果たしてテルタカとヨウコがここへ来た目的とは。
「あー、そっかなるほど!あなたたちが前に本部から通達されてた子達ね!」
「そういえば、護守くんが前にDGAに私達の事を知らせてくれていたわね」
Jack-Potの5人とデュエルマスター2人は、湯上りの身体を休ませ寛ぎながら互いの身の上を話していた。無論、他の客もいるため一部はぼかしながら、であるが。
「相模野さんは普段は何を?」
「DGAの仕事以外は、ゴルファーをやっているわ。プロ試験は受けてたけど、2次を通過して最終テスト前にDGAにスカウトされちゃってねえ。こっちが忙しくなっちゃった」
「ああそれでセミプロと……」
「まあデュエルマスターになったから、今までよりは融通利かせてくれるといいんだけどねー?今年は正式にプロを目指すわよ!」
本来の意味でのセミプロはゴルフには存在しないが、彼女はプロ試験を突破寸前までは至っており、国内でのツアー競技にも出場し結果を残している。プロ級のアマチュアということで、セミプロを名乗っているというわけだ。
「まあ、下手するとDGAの御給金の方がツアーの賞金より高い事もあるんだけどね?アハハ」
「それどっちが本業だか分かったもんじゃねえな……」
「それでお2人はその……何でこのホテルに?」
「休暇だったら良かったんだけどねー」
「まあ、仕事ですよ。ここまで出張するとは思ってませんでしたが」
当然彼らが赴くところには、クリーチャー絡みの事件がある。しかし彼女達には1つの疑問があった。
「前に護守くんから聞いたけど、DGAの実働部隊って全国各自治体に3人は配置されるんじゃなかったかしら?」
「ああ、建前上はそうなってはいるんですけどね……」
「真のデュエリスト候補は希少なうえ、実際の所、クリーチャーの出現って大都市近辺にだいぶ集中してるんだよねえ。それもあって、都市部から遠い地域は実働部隊が常勤していなかったりするんだよ」
「この箱根に、才能が眠っている可能性は無くもないですが……近辺にカードショップが無くて、そもそもデュエマに触れていないのでこちらから検知出来ないっていう場合もあり得ます」
彼らの言う通り、真のデュエリストたる才能の持ち主は稀なもの。観光地ならばまだ良いが、過疎地域などでは人材発掘は困難であろう。
「そういうわけで、手が空いていたあたし達に声がかかったってわけ。デュエルマスター同士の連帯感とかを高めるための人選っていう節もあるかなー?」
「なるほど……」
「まあ流石に部屋は別々ですがね。男女なわけですし」
「そうだ、あとであなたたちの部屋に行ってもいいかしら?色々話を聞きたいわ!」
「ん……どうする?」
「そうね、それなら折角だし、これからワタシ達の部屋でお手合わせも願おうかしら!」
ザーナは今回の旅行に、なんとなくでデュエマのデッキを持ち込んでいた。テルタカとヨウコ、どちらにしてもデュエルマスターと対戦できるのであれば良い機会であると彼女は考えていた。
「ザーナ、デュエマのカード持ってきたのかよ?」
「ええ。お陰で高め合う
「ええと、俺は女性ばかりの部屋にお邪魔するのはやめておいた方が良いですかね」
「いえ、むしろ居てくれた方が安心かもです!ね、お姉ちゃん?」
「えっ!?えっええ、そうね、そうかも……」
「は、はあ。それではお邪魔させていただきます」
チェックイン後荷物を部屋に置いてすぐ温泉に向かったため、夕食の時間である19時まではまだまだ時間的余裕がある。彼女達はすぐに2人を部屋へと招く事にした。
* * *
「へぇー、和室はこんな感じなのね」
「そっちは別の様式なの?」
「ええ、俺と相模野さんはそれぞれ洋室を1人ずつで使っています」
10畳の和室は実に広々と感じられる。テルタカ達が泊まる部屋は額面の広さは同等でも、ツインベッドが常に置かれているため和室の方がより広く感じられた。
「それじゃあ机の上を片付けて……さあ、始めましょう!」
「ほんとに持って来てたのか……2人は仕事に必要だから分かるけど、ザーナは修学旅行の時みたいに打ち合わせてた訳でもないだろ?」
「人生にデュエルの時は突然訪れるわ。不意に来る運命の選択にいつでも対処できるようにしておかないと」
「デュエルかどうかはともかく、備えと心構えは大切かな?」
ザーナとヨウコが卓を挟んで対峙する。互いにデッキを置くと、デュエルの先攻を決める。
「それじゃあ先攻は譲るわね。どこからでもかかってらっしゃい!」
「ええ、それじゃあ胸をお借りするわ──────」
シールドを5枚配置し、手札を5枚引く。2人の女性デュエリストが激突する……!
「「デュエマ・スタート!!」」
* * *
「ワタシのターン!《ドンドン火噴くナウ》をマナゾーンに、ターンエンドよ!」
「それじゃああたしのターン、ドロー!まずは……うん、《
「む……【自然単ジャイアント】かしら」
ザーナはデッキのセオリーに忠実に、多色マナをチャージし今後の展開の基盤とする。対してヨウコは自然のマナを使い、1ターン目からクリーチャーを繰り出した。
「……陽野さん、相模野さんのデッキってどういうものなの?」
「共闘経験が無いので細かい構築までは分かりませんが……恐らく緑のカード、自然文明のみを使うデッキですね。『ジャイアント』と名の付く種族とマナ補充カードで内容を染め上げ、高コスト高パワーのクリーチャーを繰り出して戦うのが得意です」
「ザーナのデッキだと相性が悪いのか?ちょっと表情が固めだぜ」
「とこしえの超人の能力が不都合なのでしょう。あのクリーチャーは場にいる限り、相手が手札以外からクリーチャーを出そうとするとき代わりにマナゾーンへ送ります。例えば墓地からの蘇生であったり、デッキから直接クリーチャーを出すような能力を封じるわけですね」
「なるほど、墓地から出せないのは厳しいかもか」
所謂『メタクリーチャー』であるとこしえの超人、これをヨウコは普段からデッキに投入している。対人において動きを牽制する用途もあるが、彼女の主力戦法的に1コストで場にクリーチャーを用意出来る事も採用要因の1つであろう。
「ワタシのターン、ドロー!……そうね、ここは《漢気の2号 ボスカツ》をマナゾーンに、ターンエンドよ」
「あたしのターン、ドロー!《トラップの
ヨウコはマナを加速し、着々と攻撃準備を整える。ザーナが動き出せるのは、次のターンから──────。
「ワタシのターン、ドロー!……来たわね、《蒼神龍アナザー・ワールド》をマナゾーンへ、3マナで《天災 デドダム》を召喚よ!」
「うわーデドダムか、強いよねえそのカード」
「登場時能力発動よ!デッキの上から3枚を見て1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンに置き、残る1枚を墓地に!……良いわね、このカードを加えて、《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー/お清めシャラップ》をマナゾーンへ。そして《聖魔連結王 ドルファディロム》を墓地へ送るわ!」
「厄介なカードが見えたなあ……あたしのターン、ドロー!《
「むう……っ」
ヨウコの手札は1枚となったが、とこしえの超人が増えた事でザーナの動きを縛る力が強くなる。更にアシスター・サイネリアはジャイアントの召喚コストを1度軽減する事が出来る。
「両方を倒さなければ墓地からの展開は不可能ね。ワタシのターン、ドロー!《龍罠 エスカルデン/マクスカルゴ・トラップ》をマナに送り……呪文《ドラゴンズ・サイン》!さあ来て、メインボーカル《龍風混成 ザーディクリカ》!」
「来たね、5色ディスペクターデッキのエンジン!」
「EXライフでシールドを追加するわ。そしてザーディクリカの登場時能力で、コスト7以下の呪文を手札か墓地からコスト無しで唱えるわ!ここは……《ドンドン火噴くナウ》!デッキの上から3枚を見て1枚を手札に、1枚をマナに、そして残りを墓地へ!そして墓地へ送ったカードのコスト以下のコストを持つ相手クリーチャーを破壊するわ!」
デッキから3枚を手に取る。これで最低でも1体はとこしえの超人を処理できる!
「このカードを手札に加えて、2枚目のドルファディロムをマナへ!そして《ニコル・ボーラス》を墓地へ送って、とこしえの超人を破壊よ!」
「おっけー、それでターンは終わりかな?」
「いいえ……ここは今の内にもう1体も倒すわ。デドダムでシールドを攻撃!そしてここで……
「むっ!」
デドダムが進化する。かつてギュウジン丸が生み出そうとした、究極の侵略者へと!
「《
「残るはサイネリアだけだね。それじゃあシールドチェック……大当たり!」
「っ!」
「2枚のトリガー発動!まずはフェアリー・ライフでマナを増加!《チアスカーレット・アカネ》がマナに!そして……輝跡の大地!コスト8以下の進化ではないジャイアントをマナゾーンからバトルゾーンへ!さあ出番だよ、あたしの相棒──────」
マナへと投入されたカードの中から、ヨウコの最も信頼するクリーチャーが登場する。バクテラスと同じ、ゴッド・オブ・アビスで描かれる超獣世界における、文明のリーダー!
「《
「まずいわね……ここで出て来られるなんて」
「あのカード、強いのか!?」
「相模野さんのデッキのエースですね。パワー25000のワールド・ブレイカーであり、出たタイミングから次の自分のターン始めまで相手の攻撃を抑制する能力に、ブロックされてもシールドを砕く能力、そして除去を喰らってもマナから4枚墓地へ送る事で場に残る耐性を持つ強力なドラゴンです」
「凄く盛ってるわね!?」
「ザーナのターンで出て来たのがまだ救いかな?次のターンの初めに攻撃させない能力は切れるみたいだし」
ゴルファンタジスタの登場は大きくザーナにプレッシャーを与える。更に、それだけでは終わらない。
「輝跡の大地の更なる効果!出したジャイアントがクリーチャーであれば、相手のクリーチャーを1体選び出したクリーチャーとバトルさせる!ゴルファンタジスタでザーディクリカを攻撃!」
「EXライフで耐えるわ……墓地へ落ちたのは《天命龍装 ホーリーエンド/ナウ・オア・ネバー》ね。これでターン終了!」
「それじゃああたしのターン!ドロー!マナチャージはせず……2枚目のアカネを召喚!」
「っ!」
チアリーダーのような服装をした金髪の妖精、チアスカーレット・アカネ。ジャイアントデッキにおける、強力な展開要員だ。
「これは……ピンチね」
「アカネのマッハファイター能力により、ザーディクリカを攻撃!この時、場の他のジャイアント……アシスター・サイネリアをマナに送る事でジャイアント・メクレイド8を発動!」
「メクレイドって何ですか?」
「条件を満たすと発動する能力ですね。デッキの上から3枚を見て、その中から発動したメクレイドに書かれた数字以下の、指定された種族を持つカードをコスト無しで使えます。この場合、コスト8以下のジャイアントを使う事が出来る……!」
「……よし!ここは彼ね!《
2体目のアカネが場に現れる。これで、ヨウコは更にジャイアントを展開する事が出来る!
「ザーディクリカは破壊されてしまうわ……」
「今場に出たアカネもマッハファイター能力により、デッドダムドを攻撃!この際……革命チェンジ!コスト5以上のジャイアント、アカネと交代で《
「ゴルファンタジスタが3形態揃い踏み!?」
「ここでアカネの攻撃時能力も発動、攻撃済みのアカネをマナへ送ってもう一度ジャイアント・メクレイド8!……では、とこしえの超人が更に登場!」
「っ、この布陣は強力ね……!」
「デッドダムドをパワーで1000上回る銀河竜が撃破、ターン終了!」
一気にザーナの場が空になる。シールドを攻撃しなかったのは、トリガーや手札を与える事を警戒してか。
「ワタシのターン、ドロー!《ロスト・Re:ソウル》をマナゾーンに送り《フェアリー・ミラクル》!デッキから1枚マナチャージ、更に5文明がマナに揃っていることでもう1枚チャージ!アナザー・ワールドとボスカツがマナへ!」
「よし、それじゃあ行くわね……あたしのターン、ここで超重竜ゴルファンタジスタの
「ま、マナの数が膨れ上がりました!」
「そして本来のドロー!……これで決めさせて貰うわ!最後のとこしえの超人を召喚!そして手札に戻って来ていたアカネも召喚!……ゴルファンタジスタで、シールドをワールド・ブレイク!」
ゴルファンタジスタの一撃で、ザーナのシールドが全て砕け散る。シールドトリガーは……!
「シールドトリガーは3枚!ブレイン・スラッシュにより3枚ドローしてドルファディロムを墓地へ!そしてドンドン火噴くナウ、1枚手札に加え、デドダムをマナに送り、フェアリー・ミラクルを墓地へ送ってとこしえを破壊よ!そして最後に、ドラゴンズ・サイン!ザーディクリカを場に出すわ!EXライフでシールドが増え、更にザーディクリカの登場時能力で墓地のドンドン火噴くナウを再使用!手札に1枚加えザーディクリカをマナへ、ドラゴンズ・サインを捨ててアカネを破壊!」
「けれど、ザーディクリカは銀河竜の能力により、このターン攻撃もブロックも出来ないわ!」
「ええ……参ったわね」
「銀河竜ゴルファンタジスタでシールドをブレイク!」
「トリガー……無しね。残念ながら、ここまでみたい。デュエルマスターの実力、見せて貰ったわ!」
「超重竜ゴルファンタジスタで──────ダイレクトアタック!これでカップインよ!」
こうして、ここでの一戦はヨウコが制したのであった。
* * *
「はー、食べた食べた!」
「バイキング形式もたまには良いね」
デュエルを終えた後、しばし時間を潰した後に7人はホテル内のレストランで共に食事をした。食事は和洋様々な料理が並ぶバイキング、地元の食材を利用した料理なども多く並び目と舌を楽しませてくれた。
「お2人は先に行っちゃいましたね?」
「やっぱりホテル内を見て回るのかしらね?……しゅうら?どうしたの?」
「へ?あ、ううん何でもないわ……そうだ、ちょっと1階の売店を見て来て良いかしら?」
「えっと、それじゃ一緒に行こうか?」
「ううん、大丈夫よ。皆は先に部屋に戻っていて?」
しゅうらは1人エレベーターで降りて行く。彼女はつい、色々と考えてしまっていた。
「まさか、旅行先で陽野さんと遭うなんて……」
先月の一件以来、しゅうらは度々彼の事が頭に浮かぶようになっていた。2度も彼に助けられ、更に自身の歌を好きだと言われ……思い出すとどうにも落ち着かない気分になる。
「(別に、恋愛的な意味で好きだと言われたわけでもないのに……気持ちがこんなに浮き上がってしまうなんて)」
彼の抱く思いはファンとしてのものなのか、それとも別の意味合いがあるのか。流石に直接的に聞くというのも、これで他意が無かった場合こちらが恥ずかしくなる。
「はぁ……良い物があるか目星を付けたら、戻って早めに寝ましょうか……きゃっ!?」
急に、エレベーター内の照明が消える。スマホを取り出して助けを求めようかと思ったが、すぐに照明は復活した。
「もう、急にどうし──────」
明かりが点いた瞬間、彼女の前に……青白く光る何かと、黒い煙のような何かが、浮かんでいた。
「ひ、むぐ──────!?」
浮かぶ青白い炎のような半透明の何かが、しゅうらに絡み付き動きを封じる。黒い煙は青いマントのような布を操り、しゅうらの顔を覆って視界を遮り、呼吸を封じる。ドラゴンの力が発現していても、こうして身動きが取れなくなっては……。
「(た、助け──────)」
息苦しさに意識が遠くなり、水晶にメッセージを送ろうとしたままのスマホを取り落とし──────彼女の視界は、暗転した。
というわけで、ヨウコのデュエル回、そして何者かの襲撃発生。
しゅうらの運命やいかに!