ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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トウリの真意とは。そして、ゼオスの思いの行方は……。


Exep.6:サーヴァ・K・ゼオスと禁断の鎧

『──────《禁断英雄(きんだんヒーロー) モモキングダムX》!!』

 

球状の結界が弾け飛び、中からトウリが姿を現した。彼の双眸は赤く輝き、異様な圧力を彼女達に感じさせる。

 

「な、何なのだあの鎧は……!」

「ちょっとヤバそうやな……!」

『ぬぅぁぁっ!!』

 

モモキングダムXの鎧を纏ったトウリは手にした双槍を構えると……それを、自らに突き刺した。すると同時に彼の周囲にドキンダムXが振るっていた物と同型の槍が多数突き立ち、彼自身を閉じ込める。

 

「な、何をしてるんですか!?」

『早く帰ってください……今ならそれだけで済みます……っ!』

「あれって、前にみた封印みたいなもの!?でも、とりあえずあの鎧をみんなで引っぺがせば!」

「よっしゃ、やったる!このぉぉぉっ!!」

 

ドラゴンの力を全開にし、ギャイとメガが挑みかかってゆく。しかし、禁断の力を持つその鎧は、これまで彼が使ってきた物とは全く違う、異質なる物であった。

 

「っ、なんやこれ、わぁあっ!?」

「あいたぁっ!?なにこれ、近付けない!?」

「何だ、反発しておるのか……!?」

 

トウリを閉じ込める槍と槍の間に電流のような物が走ると、突っ込んで行った2人が勢いよく押し返され吹き飛ぶ。磁石の同極同士が反発するかのようだ。

 

「そうだ、蟠龍くんの使っているのはデュエマのクリーチャーの力、検索すれば何か……!」

 

アーシュは自身のスマホを取り出すと、トウリの使う力、モモキングダムXについて検索する。すぐさま画面に元となったカードの能力が表示された。

 

「出ました!……って、これは……!?」

 

モモキングダムXの特徴は、力の元たるドキンダムXと同等の圧倒的なパワー。そして、条件を満たすまで自身は動けなくなるが、相手のカード効果で選ばれなくなるというもの。

更に、動きだした瞬間に、対峙する相手の力を奪い敵を一掃する能力までも持ち合わせている。

 

「トウリ君、どうしてこんなモノを……」

「ヤツめ……攻撃はしないが、何も言う気も聞く気もないという意思表示のつもりか!?」

「……っ、なんだか、嫌な予感がしマス」

 

ギャイとメガを反発力で弾き続けるトウリ。ゼオスが見つめる中で、その身体に……徐々に、赤い紋様が鎧から伸びつつあった。

 

『何をやっても無駄です、早くどこかへ行って下さい……っ!』

「アンタ、なんで姐さんに理由も話さんねん!なんや都合でもあるなら言うたらええやろ!」

『自分の都合など、ゼオスさんの人生には関係のないものです!!』

「もーっ、何で好き同士なのにそうなっちゃうの!?」

『好きだからって、それだけで全てが解決する訳じゃない……っ!』

 

白目まで赤く染まりつつあるトウリの様子は苦しげで、その状態で放つ反発力も更に強くなってゆく。赤黒いXの字が瞳に刻まれ、明らかに尋常の様子ではない。

 

「トウリ君!聞いてクダサイ!その危ない鎧も脱いで、こっちにキテ!」

『ゼオスさん……っ、言っているでしょう、話す事は無いと……っ!』

「キサマ、なぜそうも頑なに拒むのだ!?別れが来るからというなら、それを解決して傍にいる方法を探せば……!」

『ッッッ!!勝手な事を言うなッ!!』

「なっ!?」

 

手足に更に紋様が広がり、脈打つように明滅する。それに呼応するようにトウリの感情が暴れ出し、彼の意志が漏れ出し始めた。普段の礼儀正しさをかなぐり捨て、口に出してゆく。

 

『良いか!付き合うというのは、結婚するということだ!一生を共にし、離れることは無いという事だ!』

「つ、付き合うイコール結婚が確定は凄く真面目な考えで良い事だとは思いますけど……!」

「そ、それのどこがいけないの!?」

『だから問題なんだっ!!自分は…………っ!』

 

 

 

『自分は、ゼオスさんに()()()()()()()()()()()()()()などと言える訳が無いッ!!』

 

 

 

「「「「「──────っ!!」」」」」

 

その言葉に5人は目を見開いた。ある意味では推測の通り、だがそれは、自らの傷を浅くするためでは無かった。

 

「故郷の友人、つまりあの娘の事を知っておるのか……」

『以前見かけ、ある程度の事情も知っている。あの時はクリーチャーはまだ見えなかったが、何か悪い物に憑かれゼオスさんと故郷の仲間の事での悩みを悪い方向に誘導されていたのも……!』

 

新入生交流会の賛否投票直前に起こっていた事件、その際に、アカリという少女に彼は出会っていた。そして、ゼオスの友人であり、故郷に帰りを待つ友が何人もいる事も……その時知った。

 

『自分はいずれ祖父から、そして父から家を継ぐ事になる!そのこと自体は自分自身で納得している。あの家も、この街も好きだから!けれど、それは自分の将来の伴侶にもこの地に留まる事を強いるはずだ!』

「だから、姐さんの事は選べんて……?」

『わざわざ日本へ連れ戻しにくるような友人が、留学の期間限定だけでなく、一生を日本で暮らすようになるのを認めるとは思えない!その時板挟みで苦しい思いをするのは、ゼオスさんだ……っ!そんな風になるくらいなら……自分という枷は無い方が良いんだっ!!』

 

他の誰かであれば。もしくは、彼女の事情など知らなければトウリはこう思う事は無かったかもしれない。だが、知ってしまったからには、今の彼はゼオスを友人から引き離すことに納得出来なかった。

 

『……ゼオスさんはまだまだ人生に先はある。今縁を切ってしまえば、そのうち今の思いを忘れられる!そして、誰か相応しい相手にいずれ会えるはずだ!だからもう、自分になど関わる必要は──────』

「そんなの駄目ですっ!間違ってます!」

 

トウリの叫びに、アーシュが真っ向から抗い始めた。

 

「蟠龍くんはそのうち忘れるなんて言いますけど、自然に2人の想いが薄れて別れるのと、フられるのでは……()()()()()じゃないですか!」

『…………っ!』

「こんな形で別れたら、楽しい思い出と辛い思い出が混ざって、後悔として残っちゃいます!そうしたらきっと、2人ともいつまで経っても忘れられません!」

「…………アーシュちゃんの言う通りネ」

『ゼオスさん…………っ!』

「トウリ君、アナタにフられた時、朕はとっても胸が苦しくて、辛くなりマシタ。アナタを好きなままなのに、こんな風にお別れなんて、朕は悲しくて耐えられマセン!」

『ぐ、ぅうぅぅ…………っ!』

 

苦悶の呻きを上げるトウリ。その周囲に突き立つ槍からの放電が薄れてゆく。

 

「弱まって来た!?」

「よっしゃ、今なら!」

「鎧を引きはがせるかもしれん!ゆくぞ!」

 

メガ、ギャイ、すずがそれを好機と見て挑みかかる。槍の間を抜け、トウリに触れそうに──────。

 

 

 

『──────ガァァァァアアァアアアァッ!!』

 

 

 

禁断の力が、解放される。

瞬間、全ての槍が弾け飛んだ。トウリから放たれた黒い衝撃波が、3人を薙ぎ払う。

 

「あ、ぐっ!?」

「がっは…………っ!」

「いぎ…………っ!」

「メガちゃん!ギャイちゃん!」

「すずちゃん!!」

 

デュエルフィールドの壁に叩き付けられ、路面へと落ちる3人。ドラゴン化も解かれ、大きくダメージを受けているようだ。

 

『ソ、レナラ…………自分ハ、貴女ニ嫌ワレヨウ…………貴女ノ友達ヲ、傷付ケテデモ…………!』

「トウリ君?トウリ君!?」

「さ、さっきより様子が…………!」

 

トウリが自身に刺した槍を引き抜くが、そこからは血の1滴も流れることなく、すぐに穴が塞がり再生される。紋様は四肢と顔面に広がり切り、彼を蝕んでいた。

 

『──────とも!お二人とも、拙者の声が聞こえるでござるか!?』

「えっ!?この声は……モモキングさん!?」

 

2人の横に、光るカードが浮かんでいた。何度か聞いた事のある、彼の相棒の声がそこから聞こえて来る。

 

『良かった、届いたでござるな!トウリ氏は今、“禁断”の力に蝕まれ呑まれかけて、破壊衝動が沸き立っている状態でござる!このままでは皆さまのみならず、トウリ氏の命も危うい!』

「そんな、それじゃあ一体どうすれば!?」

『幸い、トウリ氏は皆を殺さぬよう必死に抗おうとしている様子!今なら隙を作り、拙者をトウリ氏と一体とする事で禁断の力を弾き出す事が出来るはず!』

「でも、私達の力で今の蟠龍くんに隙を作れるかどうか…………!」

 

話している間に、トウリが1歩ずつ近づいて来る。トウリ自身の抵抗故か蛞蝓が這うような速度であるが、槍の間合いに入ればどうなるかは分からない。

 

「…………朕がやりマス」

「ゼオスさん!?」

「ぐ、ぅう…………勝算は、あるのか…………?」

「分かりマセン。けれど、トウリ君には命を助けられマシタ。だから今こそ、借りを返す時デス!」

 

ゼオスが自身に宿る、サッヴァークの力を解放する。光剣の翼が背に広がり、両手が紫色の甲殻に覆われて行く。その手が、光るカードを掴んだ!

 

「…………それに、好きな人を朕の手で助けられるくらいの事が出来ないと、トウリ君もアカリも説得できそうにないモノ!」

「あ、あかん、姐さん!」

「無茶だよ!」

 

ゼオスが意を決してトウリへと駆け出す。トウリの身体は禁断に浸食され、その双槍で彼女を打ち払わんと振りかぶった。

 

「お願イ!トウリ君を、止める力ヲ…………!」

「だめ、ゼオスさん!!」

 

モモキングダムXの右手の槍が縦に振るわれ、その刃がゼオスを捉えんとする。咄嗟に左に躱すが、路地という狭い空間の中、両側に壁がある状態では大きく回り込む事は出来ず。

そして、左手の槍が今度こそ仕留めんと振り下ろされた瞬間…………ゼオスの頭部に現れている、大きな目のようなものから、光が放たれた。

 

「ヤァアァァァァッ!!」

 

放たれた光が何本もの棘を持つ輪のような形を取ると、ゼオスの身体に大きな力が流れ込む。その感覚に任せ、拳を振るい──────。

 

『ナ、ッ!?』

 

ゼオスの拳が、叩き付けられた槍を打ち砕く!予想外の状況にトウリの反応が遅れた。好機は──────今!

 

「皆を傷つけようとした──────オシオキよ!」

『正気に戻るでござる、トウリ氏!』

 

ゼオスが手にした光るカード──────《未来王龍 モモキングJO》が、トウリの顔面に叩き付けられた!

次の瞬間、黒い何かが稲妻のようにトウリの身体から迸り、放出されてゆく。かつて禁断の力を制御することが出来たモモキングが入り込む事によって、トウリを侵食する禁断の力が身体から追い出されてゆく──────同じ身体(デッキ)にはいられない、とばかりに。

 

「──────っかはっ!はーっ、はぁ…………っ!」

「トウリ君!」

 

禁断の鎧が弾け飛び、元の姿に戻り倒れ込むトウリをゼオスが抱き留めた。二度と離すまいと、握り締めるように彼の手を取りながら──────。

 

 

* * *

 

 

「…………この度は皆さまにご迷惑をお掛けして、誠に申し訳なく思っております…………」

「まったく、あんなもん使って姐さんまで傷付けかけてどうすんねん」

「まー和解はできたみたいだし?本音を吐き出せたのは良かったと思うよ!」

「二度はやらんで欲しいがな…………」

「本当にすみません…………」

 

正気に戻った後、5人の前で地に頭を擦りつけ詫びるトウリ。完全に自身の行動で彼女らに迷惑をかけたため、今回は弁解の余地無しである。

 

「それで…………結局どうするんですか?」

「出来ればこんな事をして今後合わせる顔も無いですし───」

「トウリ君、土俵際が悪いですヨ?」

「往生際か?まあともかく、もう観念して受け入れろ。こやつは簡単にあきらめるタチではないからな」

「はい…………でも結局問題は先送りになっているだけでは……」

「クリーチャーの力で外国までテレポート!とか出来ないの?」

「出来たら先月先輩を態々種子島まで航空機で送ったり、ロケット型クリーチャーで打ち上げたりはしませんよ」

「それもそうやね…………うーん」

 

トウリが頭を悩ませた問題は結局そのままである。どうしたものか。

 

「大丈夫ヨ!アカリ達にトウリ君にも会って貰って、2人でセイイを持って説得しマス!」

「おふたりの場合、結局はそれしか無さそうですね」

「それに、いざとなったらトウリ君とアカリにもぶつかり合って貰えば───」

「暴力沙汰は道場にも剣道部にも迷惑がかかるから絶対ダメですが!?」

「一方的に殴られ続けて耐えるというわけにも行かんだろうからな…………」

 

そもそもどのような結果になるとしても、1発は殴られる覚悟が必要だろう。そのことを思うとトウリは今から頭が痛くなってきた。

 

「ふぅ。それじゃあトウリ君、改めて言わせてクダサイ。──────朕は、アナタの事が大好きデス」

「う…………」

「オツキアイ、してくれマスか?」

「…………こんな自分などで良ければ」

「──────!ありがとうございマス!」

「んむぐ!?」

 

喜びのあまりゼオスはその場でトウリに抱き着き──────その唇を重ねたのであった。皆の目の前で。

 

「うひゃあ!?わ、わぁ…………っ!」

「ひゅーひゅー、ゼオちだいたーん!」

「まあ、丸く収まってよかったんちゃう?」

「ええい、そういうのは2人きりでやらぬかー!」

 

かくして、彼女らの長い休日は、どうにか良い終わりを迎える事が出来たのであった。

 

この後、また新たな厄介事がトウリ達の身に降りかかる事を、彼らはまだ知らない。




トウリとゼオス篇、どうにか決着!
トウリはどうにも自身の価値を低く見積もりがちな感があります。故に、時に彼を引っ張れるようなパワーある相手がちょうどいいのかもしれません。

モモキングダムを止めるためにゼオスが発現させたのは、《暴輪ノ裁キ》になります。すべてのバトルに勝ち、アンタッチャブル能力を与える裁きの紋章の1つ。
裁きの紋章デッキ、中々面白いですよね。そろそろデュエプレに来そうだけれどどんな処理になるだろう?
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