高次元の存在である⬛︎⬛︎が片手間に作った端末が僕だ。
本体は異空間でのほほんとしている。
僕を作った理由は、面白そうな世界の観測の為である。
平行世界の観測を趣味としている本体の僕だが、一度僕をその世界に派遣してから観測している。
別に何かしらの危険に備えてとかではない。
敵だとかそういう次元には生きていないのだ。
本体の僕は、やろうと思えば一瞬でその世界の事を理解する事が出来る。
しかし、それは面白い小説やゲームの全てが書かれた情報を受け取って一瞬で消費してしまうようなもので、つまらなく感じるらしい。
大事なのはワクワクする心という、高次元存在にあるまじき発言である。
まあ本体の僕にだって喜怒哀楽のようなものはあるからね。
主な観測場所は地球という惑星で、主な観測時期は地球の時間で言う21世紀前半である。
何故この場所、この時期なのかと言うと、あらゆる因果がそこで起きやすいかららしい。
本体の僕は因果律の操作もお遊びで行えるが、そんな事をしなくても良いほど強い因果が集まっているのが21世紀の地球という惑星のようだ。
時に勃発した核戦争で滅びたり、時に異世界からの侵略を受けたりと様々である。
とまあ説明はこれくらいにして、今回僕が派遣された世界について話そう。
─────
本体の僕から派遣された端末の僕は、東京都の渋谷区、それも一応人目につかないようにビルの隙間に降り立った。
「うおっ……」
だが、顕現した瞬間、頭の中に尋常ではない情報量が流れ込んできた。
常人どころかちょっと高位の存在でも危ういレベルのものだ。
というか、本体の僕にもちょっぴりダメージ入った。
本体の僕は死んでも死なないから特に意味は無いけどね。
これはあれか、情報災害ってやつだな。
時たま発生するのだ、この情報災害というのが。
人の物の認識を誤認させるものから、概念自体を生み出すものなど色々あるが、今回のものは無差別かつ殺意が高いタイプっぽい。
いやしかし、地上に顕現した時点で感染するタイプなんて滅多に無いぞ。
しかも本体の僕にまでダメージを入れるとは中々の強者である。
そういえば人の気配が先程から全く感じないのもこれのせいか。
「誰もいねえ」
少しばかり探索してみたが、結局誰一人として人を見かけなかった。
現在、スクランブル交差点のど真ん中に立っているが、寂しいもんだ。
そもそも死体すらない無いとはね。
まあ、先程から流れてくるこの情報量だと人を消滅させることも出来るのだろう。
恐らく、この世界で生きている人間はもういない。
「おえっ」
なんか先程よりも流し込まれる情報量が多くなったせいで気持ち悪くなった。
この世界に僕一人しかいないから集中しに来たのかな。
「 」
とりあえず移動しようと思ったのだが、こりゃダメかもしれんね。
どんどんどんどん情報量が多くなってる。
おお、ちょっとずつだが身体が削れてきてる。
ワンチャン過去最大級の情報災害かもしれん。
ま、このまま待ってやる義理も無い。
この情報災害に対応しようと思う。
どうやってかって?
話し合うんだよ。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
本体の僕との接続を少し深める。
こうすることによって端末が扱える力も少しは増すのだ。
「あー、やっぱ人いないなあ」
まずは一調べと地球を調査してみたのだが、この情報災害、やはりというか地球全体を覆って人類を抹消していた。
更に言うと、そもそも生き物自体が消滅してた。
おいおい何してんの。
そして情報災害の発生源は地球自身っぽい。
惑星が意志を持つとか結構なレアケースである。
更に調査範囲を広げると……
よし、それじゃあそろそろ話し合いに持ち込むとしましょうか。
手始めに、地球全体を覆っている情報災害をどんどん圧縮して、今僕がいるところに持っていきます。
圧縮しすぎて空間にヒビが入ったが修復しておいた。
これ放置してるとこの世界が次元の狭間に吸い込まれて消滅するのよね。
次に、端末を作ります。
まあ今は目に見えない力の塊だけど。
そしたら最後は、情報災害に人の定義を与えて話せるようにします。
するとあら不思議、虚無から少しずつ人の形が現れてくるではありませんか。
ほほう、肌も髪も何もかもが白い……うんマジで病的に白だし、幼女か?
しかも全裸。
情報災害は幼女だった。
まあ僕が無理やり人の形に押し込んだものだけどね。
でも形作ったのは彼女自身の形質だから、実質地球自身が生み出したこの情報災害は幼女だ。
「やあ、気分はどう?」
「……」
こちらを睨みつける真っ白全裸幼女。
殺意のこもった……というか現在進行形でえげつない情報量を送ってきてる。
圧縮したせいでより強いものになってるな。
こりゃちょっと高位の存在じゃくらい余裕で消滅しちゃうわ。
「おーい、気分はどうって聞いてるんだけど」
「……」
やはり無言のままこちらを睨みつける真っ白幼女。
流し込まれる情報量は増えていくばかりだ。
「それ、不快だから辞めて欲しいんだけど」
「嫌じゃ、死ね」
「……」
あまりに自然に暴言を吐かれたから、ちょっとビックリしちゃったじゃん。
「どうしてもやめてくれない?」
「うるさい、人類は嫌いじゃ。我にとって有害すぎる」
「本当に僕が人類に見えるの?」
「……」
ここまで攻撃しても効かない時点で人類じゃないって分かるっしょ。
しかしこの子はあれか、環境汚染が嫌でジェノサイドしちゃいましたって手合いかな。
環境汚染が嫌なので情報災害を生み出して皆殺しにしますってか。
この世界線の地球やべえわ。
本体の僕だってこんなことは……いや喧嘩売ってきた高位存在抹消したことあるわ。
「とにかくそれはやめ「死ね」……」
なるほどな。
もうあまりに話を聞かないので、僕も乱暴な手段に出るとしよう。
僕は手を幼女に振りかざした。
そこから不可視の攻撃が……とかではなく単にこれから何かアクションを起こしますよという記号的な意味。
本来こんなことをするまでもないが、まあ、お遊びみたいなもんだ。
最初は「……?」と変な奴を見るような目でこちらを見ていたが、次第に顔が歪んでいき、絶望を感じたような表情に変化した。
「あっ!? な、何を……っ!?」
何をしたかって? 君から情報災害の力を根こそぎ奪い取っただけだよ。
「えいっ」
「いっ……」
ちょっと小突くだけで尻もちをつく情報災害。
今の彼女は見た目通りの真っ白で、全裸で、幼いただのこどもである。
奪うまではすんごい強かったりしたのかもしれないけど、今はもう知る由もない。
っていうか結構勢い良く尻もちついたね。
地面コンクリートだし素肌だしで結構痛そうだ。
「ひっ……よ、よさぬか!」
真っ白幼女の身体をひょいっと持ち上げてから後ろ側を見てみると、真っ白なお尻が少し赤く腫れていた。
白さのせいで赤いところが目立ちやすいね。
さて、この幼女にはお仕置が必要だ。
良い感じにお尻をこちらに突き出すような姿勢に持ち上げたら……
「えいっ、反省しろ!」
「あがッ!?」
僕は勢い良く真っ白幼女のお尻を叩いた。
おしりペンペンである。
静寂が支配していたスクランブル交差点に快音が響き渡った。
ついでに存在を抹消させる力も入れてる。
「まずは、人類を滅ぼした分!」
「づっ、ァぁ!」
声にもならない声がよく聞こえてくる。
「僕に殺意マシマシの攻撃を向けてきた分!」
「ひぃっ!」
叩く度に真っ白幼女の存在度が薄まっていくのが分かる。
「んーと……とりあえず服を着ていなくて破廉恥な分!」
「おぇっ……」
その後も難癖をつけてケツを引っぱたいていく。
綺麗だった白いお尻は今や真っ赤っかである。
そして存在度はペラペラ。
一応完全に抹消しない程度には抑えておいた。
「ふぅ……このくらいでいいか」
「……っ」
「ん?」
おしりペンペンを終えて、真っ白幼女を地面に降ろすと、様子が少しおかしい。
「ヒグッ……うぅ……」
身体が小刻みにブルブルと震えており、声もか細くなっている。
これはまさか……
「あ、ああぁぁぁ゛あああ!ぁあ゛ああ!」
案の定真っ白幼女は大声で泣き始めた。
目元からは大量の涙が溢れ出ており、地面のコンクリートにシミが出来るレベル。
「あぁぁ゛ああ!」
うーん、力の全てを奪い取って無力化した後、おしりペンペンとかいう屈辱的な事したからかなあ、存在が消えかける感じの。
数度のおしりペンペンを経て、全生物をジェノサイドした情報災害は、今や見るも無惨な号泣幼女に成り果ててしまった。
まあ、地球の生物をダメにしてしまったのだから、完全に抹消されなかっただけ有難いと思った方がいい。
ちなみに存在の完全消滅はかなりキツイ。
本体の僕も非常に遠い昔、高位存在と争った時に何度か経験しているが、グロッキーな気分になると言っていた。
「うっ……あぁ…ぁ……」
ところでこの真っ白幼女を完全抹消しなかったのは理由がある。
それは。
この真っ白幼女、便利じゃね?
ここまでの情報災害の力は稀なものだ。
シンプルに力の桁が凄いので、他にも色んなことに応用出来るだろう。
例えば特定の動作の単語を人類から消し去るとかね。
するとどうなるか。
その人類は消えた単語の動作が出来なくなるのだ。
実際とある情報災害によって伊る、という単語が消えてとんでもない事になった世界線の地球を見た事がある。
まあこれくらいなら僕でもやれるんだけど、一々僕が手間をかけるのは面倒だ。
今回ここまで僕が力を出したのは特例である。
人類が完全消滅とか見たことが無かったからね。
それとあれだ、ワクワクする心に欠けるってやつだ。
実際全能すぎると面白いという感覚が消滅しちゃうからなあ。
だから、この幼女を仲間にすることで観測する時のお供として連れて行って、色々と有効活用出来ると思うんだよね。
僕は存在抹消の力を全身に纏いながらとうとう蹲って泣く真っ白全裸幼女に近づいた。
こっちにおしり向けてるから真っ赤っかなのがよく見える。
「っ!?」
流石に接近する僕に気付いたようで、素早くこちらに振り向いたかと思うと、今度は尻もちをつきながら後ずさった。
今の僕は近づいただけであらゆる生物の本能が逃げ出すレベルの何かを放っているからね。
「君はまだ生きていたい?」
「あ、ああ、あ、当たり前じゃ……!」
声は相当震えているが、まだ返事はできるっぽいな。
「僕の仲間になってくれるなら力とか存在度とかその他諸々を返すつもりだよ」
「……仲間?」
力という単語を耳にした瞬間、食いついてきた真っ白幼女。
自分を支えていたものはそりゃ返して欲しいよな。
「どう? 仲間にならない?」
「そ、そなたに何のメリットが?」
「んー、便利なところ」
「……」
やっぱさ、旅には仲間がいた方がいいじゃん。
一人だけじゃつまらないし、人が増えれば賑やかになって本体の僕もより楽しめる。
真っ白幼女は少し考え込んだ後、捻り出すように返事をした。
「ぬ、ぬぐぅぅぅ……わ、分かった……その、な、仲間になるのじゃ」
「その返事を待ってたよ」
「あっ……」
良い返事を聞けたので、力とかは全て返してやった。
「あ、ああ! も、戻ってきた! 我の力が……! 存在が!」
良かったねえ情報災害ちゃん。
さて、それじゃあ。
「よし、この世界は消そう」
「えっ…?」