連邦捜査部S.C.H.A.L.E.先生 潮田渚 作:奏でる芸術文
第1話 就任
……私のミスでした。
私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。
結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……。
……今更図々しいですが、お願いします。
先生。
きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。
何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。
ですから……大事なのは経験ではなく、選択。
あなたにしかできない選択の数々。
責任を負う者について、話したことがありましたね。
あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。
それが意味する心延えも。
……。
ですから、先生。
私が信じられる大人である、あなたになら、
この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。
そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。
だから先生、どうか……。
この、絆を――
私たちとの思い出……過ごしてきたそのすべての日々を……どうか……。
「...い。」
「..せい。」
「渚先生!」
"はいぃ!!"
鋭い声に促されて薄れていた、曖昧な意識を起こす。
???
「...。」
"す、すいません!ちょっと眠くなっちゃって...。"
???
「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。」
「なかなか起きないほど熟睡されるとは。」
恥ずかしい限りです。ホントに。
「...夢でも見られていたみたいですね。いい夢でしたか?」
「でも、ちゃんと目を覚まして、集中してください。」
"はい...すいません...。"
リン
「それではもう一度、あらためて今の状況をお伝えします。」
「私は
「そしてあなたはおそらく、新しく就任された先生......のようですが。」
「...ああ、推測形でお話したのは、私もここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
「......。」
おそらくだけど、自分がキヴォトスに向けられたのはあの経緯だろう。3年E組。暗殺教室。
僕らはそこで、『殺す』いうことを教わったから。
「少し混乱されてますよね。わかります。」
「こんな状況になってしまったこと、
「どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」
「学校都市の命運をかけた大事なこと......ということにしておきましょう。」
リンについていき、ガラス張りで作られた大層綺麗なエレベーターへの乗り、上階を目指していく。
そこには。
栄えている証である美しいビル群がどこまでも続いていた。
リン
「「キヴォトス」へようこそ。先生。」
「キヴォトスは幾千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。」
「きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが...。」
「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。」
「あの
「.....それは後でゆっくり説明するとして。」
会話は仕切りを知らせるようにエレベーターの停止音がなり、ドアが開く。
(ざわ...ざわざわ...)
どこか、ただいつものような喧噪ではなく。何かトラブルがあったことを示す騒がしさが連邦生徒会と掲げられた大広間を満たしている。
リンと自分がエレベーターから大広間に現れた瞬間、入口のほうに集まっていた一団がこちらを見て知数いてきた。
スーツを身にまとい、白いジャケットを羽織った少女が口を開いた。
青い髪を持つ生徒
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を読んできて!」
「......うん?隣の大人の方は?」
髪から制服まで黒で染め抜かれた少女が続く。
黒を基調とする生徒
「首席行政官。お待ちしておりました。」
ベージュの髪に尖った耳、赤いリボンを付けた少女がまた続く。
赤いリボンを付けた生徒
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
リン
「あぁ...面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
リンが心底面倒そうに言葉を零している。
ストレスとか大丈夫かな...?
「こんにちは。各学園から
「そんな暇そ...大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています。」
「今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために......でしょう。」
申し訳なさそうに、もしくはどこかわざとらしく。リンは生徒たちがここにきていることに関しての自覚を騙った。
青い娘
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
「幾千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学園の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
赤リボンの娘
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
白い羽の生えた生徒
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。」
「治安の維持が難しくなっています。」
黒い娘
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。」
「これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
これらの報告を聞いているとますますキヴォトスが外界とは別世界ということが分かる。
...え?武器の流通に20倍ですよねそれ?!
リン
「......。」
たびたび首席行政官と呼ばれる彼女は沈黙で応答している。
まるで何かを隠すかを迷っているように。
青い娘
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿の見せないの?今すぐ会わせて!」
リン
「......。」
リンは再び沈黙を返す。
しかし、逡巡のあと、隠すも無駄ということを思い立ったようだ。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」
青い娘 赤リボンの娘 黒い娘
「......え!?」 「......!!」 「やはりあの噂は...。」
反応は三者三様だが、相当驚くような事実であることはわかる。
リン
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
「認証を迂回できる方法を探していましたが......先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
黒い娘
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
リン
「はい。」
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
青い娘 赤リボンの娘 黒い娘
「!?」 「!」 「この方が?」
"え、私が?"
そうなの?
青い娘
「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
黒い娘
「キヴォトスではないところから来た方のようですが...先生だったのですね。」
リン
「はい。こちらの渚先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会が特別に指名した人物です。」
青い娘
「行方不明になった連邦生徒会長が指名......?ますますこんがらがってきたじゃないの...。」
"ええと...話しても大丈夫かな?みんな、初めまして!渚先生です!"
緊張をほぐすように、ごまかすように元気を滲ませて挨拶する。
青い娘
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの......」
「い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて......!」
焦っているのでそれどころじゃなかったようだ。
リン
「そこのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと......」
面倒だったからか、リンは無視を促した。すると...
ユウカ
「誰がうるさいって!?わ、私は
"えぇっと...よろしくね?"
確りとあいさつを返してくれた。
この子もこうしてここにきているってことは地位のある人だと思うが、ちょっとぉ...ちょろくない?
そんなやり取りを尻目に、リンは説明を続ける。
リン
「......先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスの存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすら可能で、」
「各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。」
「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが......。」
「シャーレの部室はここから役30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。」
「先生を、そこにお連れしなければなりません。」
大まかな説明を終えると、リンは連邦生徒会の仲間に連絡を取った。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど......。」
モモカ
「シャーレの部室?......ああ、外角地区の?そこ、今大騒ぎだけど?」
リン
「大騒ぎ.......?」
モモカ
「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。」
リン
「......うん?」
...え?
モモカ
「連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼野原にしてるみたいなの。」
「巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ。」
「それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど。」
リン
「......。」
モモカ
「まあでも、もうとっくにめちゃめちゃな場所なんだから別に大したことな...あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!」(プツッ)
リン
「......。」
「............。」(プルプル)
固く閉じられた口はクールな印象を保とうとしているが、顔と体からにじみ出る怒りがそれを霧散させる。
"だ、大丈夫ですか?一度深呼吸でも..."
リン
「...だ、大丈夫です。......少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」
なんとか一息付けたようで、補足を入れて心配を保証する。
そして。
(じー)
ここに集まった少女たちへ視線を向ける。
黒い娘
「...?」
ユウカ
「な、何?どうして私たちを見つめているの?」
リン
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
ユウカ
「......えっ?」
リン
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」
ユウカ
「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」
しばらくして、例の戦場へとたどり着いた。
そこに映っている惨状は自分が知っている現実では一生のうちにお目にかかればそうとう不幸であるくらいの地獄であるように見えるが、参加している少女たちの様子を見れば特に驚くほどのことでもないようで、またキヴォトスとの外の違いに少し呆れてしまう。
そう思っていると、ユウカが最初に声を上げた。
ユウカ
「な、なに、これ!?」
「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」
チナツ
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから...。」
ユウカ
「それは聞いたけど......!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりも扱いなんだけど!なんで私が......!」
(ダダダダダダッ!)
「いっ、痛っ!痛いってば!!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
ハスミ
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾*1は違法指定されてはいません。」
ユウカ
「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」
("傷跡で済むんだね...。")
やはりキヴォトス人の耐久はおかしいことを再確認した。
ハスミ
「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。」
「先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はそのあとです。」
チナツ
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので...。」
「私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性がありますその点ご注意を!」
"うん。なるべく気を付けるよ。"
ユウカ
「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦っている間はこの安全な場所にいてくださいね!」
"一応心得はあるから、ここは私が指示してみるよ。任せて。"
ユウカ
「え、ええっ?戦術指揮をされるんですか?まぁ...先生ですし...。」
チナツ
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」
ユウカ
「よし、じゃあ行ってみましょうか。」
("
どうも。ここまで読んでいただきありがとうございます。
飛ばしてもらっても構いません。
今作はちょっと渚くんの喋り方がよくわかんなくて変になると予想されます。
注意してください。
あと渚くんは今作は大人になって一人称が僕から私になっています。
それではまた次回も読んでいただけると幸いです。