囚われたアイラの運命は。そして、キング・ロマノフの目的とは。
『名乗る前から我が名を知るとはな、褒めて遣わそう』
巨大なる魔神、《煉獄大帝 キング・ロマノフ》は不敵に嗤う。サキト達にとって、キング・ロマノフは動向が不明なままの点が多い強敵だ。
「貴様、アイラを放せ!」
『フン、用が済めば解放はしてやろう。その後はこの者次第だがな』
「何だかアイラさん、苦しそうに見えるばい!」
「キング・ロマノフ、貴方の仕業ですか?」
『違うな。この者が苦しむのはこの空間によるものよ』
自由になっている左右の腕で天と地を指す。これまでに現れたクリーチャー達よりも、この魔神はゾーンに関する知識を持っているというのか。
『この空間、「ロストフィールド」内において、多くのクリーチャー共は飢餓状態に陥り、その苦しみにより正気を失うのだ。マナが枯渇した、死んだ大地であるが故にな』
「……ゾーン内部のクリーチャーが凶暴なのは、そのせいであると言うのですわね」
「モルトが苦しんでいるのもそのせいか……ならお前もこの空間に留まるのは苦しいんじゃないか?」
『ハハハ!我の手にはこれがある!』
キング・ロマノフは、手にした銃を彼らに見せつける。彼の操る伝説の魔銃、「マッド・ロック・チェスター」……その薬室と思しき部分には、五色が絡み合う宝珠が埋め込まれ光を発している。
「あれは……
「な、何なんそれ!?」
「かつて超獣世界の……デュエル・マスターズの歴史を滅茶苦茶にしようとした悪しき存在ですわ。歴史に名高いクリーチャー達を融合させて『ディスペクター』なる手駒に変え、新たな世界を生み出し現世界を滅ぼそうとした者……」
王来篇の黒幕、五大龍神を復活させそれらを一つにし、最強のディスペクター《Volzeos-Balamord》によって新世界を生み出さんとした者。それが、ドラゴン・オーブ……《龍魂珠》であった。
「だが、最終的に龍魂珠は破壊された、と聞いているが……!」
「ああ。しかし、破壊され煉獄へ送り込まれた龍魂珠を手にした奴は、その力を魔銃マッド・ロック・チェスターに組み込み、クリーチャーを合体させる力を利用して3つに分割された自身の肉体を再び一つに融合させた。それが……あの『キング・ロマノフ』の姿という訳だ!」
『ほう、この世界には超獣世界の過去から未来までの歴史が伝わっているようだな。当然、我に関する事も』
「当然ですわ。……歴史を破壊せんとした悪が、今はディスペクター製造のために力を利用されるのみとは、哀れなものですね」
『それのみならず、こうして我にマナを供給し続ける道具でもある。全く良い拾い物よ』
龍魂珠は自在にディスペクターを生み出す力の源としてか、莫大なマナを生み出す事が出来た。それを、キング・ロマノフは自らの魔銃に組み込み自らの糧としているのだ。
『さて、では用を済ませてやろうではないか』
キング・ロマノフが掌の上に倒れるアイラへと手を翳す。すると、アイラの身体から赤い光の粒が放出され、1点に集まってゆく。同時に、アイラが苦痛に呻き始めた!
「ぁあ、ぅ……っああ゛あぁああぁあぁっ!!」
「アイラっ!」
「拙いですね。あれは、アイラ様からマナを抜き取っているようですわ!」
「チィッ!彼女を今すぐ放せ!」
モルトが鎧を纏いキング・ロマノフへと突っ込み、サキトもドギラゴン閃の鎧を纏いそれに続く。それに対してキング・ロマノフは、残る腕で魔銃──────『マッド・ゲンド・チェスター』を構え引き金を引き、彼の周囲に複数の龍魂珠が浮かび上がる。
『我が新たなる魔弾を受けるがいい!』
『「ぬああぁぁあっ!?」』
龍魂珠から放たれた光線に弾かれ、モルトとサキトが叩き落される。それでも再度挑みかかり……同時にサキトは、しのぶへと指示を出す。
『しのぶ!アレを使ってくれ!』
「さっき渡されたアレやね!?分かったばい!」
懐からケースを取り出し、そこから先程サキトに渡されたカードを出して読み込む。アイラを救出するための、逆転の一手となるクリーチャーの力をその身に纏わせる。そのクリーチャーの能力が、出来る事が、瞬時に彼女の頭に浮かんで来る。
『Add new creature power.』
瞬間、しのぶの姿が──────消えた。
『しつこい連中よ──────むっ!?』
2人を迎撃するキング・ロマノフの掌の上から、アイラの姿が搔き消える。そして同時に、少し離れた空中に、しのぶの姿が現れた。アイラを抱える彼女の姿は、背に天使の翼が生え、豪奢な祭服と司教冠で飾り立てられていた。
「先輩!アイラしゃんな助けたばい!」
『よぉしナイスだしのぶ!』
『何をした?』
「渡しておいたお守りの力を使って貰ったのさ。革命の仲間の力、時を操る龍の能力──────ミラダンテの力を!」
サキトが家を出る際に渡した……《時の法皇 ミラダンテⅫ》のカード。しのぶがドラゴニックエンチャンターで使える可能性のあったカードの中では最強クラスの者と言って良いだろう。その力で時を止めた彼女は、アイラを悠々と奪い返す事に成功したのだ。
「うぐ、ぁあ゛あぁぁっ!!」
「せ、先輩!アイラさんが暴れて危なか!」
『分かった、モルト!一旦後退だ!』
「く……っ!」
奪還は果たしたため、マッド・ゲンド・チェスターの射程圏から後退する。見ればアイラの状態はかなり危険になりつつあった。
「マナを抜かれた事で飢餓状態が悪化しているようです、このままでは正気を保てず……」
「くそっ、どうする!」
『決まってる、輸血ならぬ輸魔力ってところか……っ!』
サキトが自身のデッキからアイラのカードを取り出し、自身のマナを注入する。自身が使役していないクリーチャーでも、こうすれば…………!
『頼むぞ!』
彼女の腹部にカードを押し当てる。するとそこから、サキトの火のマナが体内へと注がれていく。徐々にその容体は落ち着き、大人しくなってゆく。
「これで治ったと?」
『あくまで応急処置だ、このゾーン……奴はロストフィールドと呼んでいたな、ここを出て再補給の必要がある』
「すまん、助かった……!」
『フン、そちらのアテは外れたか……まあ良かろう、役目は果たしたのだからな』
キング・ロマノフが接近してくる。その前に、ユウキが立ち塞がった。
『ほう、その気配……魔光の騎士と縁ある者か』
「それが何か?」
『超獣を使役する者の力、興味がある──────我が軍門に降れ。さすれば貴様の望みを叶えてやるぞ?』
「何を!?」
『魔光の一族も今や我が手の内。なれば貴様らも我が下へ下るのは当然の──────』
──────銃声が、鳴り響く。
ユウキの背後にネロ・グリフィスII世が現れ、キング・ロマノフの顔面に魔弾を撃ち込んでいた。
『妄言はそこまでにして貰いましょう──────我が一族の魂を弄び、ディスペクターへと貶め辱めたその罪、贖って貰いますわ』
「わたくしの騎士の魂、貴方に預ける気はございません──────覚悟してくださいまし」
そのまま、ネロ・グリフィスはキング・ロマノフへと魔弾を撃ち込み続ける。不愉快そうに目を細めたキング・ロマノフは腕で魔弾を掃うと、掌の上に浮かべたアイラのマナに手を加え始めた。
『つまらぬな……ならば貴様らに相応しい相手を用意してくれよう』
火のマナが分割され、マッド・ゲンド・チェスターから供給された新たなマナと交じり合い……アイラにそっくりな仮面の女剣士が生み出される。その数、8体!
「アイラだと!?」
「いえ、あれはディスペクターが傀儡として使役する模造品、ディスタスですわね」
『《勇騎 バクアイラ-1》か!』
「うちらに、アイラさんのそっくりさんと戦わせる気と!?」
『いや、ディスタス自体の戦闘力はそれほど無い。だから奴が次にやるとすれば……』
『さあ、その命を捧げよ。我が騎士団を呼ぶ力と成せ』
キング・ロマノフの命を受け──────生み出されたバクアイラ達が、自らの喉を刃で斬り裂いた。
「な──────っ」
8人の鮮血が噴き出る。それらが大地に滴ると、大きな魔法陣が浮かび上がり──────そこから新たに、2体のクリーチャーが現れた。
『……ディスタスには、『ササゲール』という能力を持つ者がいる。文字通り自らの命を捧げ、ディスペクター召喚のコストを軽減する事が出来る』
「アイラ様を捕らえたのは、この場でディスタスを調達するのに好機であったためですわね……目の前で贄に捧げるとは、なんと悪趣味極まりない」
「う……っ!ひどか!」
『さあ、我に歯向かう彼奴等を滅ぼせ。邪光と邪天の主よ!』
『『大帝の御心のままに』』
姿を現したのは、真邪眼騎士団に取り込まれた魔光と天雷の騎士達を統べる、2体のディスペクター……《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフI世》《邪天魔縛 ヘロマノフ=VENII世》!
「護守様、わたくし達は邪光の騎士を相手に致しますわ。わたくしの騎士の縁者があのような悍ましい姿にされているのは、見るに堪えません」
『了解だ。しのぶ、彼女を援護してやってくれ。ミラダンテの能力が使えるうちは奴に有利に戦えるはずだ』
「分かったばい!先輩はあっちを倒せると?」
『ああ、モルトと共に奴を叩き潰す!』
ネロマノフ=ルドルフI世とヘロマノフ=VENII世が、それぞれの魔銃を構え迫り来る。立ち向かわんとするサキト達だが──────モルトが地に膝を付く。
「く、っ……俺もマナが足りん……っ!」
『迂闊なり!』
『ちぃっ!』
へロマノフの手にする、槍状の魔銃から放たれた魔弾をサキト達は二手に分かれて躱す。モルトを抱えたサキトは、障害物に身を隠しながら彼に呼びかけた。
『モルト、大丈夫か!』
「すまん、このままでは俺が保ちそうにないぞ……っ!」
『……一か八かだが、モルトが全力で戦えるかもしれない手がある』
「何を、する気だ?」
サキトはモルトに手を伸ばす。彼には一つの確信があった。
『モルト、俺と共に戦って欲しい。今だけでなく、これからも』
「何……?」
『それが出来る筈だ。かつてドギラゴンと共に、革命の戦いを生き抜いた君とであれば──────ドギラゴンが俺達の縁を繋いでくれる!』
力強く言い放つサキト。その言葉を、モルトも……信じる。
「分かった。それで奴らを倒せるなら……っ!」
『ああ、倒せる!俺達の力で!』
モルトがサキトの手を取り、立ち上がる。サキトのデュエマフォンから、光が溢れて文字を浮かび上がらせてゆく。
“
“
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新たな契約は、ここに結ばれた。2人のマナが繋がり、共に力が沸き上がる。モルトの身が炎に包まれ──────赤と蒼の新たな鎧にその姿を変えた!
『行くぞ、モルト!』
「応ッ!!」
サキトの新たな契約相手は──────『龍魂の剣士』グレンモルト!
4人の力で、邪眼騎士団へと立ち向かう!