそうですかと引き下がれるのかという話だ。キサマはそんなタマではないだろう?」
「……!その通りネ!」
「よっしゃ、それなら今すぐリベンジしたろ!蟠龍はんちに突撃や!」
「実家で道場やってるなら、検索すれば住所は一発だね!」
「行きましょう!蟠龍くんの意志を確かめないと!」
友達の恋路のため、全力で手を貸すと決めた彼女達。5人は一路、トウリの実家を目指す。
* * *
「たのもー!」
「メガ、相手は道場やっとる家なんだからそれは洒落で済まんて!」
栗茶市南部、栗茶駅南口からバス一本で行ける地域にトウリの実家が存在する。大きな和風の邸宅であり、敷地内に道場と土蔵もある立派なものである。
現在時刻は6時近く、既に冬の陽は落ちて街は夜の闇に包まれている。
「す、凄いお屋敷ですね……」
「わらわが思っておった家よりだいぶ大きいな……」
「とりあえずインターホンはあるみたいデスね?それっ」
門扉に取り付けられたインターホンをゼオスが躊躇なく押す。少しの間を置いて、通話が繋がった。
『はい、どちら様でしょうか?』
「夜分に失礼いたします、私達、桜龍高校の生徒会役員です。蟠龍トウリくんに用があってお尋ねしたのですが……今お会いしても大丈夫でしょうか?」
『あら……そうでしたか。少しお待ちくださいね』
インターホンが切れ少しして、門扉が開き栗色の髪を持つ嫋やかな印象の女性が姿を見せた。白いセーターと、長い髪を後ろで束ねる髪飾りが目を引く。
「初めまして。トウリの母、蟠龍
「は、初めまして!生徒会長の流星アーシュです!」
一先ず全員の自己紹介を済ませ、トウリを呼んで貰おうとするアーシュ達。しかし、六佳は何か残念そうな表情を見せた。
「そうですか、それでは皆さん、トウリが帰るまでこちらに上がってお待ちくださいな」
「え、蟠龍はんまだ帰ってへんの?」
「?いえ、先程少し所用で出かけてしまいましたので……夕食までには帰るとは言っていたのですが」
「なんだと……?」
「ねえ、これってもしかして」
「……DGAのお仕事カシラ!?」
「あら、皆さんトウリがそちらの仕事をしている事をご存じで──────」
「すみません!それじゃあ私達自身で探します!」
「あ!女性だけで夜歩きは危ないですよ……行ってしまいましたか」
アーシュ達は一礼すると慌てて走ってゆく。彼がこの時間に家を出るとなれば……恐らく、近場にゾーンが発生している!
「こんな時に空気の読めんやっちゃな!」
「どうしましょう、ゾーンを探すとなると私達だけでは……」
「……いいえ、見ることは出来るのダカラ、方法はありマス!トウッ!」
「ちょ、キサマいきなり何を!?」
ゼオスがドラゴンの力を使い、電柱の上に跳躍した。幸いにして最近は夜は人通りが少ないため、誰かに見られる可能性は低い。DGAの情報公開と、視認できる一般人は少ないとはいえ、ゾーンという災害の周知が影響しているのだろう。
「──────見つけマシタ!向こうの方にゾーンが見えマス!」
「ゼオちナイス!」
「それじゃ、蟠龍はんがそこにいると信じて、行ってみよか!」
* * *
「──────モモキングJOで《黒神龍ヴァイサス》に攻撃!この際、手札からモモキングと名の付く進化クリーチャーをJOの上に置くことが出来る!カモン!王来!スター進化ッ!《
『グルルルォォォォォ!!』
ゾーン内部では、トウリが骨とヘドロで肉体を構成されたドラゴン──────ドラゴン・ゾンビの集団を相手に戦っていた。
「ゴッド・モモキングの能力!攻撃終了後、カードを2枚まで引き、その後手札を1枚捨てる!この時捨てたカードがモモキングの名を持っていればアンタップ、レクスターズであれば相手クリーチャーを1体選び手札に戻す!ドロー!……捨てるのは《鬼退治の心絵》!レクスターズのため《黒神龍ザルバ》を強制送還!」
『グォォ!?』
「そしてモモキングJOのシンカパワー!このクリーチャーが進化したターン、攻撃終了時に1番上のカードを墓地へ送りアンタップ!その後、カードを1枚引く!……行くぞ!一網打尽だ!」
モモキングJOはトウリのデッキの主軸たる1体。その能力は、スター進化の鎧を次々に纏い、取り換え、連続で攻め立てる事だ。
「モモキングJOで《黒神龍ガルバジーク》に再攻撃!この際、カモン!王来!スター進化ッ!《ボルシャック・モモキング・クロスNEX》!登場時能力によりコスト4以下のクリーチャーを全て破壊!低コストドラゴン・ゾンビを全破壊し、ガルバジークを戦闘破壊!攻撃後、スター進化を解きJOに戻ってアンタップ、1枚ドロー!」
『ギァァァァッ!』
「そして……トドメだ!《超神龍アブゾ・ドルバ》に攻撃!カモン!王来!スター進化ッ!《王道英雄 キング・モモキングKG》!登場時能力で、《黒神龍アマデウス》を攻撃ッ!そして、そのままアブゾ・ドルバに攻撃ッ!!どれだけパワーが上がろうと、キング・モモキングKGのパワーは1012000となり叩き斬る!」
『モモブレイド・金龍二段斬り!』
『『グォォオオォォオォォオオオォ……!!』』
現れたクリーチャー達は、トウリとモモキングが一掃することに成功した。ゾーンが縮小して行くのを見て、彼は一息吐く。
「よし、これで今夜は問題無いですね。すぐに帰ると──────」
「トウリ君!」
「っ!?」
ゾーンの境界線が彼の立つ位置を通り過ぎると共に、背後から声がかけられた。振り向けば、正常な街へと戻った中、トウリが立つ路地の入口にゼオス達が立っている。
「……何故ここに」
「トウリ君のお母さんから出かけたと聞いて、近くのゾーンを探しマシタ」
「はー、ボクたちの予想が当たって良かったよ」
「ぜえ、はぁ、これでキサマから話を聞けるな……」
余程ゼオスが急いで走って来たのか、他4人は肩で息をしており小柄で体力が少ないすずなどはへとへとになっていた。
「トウリ君。朕は、アナタの気持ちをちゃんと教えて欲しいんデス」
「…………話す事はありません、もう終わった話です」
「そんなわけ無いやろ!姐さんはまだあんたと話したいし、うちらかて聞きたい事は色々ある!」
「蟠龍くん!ちゃんとあなたの考えを聞かせて下さ───」
「──────話す事は無いと言っているッ!!」
『Duel field expansion. Contract armor awakening.』
トウリが声を荒げ、コントラクトアーマーを再起動させる。しかし、彼の様子が……そして、展開されるアーマーの様子も、おかしい。
「ぐ、ぅぅううぅぅううぁっ!」
「トウリ君!?」
トウリの周囲を
それは、以前彼女達もその姿を目の当たりにした、『禁断王』の力を受け継ぐ呪われし鎧──────。
『《
ゼオスさんの留学期間については本作での独自設定です。一般的な外国人留学生は最短3か月から最長4年3か月らしいですが、彼女の場合は原作で語られる時が来るのだろうか?
蟠龍家の建物はだいたいFateの衛宮邸みたいな脳内イメージです。デカい元武家屋敷的な。
母親のビジュアルイメージは、《戦術の天才 マロク》を人間型にしたようなイメージです。トウリの家族イメージはジョーカーズだと適当な連中がいないというかマスコット系のビジュアルばかりなので、サムライ系クリーチャーを擬人化したイメージになります。父は大和ドラゴン、祖父はバルガライゾウ辺り。