ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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時空を超えて現れた、最後の……そして最初の禁断の使徒。因縁の相手を、打ち破れ。


Ep.7:重なり合う力

「──────先輩!!」

『こ、いつはっ!』

 

現れた黒いクリーチャーに、サキトが剣を振り上げ斬り付ける。その敵は即座に腕を引き抜き、高速で彼らから距離を取った。

 

「しのぶ!そやつを連れて離れよ!」

『流石に、致命傷だとは思うけど…………』

「う、うんっ!」

 

しのぶが腹を貫通されたあちらのサキトを引きずり、後ろに下がろうとする。しかし、瞬時に黒いクリーチャーが回り込み、再び拳を──────。

 

『やらせるかぁっ!!』

 

今度はサキトが間に合い、翼と剣で拳を受けて跳ね返す。後退したたらを踏んだ襲撃者は、サキトの姿を見てその目を光らせ闘志を漲らせた。

 

『ッハハハハ!ようやく見つけたぜ……間違いねえ、オレと戦った、()()()()()()()()()()()だなぁ!この世界の生き物と合体して姿は変わっちゃいるが、そのマナは見間違いはしねえ!!』

『何なの、このクリーチャー……』

「護守サキト、うぬの知る者か!?」

『……ええ、忘れもしない、俺と……ドギラゴンと因縁あるクリーチャーです。最初の禁断の使徒にして最強の侵略者───「レッドゾーン」、その進化形態!』

 

かつてドギラゴンがいた超獣世界にて、ドギラゴンと幾度も戦った最強最速の侵略者。そして、禁断の星の封印を解くために生み出された存在。

禁断の星を封印から解き放った後、その行方は杳として知れなかったが……今、時空を超え、再びドギラゴンの前にその姿を現した。

漆黒の装甲に身を包むその姿の名は──────。

 

『《時空の禁断 レッドゾーンX》!』

 

次元を超え侵略する力を得たこのレッドゾーンは、ずっと探し続けていたのだ。自身が決着を付けるべき相手、因縁ある自身と同じ世界のドギラゴンを。

そして、このレッドゾーンがずっと生き続けていた事により……ギュウジン丸が立てていた計画は変更を余儀なくされ、クローンによる代用品を使う事となったのだろう。

 

『あちらの俺……ドギラゴンXを襲撃したのもお前だな』

『だったらどうしたァ!!』

『ぬぅあっ!!』

 

レッドゾーンXが一気に加速し、サキトに拳を叩き込んで来る。轟速の侵略者のトップだった彼の力は、今やドギラゴンが戦っていた頃より遥かに増大している!

 

「儂らも忘れるでないわ!」

『これ以上好きにはさせない』

 

∞とドーラが仕掛けてゆく。ゲンムエンペラーの夢幻の無が行く手を遮り、レッドゾーンXは限定された軌道を走るよう誘導されてゆく。

そこにドーラが待ち構え、突っ込んで来たレッドゾーンXへと真正面からドラゴン化した拳を叩き込む!

 

「喰らえぇぇい!!」

『遅ぇ!お前らの力は───周回遅れだァァァッ!!』

 

レッドゾーンXから闇のマナが噴き出る。次の瞬間、叩き込まれるはずだったドーラの拳は、()()()()に阻まれていた。

 

「何じゃと!?腕が増えた!?」

『覚・醒ッ!!』

 

青い電光が迸り、レッドゾーンが姿を変えた。禍々しく変じた各部の装甲、新たなる1対の腕にそれぞれ槍を携え、悪鬼の如き2本の角が禍々しく輝いた。

 

『姿が変わった……!』

『オレの名は、終焉の覚醒者…………!』

 

 

 

『──────レッドゾーンBSR(バサラ)ァッ!!』

 

 

 

* * *

 

 

「先輩!先輩!しっかりして!!」

『──────し、のぶ…………』

 

レッドゾーンXに貫かれ、大きな風穴を開けられたあちら側のサキト。その身体が、光の粒子となって崩れて行く。まるで、クリーチャーが消滅する時のように。

 

「いけん、崩れるのが止まらん!なんで止まらんと……!」

『ご、めん。大切───ものを、悪意───理不尽、から、守る───誓った、のに……俺が、ころして、しまって』

 

途切れ途切れに、謝罪の言葉が漏れる。それは、本当に謝りたい相手には、決して届くことは無いだろう。

それでも、謝りたい。永遠に失われた、大切だった人に。愛する者に。

 

『しの、ぶ───この世界、の、君は、しあわせ……か?』

「っ、うん!先輩がおって、∞ちゃんがおって、アオハル組の皆がおって……!うちゃ、幸せばい!」

『そう、か──────よかった』

 

きっと、あちらのしのぶと同じ所には逝けないだろう。禁断の使徒となり、多くの命を奪った以上、あの世が本当にあるのならば……地獄に堕ちるのは間違いない。だとしても──────。

 

『最期に、もう一度だけ、君を守れて……よかった』

 

──────その言葉を最後に、あちら側のサキトの身体は……光となって散った。

 

「先輩──────っ!!」

 

 

* * *

 

 

『邪魔だァッ!!』

『まず──────っ』

『跳んで避けろ!』

 

レッドゾーンBSRが双槍を投げ放ち、∞を襲わんとした。サキトの掛け声でかろうじて躱したが、あれに当たればドキンダムの槍同様に、封印されて行動出来なくなるだろう。

 

「∞!無事か!」

『何とか……でも、まずいね。ドーラの力に引けを取らないうえ、スピードが速すぎて私の攻撃も難無くかわしてくる』

『それに、奴が出現してからまたイニシャルズ達が息を吹き返したように動き始めてる…………応援は期待できん!』

 

地上と最上階に分かれた皆が、再びイニシャルズの群れによる攻撃を受け始めていた。今は撃退出来ているが、どちらかへレッドゾーンが向かえば取り返しのつかない被害が出るだろう。

ドギラゴンを集中的に狙っているため、サキトが健在である間は問題無いだろうが……このまま押し切られれば危険だ。

 

『レッドゾーン……ラッシュッ!!』

『ぬぁああっ!?』

「ぐぅっ!!」

 

奴が4本に増えた腕で拳の連打を浴びせて来る。サキトとドーラは全力で防ぐが、凄まじい攻撃速度に押し切られ大きく後退させられた。サキトが纏う王道の革命の鎧は、あちらこちらに罅が入りそろそろ保ちそうに無かった。

 

『2人でこいつを止められるとしたら、何秒くらいいける!?』

「時間稼ぎか……あの速さでは、儂らでも5秒程度が限界かもしれぬぞ!」

『槍による封印が厄介だね……下手をすれば2人とも行動不能にされる』

『く、せめて10秒あれば──────』

 

その時、サキトの周囲に光の粒子が集まり始めた。

 

『あァ…………?』

「何じゃこれは!?」

『青と、紫色の光…………』

 

何かを感じ、サキトは後ろを……しのぶのいる方向を向く。彼女の腕の中から光の粒子が舞い散り、半分は空へ、そして半分は……サキトの方へと流れて来ていた。

 

『──────そうか、あちらの俺は……逝ったか』

「身体も残らぬとは……本当にほぼ完全にクリーチャーと化していたのだな……」

『余所見の暇があるのかァ!!』

『ちぃっ!!』

 

レッドゾーンBSRの猛攻が止まらない。しかし、サキトにはようやく、勝利の光明が見えて来た。

 

『2人とも!5秒でいい、奴を足止めしてくれ!』

「いけるのか!?」

『ああ。奴との決着は、俺とドギラゴンで付ける…………頼む!』

『分かった。やるよ、ドーラ』

「仕方あるまい、任せるぞ護守サキト!」

 

ドーラと∞がレッドゾーンBSRに挑みかかる。夢幻の無でサキトの周囲を守ると共にレッドゾーンの高速機動を封じ、ドーラが炎を纏った拳で一撃を加えてゆく。同時にサキトは、纏う鎧をドギラゴン閃のものに変え、精神を集中させ始めた。

 

“5”

 

『ふぅぅぅぅ…………っ』

 

サキトが、自らに集まって来たあちら側のサキトの残滓を吸収する。闇と水のマナをその身に取り込み、力と成してゆく。

 

“4”

 

「儂の拳を受けるがいい!」

『チィィッ!!』

『今……!』

 

レッドゾーンBSRの機械の拳とドーラの小さな拳がぶつかり合う。小柄な体躯に見合わぬドーラの力がレッドゾーンと一時的に拮抗し、奴がたたらを踏んだところに∞もゲンムエンペラーの翼を叩き付けんとする。

 

“3”

 

取り込んだマナを使い、サキトは一つの力をイメージし形にしていく。それはドギラゴンが持つ力の一端であり、それを更に発展させた新たな形。

 

“2”

 

『鬱陶しいッ!!』

「ぬああぁっ!?」

「…………!」

 

レッドゾーンBSRが全身を大きく回転させ、2人を弾き飛ばす。庁舎タワーの壁面に叩き付けられたドーラと∞は、一瞬息が詰まり動けなくなった。

 

“1”

 

『終わりだ、ドギラゴンッ!!』

「先輩、避けて──────!」

 

回転を止めたレッドゾーンが、サキトへと迫る。拳がサキトの身体に叩き込まれるまで、一瞬しか無いだろう。しのぶは目を瞑る間もなく、彼に迫る暴威を見つめ──────。

 

 

 

“──────0”

 

 

 

次の瞬間、サキトとレッドゾーンBSRの間に、2本の槍が突き立ち行く手を阻んだ。

 

『何ィ!?』

 

レッドゾーンは驚愕する。それは間違いなく、彼の持つ物と同じ、禁断の力を持つ双槍だった。

 

『“俺”のお陰で、これを使う事が出来たようだな。今日この場限りの特別な技だ───心して、受けてみろ』

 

サキトの周囲に、複数の武器が浮いていた。それは紛れもなく、「ドギラゴン」の持つ武装であった。

 

(バスター)の片刃剣。

(ノヴァ)の七支刀。

(ドリーム)の三叉槍。

王道の革命の大剣。

Xの双槍。

そして、サキトもまだ知らない、まだ見ぬ何者かの……複数の牙が連なったかのような剣。

それらを従えたサキトが、レッドゾーンへと向けて咆える。

 

 

 

『《無限攻撃革命(ドギラゴン・インフィニティ)》、ハイブリッドフォーム!!』

 

 

 

周囲の武器から二刀を手にしたサキトが瞬時に距離を詰め、レッドゾーンを斬り付けた。漆黒の装甲を斬り裂き、レッドゾーンBSRに大きな傷を付ける!

 

『グゥアァアッ!?』

『行くぞッ!!』

 

飛び退いたレッドゾーンが、都庁庁舎タワーの壁面を垂直に走り始める。より加速度を付けて得意の高速攻撃を食らわせるつもりだ。それを追うようにサキトも、反対側のタワー壁面を垂直に走り登ってゆく!

 

『オォォォォラァァァァアアッ!!』

『はぁぁああぁあっ!!』

 

互いに壁を蹴って跳躍し、空中でぶつかり合う。その度にレッドゾーンBSRの装甲が刻まれ、同時にサキトの手にした二刀に罅が入り……やがて砕け散る。

 

『まだまだっ!!』

『野郎ッ!!』

 

王道の革命の大剣が展開し、追尾レーザーがレッドゾーンを襲う。それを躱しきると、レッドゾーンは槍を取り出して投げ付けて来た!

 

『ちぃぃっ!!』

 

三叉槍を高速で回転させ槍を打ち払うサキト。しかしその後に、レッドゾーン本体が突っ込んで来る!

 

『くたばれッッ!!』

『な、んのぉっ!!』

 

拳のラッシュを自らの持つ禁断の双槍を砕かれながらも凌ぐ。そして、お返しとばかりに腹部へ蹴りを叩き込む。吹き飛ばされたレッドゾーンに……鎖のような刃が絡み付き縛り上げる。

 

『こいつの使い方は……こうかっ!!』

『グ、ガァアッ!?』

 

刃が分割され、蛇腹剣となった新たな剣を振るいレッドゾーンを強引に引き寄せ……拳を叩き込んだ!たまらずレッドゾーンは反対側のタワーに叩き付けられる!

 

『おぉぉおおぉぉぉぉっ!!』

『まァだだァッ!!』

 

三叉槍と蛇腹剣を投げ付け、それの迎撃にレッドゾーンBSRが拳を振るった所に本命の、大剣による一撃。大上段から振るわれるそれを、レッドゾーンは驚異的な反応速度で、両面から同時に4つの拳を叩き付けて叩き折った。

得物を全て失ったサキトに対し、勝利を確信した笑みを見せ──────。

 

『これで…………ッ!?』

『──────収束ッ!!』

 

直後、ここまでに折られた武具が全てマナとなり折れた大剣の柄に収束され…………ドギラゴールデンの大剣へと変化する!

 

『チェストォォォオオオオォオォォオオッ!!』

 

そのまま、縦に身体を回転させ、2度目の振り下ろしを叩き付ける。その一撃は確実に、レッドゾーンBSRの肩口に…………食い込んだ!

 

 

 

『馬、鹿な……ッ!』

『完・全……っ、決・着ッ!!』

 

 

 

そのまま、一気に落下する。タワー毎縦に叩き斬らんとするような勢いを乗せた一撃が──────レッドゾーンBSRを、両断した!




てんこ盛りフォームや限定フォームもまたヒーロー物の華。《無限攻撃革命》で派生形態の剣一斉登場がやりたかったのです……!

次回、1.5部エピローグ。
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