『作戦の概要を説明します。まず皆さんを乗せたデュエモービルは、そのまま新宿区に展開された、都庁を中心とするデュエルフィールド内部へ突入します』
現在サキト達総勢17人は、4tトラックを改造して作られたとされる大型デュエモービルに乗り込み新宿へと向かっていた。都心部から避難しようとする車で渋滞する道路を見下ろしながら、トラックは空中に作られたデュエルフィールドによる光の道を進んでゆく。
『突入後は、トレーラーの方は都庁前に停止、コンテナを開き2つの班を都庁へ突入させます。道中護衛を担当するのは蟠龍隊員と桜龍高校生徒会役員の皆さん、そして原戸嬢と一王二命三眼槍』
「任せて下さい!」
「気合入れて行くで!」
『中枢突入班は護守隊員と「アオハル組」の4名。準備は良いですか?』
「勿論じゃ!」
「準備は万端、いつでも」
『Jack-Potの皆さんは、展開したコンテナからいつも通りにライブを行ってください。護衛する実働部隊員は、現地で合流する手筈です。フィールド全体に放送されるよう、機器接続の準備も既に進んでいます』
「ワタシ達の歌を、皆に届かせてあげるわよ!」
「腕が鳴るぜ!」
彼らは3つの班に分かれ、イニシャルズ達が跳梁跋扈する都庁を攻略して行かなければならない。後方から歌を届けるJack-Potの面々は、トラックのコンテナに普段使いの楽器も積み込んでいた。
「よくこんなの用意出来たね?」
『それが、DGAのメンバーにも貴女方のファンがおりまして……機会があれば使って貰いたいと、ステージトラック型の装備を用意していたようで』
「何してんすか開発部!」
「役に立ったから良いものの、開発費を使ってなんて物を作っているのやら……」
間もなくトラックは新宿区、展開された大規模デュエルフィールドへと突入する。各所で実働部隊のメンバーが戦っているが、イニシャルズ達の総戦力はどれほどか分からない。超次元の穴の向こうから、増援がやって来る可能性も否定は出来ない。
敵の目的は不明、こちらの目的は2つ。超次元の穴を閉じる事、そして『あちら側』のサキトを撃破する事だ。
『フィールド内から一般人の避難は全て完了、派手に暴れても問題はありません……突入します。総員衝撃に備えて下さい』
「全員手すりに掴まって!」
デュエルフィールドの障壁に接触し、トラックが大きく揺れる。光の道はそのまま都庁の前へと続き、ビルの谷間を駆けて行き……。
『目的地に到着します。降車準備を!』
「それじゃあ、Jack-Potの皆さんはここに残ることになりますが、すぐに敵もやって来るでしょう。お気を付けて」
「一応クリーチャーを近寄らせない障壁も張れるみたいだけど、万全じゃないとは言ってたね」
「デュエラッドとレッドゾーンZは、一応追加の護衛として残して行きます。後は実働部隊員が来るとの事ですが、くれぐれも注意して、いざという時は撤退してください」
「大丈夫よ。護守くん、必ず蒼斬さんを助けてあげるのよ?」
「当然です。…………よし、総員降車!」
コンテナの側面が開き、サキト達が飛び出す。コンテナの壁はステージとして展開され、大型のスピーカー等が即座にどこかから転送されて来る。ライブの準備も万端だ。
「すぅ…………っ!行きます!皆さん、頑張って!」
「集まって来ましたね、それでは第一陣を…………盛大に薙ぎ払う!」
多数のイニシャルズ達が集まって来た。とはいえ数は多いが、パワーも能力も比較的弱い物ばかり……まずはご挨拶とばかりに、トウリがコントラクトアーマーを一瞬にして纏い、力を解き放つ!
「『ボルシャック・モモキング・クロスNEX!ここに参ジョー!!宴の始まり、盛大な花火をとくと御覧じろ!!』」
スター進化の鎧を纏い、振り上げた剣が炎を撒き散らし敵群を薙ぎ払う。相手はコストの低いクリーチャーばかりで、登場時にコスト4以下のクリーチャー全てを破壊するクロスNEXの鎧は相性が抜群だ。
「同化解除!さあ、先輩をあの闇が浮かぶ場所の最寄り階まで送り届けますよ!」
「害虫一掃ネ!」
「鎧袖一触か?まあ状況には合っているかもしれんから良いか!」
「いっくよー!」
「よし、頼む!原戸さんは特に無理は禁物だぞ!」
「ん、あーしの事よりしのぶっちの事っしょ。頑張って」
「おう!」
護衛班と突入班が、雑魚が一掃され切り開かれた都庁入り口までの道を突き進む。その背を見ながらJack-Potの歌が鳴り響いてゆく…………戦いの、始まりだ。
* * *
『ドルルルルァァ!!』
『ここは通させない』
レッドゾーンZが制御するサキトのデュエラッドが、ステージトラックの周囲を駆けまわり雑兵イニシャルズ達を近寄らせない。
ステージの周りには、Jack-Potの5人が放つドラゴンの力を防護障壁にする機構が備えられており、隙を突いて彼女らへ牙を剥こうとする敵を弾いていた。
「(ワタシ達の歌が流れ始めてから、DGAの皆さんも攻勢を強めているようね。効果があったようで何よりよ!)」
ステージに設置された小型モニターに、フィールド内の状況が映し出されている。それまで多数のイニシャルズ達に押されていたであろうDGA側の戦力を示す光点が、徐々に都庁側へ近づいて行くのが見える。
彼女達の護衛指令を受けたであろう隊員の反応も、近付いて来ていた。
「(よし、このままジャジャーンとやっちまえば───)」
『っ、いけない。厄介なのが来る』
都庁の上から、何かが2つ落ちて来る。白い装甲に覆われた人型に近いクリーチャーが2体、明らかにこれまでに襲い掛かって来た下級のイニシャルズ達よりも強力な個体だ。
『ヴァインズに、ヴェンデッタ……っ、いけない』
『砕けよぉぉっ!!』
前腕部を大きな装甲で固めた《D2V ヴェンデッタ》が、拳を叩き付けて障壁を砕いた。マスター・イニシャルズである2体が増援に来たことにより、統制が強くなったイニシャルズ達がデュエラッドの動きを妨害する。
そして、プラズマを収束させた二刀を構えるクリーチャー《D2V ヴァインズ》が、ステージに迫る。
『終わりだ、人間!!』
「っ!?」
「だめ、水晶……!!」
ステージ諸共、彼女達の歌の要、庵野水晶を断たんとして迫るヴァインズ。姉であるしゅうらが彼女を庇わんと前に出た。
灼熱の刃が振り上げられんとした、その時──────。
「お・待・た・せ、したぁぁぁぁあっ!!」
『ぬうっ!?』
トレーラーを飛び越え、1台のバイク……デュエラッドが突撃して来た。シールドを展開しており、2枚のシールドを割り砕かれつつもヴァインズを後退させる!そして、そこから降りた少年が、カードを構えイニシャルズ達と対峙した!
「皆さんはそのままライブを!此方は俺が引き受ける!」
「あ、あなたは……」
「DGA新宿区実働部隊員……
そう、数分程配置が遅れたものの、この区を担当しJack-Potの護衛指令を受けた隊員が現場へ辿り着いたのだ。突撃直前からデュエル開始の判定が行われていたか、既にマナが1点チャージされており、既に戦う準備は万端だ。
「さて、まずは……一掃する!シールドトリガー発動!現れろ、《ボルシャック・大河・ルピア》!」
『暴竜爵様の行く道を拓くッピー!』
「あ、なんだあのかわいい奴……!?」
王冠を被り、竜の翼と機械の爪を持つ小鳥が現れる。見た目は可愛らしくとも、竜の眷属たるこの火の鳥は頼りになる力を持っていた。
「《ボルシャック・大河・ルピア》の登場時能力!相手のパワー3000以下のクリーチャーを、全て破壊する!この場に集まる『終断』の下級イニシャルズ共は全て3000以下!焼き尽くせ!」
『ピィィイィィッ!!』
翼を大きく羽ばたかせると炎が舞い、クリーチャーの群れを焼き払ってゆく。残るはマスター・イニシャルズ2体、ヴァインズとヴェンデッタのみ!
「俺のターン、ドロー!《ボルザード・スーパーヒーロー/
彼のデッキはサキトと同様の、ドラゴンで占められたデッキであるようだった。ただしその戦法と構成、そして切札は大きく異なる。
「ボルシャック・大河・ルピアでヴェンデッタを攻撃!この時、コスト7以上の名前に『ボルシャック』と付く多色クリーチャーが攻撃した事により……条件が満たされる!」
ボルシャック・大河・ルピアが炎の渦に包まれる。巻き起こる炎は頭上に集まり、大きな火球へと変化する。
「不滅なりし暴竜爵の炎!輝く太陽と一つとなり、世を照らして邪悪を祓わん!」
火球が膨れ上がり、弾け飛ぶ。その中から、大きな両腕と炎の翼を持つ、強大なドラゴンが姿を現す!
「爆臨せよ!《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》!!」
『オォォォオォオオォオォォッ!!!!』
顕現した者は、ドギラゴンとはまた異なる世界に存在する、火文明の王。太陽と一体化せし、世界を照らす竜の皇───ボルシャック・バクテラス!!
「……凄い、輝き」
「炎が燃えてるのに、なんだか暖かいです……!」
バクテラスの輝きは正に太陽そのもの。背にして守る者には光の恩寵を、対峙する敵には業火の災いを齎す。
「ボルシャック・バクテラスの登場時能力!デッキの上から4枚を見て、その中からバクテラスではないアーマード・クリーチャーを好きな数場に出す!来い、俺の仲間達よ……っ!」
テルタカのデッキから4枚が飛び出す。そのカード達は……全てがアーマード・ドラゴン!
「暴竜爵に続け!《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》!《ネオ・ボルシャック・ドラゴン》!《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》!《禁断竜王 Vol-Val-8》!!」
赤と青の2体のボルシャックが、2本の巨砲を携えた赤い鎧の竜が、そして、巨大機構と一体化した禁断の竜が集結する。ドラゴン達による圧倒的な物量、それが彼の操るデッキの戦術だった。
「ボルメテウスでヴァインズを攻撃する!これで、終わりだ!!」
『焼き尽くすっ!!』
『燃え尽きよ!!』
バクテラスの炎の拳が、ボルメテウスの巨砲より放たれた光線が、2体のマスター・イニシャルズを消し飛ばす。彼らの前に立ち塞がる敵は、最早存在しなかった。
「ふぅ、少々遅れて申し訳ない。飛行型のソニック・コマンドに絡まれてしまいまして」
「いえ、助かったわ……ありがとう、えっと、陽野さん」
「御礼をいただくにはまだまだ早いです。作戦目的を果たすまでは気を抜けませんから」
敵群を一掃した後も、テルタカは呼び出したドラゴン達を撤収させずそのまま顕現させ続けていた。バクテラスがいる限り、他のクリーチャー達はブロッカーの能力を得て、彼女らを守る力となる。
「俺とボルシャック達が、この場を守ります。皆さんは安心してライブを続けて下さい」
「ありがとう!さあ皆、続けるわよ!」
「「「「OK!!」」」」
新たなデュエリストと合流し、Jack-Potの歌が新宿を覆うフィールド内に鳴り響く。未だ戦いは前哨戦。サキトとトウリ、ドラ娘生徒会とアオハル組に、事態の解決は懸かっている。