ホシノに殺された俺。どうやら先生の弟だったようなので、とりあえず黒服とお茶会してみた   作:ラトソル

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ミカ虐めたいなぁ。
アビドス3章が始まったらホシノボッコボコにしてあげるからね♡


一人じゃなかったらパーティと呼称しても良いのではないでしょうか

『全ての証拠が揃って、私が裁かれる(その)時が来たら────全部話そうと思う』

 

 あの日。

 ホシノから全てを打ち明けられた日。

 

 前を向くことを許されない少女は、俯きながら罪を告白してきた。

 

 それは、二年ほど前に起きてしまった悲劇。

 元凶たる少女は、処刑を待ち望む罪人のように、首を晒して詳細を語る。

 

 人を殺してしまった少女。

 廻を殺した女。

 

 ホシノの話を静かに聞く私の感情は『先生』と『兄』とを激しく行き来していた。

 激情を抑え、最後まで話を聞き終え、最終的には一方に傾いた私の結論。

 

 ホシノを救いたい。

 

 どこまで行っても、私は『先生』なのだろう。

 

『きっと……みんなは、私を赦して……赦そうとしてくれる』

 

 それこそが、ホシノへの最大の罰になるのだと彼女は言う。

 

「次はもっといいゲームを作るぞ〜!!」

 

「「おー!!!」」

 

 アビドスを離れた私は新しい舞台へと足を踏み入れる。

 全く異なる環境、生徒、問題。それでも私のする事に変わりはない。

 

 生徒を守り、導く。

 

 それが私の……『先生』の務め。

 

 目の前にいる生徒を、まだ見ぬ生徒を平等に救う。

 それが私の責務。

 

 けれど、私の脳裏には常にホシノがいた。

 朝も、昼も、夜も。

 

『私を赦さないで、先生』

 

 懇願するような少女の姿を思い出す。私の弟を殺したのだと告げてきた罪人の姿が過ぎる。

 

 そうして、私の目を見た彼女は辛そうに目を閉じるのだ。求めていたものとは違うものが目の前にあったから、彼女は俯き身体を震わせる。

 

『私は君を救うよ』

 

 私がホシノに負の感情を向けることは、もう無いのだろう。

『先生』としての自分に天秤が傾いたからこその確信。

 

 何度も、何度も告げてきた『救う』という宣言。

 

 彼女の周りを絡みついていく問題は多い。

 

 目覚めないユメ、消えた廻の遺体。

 

 シャーレの先生としてどの区域に向かおうとも、私は四六時中そのことについて考え続けるんだ。

 決して解決することの出来ない問題を。私が解決するべき、しかし私が力になることの出来ない領分の話。

 

 彼女を救える人物は、私では無いのだろう。

 

 それはきっと、ユメか、廻か……。

 

 そうして、私は自身の行動の些細な穴に気がつくことは無いのだろう。

 

 何度も口にしてはそのために行動している、『救う』という原動力。

 ホシノを励まし、過去に囚われた彼女を解放してあげたいという一心で口にしたその宣言。

 

 赦さないでと口にした彼女に対して、私は何度も『救う』と宣言した。

 

 私の口から、『君を赦す』という言葉は、一度たりとも出てくることはなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

「ベアトリーチェおばさん♡お駄賃ちょーだい☆」

 

「死ね」

 

「お得意の敬語どこ??」

 

 はいどうも■■廻です。

 複眼の意味を履き違えたババァでお馴染みのベアトリーチェさんからゴミを見る目を向けられている現場からお届けしております。

 

 アリウス生徒全員から奇襲を受け、とりあえず無傷で制圧してから小一時間。

 全員を気絶させたために誰も起きる様子は見られず、俺は校舎内を改めて徘徊した。

 

 これからどれだけの期間かは分からないけれど生活することになる学校の位置の把握。ベアトリーチェババァの現在地を突き詰めて文句を言いに行くまでの時間を教室や訓練所の把握に充てた。

 

 そうして、辿り着いた食堂らしき空間と、大体の設備を見て回った俺の中に生まれた結論。

 

 生活できる空間じゃねぇ。

 

「何アレ?」

 

「栄養食ですが」

 

「うんうん、そうだね。ところで食事は?」

 

「栄養バーですが」

 

「食べ盛りの子供が栄養バー一本で満足できると思うなよババァが」

 

「食べられるだけいいでしょうに」

 

「更年期で脳みそ腐ってんのか毒蜘蛛ババァ」

 

 食堂はもう悲惨の一言。

 冷蔵庫? 使いもんにならんくらい壊れてましたよ。キッチン? 使えそうだったね。未だかつて無いほどの汚れだったけど。食材? 栄養食を食材と言っていいのであれば、少なかったね。つまりまともなものが無い。

 

 俺住み込みなんですけど? 帰ろうと思えば全力ダッシュで日帰りできそうだけどしんどいからどうせ寝泊まりするし。まともな食事なかったら発狂しそう。

 

「俺の飯は?」

 

「あなた毒とか効かない身体でしょう。雑草は豊富ですよ」

 

「ババァかつヴィーガンとか厄介すぎるだろうが」

 

 毒が効かないんじゃなくて意味が無いだけなんだよ。苦いし苦しいし普通に食いたくねぇわ毒なんか。

 

 気絶させた子達はとりあえず一箇所に纏めて寝かせている。その際に布団やクッションの類を探したけれど出てきたのはボロボロのただの布だけ。とりあえず冷えたらいけないから一人一人に布をかぶせてはいたけれど傍から見たら殺人現場でしか無かった。この学校は設備がクソなのである。

 

「戦闘訓練するぐらいなんだから強い生徒を育てようとしてるんでしょあんた。成長期の女の子にあのゴミカス設備とか成長出来るわけないでしょうが頭おかしいのか……ああ目しかないのか」

 

「ロイヤルブラッドが居れば十分。別に強い兵士を育てようという目的では無いので。あくまでも結果に至る手段なのですよ」

 

「何言ってるかわからん。金寄越せ」

 

「あなたの行動を縛らない代わりに、私は何もあなたに与えることはありません。欲しければ自分で調達してきなさい」

 

 そう言って部屋に閉じこもった長身ババァ。やはりヴィーガンは話が通用しないのだ(個人の見解です)。

 

 さてさて、面倒なことになった。何日間ここにいなければならないのかは分からないけれど、毎食栄養バー生活なんて発狂する自信しかない。というか、三食食べられるかも怪しい量だ。ここの子達はどんな生活をしているのか。

 

【やばたにえんナウ。至急食料くれないとピエん。パオンパオン】

 

【振り込んでおくので今日のところはご自身で買いに行ってください】

 

 困った時は黒服さん。やっぱり目の数が多ければいいってもんじゃないんだね。

 流石に即日発送は間に合わないために、今日のところは俺が街へと走って買い物をしなければならなくなった。ん〜、キッツ。

 

 ベアトリーチェさんが入っていった部屋のドアノブを破壊してから外へと走った。

 

 そして、夕食の時間。

 

「カレーパーティィィィィ!!!! イエェェエエエエイッッッッ!!!」

 

 お通夜のように静まり返ったアリウス生達の地獄のような空気を裂くように、俺は一人鍋の前に立ってそう叫んだ。

 

 カレーいいよね。食材少なくて済むし。いや、ゴロゴロ入ってる方がいいよ? けど食材購入から運ぶのまで全部俺一人でやらないといけなかったから面倒じゃん? 別にここにいる子達全員分作ろうとか思ってないし、普通に俺用だし。けどさ、空気がおもすぎるんだよね。不味くなるでしょうが。

 

 いつの間にやら起きていた子達は俺に対して良くは無い印象を抱きながら視線を向け、そしてそれぞれが着席すると栄養バーと、どこにあったのか分からない液体を皿に盛って黙々と食べ始めた。うわ不味そう。いただきますも無いのかよ。

 

 一人用と言ったけれど、十人前は軽く超える程の量を作ったカレー。

 蓋の隙間から漏れ出てくる匂いは食堂を包み込み、時たま視線をいただくがそれまで。俺の事警戒し過ぎでは? 食べたかったらあげるよ? 俺の分は残すけど。

 

 ボロボロの皿は使いたくなかったから紙皿と割り箸も購入し、お茶を何本か常備。プラスチック製の使い捨てスプーンを用意し、今日のところはレンチンのお米でカレーを食す。いいね、じゃがいも少なすぎて彩りが終わってるが。

 

 パーティとは名ばかりの、俺だけカレーというクソ寂しい時間。さて、いただきます、と場違いな空気を無視して一人カレーを食べようとスプーンを持った時、俺の服をクイッと引っ張ってくる存在に視線を向ける。

 

『ちょうだい?』

 

「あ、欲しい? いいよいいよ、食べな……ほい」

 

 食事時だと言うのにガスマスクのようなものを顔にはめた子が手を使って意思を伝えてくる。多分そんな感じのことを言っているのだろう。話せない子かな? 手話勉強したことないんだよなぁ。今度軽く見とくか。

 

 口元まで運んでいたカレーをそのまま放り込み、レトルトのカレーの素晴らしさに舌鼓を打ちながらその子用にカレーを盛る。よし、参加人数が増えた。独りじゃなかったらそれはもはやパーティなのだよ。

 

 そうしてカレーを手渡した時には先程のガスマスクは外されていて、桃色の髪と端麗な顔が見えた。ここの生徒は相変わらず無表情なので表情変化に期待はしてなかったけど、この世界の女の子は何故こうも可愛い子が多いのだろうか。別にトキメクとかは無いけれど、眼福ですね、と思っていたところで、俺のカレーを受けとった少女は軽く会釈してから俺の隣に腰掛けて米とルーをスプーンですくい口に運ぶ。

 

「熱いぞ」

 

 ピタッ、と止まった少女は、開けた口を細めるとスプーンに乗せたカレーに何度か息を吹掛ける。そうして湯気が少なくなってきたところで改めてカレーを口にし、咀嚼を続けると僅かばかりに頬が上がった気がした。

 

『Good』

 

「ん? ああ、うん、そう」

 

 コップにお茶を注いでやり、それを受け取った彼女は僅かに喉を潤した後に俺へと親指を立てて得意げな顔を見せてきた。なんで得意げなんだよ、作ったの俺だよ。

 どうやら美味しかったようで、スプーンを持つ手が止まることは無い。流石は成長期。まあ俺もだけど。カレー久しぶりに食ったら美味いね。今度スパイスから作ってみようかな? 

 

 その子は話さないために俺たちの間で会話は生まれない。無言での咀嚼が続き、周りも食器を使うほどの食事ではないためにすぐに立ち上がり部屋へと戻る子達が多く、雑音が少ない。

 

 ふと、俺たちの元へと向けられている三つの視線に気づき、気付かれないようにそちらを見る。

 あの奇襲で最後に残っていた子達だ。こちらに近寄ってくる様子は無いけれど、何かを伺うようにこちらを見てくる。この子を心配してんのか? 誰が狼じゃ。

 

『マカロン美味しかった?』

 

 にしても、残ったカレーどうしようかな。肌寒い立地だし、普通に放置してても明日食べられるかな。ちょっと怖いか、ん〜。まあいいか、いちばん寒いところを探してそこに置いておこう。

 

『ねぇ』

 

 というか、女の子集団の中に男一人とか肩身狭すぎない? 黒服さんの所で過ごしてきたから感覚バグってるのだろうか。いや、正常だろう。この世界男少なすぎるんだよ。なんで男の人間居ないんだよ、ロボとか犬とかしか男居ないのなんなの? 

 

『ねぇってば』

 

 ヒフミと会う機会も減るなぁ。あいつ大丈夫か? ペロロの転売ヤー駆逐しようとしてるのマジで狂気だろ。変なことに首突っ込んでないといいけど。流石に駆け付けるまでに時間がかかりそうだし。

 

「痛……え、なに?」

 

 カレーを食べ終わり、ちょうど腹も膨れたところで手を合わせた時に後頭部をペチンと叩かれる衝撃に横を見る。

 名前も知らない子がシャドーボクシングの如きパンチを虚空に打ち続けていた。この子なんなの、怖いんだけど。

 

 おかわりいる? と聞けば拳の速度が上がる。どうやら違うらしい。なんなのこの子。怖いんだけど。

 

 そうして、俺主催の第一回カレーパーティ(参加者2名)が終了した。

 

「硬……」

 

 寝床が終わっていることを忘れていた。クッションも買ってもらわないとな。

 

 そんなゴミカスな環境下での、住み込み働きが始まった。

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