天輪学園では入学式が行われていた。大体、入学式を迎える新入生というものは新しく始まる生活に多少の不安を覚えるものの、期待に胸を膨らませ、明るい気持ちを抱く者がほとんどだが……若干2名、死んだ魚の様な顔をするものが
1時間前
「サッカー部ないってどういうこと?」
迅が目を丸くしながら聞く
「そのまんまの意味よ。ほら、うちの学校のホームぺージ見てない」
里香は二人に天輪のホームぺージの部活動欄を見せた。
「野球部…テニス部…バスケ部……マジかよ、サッカー部のサの字もねぇ」
「まぁ、ちゃんと調べてない貴方達が悪いわね。」
落胆する二人に里香は淡々と言い放つ。
「だって生徒数が少ない小さな学校ならまだしもこんな大規模な学校にサッカー部がないとは」
「思わねぇよな……」
…………………
現在
「おい、どーすんだよ迅!すでに俺たちのサッカー人生破綻してんぞ!」
「そんなこと言ったって、ないんだからしょうがないだろ。」
入学式後、迅と烈火は里香と一緒に帰り道を歩いていた。
うなだれる二人に里香は何気なく言い放つ。
「でも、昔はあったらしいわよサッカー部。」
「昔?昔って何年前だよ」
烈火が里香に聞き返す
「10年前、天輪がこの校舎になる前」
「……」
迅は里香の言葉を聞いて、顎に指を当て空を向いた。
「10年前って俺ら3歳とかじゃねぇか。」
「でも成績は結構良かったみたいよ。フットボールフロンティア準優勝が最高成績。職員室の前の賞状置き場にあったわ」
「……」
「フットボールフロンティアって全国レベルじゃねぇーか!なんで廃部になってんだよ。」
「さぁ?私に聞かないでよ。」
二人は迅の様子に気づかず会話を続ける。
「……そうだよ!」
会話を黙って聞いていた迅が突然大きな声を上げる。
「どうしたよ迅。突然でかい声上げて。」
「ないなら作ればいいんだよ!」
「作る…?」
きょとんとした二人に迅は興奮気味に伝える。
「うん!1から作るんだよサッカー部!前にもあったなら出来ない話じゃないよね!」
「そんな簡単な話じゃ――」
里香は迅をなだめようとしたが里香の言葉に被せるように
「めちゃくちゃいいなそれ!」
烈火が迅を指差して言ってきた。
「そうだよ、なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだよ。作ればいいだよな!作れば!!」
「明日、先生に相談しに行こうよ!」
「おっしゃ!サッカー部が出来るならゆっくり帰ってる暇はねぇ練習だ!急いで帰るぞ迅!」
「うん!」
そういうと二人は里香をおいて猛ダッシュで帰っていった。
「ちょっと、そんな簡単な話じゃ…ってもう見えないし。」
「にしても、烈火がサッカーバカなのは知ってたけど迅ってあんなにサッカー好きだったけ?」
………
次の日の朝。烈火と迅は始業前に職員室を訪れサッカー部を作りたい旨を担任の女教師相沢に話していた。
「ウ~ン、立花くん、風祭くん気持ちは立派だけど今のままだと難しいかな」
相沢は苦笑いしながら二人に答える。
「えっ、どうしてですか?」
「部活動を作るのってね。いくか条件があるのちょっと待ってね…え~とはいこれ」
そういうと相沢は二人に部活設立の条件が書かれた紙を見せた。
部活動設立条件
・部員数5人以上
・顧問教師の確保
・活動場所の確保、許可
・活動目標の明記
「部員数5人…後3人足りねぇ」
「それに顧問の先生も見つけないと駄目ね。」
「でもやるしかないよね。サッカー部を作るためだから!」
迅の意気込みに相沢はふふっと笑い二人に紙を渡した。
「じゃあこれ部活動申請書。部員と顧問が集まったら持ってきてね。頑張って!」
「はい!ありがとうございます!」
二人は申請書を貰うと職員室を後にした。
廊下を歩いていると迅が呟く
「まずは部員集めからだよね。」
「まぁ、とりあえず部が認められる5人はソッコーで集めねぇとな」
迅は烈火と顔を見合わせ言う
「ねぇ烈火、俺一人だけ候補がいるんだけど…」
「あぁ、俺も同じこと考えてたあいつだろ!」
………
「あの~里香さん少しお願いがあるのですが……」
昼休み。迅と烈火は自分の机でサンドウィッチを食べてる里香の前に立った。
「何よ。改まって気持ち悪い」
「俺たちサッカー部を作ることにした!」
「知ってるわよ昨日聞いたもの、あれ冗談じゃなかったのね。」
「本気だよ!だからさ里香も入ってよ!サッカー部!」
「……そんなことだろうと思った」
「増渕って、サッカーやってただろ。頼むこの通り!」
烈火は両手を合わせ。里香に懇願する。
「まぁ、確かにサッカーはやってたけど…私、科学部に入る予定なの」
「そこをなんとか…部員の数が足りないんだよ。あと三人……いや里香がいないと始まらないんだ!」
「経験者の力がいるんだよ!頼む力を貸してくれ。マッドサイエンティスト!」
「……それ褒めてないでしょ」
里香はしばらく天井を見つめ考えているとはぁ~とため息をつき立ち上がった。
「分かったわよ。幼なじみのよしみで入ってあげる。実験なら別に部活に入らなくてもできるしね」
「ホントか!」
「えぇ、ただし勝てるチームにするわよ。弱いチームなんて要らないから」
「うん、もちろん!」
春の日差しが差し込む中、サッカー部三人目のメンバーが正式に決定した。