ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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作中時期は5月に突入、ゴールデンウィークが始まります。
世間は休みでも、DGAの面々が休める時であるかどうかは……分からない。


Ep.15:Jack-Potと温泉旅行

「んん~~~っ!来たわね、箱根!」

 

──────2025年5月3日。

ゴールデンウィーク本番となるこの日、Jack-Potの面々は5人揃って旅行に来ていた。やって来たのは、関東の代表的な観光地の1つ……箱根湯本である。

新宿から特急に乗りおよそ1時間半、森に囲まれた温泉郷は、観光客で賑わっていた。

 

「えっと、ホテルへの送迎バスが来るんだっけ?」

「そうそう、でもよく高級なホテルの予約を取れたわね?高かったでしょう?」

「バイトの収入と、ちょっとした臨時収入があったから今回は奮発してみたわ!」

「たまにはこういうのもアリかな」

「お、バスがそろそろ来るみたいだぜ」

 

彼女らが泊まる先は、半世紀以上の歴史を持つ老舗のリゾートホテル。5人で泊まれる一般客室で、2泊3日の日程だ。

 

「それにしても、臨時収入って?」

「最初はお断りしたんだけどね、最近知り合った方がスポンサーみたいになってくださったのよ」

「……いかがわしい事とかじゃ」

「無い無い!そういうのじゃないから安心して良いわよ!」

「ほ、ほんとだよな?」

 

良からぬ想像が頭に過ぎる栄久と増樹であったが、ザーナはあっさりそれを否定する。彼女は確かにそういう事をするタイプには見えないが……。

 

「あ、来たよ!早く乗らないと!」

「そうね。荷物は皆大丈夫ね?それじゃあ、行きましょう!」

 

話している間に、ホテルからの送迎用マイクロバスがやって来た。他の観光客と共に彼女らは乗り込み、一路ホテルへと向かう。

 

 

* * *

 

 

「おぉ~……立派なホテルだね……」

「もうチェックインできる時間だっけ?」

「そうね、15時を過ぎてるからチェックインしてしまいましょう」

 

ホテルへ到着した彼女達は、その佇まいに感嘆する。今回彼女達が泊まる部屋ではないが、高級な客室には専用の浴場や露天風呂があったりと、温泉地の高級ホテルとしてこの宿はかなりの有名どころである。

フロントで鍵を受け取った彼女らは、予約した部屋へと向かう。目的の階はホテルの中層、和風の一般客室である。

 

「どんな部屋かな、楽しみだねお姉ちゃん!」

「そうね、老舗だけあって雰囲気も良さそうだわ」

「オレは後で売店もチェックしておくかなー。お土産もジャンジャン買って行きたいし!」

 

エレベーターの中で談笑する彼女達。目的階へ着き、部屋の扉を開けると……。

 

「うん、期待通りの良い部屋ね!」

「広いね、5人でも余裕で布団を敷けそう」

「大画面のテレビにWi-Fiもあって、部屋でも退屈しなさそうだな!」

「貴重品用の金庫もしっかりしてそう。これなら部屋を空けても安心ね」

 

広々とした和室に、5人は早速魅了された。窓から見える景色も良く、日常を離れた空間に浸れるであろう3日間が俄然楽しみになっていた。

 

「ええと、晩御飯は19時から下の階のレストランだって。バイキング方式みたいだね」

「時間あるし、明るいうちに露天風呂でも行って見ようぜ?」

「良いわね!お茶菓子をいただいたら早速行きましょう!」

「湯あたり地獄にならないよう、適度な入り方にしましょうね」

 

このホテルの温泉は、本棟の大浴場や露天風呂に加えて別棟にも温泉施設がある。別棟は日帰り客用にも開放されており、ホテルの宿泊客は無料で利用する事も可能だ。

 

「まずは景色も良さそうな別棟の方行って見る?」

「良いですね!それじゃあ行きましょう!」

「飲み物とか買うかもしれないから、少額だけ入れたお財布を持って行きましょうか」

「早くホカホカに温まりたいぜ!」

 

部屋に用意された浴衣とアメニティ、バスタオルを持って彼女達は別棟へと向かう。上階へ上がってから連絡口を通り、一度外を通って別棟へ行く形式であった。

 

「いらっしゃいませ。ご宿泊のお客様ですね?」

「履物はこちらのロッカーにお願いします」

「はぁーい」

 

此方の施設も中々に大きく、座敷や湯上りに寛げる茶屋、漫画本コーナーなども存在している。5人は何はともあれ女湯へと向かい、脱衣所で各々の服を脱いでゆく。

 

「こちらも鍵付きのロッカーになっていてありがたいわね」

「お財布や携帯もこれなら心配ないね!」

「それじゃあお先~。おお~~!」

 

脱衣所の扉を開けた先はまさに、湯の楽園であった。屋内大浴場に、屋外に配置された5つの湯。更にサウナも存在する、至れり尽くせりの温泉だ。

 

「山の麓っていう立地もあって、いい雰囲気」

「秋には紅葉が綺麗でしょうね……それじゃ、身体を洗ってから入りましょう!」

 

まずは屋内大浴場の所で、シャワーを浴びながらシャンプーとリンス、ボディソープで身体を綺麗に洗ってゆく。それを終えれば、いよいよ待望の温泉だ。

 

「あー……気持ちいい」

「ほんとに気持ちいいわ……良いインスピレーションも得られそうね!」

「それもいいけど、とりあえずはリラックスしようぜ~~……」

 

豊富な雨量と地下のマグマだまりに支えられた箱根の温泉は、肌に優しい泉質で老若男女分け隔てなく楽しめる。GW故に今の時期は客が多く、彼女達が入っている今も先客が何名もいた。

 

「あら、あなたたちはお友達と旅行?」

「ひゃ!?は、はい、同じ高校で……」

「こんにちはー。私達、5人で旅行に来たんです。4人は3年だから、部活を引退する前の思い出作りですね」

 

先客達の中でもどこか目立つ、茶髪の女性に水晶は話しかけられた。しゅうらも水晶の隣に腰掛け、湯に浸かりながら談笑する。

 

「いいなぁ~、あたしは半分仕事でここに来てるのよ。終わったらそのまま観光を楽しんできて良いって言われてるけど、ちゃんと仕事片付くかなぁ」

「お仕事ですか?会社の出張とか……?」

「んーまあ、そんな感じ。もう1人連れの子がいるんだけど、彼はまじめでねー」

「男の人と2人で?」

「そうそう、年下の男の子。あ、別に変な関係じゃないよ?」

 

活発そうな印象の彼女は、仕事でこのホテルに来ていると言う。出張でこのホテルに宿泊というのであれば、経費をなかなか豪快に使っているように思われるが……。

 

「んー、まああなたたち、女の子ばっかりの旅なら夜は気を付けなきゃだめよ?」

「それは勿論!変な人にはちゃんと気を付けますから!」

「それもそうなんだけど、それだけじゃないって言うか……」

「え?な、何があるんですか?」

「えっとねえ……あんまり大っぴらにいう事じゃないんだけど……」

 

 

 

「最近ね、『出る』って噂なのよ、このホテル。だから夜中はあんまり出歩かない方がオススメかな?」

 

 

 

その言葉に、水晶としゅうらはしばし固まった。女性の方はそれを気にせず、手をひらひらと振りながらサウナの方へと行ってしまった。

 

 

* * *

 

 

「……そんなことを、さっきあった人が言ってて」

「で、出るって何だよ?」

「……幽霊?」

「ゴーストが出るのかしら!それは面白そうね!」

「いやいやいやいや、面白くないって!?」

 

老舗のリゾートホテルが、まさかの心霊スポットという可能性が出て来たのであった。単なる噂なら良いが……。

 

「ゆ、幽霊なんていないよね?」

「いえ、でも……クリーチャーがいるなら幽霊くらいいてもおかしく、ない……?」

「ひぃ!」

「大丈夫よ、幽霊のクリーチャーだっているわ!」

「何が大丈夫なのそれ」

 

実際、霊やらゾンビやらのクリーチャーは存在する。ゴーストにリビングデッド、それに「不死」の侵略者達等……侵略者については、彼女らも去年の文化祭前の時期に出くわしてはいる。

 

「だって、クリーチャーならワタシ達でも倒せるかもしれないじゃない?普通の幽霊でなければ大丈夫よ!」

「た、確かにクリーチャーだとすればまだマシなのか……?」

「と、とにかく部屋に戻ってネットで噂を調べてみようよ」

「そうね……噂に過ぎないならそれで良いんだけど」

 

そうして彼女達は露天風呂を後にする。浴衣に着替え、脱衣所を出てすぐの休憩所に……1人の少年が座りながら飲み物を口にしていた。

 

「相模野さん遅いな……ん?」

「えっ?」

 

深緋色の短髪に金の瞳、彼女達はその顔に見覚えがあり……先月半ばにも、彼に助けられたばかり。忘れる筈も無い。

 

「陽野さん!?」

「Jack-Potの皆さん!?何故ここに!?」

「ゴールデンウィークの旅行よ!そちらこそどうして?」

 

DGAのデュエルマスター、陽野テルタカがそこにいた。彼もここで彼女らに会うのは予想外らしく、思わず椅子から立ち上がっていた。

 

「ええとその、ちょっとした仕事の都合と言いますか……しかし皆さんよくここのホテルに来ましたね」

「ええ、実は()()()()()()()にお世話になって」

「え?」

「──────えっ?」

 

ザーナから思わぬワードが出て来た事でテルタカが固まる。何故そこで父が?

 

「え、もしかしてさっき言ってた、知り合った方って」

「ええ、陽野さんのお父さんよ?」

 

ぼとりと、テルタカが手にしていたペットボトルを取り落とす。中身が床に零れるが彼にとってはそれどころではない。

 

「と、父さん……母さんを亡くしたからって……まさか……パ○活を……!?」

「ちょ、違う違う違う!そんなんじゃないって!?なあザーナ!?」

「そ、そうよ安心して!誤解を招いてごめんなさい!」

 

愕然とした表情で父親のとんでもない疑惑を口にする。流石に彼の家庭環境を破壊しそうな誤解を与えかけた事には、ザーナも慌てた様子で訂正した。

 

「実は、先月の事件の後貴方のお父さんがこちらに来て、謝礼をワタシに渡して来たの!」

「しゃ、謝礼?」

「奥さんを亡くしてから塞ぎ込んでいた息子を元気にしてくれたのは、ワタシ達だって言って……最初はお断りしたけれど……最終的にワタシ達のスポンサーに付く事になってしまったわ」

「そ、そうなんですか……父さん、何してんだよ……」

 

息子を想ってくれるのはありがたいのだが、やる事が何ともオーバーだ。頭を抱えていると、脱衣所から出て来た女性が彼に話しかけた。

 

「お待たせ陽野くん……あれ?お知り合い?」

「あ、相模野さん」

「あっ、さっきの!」

「えぇ~……世間は狭いなぁ」

 

先程温泉で水晶達と話していた女性。この様子を見るに、彼女の言っていた連れがテルタカであろう。即ち──────。

 

「あー、それじゃあ自己紹介ね。相模野ヨウコよ!よろしくね?」

 

彼女もDGAが擁する真のデュエリスト──────自然文明のデュエルマスター、相模野ヨウコであった。




というわけで、ヨウコの紹介篇として始まります、箱根旅行篇!
彼らがやって来た以上、ただの旅行では終わらない!
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