「ふあぁ~……いよいよ3年かぁ」
──────2025年4月7日。
桜龍高校に再び、桜舞う始まりの季節が巡って来た。始業式を迎えたその日、護守サキトは気だるげな表情で過ごしていた。
『先輩、なんだか眠そうだね。寝不足?』
「んー、ああまあね。ちょっとばかし悩んでる事があって」
『しのぶと一晩中楽しんでるとかじゃないんだね』
「む、∞ちゃん!流石にそこまではしとらんばい!」
学校からの帰り道、彼は蒼斬しのぶと帝王坂∞を伴い自身の家へと向かっていた。しのぶのみならず∞も招いているのは、近日行われるFPSの大会に向けての練習を見て貰うためだ。
「まあ、春休み中はたまに泊りがけでデュエマを布教してたりはしてたが」
『一体何をしてたの』
「2人でパソコンの前に座ってアニメば見よったばい……ただそれが結構長うて」
「公式が今無期限無料配信しているからな。まだVSのラストまで行ってないから継続して見ないとなあ……」
現在デュエマ公式のYouTubeチャンネル「デュエチューブ」にて、過去のアニメシリーズがいつでも見れるようになっている。これにより布教が格段に楽になったと言える……のだが、通年アニメであるためとにかく話数が多いという難点もあった。
4月7日時点では、超天篇時期のアニメ「デュエル・マスターズ!!」が平日に1話ずつ配信されている。
「意外と面白かったばってん、流石に1話30分のアニメを50話はきつかよ……」
『最近のアニメと違って4クールあるのは大変だね』
「ふふふ……勝太中学生編はそのあと2年続くぞ……」
『何で嬉しそうなの先輩。でも、計150話くらいか……』
全部見終わるには相当日数がかかるだろう……それはともかく。
『それで悩みって、何を悩んでいるの?』
「んーまあ、卑近な言い方をするなら進路ってとこなんだが……」
「もしかして、DGAに絡む事ね?」
「ああ、先日こんな事があって……」
* * *
3日前、4月4日。この日サキトはDGAの要請で、東京23区の中心、千代田区の区役所へと呼び出されていた。
「護守隊員ですね、どうぞこちらに」
「はい。しっかし、この辺に来たのなんて学校での国会見学以来か?」
区役所へ入ったサキトは係員に案内され、エレベーターへと乗る。すると係員はエレベーターのボタンを押さずに、操作パネルに自身のスマートフォンを翳した。
「それでは、下へ参ります」
「お、おおぉ!?」
すると、エレベーターが降下して行き……本来ある地下1階の駐車場フロアを通り過ぎ、更に下へと降りて行く。
「市役所にこんな秘密が……!?」
「護守隊員はこちらは初めてでしたね」
エレベーターのインジケーターは「B2」と表示された状態で止まった。扉が開くとそこは小さな部屋で、中心に何か近未来的な機械で出来た……「ゲート」のような物が鎮座している。
「さあ、デュエマフォン・アプリを起動させて、ここを通って下さい」
「了解です。よ……っと」
言われた通りにデュエマフォンを起動させ、その状態でそのゲートをくぐると……景色が一変した。
壁全体がSFアニメで見た様な、未来的な技術で構築されたホール。そこから三方向に通路が伸び、何処かへ続いている。ホール内には、白衣の研究者らしき者が数人会話をしていた。
「こ、ここは?」
「ここは東京湾の海底谷、深度700メートルの海中に作られた施設です。超獣世界の技術により発電、空気の清浄化と循環が行われています。外部からの出入りや物資の搬入は、先程通られた転送装置や人工の超次元ホールによって成されています」
まさか、このような施設が作られていたとは。これまでDGAの活動を1年間続けて来たサキトも驚嘆する。
「ようこそ──────『Duel Guardians Alliance』総本部へ」
* * *
「こちらの部屋になります。護守隊員が最後の到着になりますね」
「案内ありがとうございました」
DGAの係員に案内され、やたら天井の高い特別会議室と書かれた部屋へ通される。サキトが最後という事は、他にも呼び出された者がいるのだろう。
「失礼します」
「む、来たか護守」
「おお、井星さんも呼ばれてましたか」
栗茶市の実働部隊員で共闘経験も多い、井星リュウもここに呼ばれていた。見ればこの部屋にはサキト含め、5人の人間がいる。2人ほど初対面の者もいた。
「そちらは確か……」
「先日はどうも、陽野テルタカです。そちらの女性お二人は俺も初めてお会いしますね」
茶髪にポニーテールの活発そうな女性、そして黒髪の長髪が特徴の、サキトと同い年くらいの少女。彼女達も恐らく真のデュエリストであり、実働部隊員なのだろう。
話しかけようとしたところで、部屋の中心に超次元の穴が開き……そこから、巨大なものが2つ、姿を現した。
「っ!?」
『落ち着け。諸君らを害しに来た訳ではない』
現れたのは、2体のドラゴン。咄嗟にデュエマフォンを構えようとした5人を、赤い龍が手で制した。
『初めまして、真のデュエリスト諸君。私は海龍神クリスド』
『我は炎龍神ヴォルジャアクだ。お前達であれば、我々の事は知っていようがな』
「五大龍神のうちの2体か……!」
「……うちの校長が言っていました。DGAの技術には貴方がたの関与があるだろうと」
『ええ、私達がこのDGAの、クリーチャー側のトップを務めています』
桜龍高校の校長、その真の姿である《天龍神アークゼオス》と同格の五大龍神。兵器の製作を得意とする火文明の古代の主ヴォルジャアクと、科学技術を得意とする水文明の古代の主クリスド。以前から関与は疑われていたが、とうとう彼らの前に姿を現す事となった。
『さて、まずはお前達同士でも自己紹介を行って貰おう。今後このメンバーは協力を強めなければならぬからな』
「はぁ……それじゃあ改めて。栗茶市実働部隊所属、高校3年生、護守サキトです。ドルマゲドンの事件の際に知っている方のほうが多いでしょうが」
「……同じく栗茶市実働部隊所属、大学3年……井星リュウだ」
「新宿区実働部隊所属、高校3年の陽野テルタカです。以後よろしく」
「あたしは神奈川県大和市の実働部隊所属、
「お初にお目にかかります。千代田区実働部隊所属、
茶髪の女性はヨウコ、黒髪の少女はユウキと名乗った。彼女達もこの場に呼ばれたからには、実績あるデュエリストであろう事は間違いない。
『さて、早速だが本題に入るとしましょう。諸君5人は、私達が設定した条件を満たし選定された、DGAに所属する中でも選ばれた真のデュエリストです』
『そして、お前達にはこれより、我々が一つの地位を与え、新たな仕事を任せる事となる』
「……新たな仕事?」
『そうだ。これは、こちらの世界と我々の世界……人間世界と超獣世界双方のバランスを保つための重要なものとなる』
彼ら五大龍神が直々に与える称号、その言葉にサキトは相応の重みを感じ取り、唾を飲んだ。
『諸君ら5人を、超獣世界の守護者にして監視者──────』
『──────「デュエルマスター」に任命する』
「「「「「…………っ!?」」」」」
デュエルマスター。その称号は、デュエマの原作に触れている彼らには極めて重要な物だと一瞬で理解できた。
所謂新章デュエル・マスターズにおいては、超獣世界に存在する5つの文明、それぞれを守護し管理する者としてデュエルマスターは存在する。その役目に、彼らを就かせようというのだ。
「質問がございますわ。わたくし達にその任を与えるという事であれば、逆説的に、今の超獣世界には───」
『ええ、貴女の考え通り……我々の超獣世界には現在、デュエルマスターは存在しません』
「そうなの!?」
『むしろ、その概念を現代でこちらの世界と接触して、初めて知ったと言えよう。人間世界と我々の世界の繋がりは、現代までは殆ど無かったのでな』
『そして、現在クリーチャーの人間世界への侵入が増大してきた事から、我々は双方を行き来する管理者を立てるべきと判断したのです』
クリスドが腕を翳すと、ホログラフのモニターが表示されそこに5人の顔が表示された。またそこには、もう1人分空白の枠も存在している。
『各文明に1人、それに加えて特別な枠を1人任命する事となります。光文明に、《魔光大帝ネロ・グリフィスII世》の契約者光明院ユウキ。自然文明に、《首領竜 ゴルファンタジスタ》の契約者相模野ヨウコ』
『火文明には、《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》の契約者陽野テルタカ。闇文明には《卍 デ・スザーク 卍》の契約者井星リュウ──────』
「……少し待ってくれ、契約したクリーチャーに対応する文明のマスターに据えるというならば、護守はどこへ据える気だ?ドギラゴン閃は火と光、既に二人と被っているうえ水文明が不在となる」
『水文明は現在、候補となる者は見つかっており契約もしているのですが……契約したクリーチャーがまだ力を発揮できない状態にあります』
「それはどういう?」
『まだ力を振るうための媒介がこの世界に存在しない……分かりやすく言えば、「まだカードとなっていないクリーチャー」なのだ』
「そんな事あり得るの?」
『流石に他に無い稀な例ではあるがな。それ故に、一時的に水文明のマスターは空白となる。そして、護守サキトには──────』
『『全文明の力を持つ守護者、「デュエルマスターキング」になって貰いたい』』
「は──────ええ!?」
* * *
『……だいぶ話が大きくなって来たね』
「ああ、まさかデュエルマスターに……それも、キングに指名されるとか夢にも思わなかったよ」
時は現在に戻り。しのぶと∞はサキトの口から明かされた彼の進路……というより、与えられるであろう使命の話に驚いていた。
「それで先輩は、そんお話ば受くる気ね?」
「んー、それがなあ……一応暫定で受け持つ事にはしたが……厄介な話ではあるよ」
「そうと?」
『意外だね、先輩が大好きなデュエマにおいて、最高峰の称号なんでしょう?』
確かに忙しくはなりそうだが、普通の就職など考えなくても良くなる彼にとって最高の職業だと2人には思えた。ここまでの話を聞くだけでは、だが。
「デュエルマスターキングになるってのは、ただ一つ、そして人間にとって特大のデメリットがあるからなあ」
『どういう事?』
「デュエルマスターキングになった者は、相棒たるクリーチャーと一つとなる。そして……不死身となってしまう」
「不死身、って……」
「そう、クリーチャーと一体となり、不死身の存在となったデュエルマスターキングは……超獣世界を永遠に守る存在となるんだ」
デュエル・マスターズキングで語られた、デュエルマスターキングとなった者の宿命。それがこの世界でも同一であるならば、サキトは永遠に戦い続ける存在となるだろう。
「そ、そげなと人柱と変わらんばい!」
『なるほどね……流石に断ってもいいんじゃない?』
「とはいえ、必要だって話も理解できないではないんだ。実際、クリーチャーによるこちらでの災害は未だ頻発していて、それを押し止めるための存在がこの世界にはまだいない訳だし」
なんでも最近は、一度生徒会が撃退したクリーチャーが再度こちらに来ているというケースもあったらしい。別個体であるという可能性もあるが、やはり人間世界と超獣世界の行き来を管理する存在は将来的に必要となるだろう。
『だから、暫定で受ける事にしたの?』
「ああ。しのぶ達がドラゴンの力で戦わずに済むようになるには、こちらの世界で事件を起こすようなクリーチャーをこっちに来させないのが一番ではあるからな。それで、他に候補が出来たならそちらに任せる。出来なかった場合は……」
「先輩と、一緒にいられんくなると……?」
「一緒にはいるさ。少なくともしのぶが天寿を全うするまではな」
「そんな……」
彼は、ずっと「置いて行かれる側」となってしまうだろう。その精神的な辛さは、今の彼女達には想像もつかない。
『……まあ、必ずしもそうなると決まったわけじゃない。デュエマの原作と私達の世界では差異があるかもしれないし』
「う、うん!そうだとよか!」
「そうだな。まあ、俺に出来る事をするだけさ。それに良い事も色々ある!これまでクリーチャー相手の戦いに使う事が出来なかったカードが、デュエルマスターの権限を得た事で使えるようになったりな!」
「それで、新しかデッキば組んどったと?」
「ああ。このデッキのエースも俺の大好きなクリーチャーでな──────」
デッキケースを出そうとした瞬間、サキトのスマートフォンが警報音を鳴らす。微弱だが、クリーチャー反応だ。
「クリーチャー反応!場所は……俺の家の目の前!?」
「うそ!?」
『急ごう、先輩の家族が危ないかも』
3人は駆け出し、護守家へと急行する。角を曲がり、護守家の門の前で見た物は……。
「そこか……ぁ?」
「え、あれって……」
『……』
路上に倒れ気を失っている、1人の男だった。
『…………行き倒れ?』
「お、お巡りしゃん!?じゃなくて、救急車!?」
『しのぶ落ち着いて、とりあえず両方呼ぼう』
「いや2人とも、どっちも呼ばない方がいい!あれは……!」
サキトには、倒れている男の格好に見覚えがあった。赤みがかった髪の毛、長いマフラーに黒いシャツとズボン、同じく黒のノースリーブジャケットと、あまり見慣れない格好ではあるが……サキトはその男の特徴を良く知っていた。
それは、デュエマでも屈指の人気を誇るクリーチャーの1体──────。
「う、うう……っ腹が……」
「──────グレンモルトぉっ!?」
第2部の始まりは、デュエルマスターの就任と新たな出会いから。
サキトにとってモルトも好きなクリーチャーの一つです。VSシリーズ直撃世代なら当然である。
ちなみにモルトの格好はデュエプレのストーリーモードで登場した時の非武装状態をイメージしていただければ。
アンケート設置しております。よろしければお答えください。
ハーレム的展開によってお相手を増やすのは、皆さんアリですか?なしですか?
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ハーレム上等!バッチ来い!
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ハーレムNG!一途な方がいい!