ホシノに殺された俺。どうやら先生の弟だったようなので、とりあえず黒服とお茶会してみた 作:ラトソル
────貴女に出会えた。
それだけで俺は満足だった。
────キミに出会えた。
それが私にとっては……何物にも替えられない宝物になったんだ。
『────大丈夫?』
差し伸べられたその手の暖かみを、俺は忘れない。
『俺とホシノを頼ってくださいよ』
不器用な優しさを、私は憶えている。
貴女が居たから、俺はこのクソみたいな世界を生きてこれた。
キミ達が居たから、私は絶望的な状況でも諦めずに頑張れた。
貴女を尊敬している。
キミを尊敬してる。
アビドスで過ごした日々が、俺に空の青さを教えてくれた。
三人で過ごした日々が、私に夢を与えてくれた。
俺は貴女に救われた。
私はキミに救われた。
だから、俺は────
だから、私は────
────貴女を救うためなら、死んだっていい。
────キミ達ともっと一緒にいたいよ。
「ホシノ」
「なんですか」
声が聞こえた。
いや、そんなものは当たり前だ。俺から声をかけたのだから。
俺の目線からは少し下から耳に届く声。何度か冗談交じりに言ったことがあるけれど、俺はこの声が好きだった。
敵に向けるような鋭い瞳。ホシノの瞳は元々鋭いものだけど、俺に返事をしたホシノの目元は柔らかかった。
多分、俺とユメ先輩にだけ向ける、親しい人にだけ見せる表情。笑っている訳じゃない。ただ、どうしたの、という気の抜けた顔を向けてきたから。
「前に、俺に聞いてきたよな」
────なんで、メグルはアビドスに留まってるの、と。
「はい……?」
随分前のことだ。ホシノも何を言われたのか分かっていないのかもしれない。けど、すぐに思い至ったのか、あっ、という表情を浮かべてから、またもや疑問の目を向けてくる。
「あの時の答えだけど、ちょっと訂正」
────ユメ先輩がいるから。
そう答えた記憶。それは俺の本心で、今も変わらない俺の原点で。
けれど。
その答えは、今ではちょっと違う。
なぜ、わざわざ訂正しようとしたのか。何故、そんな前の問答を思い出したのか。
俺にも分からない。けど、言っておこうと思ったから。
目を見開き、俺の顔を見つめるホシノの頭に手を乗せる。普段の俺はこんな事しない。やっぱり今日はおかしい。自嘲するような笑いが鼻から抜けていく。
触り心地のいいショートカットの髪をくしゃりと撫でて、俺はホシノと視線を交わす。
「ユメ先輩と……お前が居るから。俺はアビドスにいるんだ」
ユメ先輩が失踪する二日前の出来事。
俺が死ぬ、十日前の出来事。
◇◇◇◇
これは、罪を清算する物語では無い。
これは、誰かを赦す物語では無い。
これは、青春の物語では無い。
これは、全ての答え合わせをする物語。
「私が……全部終わらせる」
■■メグルの肉体を有するゲマトリア所属の存在────カイ。
ゲマトリア最強戦力に挑むのは……各学園の最高戦力。
「きヒヒヒ……」
「通さないよ……絶対ね」
トリニティ最強の一角を阻むのは、トリニティ最強の片翼。
「邪魔すんじゃねぇよ」
「FOX1、行くよ」
ミレニアム最強を阻むのは、SRT最強。
「────返して」
「悪いな。これは俺のだ」
ゲヘナ最強を阻むのは、ゲマトリア最強。
「私は……死なないといけないんだ」
「はぁ────馬鹿が」
アビドス最強を阻むのは、元アビドス最強。
キヴォトス全域を巻き込む未曾有の危機。
それぞれの思いが交錯する力の衝突。
「RABBIT小隊、出ます」
「アリウススクワッド、行くぞ」
「ああ、忘れてた……お前もいたな」
「何を、言ってるんですか、先生。メグルは────」
「ホシノ先輩ッ!!!」
「素晴らしいっ……これほどとは!!!」
「おお……おお!!! なんという副産物!!」
「カイ────」
「駄目、待ってください……ッ」
「私は、このために来たんだ」
「────そっちは任せるぞ、砂狼」
「────ん。任せて」
────嗚呼。
わたしは、また間違える。
「ユメ先ぱ────」
メインストーリー Vol.1 対策委員会編
第三章 【あまねく
「手遅れですよ────全て」
「────────めぐるくん……ほしのちゃん……」