ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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新学期が始まってから1週間。新入生達を加え、各部も本格的に動き出す。
そして、新たな事件もまた起ころうとしている。


Ep.6:ドラゴン娘と新体制!

『今年度の新入生たちをこうして迎え入れる事が出来て、嬉しく思う』

 

──────2025年4月14日。

新学期、そして入学式から1週間。桜龍高校の各部活は、仮入部期間を経て新たな部員を迎え入れていた。

サキトの属するゲーム部も例外ではなく、今期から部長に任命された∞が入部してきた1年生達に挨拶をしていた。

 

『皆、各々の技術を磨いて活躍して欲しい……以上』

「いやいやいや以上じゃなくて!?もっと具体的なやる事の説明とかあるだろう帝王坂さん!」

『先輩、お願いします』

「初っ端から俺に投げんでいただきたい!?」

 

……部長として部の代表に選ばれたとはいえ、彼女の基本口下手な所は相変わらずである。実務に関わる事の指導も必要という事で、今年の前半期はサキトが引き続き副部長を務め、補佐役を務める事となっていた。次期副部長を任せられる部員の選定と引継ぎもしなくてはならず、今年は色々とやる事が多くなりそうであった。

 

「あー、副部長で3年の護守サキトだ。仮入部時にも説明があったと思うが、うちの部は所謂e-sports部としての側面もある。各部員には得意なゲームをプレイして貰うだけではなく、可能であれば各々都内の大会やオンライン大会に参加して貰い、その戦績を報告して貰う事になる」

「やっぱり大会参加は必須ですかー?」

「あくまで可能であればだが、部員が大会に参加する事がゲーム部の活動実績となるからね。活動実績が無い部は予算を減らされたり最悪廃部になるので、こうした活動は今後も引き継いで続けて欲しい」

 

学校から予算を貰い活動する以上、こうした活動実績の報告、提出は必須となる。ただゲームで遊んでいるだけではゲーム部は立ち行かないのである。

 

「副部長さん、個人的な質問なのですがー」

「はいはい、どんな質問かな」

「副部長さんはカードゲームとかが主戦場な人ですよね?なぜこの部に入ったんですか?」

「あー、年末のあれとか見てた子か。……実は俺が中学の頃には『アナログゲーム部』が存在してたんだよ」

 

かつて桜龍高校には「アナログゲーム部」が存在していた。カードゲーム・TRPG・ボードゲーム等を扱う部活として活動していたのだが……。

 

「俺が入学する1年前に部員不足で廃部となって……残った生徒は備品と一緒にこっちのゲーム部に吸収合併されてしまってなー……ははは……」

『……ご愁傷様、先輩』

 

遠くを見つめ渇いた笑いを漏らすサキトに、∞が慰めるように声をかけた。中学時代にはそちらに入りたいと思っていたようだが、残念ながらそれは叶わなかったのであった。

 

「ま、まあ、使う機会は激減しているが、やりたいという新入生がいればボドゲやTRPGも付き合える部員はいるし、カードゲームの対戦も可能だ。自分に合ったゲームを楽しんで欲しい」

『はーい』

 

 

* * *

 

 

ゲーム部以外の部活も、2年生に進級した生徒達を中心として新体制に移りつつあった。特に運動部、アオハル組のドーラ、しのぶ、ジュラ子が所属する空手部、水泳部、テニス部は彼女らが2年生に上がり主力となった事で、益々活気づいている。

同様に剣道部も、1年時代からエース格であり実家が道場を開いている蟠龍トウリが指導する側に回り、今後の躍進が期待されていた。

文化部は、Jack-Potの所属する軽音部が特に多くの部員を獲得している。美術部もマロンが去年美術展で賞を取った事で一躍有名になり、盛り上がりを見せていた。

 

『しのぶも次期部長に任命されそうだから、個人だけじゃなく部全体の事を見るよう指導されてるみたい』

「うん、俺の方にもそんな事を言っていたよ。お陰でゲーム部の方に顔を出すのは難しくなりそうだって」

『そうなんだ……』

「寂しいなら寂しいと言ってやったら喜ぶと思うけれど」

『…………大丈夫』

「本当かねえ……」

 

無口無表情な彼女が心なしか寂しそうに見える。それが分かるようになったのも、部活で1年間共に過ごして来た賜物であろうか。

 

「あ、あの!」

「ん?どうしたー新入生」

「部長さんって、あの『エンペラー』様ですよね!?」

『その呼び方は恥ずかしいからやめて』

「あー、帝王坂さんのハンドルネームだったか」

 

帝王坂∞は、FPSの世界大会で優勝歴もある実力者である。彼女のハンドルネームである「emperor」を知らないゲーマーは居ないとも言われる程だ。

 

「ぜひ、対戦してください!お願いします!」

『いいけど……格闘系?落ちモノ系?』

「格ゲーで!」

「新人がやる気ありそうで何よりだよ」

「護守副部長!」

「あん、今度はこっちか。どうしたー?」

 

今度は新入部員の一人がサキトの方に話しかけて来る。手には……デッキケース!

 

「デュエマの対戦お願いできますか!?」

「おお、そっちに興味持って来てくれたのもいたか!構わんが、オリジナルか?アドバンスか?」

「オリジナルでお願いします!」

「よーし、では3本勝負、先攻はそちらに譲ろう、かかって来るがいい!」

「おお……副部長のテンションが上がっている……」

「本人がデュエマに興味ある人間を呼び込む広告塔みたいになってるね……」

 

12日に発売されたばかりの新しい「いきなりつよいデッキ」の存在もあり、新規のプレイヤーがこうして増えた事はサキトにとっても喜ばしい事であった。

とはいえ、先手のアドバンテージは与えるが……本気で相手をするのが礼儀というものだ。受け札自体は少ないデッキであるため、まあまあいい勝負にはなるだろう。

 

 

 

『K.O!!』

「うわーっ!!」

 

「2体目のガイアッシュ・カイザーでダイレクトアタック!」

「うわぁあぁ!!」

 

 

 

そうしてひとまずの最終戦績は、∞は全勝、サキトは2勝1敗となったのであった。「力の王道」はやはり、3ターン目にアポロヌス・ドラゲリオンが走って来ると中々に対処が難しい。500円にしては完成度が高い構築済みデッキと言えるだろう。

 

「ふぅ、とりあえずはこんな所か。そのデッキを改造するなら、《未来設計図》を《エボリューション・エッグ》に入れ替えるとより安定するぞ。シールドに埋まってさえいなければ、デッキからほぼ確実にアポロヌスを引っ張って来れるからな」

「アドバイスありがとうございます!」

「後は2ターンキルを狙う場合、《龍装者バルチュリス》を火文明カードのどれかと入れ替えると良いかな。レッドゾーンとレッドゾーンFで2ターン目に仕掛ける時に手札に居れば、2度目の攻撃時に手札から出してダイレクトまで持って行ける。こちらは何度か構築済みで再録もされてて安いから入手もしやすいはずだ」

 

試合の後は、分かりやすい構築の改善点を推してゆく。初心者は丁寧に沼に沈めねばならない、この後カードショップへと誘う事も検討していた。

そんなタイミングで、上の階から多くの生徒達の靴音が聞こえて来る。

 

「……あれ、上の階はもう上がりですか?」

「真上は軽音部……あー、クラスメイトが言ってたな。Jack-Potが今日は少しばかり都心の方のライブハウスで演奏するとか」

「その人随分詳しいんですね?」

「ただの追っかけだよ。行き先は……新宿だったかな?」

 

 

* * *

 

 

「さあ、着いたわね!」

「こ、ここが新宿の老舗ライブハウス……!」

 

Jack-Potの面々はこの日、栗茶市から少々遠征して新宿のライブハウスへ足を運んでいた。半世紀近い歴史あるライブハウスでのライブイベント、そこに出演が叶ったのである。

 

「流石都心、人も一杯」

「ここで叩けるなんてワクワクするな!」

「ええ、私達のワールド・スパイラルで皆を包み込んであげるわよ!」

 

大きめの箱でライブが行えるという事で、彼女達は非常に気合が入っていた。そうして会場に入ろうとしたところで、入り口近くにいた赤いジャケットを着た男が声をかけて来た。

 

「イベント出演者の方ですね、少しチェックを……って、Jack-Potの皆さんじゃないですか」

「あら、貴方は……」

「あっ!この前助けてくれた、DGAの……陽野さん!」

「覚えていて下さって何よりです。皆さん今日はここでライブでしたか」

「なんだよー、観客として来てくれたんじゃないのかー?」

「残念ながら仕事中です。俺だって案件が無ければ客として来たかったですよ」

 

ライブハウスのスタッフと並んで出演者のチェックをしていたらしい、DGA新宿区実働部隊の一員、陽野テルタカ。彼が、というよりDGAがこのような活動をしているのは珍しい。

 

「近くで何かあったの?」

「ええ、まあ……元々都心付近はゾーンの出現率が妙に高くて普段から忙しいんですが、今回は別の物を追ってまして……ここ最近、新宿区各所のライブハウスで事件が起こってるんです」

「……穏やかじゃないね」

 

曰く、ライブイベントが終わった後、気付けばスタッフや観客が数人姿を消してしまう。そして、人気が消えた深夜に、ステージの上で昏睡状態になっているのが発見されるらしい。

被害者は若い女性ばかり。それ以外の共通点は無く、警察はライブ出演者を当たってみたものの犯人の尻尾を掴めずじまいということだった。

 

「それで、病院で治療を受けている被害者の方を調べたら……どうやらうちが担当するべき案件だと分かったようで、今日から各ライブハウスを見て回っている訳です」

「だ、大丈夫でしょうか……」

「クリーチャー相手であれば皆さんもいざという時は戦えるとは思いますが、お気を付けて。被害に遭った方も皆美人揃いでしたので」

「あら、ナンパでもするつもり?」

「いえいえ、客観的な事実を言ってるまでです。……それに、少々犯人には因縁があるかもしれない疑惑もありますので」

 

そう口にしたテルタカの目には、どこか燃えるような激情が浮かんでいた。

 

「とりあえず、私達も気を付けるわ。さあ皆、準備にかからないと!」

「陽野さんもどうか、気を付けて!」

「はい。皆さんのライブも無事成功するよう祈っています」

 

そうしてJack-Potの5人は楽屋側へ向かっていく。それを見送るテルタカのスマホが、メールの着信を知らせた。

 

「ん……頼んでたものが来たか。被害者の容態状況と、警察から提供された、各所の事件当日の出演名簿……と」

 

PDF方式で、事件が起こった会場と日付、そして出演者が纏められた資料だ。本来警察が外に出すような物ではないが、クリーチャー絡みの事件の場合、DGAスタッフの要請があれば提供される事もある。

 

「パっと見不審な点は無さそうなんだが……む?」

 

読み進めて行くと、妙に引っかかる感じがあった。再び最初に戻って出演者の一覧を読み返し……。

 

「出演者の被りは無いが……『Vengeance』、『Vertex』、『VESTA』、『Vanguard』……どの会場にも、事件が起こった日に……Vで始まるグループ名のバンドがいる?」

 

偶然かもしれないが、どこか彼の心に引っかかる。続いて被害者の容態の情報を見て行く。被害者は皆衰弱して昏睡状態。DGAの検査によれば、マナを吸い取られた状態にあるようだった。

 

「マナを吸われて衰弱……やっぱり関連性はありそうだ」

 

テルタカはDGA新宿区スタッフへと連絡を取る。今日イベントを行う各ライブハウスの、出演者名簿を調べるためだ。

 

「ええ、はい。とりあえず、頭文字Vのバンドに注意してください。はい……失礼します」

 

自身も今いるライブハウスの、今日の出演者達を見ながら……念のためスタッフの応援を要請していた。

 

「こちらが当たりじゃなきゃ、それに越したことは無いが……」

 

そこには、Jack-Potの一つ前の出演者として……『Vertigo』という名が記されていた。




次回、テルタカとJack-Pot編!犯人の正体やいかに!?

少々用事のため、投稿ペースがいつもより遅れるかもしれませぬ。ご了承ください。
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