「よ、っくっ……よし、キルした!」
『うん、順調だね。その調子だよ。先輩は呑み込みが早い』
モルトとの手合わせを終え、サキト達も昼食を摂った後。彼らはサキトの部屋で、今日彼の家に集まった本来の目的を果たしていた。今年行われるFPSの高校生大会に向けての練習である。
「彼は何をしているんだ?」
「うーんと、グレンモルトしゃんの世界にはゲームなんてなかね……先輩は今、ルールが決められた戦いばしとーったい」
『世界中から参加した人達が、それぞれが動かすキャラを制限時間中に最後まで生き残らせた人の勝ち』
「世界中の相手と闘えるのか!?」
『そちらの世界であれば、水の文明が通信機やコンピューター相当の物を作って使ってると思うけど……私達の世界では、それらが世界中の多くの人に普及していて、何時でも他人と交流出来る』
「なるほど……オレ達の世界には生まれ得ない発想だな」
超獣世界では各文明は場合によって共闘する事はあれども、基本的には対立する者同士。こうして世界中全てに各文明の優れた点、技術や産物を普及させるという考えは皆無と言って良いだろう。
「今年行わるー大会にかたるために、頑張っとーげな」
「野試合で腕を磨いて大きな催しに出るということか。なるほど、その感覚ならオレにも分かる───」
「ぬあーっ!?」
「あ、やられてしもうたんごたーね」
サキトが悔しげな叫びを上げて天を仰ぐ。どうやら終盤になった所で撃破されてしまったようだ。
「くっそー、やられた……最後何されたか分からん内に落ちたんだが、帝王坂さんは敗因何か分かるか?」
『……ちょっと待って。今のは何かおかしい』
「なぬ?」
『先輩が落ちた瞬間、レーダーを見た限り相手は全員遮蔽物の向こうにいたはず……少し待って、解析してみる』
∞が手持ちの機器をサキトのPCに接続し、解析して行く。すると…………。
『見つけた。最後の瞬間、相手の銃撃が遮蔽物を貫通してる』
「何?するとつまり……」
『相手のプレイヤー、チーターだね』
「チーター?猛獣がどうかしたと?」
「いやそのチーターではなくな……データ改竄して不正してる奴が紛れてたって事だよ」
「何だと!?」
ゲームとはいえ真剣勝負の場で不正を行い、自分勝手な悦に入る不届き者は残念な事にどこの世界でも存在した。対象のアカウント名を控え通報せんとした所で……デュエマフォンが警戒音を発した。
「は?何で今警戒音が……PCから反応?」
「何だ、どういう事だ?」
「まさか……帝王坂さん、こいつをPCに繋いでもう一度解析してみてくれ」
『分かった』
デュエマフォン・アプリを起動させたままサキトのスマートフォンをPCに接続し、∞が再び解析を行う。すると、画面にクリーチャーの情報が表示される。即ち……。
「このプレイヤー、クリーチャー憑きだ!」
「ええ?まさか、クリーチャーん力ば使うてズルしとーと!?」
「そういう事になるな。水文明のサイバー・ウイルスを使っているようだ……しかし、詳細データが出ない……また『カード化してないクリーチャー』という奴か?見た目は《キューティー・ハート》に似てるが《斬隠テンサイ・ジャニット》が使うパワードスーツみたいな機械で武装している……?」
デュエマフォンの表示がまたバグったようになり、カード名とテキストが表示されない。DGAが言及していたような、カードが存在しないクリーチャーである。
『どうするの?クリーチャーの力でシステム書き換えをしている場合、ゲームの運営では対処出来ないかも』
「……帝王坂さん、こいつのアカウントを追ってマッチング出来るか?」
『たぶん、先輩のデュエマフォン・アプリを併用すれば出来なくは無いかも』
「よし、じゃあやって欲しい。しのぶはDGAの窓口に通報を頼む。今年から公式のHPと電話窓口を開設して、そこから市民の通報を受け取る部署が出来てるから」
「分かったばい!」
「それで……帝王坂さん、マッチング出来たら出来る限り時間稼ぎを意識して戦って欲しい」
「どうする気だ?」
モルトの言葉に、サキトはドギラゴン閃のカードを取り出して示す。
「ネット回線の向こうにいるクリーチャーの所まで、ドギラゴンを送り込んで直接ぶちのめす!」
「そんな事が出来るのか!?」
「デュエマフォンを経由すれば可能だ、ネットを通じて本体が居る相手のPCまで入り込めば……っ!」
『分かった。任せて欲しい』
サキトがデュエマフォンに触れカードを読み込ませると、ドギラゴンの力と意識が電脳空間上に転送される。この方式は現状、契約したクリーチャーのみ送り込めるため、複数のクリーチャーで攻めるという戦法が使えないというのが少々厄介な所だ。呪文などによるサポートは出来なくも無いが、サキトの手持ちでどこまで通じるかは不明だ。
「先輩!ゲームのタイトルも添えて通報できたばい!」
『こちらもマッチング出来たよ。すぐに試合が始まる』
「よし、頼むぞドギラゴン!」
『ああ、行くぞ!』
電脳の世界をドギラゴンが駆け巡り、チーターのPCへと突入せんとする。しかし、寸前でセキュリティ代わりのクリーチャー達に阻まれる!
「チッ、やはり防御策も仕込んでいたか……突破するまで時間を稼いでくれ!」
『了解』
* * *
薄暗い部屋の中、1人の男がモニターに向き合っていた。画面に映るのは、今まさにサキトと∞が挑まんとしているFPSのマッチング画面。
「……来たか。こいつだな……」
画面の隅に、先程受信したメールを表示しながら……男はコントローラーを握り操作を始めた。
* * *
「防壁突破……チィッ!またか!」
(狙いは甘いけど、遮蔽が効かないのは厄介……!)
チーター撃破に挑む2人は苦戦していた。サキトが送り込んだドギラゴンは、セキュリティとなる防壁とそれを守る大量のサイバー・ウイルスに阻まれ幾度も足踏みし。∞は無言でただひたすらチーターの銃撃を躱し続けているが、戦闘エリアが狭まって来るとひたすら避け続けるのは厳しくなってくる。
幸いと言えるのは、マッチングした複数人のプレイヤーの中に凄腕がいるらしく、チーターの注意がそちらへ向いている事も多くなっている事か。
「よし、ドギラゴンいけるか!?」
『第2の防壁はこれで突破する!おおぉっ!!』
シールドのように展開された電脳の防壁を断ち斬り、中枢近くまでドギラゴンは侵入出来た。そこに、第3の防壁とサイバー・ウイルス達が立ちはだかる。《マリン・フラワー》《猛菌 マリフラ-1》《ワンダリング・スフィア》といった軽量のブロッカーが攻撃を阻み、《氷牙レオポル・ディーネ公》《氷牙バブル・ヘルマー公》といったナイト持ちのサイバー・ウイルスが侵入者を攻撃してくる。
「銃や射撃を意識してるのは、一端のシューターのつもりだからか?鬱陶しい……っ、またブロッカー補充か!」
サイバー・ウイルス軍団はドギラゴンにとって敵ではないが、セキュリティ防壁を守るブロッカー達が補充され続けているせいで中枢への侵入が滞っている。∞も永遠に脚止めし続けられる訳ではなく、時間をこれ以上かけるのは拙い状況だ。
『……?メッセージウィンドウ?』
「ど、どげんしたん∞ちゃん?」
『画面にメッセージが出て来た』
「まさか、相手に逆に攻撃でもされたのか?」
『いや、違うみたい。これは……今ランク1位の人?』
このタイミングで、PCのゲーム画面に妙なメッセージが表示された。逆探されウイルスを仕込まれたかとサキトもモルトも焦るが、メッセージの主はチーターではなく、現在このゲームにてランク1位を維持しているプレイヤーの名が添えられていた。
『そろそろ遊びは終わりにさせる
* * *
『いい加減にして貰いたいな!』
電脳の空間内にて、ドギラゴンは咥えた剣を振るい続けていた。しかし、補充され続けるサイバー・ウイルス達を相手にしては、戦いの終わりが全く見えて来ない。肉体は疲労しなくとも、精神的にはうんざりしてきた。
『相手が気付いて、回線を一時切断したら締め出されるとサキトは言っていたな……早く済ませなければならんと言うのに!』
流石に想定される制限時間も迫って来た。ドギラゴンも焦り出したその時……。
『そこを退きなぁ!』
『ッ!?』
ドギラゴンの背後、侵入してきた経路から何者かが叫んだ。それを聞いたドギラゴンは、咄嗟に横へと跳ぶ。そちらを見れば、そこには背に4本もの大砲を背負ったドラゴンの姿──────。
『喰らいな、“ジョラゴン・ビッグ1”!ジョラゴンjoe弾だッ!!』
そのドラゴンが放った砲弾が、着弾点で派手な爆発を起こした。大量にいたブロッカー達が、一瞬にして消し飛ばされる。残るはシールドの如く浮かぶファイアウォールと、5体のナイト・ウイルスのみ。
『守りは蹴散らしたぜ!後は任せるぜ、ジョニー!』
『何!?』
「ジョニーだと!?」
その名はサキトは当然として、ドギラゴンも知っている。彼が生まれた世界とは別のクリーチャー世界にて現れた、自由なる風のガンマンの名を。
『おいたが過ぎたな、坊や……』
ジョラゴンの後ろから、バイクに跨った機械のガンマンが駆けて来る。あの姿は……間違いない!
「《ハイパー・ザ・ジョニー》!?」
【──────《破界秘伝ナッシング・ゼロ》を発動。ジョニー、障壁をオールブレイクだ】
『任せな。引き金は二度引かねぇ───』
ジョニーが二丁拳銃を構え、狙いを定める。標的は全てのシールドと……残る5体全てのクリーチャー!
『──────一発が全てだ!』
放たれた弾丸がまず2体を貫き、同時に背後のファイアウォールを打ち砕く。さらに、弾丸は止まらない。
『!!?!?』
跳弾し跳ね返って来た弾丸が電脳空間内を飛び回り、残る3体と全てのファイアウォールを貫いた。そして、その弾丸は最後に──────空間に孔を開け、何処かへと飛んで行く。
* * *
『よーしよし、随分逃げ回ったがこれでトドメだぜ……!』
どこかの部屋。件のチーターは現実世界でモニターと向き合っていた。
『こいつの力があれば俺は無敵のゲーマーだぜ、ハハハハハ……!』
取り付いたクリーチャーの力でデータを改変、違法改造によって得たアドバンテージによりランクマを荒らし続けていた男。だが突然、彼のPCがフリーズした。
『はぁ!?何だってんだ一体──────』
高価なハイスペックPCがそう簡単に止まるはずは無い。一体何故、と思った瞬間に。
PCの画面から、
『──────は?』
理解する前に、彼は頭を撃ち抜かれ──────憑りついていたサイバー・ウイルスが消し飛んだ。
床に倒れ気絶した彼が気付かぬうちに、PCは再度動き出し、ゲーム画面にメッセージが表示される。
【アカウントがロックされました】
【今後一切のアクセスを規制します】
彼がプレイしていた他のゲームが、そして、PCゲームの配信プラットフォームのページが勝手に起動し、同じメッセージを表示して行く。
斯くして、この男はゲーマーとして、再起不能に近い状態に陥ったのであった。
* * *
『……相手のキャラが消えた。終わったみたい』
「やった!先輩が勝ったんやね!」
並んで作業していたサキトと∞にしのぶが後ろから抱き着く。しかし、サキトの方は腑に落ちない表情をしていた。
「どげんしたと先輩?」
「いや、最終的に決着を付けたのは俺とドギラゴンではなくてな……何か聞く前にあちらはさっさと撤収したんで、何が何だかさっぱりだ」
「援軍が来たのか?」
「ああ。それも、有名なクリーチャーを2体も引き連れて」
『しのぶの通報でやってきたDGAの人かな』
ジョニーとジョラゴンを送り込んで来た何者か。恐らくはDGAの者だろうが、ジョニーへの指示しか言葉を発しなかったため、詳細が殆ど分からぬままだ。
『とりあえず、さっきのメッセージと何か関係はあるはず。現在のトップランカーが、DGA所属の真のデュエリスト?』
「かもしれん。それなら……契約したクリーチャーしか電脳世界には送り込めないはず、2体と契約している?そんな事が可能なのか?」
考えれば考える程謎が出て来る。首を捻った所で……外から夕暮れを知らせる鐘の音が聞こえて来る。
「……そういやあ、もうこげん時間!」
『日が暮れる前に帰らないと危ないね』
「……色々考えるのは明日以降にしよう。モルトはすまないが、家の守りを頼んでも構わないか?俺は2人を家まで送りに行かないと」
「あ、ああ分かった。任せてくれ」
明日はゲーム部の活動は無し。放課後にモルトを連れてDGA本部へ赴くついでに……色々と聞き出す事となるだろう。
電脳世界に入り込んでの戦闘は、概ねロックマンエグゼみたいな雰囲気を想像していただければ。同じコロコロ連載作品で相互コラボの実績もある、デュエマと縁深い作品でありますな。
……フォルテの性能はもう少しどうにかならんかったのかと思いますが。
そして、当人の顔出しはまだ先になりますが……ジョニーとジョラゴンの契約者が、DGAに加入しております!無色のジョーカーズ使い登場により、真の意味で全文明の使い手が出て来たと言ってよいでしょう。
ハーレム的展開によってお相手を増やすのは、皆さんアリですか?なしですか?
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ハーレム上等!バッチ来い!
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ハーレムNG!一途な方がいい!