春映画枠と言ったところでしょうか。
LOSTが再開されましたし、ドラゴン娘になりたくないっ!公式サイトでようやくアオハル組のプロフィール掲載されたようです。嬉しいですねぇ。
Prologue:護守サキトと兆しの悪夢
──────視界が、赤く染まっていた。
道路は高架ごと寸断され、一般道を走っていたであろう多くの車が潰れ、炎上している。
身体が燃えるように熱い。背から伸びた剣が、赤黒い液体を滴らせながら揺れる。
『ガ、ァ、グゥゥァ……ッ』
自分の喉から、唸り声のような物しか発せられない。この身に何が起こっているのか、理解が追いつく前に……『それ』を見つけた。
「───、──────」
アスファルトの上に倒れる■■■■■。俺の、大事な──────。
手を伸ばした瞬間、自分の目を疑った。
異形と化した、自分自身の右腕。そして、大きく鋭利な爪から滴る鮮血。
見れば、彼女の身体には、大きく切り裂かれた爪痕があり……それを、自分がやったのだと、直感的に悟ってしまう。
急いで駆け寄る自分の身体が、妙に軽く感じられた。抱き起した彼女は、眼が虚ろになっている。……もう、助からない。
「──────」
聞き取れない。彼女の言葉が、何も聞こえない。
そして、腕の中でその身体から力が失われ、命の灯が消え失せていった。
──────殺した。俺が。■■■を──────
『ぅ、あ、ぁあ……っぁあああぁああぁぁぁあぁあぁぁぁああっ!!』
* * *
「───ぁぁあぁああぁぁ!!っは!?ゆ、夢……か?」
──────2025年3月24日、早朝。
その日、護守サキトの目覚めは最悪であった。
「なんなんだ、今の夢は……」
ところどころ朧気になっているが、悪夢であった事は間違いない。そして、妙に現実味のある夢だった。炎の熱、血の臭い、嫌な感触がまだ残っている。
そして、最後に見た光景は──────。
「……ありえない、はずなのに、妙な胸騒ぎがするな……」
今の彼にとって一番大事なもの。愛する者が失われる様。抱き上げた感覚も、消え失せて行く熱も、ただの夢とは思えない生々しさだった。
「はぁ……今から二度寝すると下手したら寝過ごしそうだけど……駄目だ、眠い……」
そして、眠気に抗えず──────目覚ましが鳴る時間まで、再び眠るのであった。
* * *
今日は、3学期の修了式。1年間の学業が終わり、次の学年へ進むための締めくくりの日である。
サキトは無事3年へと進級、彼の友人達、そして親しい後輩達も来年からは新しい学年となる。
どこか寂しさを感じながら、サキトは朝の日課としてしのぶを迎えに行っていた。
「先輩、おはよう!」
「ああ、おはよ──────」
彼女と挨拶したところで、急に今朝見た悪夢の光景が蘇る。思わず、しのぶを強く抱きしめてしまう。
「ひゃっ!?せ、先輩……どげんしたと?」
「……ごめん、変な夢見て。ちょっとこうしていて良いか?」
「う、うん、良かばってん……」
顔を赤くしたままサキトの要望に応え、大人しく抱きすくめられるしのぶ。数分間そうしていたが──────。
『……2人とも?』
「うお!?」
「あ、∞ちゃん!おはよう!」
『おはようしのぶ。先輩はどうしたの?』
「あ、ああ、すまん色々あって。歩きながら話すよ」
∞に話しかけられ我に返ったサキトは、しのぶを解放して3人で通学路を歩き始めた。既に桜が開花し、桜龍高校の校門前は見事に桜色に染まっていた。
『……悪夢、ね』
「ああ、嫌な光景だったよ……しのぶが死ぬ夢なんて」
「な、何なんそん縁起悪か夢」
「本当だよ、しかも覚えてる状況からして……まるで俺が殺したようにしか見えなかった」
部分的に覚えているのは、血に濡れた手と腕の中で息を引き取るしのぶの姿。どちらも、決してあり得て欲しくない忌まわしい光景だ。
「何でそげん夢ば見たっちゃろう?」
『クリーチャーの影響で……何かの予知夢とか』
「よしてくれ帝王坂さん、しのぶを手にかける未来なんて絶対に避けなきゃならんのに」
『いや、予知夢なら未来を変える余地が出て来るから、ある意味良い事かもしれないよ』
「ある意味気ん持ちようって事やね!」
「そうかねえ……?まあ、とりあえずまた後でな」
「うん、午後から一緒にお買い物行こうね、先輩!」
ともあれ、単なる夢であればそれに越したことは無い。妙な不安感を振り払い、サキトは今日で去る事となる2年3組の教室へと向かった。
* * *
そして、修了式は無事に終わり。教室を片付け、生徒達は下校の時間を迎えていた。
「うむ、皆無事に進級出来て何よりだ。春休みが明けたらまた会おうぞ!」
「伍代も怪我などせずに、来月の新学期まで元気にするでしよ!」
「ジュラ子は久々の日本での春休み、マロンと一緒に
「うぅ~、クラス替えで∞ちゃんと離れたくなか~!」
『離れても友達なのは変わらないよ』
「お姉ちゃんたち、来年度はどうするの?」
「流石に進路の事もあるから、Jack-Potのライブ回数は減りそうかしらね~?」
「……卒業後にプロデビューするかって誘いは来てたね」
「でもその場合、水晶の卒業も待たないといけないぜ?ザーナはどうする?」
「水晶無しのJack-Potは考えられないわ。デビューするなら、契約をどうにか呑んでもらうだけよ!」
「春休み中、どこに行きましょうか!」
「うーん買い物行ったり、お花見行ったり……やりたい事いっぱいあるよね~!プチ旅行とかも良さそう!」
「メガのお母さんとかの事も考えると、日帰りならまあアリやない?そう遠くまでは行けへんけど」
「観光に行くのは楽しそうネ!トウリ君も誘おうカシラ?」
「いや、流石にわらわ達5人に囲まれては奴も肩身が狭いと思うぞ。キサマが誘って2人で行くならともかく……」
新学期に思いを馳せる者、春休みの楽しみを考える者、3年となり進路を考え始める者……それぞれの道や未来を彼ら・彼女らは夢想していた。
その一方、特殊な立場故に十分に春休みを謳歌出来ないであろう者達もいる。
「あーあ、あーしは監視付きの春休みかー。テンサゲだなー」
「我慢してくださいよ原戸さん。学校が無い分一王二命三眼槍の解析に時間を割けそうだから、きっと事態は好転するでしょう」
「アレを一番抑えやすいのはトウリだろうからな。俺も手伝うが、任務中に何かあったらお前が頼りだ」
「はぁ……すぐに破壊出来れば話は楽なんですが」
現状、原戸初に取り憑いたクリーチャー・一王二命三眼槍は通常のクリーチャーよりも深く複雑な結びつき方をしている。かつて黒龍神の依り代となったドーラに近い状態だろう。
無理矢理に引き剥がせば精神と肉体のどちらか、あるいは両方に深刻な影響を与えるかもしれない。彼女と鬼槍を1日でも早く解析し、分離を可能とするための研究が急がれている。
「蟠龍っちも大変だねえ、ゼオスっちとデートも出来ないかもで」
「それはまあ、良くないけど良いとしてですよ。またいつ急に暴れ出すかと考えたら──────」
非日常の世界に身を置く者達。だが、今の所は平穏な春休みの日々を過ごせると殆どは思っていた──────この時までは。
『『!! !! !!』』
「うわ!?」
突如として、サキトとトウリのスマホから警告音が鳴り響いた。同時に、何か禍々しさを感じる気配が──────上空から迫って来る!
「っ!?」
『Duel field expansion. Dueltector summoning.』
咄嗟にグラウンド全体を覆うよう、デュエルフィールドを展開するサキト。そこに、複数の影が落下してきた。
「げほげほ、皆!大丈夫か!?」
「こちらは無事です、先輩!」
「何!?何が起こったの!?」
「アレは……皆気を付けて!グラウンドにクリーチャーがいるわ!!」
フィールド内にいるのはドラゴン娘の面々15人と、サキトとトウリ、そして初。対して、グラウンドの中心に落ちて来た物は……人型に近い何か。その数、20体強。
「く、クリーチャーの群れ!?」
「……そんな、先輩あれ、
「ああ、それも禁断に程近い連中ばかり……全滅したはずだってのに」
滅びたはずの、禁断の使徒……ドキンダムと、ドルマゲドン配下の「Ⅴ」のイニシャルズの群れ。そして、それらの中心に、1体のドラゴン……いや、龍人が立っていた。
紫闇の装甲に身を包み、四肢には鋭い爪が光る。腰から生えた尾はゆらゆらと揺れ、背中からは……翼の如く、2本の赤い槍が生えていた。
その姿自体には覚えがある。サキトが知るクリーチャーが、人間に憑依したものだろう。しかし、その人間の顔が…………今この場で、最も重要な事であった。
『──────』
「───
──────その龍人は、護守サキトと、全く同じ顔をしていた。
新たなる敵、襲来。その正体、そして目的やいかに。