連邦捜査部S.C.H.A.L.E.先生 潮田渚   作:奏でる芸術文

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第3話 邂逅

[シッテムの箱]。その名前を聞いた時、えも言われぬデジャブを感じたのはなぜだろうか。

 

リン

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないものです。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みのすべてが不明。」

 

「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。」

 

そんなもはやオーパーツのような未解明品なものを信頼してもいいものか、果たして本当に自分がホントに使えるのかと一瞬考えるが、今にわかることだろうと考えを放棄した。

 

リン

「私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるでしょうか、それとも......。」

 

"...。"

 

その自問とも取れる言葉に、沈黙を返すことしかできなかった。

 

リン

「......。」

 

「......では、私はここまでです。ここから先は先生にかかっています。」

 

「邪魔にならないよう、離れています。」

 

リンはそういうと、いそいそと部屋から出てその姿はすぐに見えなくなった。

 

一人になった私は、ほかにやることもないのでとりあえずそのタブレットを開くことにした。

 

外装だけを見れば市販のものと遜色ない程度のそれは、側面についている電源市一致を押すと青空と夕焼けを思わせる色で彩られた画面になり、中央にはSのマークが浮かび上がった。

 

 

...

 

Connecting To Crate of Shittim...

 

システム接続パスワードをご入力ください。

 

 

"...パスワードは...。"

 

パスワードなんて...と思っていた矢先さっきのデジャブに近い感覚に同時に文字列が浮かんできた。

まるでそうすることが運命に刻まれていたように、その文字列をシッテムの箱へと入力する。

 

 

......(なげ)

......古則(こそく)

 

.......。

 

接続パスワード承認。

現在の接続者情報は[潮田 渚]、確認できました。

 

[シッテムの箱]へようこそ、渚先生。

 

生体認証および認証書作成のため、メインオペレートシステムARONAに変換します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう画面に表示されたのち、画面から目を瞑ってしまうほどの光があふれだした。

その光に視界が支配され、見渡せるようになると...。

 

そこには水浸しになった、青空の下の教室のような空間が広がっていた。

 

壁から天井に向けて吹き飛んだような形で壁がなくなっており、その先には広い海が広がっている。

なにかがあったのか、沢山の机と椅子が外に積まれている。

 

そして、この空間を象徴するような容姿の少女が机に突っ伏し、眠っている。

 

???

「くううぅぅ......Zzzz」

 

とても幸せそうな顔をのぞかせ、寝言を零している。

 

???

「むにゃ、カステラには......いちごミルクより......バナナミルクのほうが......。」

 

ずいぶんと可愛らしい夢を見ているようだ。

バナナミルク...そうかな...そうかも...。

 

???

「えへっ......まだたくさんありますよぉ......。」

 

冷静に考えると不思議である。

ココがどこなのかも分からない。この少女が誰なのかもわからない。

少女の見た目はかもすれば小学生ともとれるような見た目だ。

なんでそんな少女がここに...?

 

そんなことを尻目に埒もあかないので少女を起こしてみることにした。

 

(つん)

試しに頬を突っついてみた。

 

???

「うにゃ......まだですよぉ......しっかり嚙まないと......。」

 

思ったよりも眠りが深いみたい。

 

(ツンツン)

 

もっかい突っついてみた。

 

???

「あぅん、でもぉ......。」

 

それでも起きない。

 

(ツンツンツン)

 

その柔らかい頬っぺたに指で何回も突きをする。(もちろん優しくだからね!?)

 

???

「......うぅぅぅんっ。」

 

(ガタッ)

 

あ、起きた。

 

目を覚ましたらしい少女はまだ眠気が覚め切っていないようで、目をこすり、おぼつかない様子で起き上がった。

 

???

「むにゃ......んもう......ありゃ?」

 

「ありゃ、ありゃりゃ......?」

 

「え?あれ?あれれ?」

 

どこかさっき見たような反応*1をしてその少女は困惑したようすを見せる。

 

???

「せ、先生!?」

 

「この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか渚先生...?」

 

その反応をみるに、この空間は自分と、この少女以外は基本的には入れないようだ。

問いかけられた問いに答えるついでに疑問を解消する。

 

"そうだよ。私は潮田渚です。ところで...あなたはなんていうのかな?"

 

とそう問いかけると。

 

「う、うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」

 

とても焦ってるような、またはただとても緊張しているようなそぶりを見せる。

 

???

「うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて......。」

 

「えっと...その...あっ、そうだ!まず自己紹介から!」

 

そういうと目の前の少女が思考を整えて、改めて名乗った。

 

アロナ

「私はアロナ!」

 

「この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS。そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

そう、彼女は彼女自身を定義した。

すると彼女は心底嬉しそうな笑顔を浮かべて続けた。

 

アロナ

「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

 

アロナはどこか機械的な言葉を零し、途方もない苦悩と退屈さを霧散させた。

 

"寝てたわけではなくて?"

 

すこしからかってみた。

 

アロナ

「あ、あうう......も、もちろんたまに居眠りしたりしたこともあるけど......」

 

その言葉の端々から本当に居眠りしていただけじゃないということを示すような純粋さが滲み出ていった。

それはそれとしてOSも眠るんだね。

 

"それじゃあアロナちゃん。これからよろしくね!"

 

そう挨拶すると、

 

アロナ

「はい!よろしくお願いします!」

 

屈託のない笑顔で、迎えてくれた。

 

(なんか、律みたいだなぁ。)

 

外の世界で持っていた携帯端末には、『自律思考固定砲台』通称「律」が入っていた。

キヴォトスへ着いた時に動作範囲を外れたのか、律自身が影響する機能がすべて停止していた。

なのでしばらく姿を見ていないが、また自身をアップデートして見違えているかもね。

 

そんなことを思っていると、アロナも同じようなことを話し始めた。

 

アロナ

「まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整*2が必要なのですが......。」

 

「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」

 

正直、この先彼女のサポートはとても頼りになるだろう。

何ができるかはまだ分からないけど、ただ考える脳が増えただけでおよそおつりがくるレベルだろうし。

 

アロナ

「あ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」

 

「うう......少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。こちらのほうに来てください。」

 

形式的なのに手続きなの...?

そんなことを考えながら言われた通り、少し近づく。

 

アロナ

「もう少しです。」

 

足りなかったみたい。

 

アロナ

「さあ、この私の指に、先生の指をあててください。」

 

言われた通りに従い、彼女が差し出した指先に自分の指先を合わせる。

 

アロナ

「うふふ、まるで指切りして約束する見たいでしょう?」

 

指切りの約束というよりかは、例のアレ*3が頭をよぎった。

 

アロナ

「え?宇宙人の映画のワンシーンみたいですって?」

 

見透かされていたようだ。

 

アロナ

「実は、これで生体情報の指紋を確認するんです!」

 

「指に重ねたときに指紋のパターンを記録できますから...すぐ終わります!」

 

そういうと指を離し、あらためて記録した指紋のパターンを確認し始めたようだ。

 

アロナ

「どれどれ......。」

 

「うう......。」

 

(ううん......綺麗には録れてないですねぇ...。)

 

(......まあ、これでいいですかね?)

 

明らかに諦めたとわかる渋い顔を浮かべた後、アロナは報告を述べ始めた。

 

アロナ

「......はい!確認終わりました♪」

 

指紋認証に分単位で時間がかかったことに少し懸念をおぼえてしまう。

 

アロナ

「最近の機械は指紋認証ぐらいは自動、ですって?え、1秒もかからないんですか?わ、私にはそんな最先端の機能はないですが......。」

 

シッテムの箱のスペックが気になるとこだが、高性能AIみたいなものが常駐している時点で相当なものなんじゃないかと思い直した。

 

アロナ

「そ、そんな能力なくてもアロナは役に立ちますから!?手でも十分確認できますから!」

 

「......全然信じてないって顔ですね......。」

 

(ウルッ)

 

「だったら最新鋭のナントカさんのところに行ってしまったらどうですか!」

 

疑っていたら泣き出してしまった。

 

(この後めちゃくちゃ慰めてあげた。)

 

 

アロナ

「なるほど......先生の事情は大体わかりました。」

 

「連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった......。」

 

そこで、特に不明瞭な事実を明かすために質問を一つ繰り出した。

 

"ところで連邦生徒会長って誰なの?"

 

そう問うとアロナは

 

アロナ

「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが......連邦生徒会長についてはほとんど知りません。」

「彼女が何者なのか、どうしていなくなったかも......。」

 

「お役に立てず、すみません。」

 

その返答でますます連邦生徒会長の人物像がおぼろげなものとなっていく。

彼女がなぜ、どんな、いつから、など様々なことが分からない。

ただ、彼女は信用に足る人物であることだけが、彼女を象徴している。

 

アロナ

「......ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです。」

 

...とりあえず目先の問題は懸念もなく解決できそうで、とても安心する。

 

"じゃあお願い、アロナちゃん。"

 

そうお願いするとアロナは、お役に立てることが心底嬉しい様子で微笑んだ。

 

アロナ

「はい!わかりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!」

 

「少々お待ちください!」

 

そう言うと、アロナは半透明のホログラムパネルを召喚し、忙しなく手を動かし始めた。

暫くすると作業が完了したようで、ホログラムパネルから手を離し、体をほぐしていた。

 

アロナ

「...。」

「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了......。」

 

シイタケの裂け目を彷彿とさせるような輝く目をして報告してくれた。

 

アロナ

「先生、サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。」

「今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。」

 

「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です。」

 

「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。」

 

「でも......大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても......。」

 

暇もなしに、その問いに答える。

 

"大丈夫。外からきた私よりも、元からあった統括機関に任せた方がいいでしょ?"

 

アロナ

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します。」

 

しかし、経験を積んだ上で思う事がある。

権利を何もなしに一つの機関で管理すること。それは暴走したときの手立てが何もできなくなってしまうことと同義であるということだ。

なので、()()をかけることにしておいた。

 

"あ、待ってくれる?返す前に、アロナちゃんだけが突破できるバックドアを設定しておいてほしいんだ。"

 

アロナ

「...?そうですか?まあ、その通りにしておきますね!」

 

先生メモ ①

-------------------------

アロナちゃんは秘書

--------------------------

凄く頼りになる

 

~ ~ ~

 

リン

「......はい。分かりました。」

 

(カチャッ)

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。」

「これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね。」

 

「お疲れ様でした、先生。」

「キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」

 

例の兵器流出*4は混乱にもならないのやっぱおかしいよ...と思うがリンはそんなことを考えてるとも知らず、お話を続ける。

 

リン

「ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく。」

 

生徒でも容赦なく討伐するようだ。なんだか可哀そうだけどテロだから仕方なし。ということだろう。

 

リン

「それでは『シッテムの箱』は渡しましたし、私の役目は終わったようですね。」

 

「......あ、もう一つありました。」

 

「ついてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介します。」

 

そのあと、リンにシャーレのことを一通り教えてもらい、小一時間が経った。

 

~ ~ ~

 

ユウカ

「ええ、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ。」

 

ハスミ

「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど.....すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。」

「あとは、担当者に任せます。」

 

ユウカ

「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

 

"みんなお疲れ様。あとユウカさん、こんなことで有名になれたら苦労はしないよ?"

 

ハスミ

「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生。」

 

スズミは口を開きはしないが、わかりやすく感謝を込めたお辞儀をしてくれた。

 

チナツ

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」

 

ユウカ

「ミレニアムサイエンススクールに来て下されば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」

 

みんなそれぞれ自分の地区を訪れたときに顔を出すよう促し、さよならをいって消えていった。

とりあえず協力してくれたみんなとお別れできたので、シャーレへと戻る。

 

一方そのころ......

 

視点変更 狐坂ワカモ

 

逃走した先で、ワカモは一人、今日あったあの人のことを思い出していた。

 

ワカモ

「......。」

 

明らかに脳に噛み付かれたかのように、彼の顔が、声が、姿が、瞼に焼き付いて離れないのだ。

 

ワカモ

「ああ......これは困りましたね......。」

 

勿論、自分の立場も、自分の欠点も、彼に見られて恥ずかしいことだということは自覚している。

でも。

でも。

でもでも。

 

反芻する声が、誰にも崩させてはいけないような笑顔が、綺麗に纏められた見事で珍しい空色の髪が。

 

それを引火物として心と情熱が篤く燃え上がってしまう。

まるで、破壊をしたときよりも、猛ってしまう。

 

ワカモ

「フフ......フフフ。」

 

ああ、笑みが零れて仕方がない。

此れでは、本当にお面が外せなくなってしまいそうなほど。

恋慕、敬愛、情欲。彼から引き出された様々な感情が集まって乙女を形作り、頬へ桜色を指していく。

思いをふけるたび、桜色は実を結んで色が深くなる。

 

ワカモ

「......ウフフフフフフ♡」

 

今はただ、あの方を想いましょう。

そしていつか、

()()()のお隣に。

そう、決意を抱いた。

 

視点変更 先生

~ ~ ~

アロナ

「あはは......なんだか慌ただしい感じでしたが......ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れさまでした。」

 

"アロナちゃんもお疲れ様。"

 

アロナ

「はい!でも、本当に大変なあのは、これからですよ?」

 

ひと段落ついたはずなのに、そんな不穏なことを言う。

 

アロナ

「これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面していく問題を解決していくのです......!」

 

そう、改めてキヴォトスで困っている生徒がいることを確認する。

 

アロナ

「単純に見えても決して簡単ではない.....とっても重要なことです。」

 

そういわれて、改めて自分が沢山の責任を背負うことを確認する。

 

アロナ

「それではキヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします、先生。」

 

"よろしくね。アロナちゃん。"

 

アロナ

「それではこれより、連邦捜査部『シャーレ』として、最初の公式任務を始めましょう!」

*1
某災厄の狐=サン

*2
後々アップデートが入ってイントネーションが良くなった。

*3
某E.T.

*4
2000%である。2000%である!(迫真)




これでチュートリアルは終わりです。(DSクッキング風)

アビドス編からは渚くんの喋りも原作通りではなく自由律にしたいなぁと思いますのでまた次回をお楽しみに。

今回はなぜか渚くんよりワカモのほうが自我が色濃くでています。
重い...重い...。
なんでやろなぁ...?

ちな現時点でワカモの怪文書が一番書きやすかったかもしれません。
Oh...ワカモ=サン、先生のご尊顔watch...
カワイイカワイイね。

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