ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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禁断の呪いに蝕まれる『あちら側』のサキト。彼に待つ運命は──────


Ep.6:『護守サキト』と時空超えし禁断

──────記憶が、流れ込んで来る。

 

『いやーはっはっは!折角の誕生日に事件に巻き込まれたと聞いて肝を冷やしたが、無事だったうえ彼女さんまで連れて来るとはめでたい!』

『初めましてしのぶさん。今日は大変だったでしょうから、うちで良ければゆっくりくつろいで疲れを癒していってくださいね』

『ありがとうございます、おふたりとも』

 

しのぶと、2人の男女がにこやかに話している。豪快な印象の男性と、優しそうな印象の女性……。

 

──────誰だ。

 

『よく言いますよね、「力には責任が伴う」って。自分が持つ素質が役立つのなら……戦います。モモキングと共に!』

 

真のデュエリストの素質に目覚めた事で、戦う事を決意した、学校の後輩……。

 

──────誰だ。

 

『覚悟したまえ。受けよ!聖霊の剣!』

『深淵の炎よ、焼き尽くせ……!』

 

学校を襲撃した、デッドダムドに立ち向かう、2人の契約者。

 

──────誰だ。

 

『いやあ自分にクリーチャーと交流できるかもしれない素養があったのは、運命的でとても素晴らしい事だと思ったよ。最近では危害を加えてこなさそうなクリーチャーを探して、色々と話を聞くのが楽しみでね』

 

どこかの出版社の一室で、しのぶと     と共に話をしたDGAの一員。

 

──────誰だ。

 

学校の後輩達、生徒会の面々、軽音部の見目麗しいバンドメンバー…………。

 

 

 

誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ──────

 

 

 

──────知らない記憶が、知らない顔が目の前の『自分』らしき相手から流れ込んで来る。

自分のはずなのに、現れる顔は知らない物ばかり。

知っている顔は、ただ一つ──────

 

 

 

俺が手にかけてしまった、最愛の女性(ひと)だけだった。

 

 

* * *

 

 

「先輩!大丈夫と!?」

『しのぶも落ち着いたみたいだから、手伝いに来たけど…………何かあったみたいだね』

『しのぶ、帝王坂さん……ああ、奴にかけられた呪いに大体見当が付いたところでな』

 

しのぶが近付いてきた事で、あちらのサキトの攻撃が少し鈍って来た。あのようになり果てても、しのぶの事は大切に想っているということなのだろう。

光の槍を多数飛ばして来るが、サキトはドギラゴンの力による障壁を生み出し防いでゆく。

 

「……彼奴が記憶を消去されていると言ったな?どういう事なのだ」

『記憶を?』

『ああ。奴は能力を使う度に、人とそれに関わる出来事の記憶を失っていっている。向こう側のドルマゲドンが、奴を傀儡とするために仕込んだものだ……』

「なんで記憶ば消す事が、傀儡にする事に繋がると?」

『……例えば、両親を死なせたくないと思ったら、俺ならあの状態でもきっと世界を滅ぼす事に抵抗するだろう。だが、()()()()()()()()()()()()()?』

「「『っ!?』」」

 

人は、見知らぬ誰かのために力を尽くす事は難しい。それまでの人生で関わって来た、大切な人々……その存在こそが力となり、精神を支える柱となるものだ。

しかし、あちら側のサキトはその支柱を悉く記憶から消し去られた。そうなってしまえば、元の人格を保つことは…………極めて困難だろう。

 

「けど、うちの事は──────」

『しのぶの事だけは()()()()()()、それも意図してだ。あちらの俺は──────しのぶを自ら手にかけてしまったのだから』

「なんじゃと……!」

『奴の心にあるのは、愛した者を失った絶望と手にかけた自分への嫌悪。それこそが力の源となる闇のマナを生み出し、同時に自暴自棄となり傀儡として仕立て上げやすい精神状態を作り上げた……!』

 

サキトの表情が怒りに歪む。あちらの自分がされた事を考えると、腸が煮えくり返る思いだった。

 

『……これ以上奴に非道を働かせはしない、ここで決着を付けるッ!!』

 

炎の翼を広げたサキトが、もう1人の自分へと突撃する。2人の拳が、背の剣と槍がぶつかり合い火花を散らしてゆく。

あちらのサキトは、コストとなり得る記憶がもう殆ど残っていない。今この時が攻勢に出る機であるとサキトは考え、一気呵成に攻め立てる!

 

『──────ッ!!』

 

サキトの剣が、袈裟懸けにドギラゴンXの鎧を斬り裂いた。大きな傷を受けたあちらのサキトだが、右脚にめり込む禁断コアの破片が砕けるとその身が再生してゆく。

 

(1回撃破ごとにあの破片が1つ砕ける、ならばあと3回叩き込めば奴は倒れる!)

 

残る相手の残機を、今の一撃で推察する。しかし、そこに1つ謎が生まれる。

 

(…………いや、待て?奴には破片が破壊された跡が既に2つあった。1回は初戦でドギラゴン閃と相討ちになった時だとして…………()()()()()()()()()()()()?)

 

何処かで彼は、何者かと交戦したという事なのか。思考を巡らせた所で、あちらの攻撃が来る──────再びその身体が、紺青の光に包まれた。

 

『──────お前の記憶は、不快だ……っ!』

『まず……っ!?』

 

反応が一拍遅れる。王道の革命の力であれば、パワーではドギラゴンXを上回っているが……このまま攻撃を受ければ、スレイヤーの能力によりサキトは戦闘不能にされてしまう!

 

「先輩っ!」

『いかん、しのぶ!来るな……っ!?』

 

背後から聞こえたしのぶの叫びに、サキトが制止せんとする。しかし、しのぶの手には彼女のスマホと共に……1枚のカードが握られていた。

 

「∞ちゃんが言いよったばい!これなら、先輩ば助けらるーかもって……!」

『Add new creature power.』

 

読み込んだカードから、クリーチャーの力が付与される。背には蒼く光る翼が生え、多数のハンドベルが提げられた、肩を保護する衣が現れた。その力は──────あちらの世界には、無かった物だ。

 

『──────!? 何だ、それは──────!』

『その姿……《大音卿 カラフルベル》か!?』

「先輩、受け取ってっ!!」

 

しのぶが伸ばした手から、オーロラのような光が伸びる。それがサキトを包むと……ドギラゴンXの槍が、サキトの身に接触する寸前で止まる!

 

『──────破壊耐性の付与か!』

『今だッ!!』

 

スレイヤーによる破壊を防げる状態になったサキトが、一気に反撃に出る。オーロラを纏った拳が紺青の光を弾き飛ばし、紫闇の鎧を砕かんとする!

 

『がぁああぁぁっ!!』

『終わらせて、やるっ!!』

 

ドギラゴンの鎧の各所が展開し、レーザー砲が一斉に放たれる。多数の光の槍が迎撃するも、それに貫かれたあちら側のサキトは苦悶のうめき声を上げ、左脚の禁断コアが砕けた!

 

『く──────』

『──────チェストォォォオオオオォオォォオオ!!』

 

そして──────王道の革命の力を得たサキトは、連続で攻撃を仕掛けて行く。背にロボットアームで接続された剣を手に持ち替え、突進しながら大上段に構えて振り下ろし──────。

 

『が、ぁ──────っ』

 

最後のコアと共に、ドギラゴンXの鎧が──────断ち斬られた。

 

 

* * *

 

 

『宿禰さん、超次元の穴はどうだ?』

『もう少しで閉じそうでし!』

『護衛もばっちりですわ!』

 

戦いが一段落して、上空で超次元の穴を閉じようと作業し続ける2人とサキトは通話する。クリーチャーの侵入も止まり、禁断コアの消失によってイニシャルズ達も活動を停止しつつあるようだ。

 

『こちらトウリ、展望室の敵は殲滅しました』

『皆無事です!』

『こちらは都庁前、Jack-Potの皆さんの護衛を継続中だ』

『応援担当ありがとう、完全殲滅が確認されるまでよろしく頼む……さて、後は───こいつだな』

 

都庁第一庁舎の、南北のタワーの合間。地上より151mの場所で、サキト達は撃破しビルの屋上に横たわる、向こう側のサキトの様子を見ていた。

ドギラゴンXの鎧は、最早再展開出来そうにない。傷自体は禁断コアの力で軽減されたようだが、薄い刀傷が胸に残っている状態だ。

 

『さて、気になるのは……』

「ちょっ、何をする気じゃ!?」

 

サキトがボロボロになった服を剥ぎ取る。すると、腹部には何か、タイヤを強く押し付けられたかのような痕跡が残っていた。

 

『これは……何の傷?』

『はっきりとは分からんが、何者かと戦闘した痕跡だろうな。こちらの世界に来る前に付いたもののようだ』

「何者かって、誰と?」

『さあな。とりあえず、知るべきことは知った。後は……』

 

サキトが立ち上がると、あちら側のサキトに剣を向ける。その様子に、しのぶが不穏な物を覚え間に割って入った。

 

「せ、先輩、何する気ね?」

『──────こいつを楽にしてやるだけだ』

「なっ、斬るつもりなのか!?」

 

サキトの言葉を聞き、流石に見過ごせないとばかりにドーラと∞も間に割って入る。

 

『流石に、そこまでやる必要がある?相手は人間だよ』

『いや、クリーチャーとしての反応は消えていない……こいつは既に、ほぼクリーチャーと化している。クリーチャー退治は、何時もの事だ』

「いや、そうは言っても元はうぬと同じ存在、人間なのだろう!?」

『そもそも──────こいつは、もう生きてはいけないよ』

「っ!!」

 

倒れたあちら側のサキトの目は、まだ生きているというのに、虚ろなものであった。

 

『もう、しのぶの事以外は覚えていない。愛する者を手にかけ、家族も友人も、故郷すらも滅ぼす事に加担し……帰る場所も行く当てもどこにも無い。「護守サキト」としての心はもう、死んだも同然だ。───いっそここで死なせてやった方が、幸せだろう』

 

それに、禁断に浸食されたとはいえあちらのサキトは、世界の滅亡を導く尖兵となり背負いきれない罪を背負っている。それを少しでも清算するには、命をもって償う事になるだろう。

 

「でも──────でもっ!先輩が先輩を殺す所なんて、見たくなか!」

『……っ、しのぶ……そう言われたって、こいつばかりは──────』

 

その時、都庁上空の空気が鳴動する。

 

『うひゃぁあ!?何かが無理やり穴からこちらに……!』

『Unbelievable!抑えきれませんわ……きゃぁあ!』

 

超次元の穴をこじ開け、黒い何かが飛び出して来た。それは都庁の屋上をかすめると、空中で軌道を変えタワーの間へ突っ込んで来る。

 

「何じゃ!?」

『これは……!』

「あ、っ!?」

 

それは、漆黒の人型ロボットといった姿をしていた。両肩に紫色の大槍を携えたそれは、大きく拳を振りかぶり──────しのぶへと振り下ろす。

 

『しの──────』

 

瞬間、しのぶが横に突き飛ばされ。

 

 

 

鮮血と、紫闇の粒子が飛び散った。

 

 

 

「え──────」

『──────が、っは』

 

4人の目の前で──────あちら側のサキトが、その腹に風穴を開けられていた。




──────次回、真のラスボス戦。
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