ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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新章、言うなれば「1.5部」開始!
春映画枠と言ったところでしょうか。



LOSTが再開されましたし、ドラゴン娘になりたくないっ!公式サイトでようやくアオハル組のプロフィール掲載されたようです。嬉しいですねぇ。


第1.5部:接触の平行世界篇
Prologue:護守サキトと兆しの悪夢


──────視界が、赤く染まっていた。

 

道路は高架ごと寸断され、一般道を走っていたであろう多くの車が潰れ、炎上している。

身体が燃えるように熱い。背から伸びた剣が、赤黒い液体を滴らせながら揺れる。

 

『ガ、ァ、グゥゥァ……ッ』

 

自分の喉から、唸り声のような物しか発せられない。この身に何が起こっているのか、理解が追いつく前に……『それ』を見つけた。

 

「───、──────」

 

アスファルトの上に倒れる■■■■■。俺の、大事な──────。

手を伸ばした瞬間、自分の目を疑った。

 

異形と化した、自分自身の右腕。そして、大きく鋭利な爪から滴る鮮血。

 

見れば、彼女の身体には、大きく切り裂かれた爪痕があり……それを、自分がやったのだと、直感的に悟ってしまう。

急いで駆け寄る自分の身体が、妙に軽く感じられた。抱き起した彼女は、眼が虚ろになっている。……もう、助からない。

 

「──────」

 

聞き取れない。彼女の言葉が、何も聞こえない。

そして、腕の中でその身体から力が失われ、命の灯が消え失せていった。

 

──────殺した。俺が。■■■を──────

 

『ぅ、あ、ぁあ……っぁあああぁああぁぁぁあぁあぁぁぁああっ!!』

 

 

* * *

 

 

「───ぁぁあぁああぁぁ!!っは!?ゆ、夢……か?」

 

──────2025年3月24日、早朝。

その日、護守サキトの目覚めは最悪であった。

 

「なんなんだ、今の夢は……」

 

ところどころ朧気になっているが、悪夢であった事は間違いない。そして、妙に現実味のある夢だった。炎の熱、血の臭い、嫌な感触がまだ残っている。

そして、最後に見た光景は──────。

 

「……ありえない、はずなのに、妙な胸騒ぎがするな……」

 

今の彼にとって一番大事なもの。愛する者が失われる様。抱き上げた感覚も、消え失せて行く熱も、ただの夢とは思えない生々しさだった。

 

「はぁ……今から二度寝すると下手したら寝過ごしそうだけど……駄目だ、眠い……」

 

そして、眠気に抗えず──────目覚ましが鳴る時間まで、再び眠るのであった。

 

 

* * *

 

 

今日は、3学期の修了式。1年間の学業が終わり、次の学年へ進むための締めくくりの日である。

サキトは無事3年へと進級、彼の友人達、そして親しい後輩達も来年からは新しい学年となる。

どこか寂しさを感じながら、サキトは朝の日課としてしのぶを迎えに行っていた。

 

「先輩、おはよう!」

「ああ、おはよ──────」

 

彼女と挨拶したところで、急に今朝見た悪夢の光景が蘇る。思わず、しのぶを強く抱きしめてしまう。

 

「ひゃっ!?せ、先輩……どげんしたと?」

「……ごめん、変な夢見て。ちょっとこうしていて良いか?」

「う、うん、良かばってん……」

 

顔を赤くしたままサキトの要望に応え、大人しく抱きすくめられるしのぶ。数分間そうしていたが──────。

 

『……2人とも?』

「うお!?」

「あ、∞ちゃん!おはよう!」

『おはようしのぶ。先輩はどうしたの?』

「あ、ああ、すまん色々あって。歩きながら話すよ」

 

∞に話しかけられ我に返ったサキトは、しのぶを解放して3人で通学路を歩き始めた。既に桜が開花し、桜龍高校の校門前は見事に桜色に染まっていた。

 

『……悪夢、ね』

「ああ、嫌な光景だったよ……しのぶが死ぬ夢なんて」

「な、何なんそん縁起悪か夢」

「本当だよ、しかも覚えてる状況からして……まるで俺が殺したようにしか見えなかった」

 

部分的に覚えているのは、血に濡れた手と腕の中で息を引き取るしのぶの姿。どちらも、決してあり得て欲しくない忌まわしい光景だ。

 

「何でそげん夢ば見たっちゃろう?」

『クリーチャーの影響で……何かの予知夢とか』

「よしてくれ帝王坂さん、しのぶを手にかける未来なんて絶対に避けなきゃならんのに」

『いや、予知夢なら未来を変える余地が出て来るから、ある意味良い事かもしれないよ』

「ある意味気ん持ちようって事やね!」

「そうかねえ……?まあ、とりあえずまた後でな」

「うん、午後から一緒にお買い物行こうね、先輩!」

 

ともあれ、単なる夢であればそれに越したことは無い。妙な不安感を振り払い、サキトは今日で去る事となる2年3組の教室へと向かった。

 

 

* * *

 

 

そして、修了式は無事に終わり。教室を片付け、生徒達は下校の時間を迎えていた。

 

「うむ、皆無事に進級出来て何よりだ。春休みが明けたらまた会おうぞ!」

「伍代も怪我などせずに、来月の新学期まで元気にするでしよ!」

「ジュラ子は久々の日本での春休み、マロンと一緒にCherry blossom viewing(お花見)に行きたいですわ!」

「うぅ~、クラス替えで∞ちゃんと離れたくなか~!」

『離れても友達なのは変わらないよ』

 

「お姉ちゃんたち、来年度はどうするの?」

「流石に進路の事もあるから、Jack-Potのライブ回数は減りそうかしらね~?」

「……卒業後にプロデビューするかって誘いは来てたね」

「でもその場合、水晶の卒業も待たないといけないぜ?ザーナはどうする?」

「水晶無しのJack-Potは考えられないわ。デビューするなら、契約をどうにか呑んでもらうだけよ!」

 

「春休み中、どこに行きましょうか!」

「うーん買い物行ったり、お花見行ったり……やりたい事いっぱいあるよね~!プチ旅行とかも良さそう!」

「メガのお母さんとかの事も考えると、日帰りならまあアリやない?そう遠くまでは行けへんけど」

「観光に行くのは楽しそうネ!トウリ君も誘おうカシラ?」

「いや、流石にわらわ達5人に囲まれては奴も肩身が狭いと思うぞ。キサマが誘って2人で行くならともかく……」

 

新学期に思いを馳せる者、春休みの楽しみを考える者、3年となり進路を考え始める者……それぞれの道や未来を彼ら・彼女らは夢想していた。

その一方、特殊な立場故に十分に春休みを謳歌出来ないであろう者達もいる。

 

「あーあ、あーしは監視付きの春休みかー。テンサゲだなー」

「我慢してくださいよ原戸さん。学校が無い分一王二命三眼槍の解析に時間を割けそうだから、きっと事態は好転するでしょう」

「アレを一番抑えやすいのはトウリだろうからな。俺も手伝うが、任務中に何かあったらお前が頼りだ」

「はぁ……すぐに破壊出来れば話は楽なんですが」

 

現状、原戸初に取り憑いたクリーチャー・一王二命三眼槍は通常のクリーチャーよりも深く複雑な結びつき方をしている。かつて黒龍神の依り代となったドーラに近い状態だろう。

無理矢理に引き剥がせば精神と肉体のどちらか、あるいは両方に深刻な影響を与えるかもしれない。彼女と鬼槍を1日でも早く解析し、分離を可能とするための研究が急がれている。

 

「蟠龍っちも大変だねえ、ゼオスっちとデートも出来ないかもで」

「それはまあ、良くないけど良いとしてですよ。またいつ急に暴れ出すかと考えたら──────」

 

非日常の世界に身を置く者達。だが、今の所は平穏な春休みの日々を過ごせると殆どは思っていた──────この時までは。

 

『『!! !! !!』』

「うわ!?」

 

突如として、サキトとトウリのスマホから警告音が鳴り響いた。同時に、何か禍々しさを感じる気配が──────上空から迫って来る!

 

「っ!?」

『Duel field expansion. Dueltector summoning.』

 

咄嗟にグラウンド全体を覆うよう、デュエルフィールドを展開するサキト。そこに、複数の影が落下してきた。

 

「げほげほ、皆!大丈夫か!?」

「こちらは無事です、先輩!」

「何!?何が起こったの!?」

「アレは……皆気を付けて!グラウンドにクリーチャーがいるわ!!」

 

フィールド内にいるのはドラゴン娘の面々15人と、サキトとトウリ、そして初。対して、グラウンドの中心に落ちて来た物は……人型に近い何か。その数、20体強。

 

「く、クリーチャーの群れ!?」

「……そんな、先輩あれ、()()()()()()ですよ!?」

「ああ、それも禁断に程近い連中ばかり……全滅したはずだってのに」

 

滅びたはずの、禁断の使徒……ドキンダムと、ドルマゲドン配下の「Ⅴ」のイニシャルズの群れ。そして、それらの中心に、1体のドラゴン……いや、龍人が立っていた。

紫闇の装甲に身を包み、四肢には鋭い爪が光る。腰から生えた尾はゆらゆらと揺れ、背中からは……翼の如く、2本の赤い槍が生えていた。

その姿自体には覚えがある。サキトが知るクリーチャーが、人間に憑依したものだろう。しかし、その人間の顔が…………今この場で、最も重要な事であった。

 

 

 

『──────』

「───()、だと───!?」

 

 

 

──────その龍人は、護守サキトと、全く同じ顔をしていた。




新たなる敵、襲来。その正体、そして目的やいかに。
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