──────気付けば、闇の中にいた。
手足の感覚が溶けて消えてゆくような感覚を覚えるが、痛みや苦しみは無く。意識がそのまま溶けだしてしまいそうな心地よさすら感じていた。
「……っ、いかんな。このまま寝たら本当に無になりそうだ」
井星リュウは、無の安寧に身を任せてしまわないよう、思考を明瞭にするべく集中した。それにより、不死の炎が無になりかけた手足を補うような形を取ってゆく。
そこに、何者かの気配が現れ、声をかけて来た。
『……誰?』
「……俺は井星リュウと言う。人間の世界からやって来た、闇文明のデュエルマスターだ」
『人間……クリーチャーじゃない、知らない生物。それが、ボクに何の用なの?』
「お前の力を求めて来た。超獣世界と人間世界、双方の為に」
何かが身じろぎするような気配がした後、気配の主は再び口を開く。
『……出してあげるから、帰ってよ。ボクはキミの要求に沿えるようなドラゴンじゃない』
「……思いの外話が通じそうな奴だな。交渉決裂にしても問答無用で消しに来ると思っていたが」
『…………ボクにはね、こうして生まれ直す前の記憶があるんだ』
「ほう?……ジョニーとジョギラゴンとの戦いの記憶か」
『ああ、彼らはそんな名前だったね……なんでそれを?』
「俺達の世界には、超獣世界の歴史が概ね伝わっている。その中にはお前と、お前と戦った者達の記録もある」
ヴォルジャアク曰く、こちらの超獣世界の歴史にはデュエルマスターがいなかったとされているが……それでも歴史の大筋は変わらず、王来MAX篇までのストーリーをこの超獣世界は辿っているはずだ。零龍の言葉は、それを裏付けている。
『彼らとの戦いで、最後にボクは命を得た。そして、そのせいでやられる瞬間に思ったんだ。死にたくない、消えたくない……って』
「それは生きているなら当然の事だ」
『それだよ。前のボクは、それを知るまでに……同じ思いを多くの生き物にさせて来たんだ。それをわかってしまったから、ボクはもうここから出るつもりはないよ』
「……本気でそう思っているのか?」
『ここはボクの卵の中で、ある意味でボクの心の中。ボクの心を見たければ見ると良いよ』
その言葉に従い、リュウは零龍の意志を覗き込む。確かに彼の言葉に偽りは無く、かつての行いを悔いている意思が伝わって来た。
「成程。存外まともというか、かつては無垢故の残酷さがあったようだが……今は生を知ったが故に大人しくなったという所か」
『もういいかな?それじゃあ……』
「悪いが、お前には目覚めて貰わなくては困る。いざという時のため、お前の力が俺には必要だ」
『……なぜ、ボクの力が欲しいの?』
リュウの意志を真っすぐに見て来る零龍を、彼もまた真っすぐに見つめ返す。そして、自らの意志をはっきりと示した。
「お前は本能のままに多くの物を無にして来た事を罪と感じ悔いているようだが……この世には、自らの意志で他者を害し踏み躙るような連中もいる。それを葬る事が今お前に出来る事だ」
『何でそんな事を……』
「働けるものは死んでいても使う、それが闇文明使いの気質というものだ。俺はお前の働きに、抑止力としての存在に期待している」
『……キミは、クリーチャー使いが荒そうだね』
「自覚している…………俺に力を貸すならば、お前に世界を見せてやる。ここにいるだけでは見れない多くの物をな。だから……俺と契約しろ、零龍」
──────ドキンダムや、零龍といった災厄となり得るクリーチャーの力を人間が借りるためには、契約が必要となる。そのように考えたリュウは、多重契約の概要を聞いた時、すぐさま行動を決意した。
危険な力であるからこそ、所在を知り制御する必要がある。デュエルマスター達の中で、それが可能となるのは──────零龍と縁が深いクリーチャーを使役する自分だけであろうからだ。
「俺の目はお前の目。俺の耳はお前の耳。俺の舌はお前の舌となり、超獣世界と人間世界、2つの世界の様々な物を見て感じさせてやる…………俺と共に来い、零龍」
『…………本当に、変わった生き物だよ、キミは。なら──────』
闇の底に、光が瞬いた。
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* * *
『ええい、ちょこまかと!』
『くそっ!旦那、まだかい…………!』
闇の卵へと触れたリュウが引きずり込まれるように消えた後、ダビッドアネキはデモニオの軍団相手に孤軍奮闘していた。
鬼とはいえこの空間に来ていた者の大半は彼女より力は劣り、速度を活かして囲まれないよう立ち回りながら多くのデモニオを葬って来た。
しかし、流石に限界が近い。残る6体の鬼に追い詰められつつあった。腕が鎌のようになった鬼の刃が腕を掠める。
『ぐ、ぁあっ!?』
『随分と粘ったが、これで終わりだぁ!』
アシュラ天狗の刃が彼女へ迫る。しかしそこに、紫闇の炎が浴びせ掛けられた。
『ぬぅうっ!?』
「すまんな、待たせた」
『旦那!無事だったかい!』
闇の卵の中から、リュウが帰還する。そしてその背後で、卵が大きく膨れ上がった。
『馬鹿な、奴の中から帰還するとは………ええい、やってしまえい!』
「《「修羅」の鬼 アシュラ天狗》《アンヤク夜叉》《オオガマ童子》《オオダテ入道》《オタケビ変怪》《ルピア炎鬼》の6体か。ここから先は俺が相手になってやる」
リュウがカードを構え、シールドが展開される。そして更に…………5枚のカードが彼の背後に浮かんだ。
「──────これより、再誕の儀を始める。覚悟して貰おう」
『っ!?……こ、コケ脅しだ!行けぇ!』
「行くぞ──────零誕の、デュエルだ」
* * *
「俺のターン、《堕魔 ジグス★ガルビ》をマナとし、《堕魔 ザンバリー》を1マナで召喚。登場時、手札から1枚捨てる。《卍 デ・スザーク 卍》を墓地へ」
『防御役を用意したか!構わぬ、畳みかけろォ!!』
アシュラ天狗が自ら先陣を切り、シールドへ迫る。リュウは……あえてそれをそのまま受けた。
「……よし、運が良いようだな。シールドトリガー、ダブル発動だ。まずは《
『ぅおおおぉぉ!?』
「更に、ツインパクト呪文……《「すべて見えているぞ!」》を発動。このターンお前達は1度しか攻撃出来ない」
『何ぃっ!?』
ガ・リュザークが一瞬姿を現し、闇の炎を放って敵の群れを包み込む。それは炎の壁となり、デモニオ達の動きを縛った!
『おのれ、しかし時間を稼いだところで多勢に無勢よ!』
「かもしれんな。しかし、こちらも良い状況の手札だ……ドロー。《堕呪 ゴンパドゥ》をマナとし、2体目のザンバリーを召喚する。登場時能力で手札の《堕呪 バレッドゥ》を捨て……同時に、墓地の《卍 デ・スザーク 卍》の無月の門が発動する」
『おおっ!旦那の相棒が早速来るんだね!』
「場のザンバリー2体と、墓地の魔道具呪文ボックドゥとバレッドゥにより無月の門を開く。現れよ、無月の魔凰《卍 デ・スザーク 卍》!」
『キィィィィイィイッ!!』
4つの魔道具が描いた陣から、デ・スザークが姿を現す!
「ここで、デ・スザークが墓地から降臨した事により……1つ目の儀式が完成する。《復活の儀》を《滅亡の起源 零無》にリンクし、山札の上から2枚を墓地に……ふむ、ジグス★ガルビと《死神覇王 ブラック
『ピィィィイイィィイィ!?』
鬼と化したルピアが闇の炎に巻かれ燃え尽きた。圧倒的なプレッシャーを放つデ・スザークを前に鬼達は冷や汗をかく。
そして同時に、リュウの背後に浮かぶ闇の卵に罅が入る。儀式が進む度に、卵の罅は広がってゆく。
「場に出たターンに攻撃は出来ん、これでターンを終了する……が、ここで俺の手札が0枚であるため、2つ目の儀式が完成する。《手札の儀》を零無にリンクさせ、
『くっ……頭数を増やしたところで!我らの力に平伏せ!!』
その時、虚空から更なる鬼達が姿を現した。この宙域のあの空間点に、鬼の歴史に繋がる時空間の歪みが存在するようだ。
「成程、そこがお前達の通って来た道か……悪いが封じさせて貰うぞ」
『抜かせ!この数の前には……!』
「援軍が来たタイミングが悪かったな」
デ・スザークが炎を放ち、炎の壁に鬼の援軍たちが阻まれる。デ・スザークの能力……無月の門によって降臨したデ・スザークの下にカードが4枚以上ある場合、相手のクリーチャーはタップして場に出る。これにより、1ターンは確実に行動不能となる!
『小賢しいっ!動けるもので総攻撃よ!』
身動きが効く4体の中から、オタケビ変怪が1枚のシールドを割り、リュウの手元にカードが1枚渡る。トリガーではない!
『きぃぃいぇぇぇええっ!!』
「ち、シールドチェック……来たか!残る2枚もトリガーだ、再びボックドゥ!そして、ツインパクト呪文《堕呪 バケドゥ》!ボックドゥでアシュラ天狗の行動を縛り、アンヤク夜叉を送還。更にバケドゥでコスト5以下のオオガマ童子を送還!」
『防ぎきっただと……っ!?』
『けれど、旦那の盾は……!』
シールドは全て砕け、正に首の皮一枚。次のターンに勝負を決めなければ、リュウの命は無いだろう。
「ドロー……心配するなダビッドアネキ、もう既に……勝負はついている」
『何を戯言を!』
「戯言かはすぐに分かる。《堕∞魔 ヴォゲンム》をマナとし、3体目のザンバリーを召喚し……墓地から《
『また墓地から……!』
「そして、デ・スザークが……援軍として戻って来たオオダテ入道を攻撃、破壊する」
デ・スザークが炎の槍と化し、オオダテ入道を焼き尽くした。しかし、リュウの攻撃はこれ以上は続くことは無い。
『だが、これで終わりだ!貴様のクリーチャーは最早動けまい!』
「ああ、故に──────俺の勝ちだ」
『……なに?』
「ターン終了時、墓地から──────《死神覇王 ブラックXENARCH》の能力が発動する。俺の場のタップしているクリーチャー、ドゥザイコGR、ザンバリー、デ・スザークを破壊して墓地から蘇る!」
『オォォォオオオォオッ!』
彼のデッキでは唯一のデ・スザークと魔道具に関わりの無いクリーチャー、暗黒の主ブラックXENARCHが地の底から現れる。強力なクリーチャーではあるが、この場を制圧する程ではない……しかし、真の滅びはここから始まる。
「場のクリーチャーが3体破壊された事により、《破壊の儀》を零無にリンク。墓地からザンバリーを回収する。そして、墓地の枚数が《堕魔 ザンバリー》2枚《堕魔 ジグス★ガルビ》《卍 デ・スザーク 卍》《堕呪 ボックドゥ》2枚《堕呪 バレッドゥ》《卍月 ガ・リュザーク 卍/「すべて見えているぞ!」》の8枚となり……《墓地の儀》を零無にリンクし、相手のクリーチャー1体のパワーを3000低下。オタケビ変怪のパワーを0にして破壊……さあ、滅びの時だ」
『っ、5枚の札が!?』
全ての儀は完遂された。目覚めの時、来たれり。繋がった5枚の札が反転し……ついに、その姿を現す!
「──────零龍、
闇の卵が弾け飛び、中から白い巨大な龍が姿を現す。これぞ、かつて超獣世界に危機を齎した無の存在、厄災のドラゴン──────《
『お、おおぉぉ……っ!馬鹿な……!』
「零龍の卍誕時、相手のクリーチャー全てのパワーを……0にする」
『こいつらを、消し去れば良いんだね?』
「ああ、頼む──────消え去れ、悪鬼共」
『ぎゃぁああぁああああ!!』
零龍の力の前に、デモニオ達は抵抗も出来ず身体が消滅してゆく。リュウの前に、最早敵は存在しなかった。
「消滅、完了だ。零龍、初陣ご苦労だった」
『うん。これからよろしく、リュウ』
言葉を交わすと、零龍は再び卵へと戻ってゆく。そして、リュウの手にカードとなって収まった。
『旦那……とんでもないね。あんな奴を味方につけちまうなんて』
「聞き分けの良い奴で本当に助かった。これでDGAに良い報告が出来そうだ……後は時空間の歪みを正せば、今回の目的は全て果たせる」
『終わったら帰って美味い物でも食べに行くかい?』
「……激辛はお前だけにしてくれよ」
『あ、あたしだってちゃんとあの1件は反省してるよ!』
デュエマフォン・アプリを作動させ、超次元ホールの生成機能を反転使用することで時空の歪みを正し、経路を塞ぐ。これで一旦は、デモニオ達の進軍は防げるはずだ。
「これで終わりだ。さあ、帰るとするぞ」
『ああ!』
斯くして、DGAの下に新たなる力が加わった。いずれ来るであろう戦いに備え、デュエルマスター達は各々の力を研ぎ澄ませて行くのであった。
というわけで、零龍と新たに契約を交わし、リュウは新たな力を手にする事となりました。
とはいえ対クリーチャー戦にて零龍を卍誕させるのは容易ではないため、文字通り最後の切り札となるでしょう。普段はバウンスとデ・スザークによる破壊を主に使うのは変わり無く、ブラックZENARCHもそう簡単には出ないため時間稼ぎと防護が更に重要となるはず。
……そして作中8月にZENARCHさん殿堂入りするので、ドゥグラスやドゥポイズの投入数を増やす必要はありそうですなあ……。
ハーレム的展開によってお相手を増やすのは、皆さんアリですか?なしですか?
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ハーレム上等!バッチ来い!
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ハーレムNG!一途な方がいい!